予算委員会
(2004年2月19日)



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若年者の就労問題について

(衆議院HP未掲載)

○笹川委員長
 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。
水島広子君。

○水島委員
 民主党の水島広子でございます。
 このたび民主党の次の内閣の雇用担当大臣というのを拝命いたしまして、本日は、与党の大臣に主に雇用問題についての質問をさせていただきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
 まず、若年者の就労についてお伺いいたします。
 日本の若年失業率は十年前の二倍となっておりまして、昨年、二〇〇三年には、史上初めて一〇%を超えて一〇・一%という大変な数値になっております。
 若年の失業につきましては、幾つもの特別な配慮が必要であると考えております。
長期間仕事をしてきて失業するという人とは異なりまして、仕事をするという生活パターンの経験が全くない、あるいはごく短期間しかないということになってしまいますと、働きながら生活をするという習慣が当たり前のものになりません。
 いかにこの若者が何もしない期間を短くするかということにつきましては、ヨーロッパ諸国の政策を見ましても、かなり力を入れていると考えておりますが、まず、この若者を長期間何もしない状態に置いておかないようにしていくための就労政策につきまして、日本の状況がいかがかを教えていただきたいと思います。

○坂口国務大臣
 どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 若年者の雇用につきましては、これは、過去の日本のよき時代には、企業の方でいろいろの訓練等もやっていただきましたし、そうした中でお願いをしてまいりました。
 しかし、最近の状況はかなり変わってまいりまして、そして、今までの高校卒のところの半分は、これは大学卒でありますとかあるいは高専卒でありますとか、そうしたところに取ってかわられている。
そしてもう半分は、パートの方々に取ってかわられている。
そうしたことで、特に高校卒の皆さん方の問題が非常に大きな問題になってまいりました。
 そうしたことから、ことしの四月からいわゆるデュアルシステムを導入いたしまして、企業におきます仕事と、そして訓練と申しますか、技能を身につけるということとを並行して行うという制度を導入していくということでございます。
そうしたことを行って、できる限り技術を身につけたお若い皆さん方をつくり上げていくということを行いたいと思っております。

 もう一つは、やはり、皆さん方がどこへ行って聞いていいのかわからない、そして、どのように自分たちの進む道をやっていいかわからないというような方がかなり多いことも事実でございますので、それぞれの学校に対しまして、ハローワークの方から出かけていきまして、そして御相談に乗るというようなこともやっておりますし、それから、いわゆるワンストップサービスセンターをつくりまして、各都道府県の中でお若い皆さん方に対応をするといったようなことも、今ようやく始めたところでございます。
率直に申しまして、そういうことでございます。

○水島委員
 日本の若年就労施策というものが極めておくれているということを今大臣から率直に御答弁いただいたわけでございますけれども、そんな中でも遅まきながら始めていただいているということはもちろん評価できますし、また、今大臣は、若者自立・挑戦プランの推進という、その枠に沿った御答弁をくださっていると思いますが、この施策、自発的に職を求める若者については、私も方向性が間違ったものだとは思っておりません。
 でも、そもそも働く習慣もなければ情報もない若者については、やはり積極的に働きかけていく誘導政策が必要だと考えております。

 ヨーロッパ諸国の例を御紹介いたしますと、大臣も御承知だとは思いますけれども、例えば北欧諸国の若年保障政策は、失業登録を行い、失業保険または社会扶助を請求している人と、学校を中退して進学も就業もしていない人全員に対して発動し、教育訓練や就業支援を行うものです。
 私も昨年の夏にデンマークに行って聞いてまいりましたけれども、デンマークでは、一九九四年以降に推進された労働市場改革により雇用情勢は著しく改善しておりまして、特に一九九五年以降、若年の失業率と全体の失業率が逆転して、若年者の失業率の方が低くなっております。
 この労働市場改革では、ウエルフェアからワークフェアへの転換が推進されまして、失業者の職業教育訓練への参加は権利かつ義務とされて、一定期間内に失業者は職業教育訓練を受けなければ失業保険を受けられないこととなっております。
この期間はたびたび短縮されてきておりまして、一九九八年には二十五歳以上の失業者については失業後一年に、二十五歳未満の若年失業者は失業後六カ月ということになっております。
六カ月たっても仕事が見つからない人に対しては、失業保険の半額の手当つき教育訓練を受けさせるということになっております。

 フィンランドでは、一九九六年に十代の若者に対する失業扶助を廃止しまして、一九九八年には、職業資格を持たない二十五歳未満の若年に対しても、政府の雇用事業や職業訓練に参加しない限り同様の措置をとることといたしました。
 スウェーデンでは、一九九七年に自治体若年責任法を制定しまして、若年の失業が九十日になる前に地方自治体が訓練か雇用機会を提供するものといたしまして、さらに自治体には、若年がこれに参加しなかった場合、扶助を減額または廃止するという権限が与えられているわけでございます。
 EUとしましても、一九九七年に雇用政策のガイドラインを決定し、その中で加盟国政府に対して、若年の場合には失業期間が六カ月になる前に何らかの支援を行うことを求めているわけです。
 このEU以外でも、オーストラリアやニュージーランド、ノルウェーなども六カ月で発動するプログラムを持っておりまして、この六カ月という期間を見ましても、若年を六カ月以上教育も受けない、仕事もしないという状態に置かないということに関して各国がかなり熱を入れているということを御理解いただけると思います。

 改めて質問させていただきますけれども、もちろん日本の若年就労政策というのはかなりおくれているわけでございますので、ようやく、希望する若者の行き先をつくっていこうということを、今取り組みを始めてくださっているわけですけれども、今後の政策の方向といたしまして、このように本当に右も左もわからない、そもそも働く習慣というものが自分の体の中に、自分のものとなっていないような若者に対して、きちんと社会全体で軌道に乗せていくような、そのような誘導政策が必要だというふうに大臣、思われますでしょうか。
また、そちらの方向に今後進んでいっていただけますでしょうか。

○坂口国務大臣
 もちろん、先ほど申し上げましたのは、ある程度これは意思を持っている皆さん方を中心にしてでございますが、しかし中には、ある程度意思は持っていてもどうしていいかもわからないという方もございますので、その人はその人として手を差し伸べなければならないというふうに思っております。

 問題は、今も御指摘ありましたように、なかなか働く意思を完璧に持てないという人たちに対して一体どうしていくかということでございまして、この分野は文部科学省とタイアップをしまして高校時代から、中学校で卒業する方も中にはありますけれども数としては非常に少ない、高校を卒業なすった皆さん方以上が中心でございますので、いわゆる高校教育の中でいかにして職業教育というものを取り入れていただくか、また、職業に対する考え方をきちんと身につけていただくようにするか。
それから、できるだけ夏休みでございますとかそうしたところを利用して、企業訪問、あるいはまた企業で働いていただくということを一度やっていただいて、そしてだんだんと働くということに対する意欲を身につけていただくような方向に持っていくということが一つは大事だというふうに思っております。
 卒業なすってどこへも就職をせずにという方がおみえになることも事実でございまして、その皆さん方も一緒にそうした方向でやっていかなければならないというふうに思いますが、卒業されますともうここは学校との関係が一応切れてしまいますので、そこをどこがどう行うかということが大事でございまして、今のところはハローワークを中心にしてやっておりますけれども、それで十分足りるのかどうかという問題はございます。
 今まで全体に回しておりました人を若者のところにシフトをいたしまして、そしてハローワークの中でも若者に対するところを大体五百人ぐらい確保いたしておりますし、そしてまた、高校生専門に当たる人を百人ほど予定いたしておりまして、そうした人をコンバートしながら、特に雇用の悪い地域、例えば北海道でありますとか、近畿でありますとか、あるいはまた沖縄でありますとか、そうしたところを中心にその人たちを重点的に配分をしていくといったようなことも今やっているところでございます。

○水島委員
 今大臣がお答えくださったことはそれとしては結構なことだと思いますけれども、肝心の、若者一人に着目をして、その若者が本当に長期間何もできない、何もしないでいるような状態を余り長くつくってしまうと、本当に本来の仕事をするという生活に入りにくくなるという、そのような観点からの御答弁がいただけなかったのは残念なんですけれども、ちょっと日本の社会、社会扶助という仕組みもございませんし、その制度を今大臣が一言でお答えになれないのだろう、そのようにそんたくをいたしまして、ただ、ちょっと今後の質問の中で、またそれに関した御答弁をいただきたいと思っております。

 今大臣も、卒業しても何もしない若者がいるというような、そのことを既に御答弁の中で触れてくださっているわけでございますけれども、まずこれは坂口大臣とまた河村大臣、それぞれにお伺いしたいんですけれども、イギリスでニートと呼ばれている存在を御存じでいらっしゃいますでしょうか。

○河村国務大臣
 私、寡聞にしてニートという言葉は初めて聞いたんですが、ノット・イン・エデュケーション・エンプロイメント・オア・トレーニングということでありますから、まさにイギリスを初め欧州ではこういう問題が、若年者の就業問題が重要になってきて、この問題が取り上げられているということだと思います。
 日本においても、これからこの問題は、当然いろいろな若者の、いかに職につかせるかというのは大きな問題だと私も思っておりまして、私は、イギリスでは、この話、事前にニートという言葉を聞いたときに、初めて聞いたんですけれども、イギリスは特にまた日本と違って、約一割ぐらいの、字が読めない、書けない人がまだいるという現状もありまして、これはG8の教育大臣会議でイギリスの大臣が、これも我が国の重要課題です、こうおっしゃっておりましたから、そういう背景も私は多分にあるのではないかと思います。
 しかし、現実に今この問題から敷衍して考えてみるに、日本もこの問題を考えなきゃいけないときが来ている、こう思っています。

○坂口国務大臣
 申しわけありません。
私は、きょうそういう御質問があるということを聞くまで知りませんでした。
よく勉強いたします。

○水島委員
 私もつい最近まで知りませんでしたので、両大臣が質問通告をするまで御存じなかったとしても、それを責めるつもりは全くございませんけれども、河村大臣から御説明をいただきましたように、ニートというのは、ノット・イン・エデュケーション・エンプロイメント・オア・トレーニングの頭文字をとったもので、教育も受けていない、雇用もされていない、職業訓練も受けていないという若者のことを意味している言葉でございます。
 ニートは、教育や就職を通じて自分の未来を開く道が閉ざされ、結果的に、薬物や犯罪に手を染めたり、ホームレスにもなりやすい、また、将来は長期にわたって生活保護を受けるしかないということにもなり得る存在として、イギリスではここのところ対策が講じられていると聞いております。
 日本でも、先ほど河村大臣は、イギリスには一割、字が読めない、書けない人がいるから、それとニートと関係あるんじゃないかとおっしゃったわけですけれども、日本にとっても実はこのニートというのはかなり大きな存在になりつつあります。

 日本では、失業者にもならない、フリーターにもならないという若者がふえておりまして、二〇〇二年のデータでは、十五歳以上二十五歳未満の若年者のうち、就労していない、就職活動もしていない、就労の見込みもない、進学を希望して浪人をしているわけでもないという人が約三十万人いるという事実が指摘されております。
この数は、一九九八年の時点では十万人程度にとどまっていると計算されまして、たった五年の間に、進学にも就業にも希望を失った若者が三倍にふえているということを意味しているわけです。

 働こうとする意思もなく、進学しようとする意思もない、そんな人々が、十五歳から三十四歳の若者に約二百五十万人存在しております。
その数は、同じ年齢の働く意欲のある失業者百六十八万人を大きく上回っているものです。
二〇〇三年の労働経済白書によりますと、同年齢のフリーター人口は二百九万人と試算されますけれども、働くことを放棄した若者の数はフリーターとして働く人よりも多いということになるわけです。
 こういったことは今まで余り注目されてきていなかったと思いますけれども、またこれは両大臣にお伺いいたしますが、なぜニートがふえていると考えられますでしょうか。

○坂口国務大臣
 言葉も知らなかったぐらいですから、余り大きなことを言うつもりはございませんけれども、しかし、就職しようという気持ちも持たない、学校に行く気持ちも持たない、自分が将来どういうふうになっていくかということに余りはっきりとした方針を持たないということなんだろうというふうに思っておりますが、それはやはり一つは、バブル前後かなり満ち足りた生活が続いたということも、私は一つ影響しているのではないかという気がいたします。

 しかし、それだけではなくて、やはり、自分がどういう生涯を送っていきたいというふうに思っているかという、少し長期的な、あるいはまた複眼的な見方をするということではなくて、そのときそのときだけを考えて生きていくという感じが強くなってきている、そういう人がふえたということではないかというふうに思いますけれども、それがなぜそういうふうに今なってきているのかということの原因分析まで、私もできているわけではございません。

○河村国務大臣
 これは、確かにゆゆしい問題だと思います。
 今、少子化の問題も言われておりますが、そういう人たちはまた、結婚の意欲もなくすことになるわけでありますから、こういう観点からも総合的な対策が必要だと考えますが、最近の子供たちは、外に出ていくことといいますか、人と人とのつき合い方がうまくない、人間関係がうまくない。
そうすると、そういうことがおっくうになってしまう。
そういう傾向が見られるという指摘が学者の間にもございますし、それから、家庭の、昔から、親の背中を見て子供は育つ、こう言ってきましたが、そういう家庭の中での父親、母親に対する尊敬の念といいますか、そういうもので、ああいうふうにすれば人生が楽しいものだというようなイメージが、どうもわいてこないというような指摘もございます。
 そういう意味で、やはりそういうことに出会うチャンスを多くつくってやる、そういうことがこれから必要だろうと思いますし、本を読ませるとか、いろいろな小さいときから習慣をつけていくと、そういうところに何かそういう出会いを、感動するような出会いがどこかにあれば、そういうことがきっかけになると思いますが、そういうことが希薄になっておりますから、これはやはり大人社会も一体となってこういう問題を真剣に考えていかないと解決策は見つからないんではないか、このように思います。
もちろん、教育においてもしかりでございます。

○水島委員
 今、それぞれの大臣から御答弁をいただきまして、多分ニートの実態に対する理解とちょっとずれているんじゃないかなというような感想を持って今伺っていたんです。
そういう側面が全くないと言うつもりはございませんけれども、本当にニートという人たちが、働く必要がないから働いていないのか、就労の意欲もないのか、また、今、河村大臣がおっしゃったように、何か目標となるような人物に出会っていないから、将来に希望を持てないから絶望してしまっているのかというと、そういう問題ではないのではないかというふうに思います。

 それを裏づける点といたしまして、例えば、失業者と比べたときのニートの最大の特徴は、その閉ざされた人間関係にあると言われておりまして、厚生労働省の二〇〇三年の委託研究でございます若年者のキャリア支援にかかわる調査研究からの分析によりますと、家族であれ友人であれ、ふだん交友関係がある人はいないと答えたのは、失業者では五%だったけれども、ニートでは二六%だったということです。
また、悩みがあったり困ったことがあったときに相談する人がいないと答えているのは、失業者では一六%であるのに対し、ニートでは四六%に達しているということです。
 つまり、ふだん家族も含めて交友関係がある人、二六%の人がいないと答えている、そして、相談する相手がいないというのを、約半分の人がそう答えているというのがニートの閉ざされた人間関係の特徴であるということでございます。
そして、同年代の人と比べて自分は協調性や積極性、コミュニケーション能力が劣っているとニートの二人に一人は感じているということで、社会の中における自分に対する劣等感というものをかなり強く感じているグループであるということを御理解いただけると思います。
 ですから、物が満たされていて必要がないから働かないとか、何か自分が働いていく目標となる人物が見えないから働かないとか、そういう次元の話ではなくて、私は、ニートの問題というのは単なる雇用問題というふうには考えていないわけです。
やはりこれはもう今の日本の若者、また子供たち全般に共通する現象として考えていただいてよいと思いますし、河村大臣、多少そのような見解を持ってくださっているわけですけれども、今の日本では人間関係が極めて乏しい人がふえていることは事実であって、また、一見、友達が多いようであっても、実は本当に心が許せる友達がいないという人も少なくないわけでございます。

 何でこういうことになってしまっているのか、また、教育現場ではどのような取り組みがそれに対して有効だと思って取り組まれているのかを、これは河村大臣にお伺いいたします。

○河村国務大臣
 これ、本当に、ニートになってしまうといいますか、そういう状況をどうやって防ぐかということだろうと思いますが、やはり教育の段階におきましては、小さいときから、働くことの大切さとか、あるいはまさに額に汗して働くことの大切さ、勤労観、職業観、そういうものをその年代に応じて植えつけていかなきゃいかぬと思います。
 そのためにはやはり、もう小学校高学年ぐらいになれば、学習の中で、ただ机上だけじゃなくて、実際のお父さん、お母さんが働いているような現場を見せてやるとか、それから実際の体験をさせていくとか、今、各県においてはそういう取り組みがもう始まっておりまして、中学校段階では積極的に子供たちを現場へ出していく。
そうすると、不登校だった子供たちも、そういうところなら出ていくというような効果もあらわれているようでありますが、そういうやはり体験を持たせてやりませんと、どうしてもそういう人たちは、どっちかというと人間が引っ込み思案で消極的な人ですから、だんだん孤独の方へ入ってしまう。

 今、日本の教育では、例えば一つの項目に対して反対、賛成のディベートなんかも最近取り入れるようになりましたが、活発に意見交換をしてやる、場合によってはそのために打ち負かされる、悔しい思いをする、そういうような体験をもっともっと持たせていく必要がこれからあるんじゃないかと思いますね。
そういうことによって人間関係をつくらせるように、コミュニケーションをうまくつくらせるように子供たちを誘導してやる、そういう教育が私はこういうものの中には必要だと思います。
 もちろん、就業者のためには、今、それぞれ役所の、関係省庁集まりまして、若者自立・挑戦プランなんというのをつくっていますが、もうある程度人間ができ上がった時点でこれをやっても、ニートの人たちはこれに乗ってこないでしょうから、その以前の問題として今御指摘あったと思いますので、そういうことを考えながら教育プログラムをつくっていくという必要が、これから非常に重要になってきておるというふうに思います。

○水島委員
 ぜひそういう取り組みはかなり積極的に進めていただきたいと思っておりますし、また、もちろんこれは、子供本人の問題ではなくて、当然子供は大人社会の中で育っているわけですから、今の家庭がかなり閉鎖的な環境にあるという問題であるとか、また、家庭において、後で少しまた質問させていただきたいと思いますけれども、先ほど河村大臣は、親の背中を見ていないというような、親への尊敬の念というようなことをおっしゃいましたけれども、尊敬の念を持とうにも、背中を見ようにも、親が忙しくて家にいない、そういう家庭も多いわけでございますので、そういったかなり総合的な問題であるということをぜひ教育現場でも認識していただきたいと思っております。

 また、今、他者とコミュニケーションする、いろいろな意見を闘わせていくというようなことも取り上げてくださったわけですけれども、やはり自分と異なる意見を持っている他者をどうやって尊重していくかというような方法をほとんど教えられていない。
ただ、これは教育現場の問題であると同時に、私は、最近の国会のあり方、非常に憂いを持って見ているわけでございますけれども、国会において、本当に違う意見がきちんと話し合われて、そして、その結果こういう意見ができたというような形跡が見えるような努力が極めて少ないのではないか。
特にここのところの小泉首相の答弁ぶりなどを見ておりますと、あれが本当に両方向のコミュニケーションなのかということを、強い疑念を持っておりますので、ぜひ、国会議員の皆様には、子供たちにちゃんとそのようなコミュニケーションの見本となるような答弁を心がけていただきたいと思っております。
 本当に、相手を論破することが大切なのではなくて、そこから共生の道を探っていくということが大切なわけでございますので、ぜひこれは、坂口大臣、河村大臣、そして今、谷垣大臣もいらしておりますけれども、くれぐれも総理大臣の方に厳しくお伝えいただきたいと思っております。
 さて、このニートの問題なんですけれども、そのように教育現場から始まる問題でございますので、ぜひ、単なる雇用問題としてとらえるのではなくアプローチをしていただきたいと思っておりますけれども、そのような背景を踏まえて、そもそもニートへのアプローチをどのようにしていくかということについて、両大臣の御意見を伺いたいと思います。

 ちなみに、イギリスでは、若者向けニューディール政策がニートを置き去りにしてしまったという批判のもと、若年者就労支援の新しい枠組みであるコネクションサービスというものを本格的にスタートさせておりまして、このサービスは、これまで若者関連の政策にかかわっていた省庁や機関だけでなく、民間組織やNPOなども取り込みまして、十三歳から十九歳の若者に必要な支援、つまり就職支援や自立支援などを一つに統合したのが特徴であります。
また、利用者である若者の声をもとに作成された新しいサービスで、大きな期待が寄せられているということでございます。
 このような先進国の例も踏まえまして、ニートへのアプローチをどうしていくか、特に、地域におけるネットワークづくり、NPOなどとの連携、また当事者の声をどのようにそこにくみ上げていくかというような点につきまして、坂口大臣、河村大臣、双方から御答弁をいただきたいと思います。

○坂口国務大臣
 先ほどからお話を聞いていまして、だれと話をしていいかもわからない、あるいは話をしようとも思わない、そういう人たちが出てきた、その人たちの姿というものは、それは原因というよりも一つの結果ではないかという気がして、お聞きをしていたわけでございます。
そういうお子さん方を何がどう生み出してきたかということではないかというふうに思っております。
 背中を見ようにもお父さんがいないというお話もありましたけれども、それほど忙しいお父さんがいるということをなぜ感じないかというところにも私は問題があるというふうに思っております。
これは若干年齢差かもしれませんけれども、私はそんなふうに思うわけでありまして、そういう感動するという、先ほど河村大臣が感動という言葉を使われ、私もそこは同感でございまして、やはり物事に感動するということがなくなってきている。
そこを一体どうするのか。

 私は先ほど単眼、複眼という言葉を使いましたけれども、もう少しやはりやる意欲のある子をどうつくり出すかということを、それは雇用もかかわってくることでございまして、できるだけいろいろの人が働いている現場を見てもらう、そして、そこで自分が少しでも仕事をやってみる。
そうしたことによって、だんだんと働くことへの意欲が出てくるということもあるわけでございますから、できる限りそういうお子さん方には、企業なんかで、たとえ一時間ずつでも仕事に携わっていただく、あるいはまた見学をしていただくというような機会をふやしていくということが、まず手始めとしては大事ではないかという気がいたします。

○河村国務大臣
 確かに、時代の大きな変革といいますか、我々の子供のころと比べて、今の時代、そういう状態でも何とか生きていけるというか、親が働いていれば何とかなるというような状況が現実にあるわけでして、その中へやはり埋没して、親の方も、とにかく働かなきゃとてもやっていけないよと言って、自分が先頭に立ってやっている姿というのを子供がいつの間にか感じてしまうという機会が非常に少なくなった。
 さっきもいろいろなお話がございましたが、そういう大きな時代の変遷の中でどうするかということでございますから、これは一番、学校教育段階でもそういうことをきちっと考えていくということで、今いろいろな政策は持っておるわけです。
特に、キャリア教育総合計画ということでありまして、具体的に予算も八十億ぐらい持ちまして、小中学生、高校生の段階の新キャリア教育プラン、あるいは大学生、専門学生のキャリア高度化プラン、さらにフリーターに対しても、そういう方々を専修学校などへ引っ張り込んで、知識を得させるとか訓練をさせるとか、こういうことを持っております。
 もちろんハローワークとの連携。
さっきもお話がありましたように、特にそういう方々というのは、中途退学、中途で学校をやめていくとか、そういう人が非常にその中に含まれておると思うんですね。
そういう人たちは学校に行けばそういう情報が得られるということを教えてやらにゃいかぬと思うのであります。
そこへ行けばちゃんとハローワークを紹介してくれるとか、現実にそこへも行かないということになると、これはもうまた次元が違ってきますけれども、そういう人たちをできるだけそういう機会に会わせてやる、これが今、当面具体的にいわゆる行政としてとり得ることでございます。
 そういうことを具体的にやりながら、同時に教育段階で、道徳の時間それから総合学習の時間、そういうときに、いわゆる働くこと、汗を流して働くことの大事さ、そういうこと。
それから、地域の皆さんにも協力していただいて、教育現場に来ていただいていろいろなお話をしていただく、そういうようなこと。
それから、まさに体験を話していただく、そのようなこと。
それから、さっきも一回申し上げましたが、現実にその職業の現場に行く。
また、そこへインターンシップで預かってもらって、実際に汗水垂らして仕事をやってもらって、学校現場へ返してくる。
その職場体験というのは、実はもう義務教育段階でも、中学校においては全体の八割の学校、平成十四年度では、一万三百三十五の公立中学校のうち八千九百七十六校、八六・九%の学校はそういう職場体験も実施をいたしております。
 そういうことで、現行の教育制度の中でやれることは、今そういうことで進めておるわけでございます。
いわゆるデュアルシステムと言われますが、実務と教育、これをきちっと連携させる、こういうこともやっておるわけであります。

 しかし、それでもなお、今現実にこれだけの人たちがおるということをやはり直視しなければならぬと思いまして、そのもとになる心の問題といいますか、そういうことも踏まえて対応していかなきゃならぬという今御指摘がございましたので、それは当然受けとめさせていただかなきゃならぬということだと思いますが、現状は、やはり目的を持たせて職業へつかせる、職業的自立といいますか、そういうものを進めるようにいろいろな施策をもってそこの中に組み込んでいく、今そういう努力をいたしておるところであります。
    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕
○水島委員
 坂口大臣の御答弁については、ちょっと後ほどまたコメントをさせていただきたいと思うんですが、今の河村大臣の御答弁の中で幾つか確認をさせていただき、また約束をしていただきたいことがございますので、お願いしたいと思います。
 先ほど、学校を中退したような子供たちに関して、学校に行けばハローワークを紹介してもらえるというような仕組みだというような御答弁をくださいましたけれども、確かに、中卒でその後進学を断念した子であるとか、また高校中退者の多くは、結局失業者として公的に登録すらされずに非労働力ということになっているわけでございますけれども、この高校中退者あるいは中卒後進学を断念してそのまま学校に行っていないという子、こういった子たちに対しては、教育行政と労働行政のエアポケットに落ち込んでいるような状態になっていて、今本当に無策というような状況が続いてきていると思います。

 従来の日本のシステムというのは、学校と労働市場が卒業という時点でつながっているわけですから、中退者あるいは進学断念者というのはどの機関も今までフォローできてこなかったんだと思いますけれども、その中でやはり私は学校の役割というのが大きいと思っております。
 今大臣がおっしゃったように、やはり自分がやめた学校あるいは卒業した学校ぐらいしかその子にとっては相談先というのが思い当たらないわけでございますから、学校に相談に行けば確実に有効な就労支援をしてもらえる、また職業訓練を紹介してもらえる、そのような仕組みを絶対につくる必要があると思っております。

 これが結局、学校を中心とした地域のネットワークということにもなっていって、ニートへの対策にもなっていくんだと思いますけれども、このように、学校に行けば、中退者であっても、またどれほど学校ともめごとを起こしてやめた子であっても、必ずそこの学校で相談に乗って責任のある対応をしてもらえるというような体制を整備していただけると約束していただけますでしょうか。

○河村国務大臣
 今の御指摘、私、非常に大事なことだと思います。
どんなもめごとを起こしてもとおっしゃいましたが、やはり学校というところはそういうところでなければいけないと思いますね。
 だから、今もそういう通達もしておるわけでありますが、特に、「高等学校中途退学問題への対応について」ということで、文部省の初中局長名で、きちっとした対応をしなさいということ。
特に、進路指導の充実を図って、そういう方々が相談に来てもきちっと対応できるように窓口をきちっとあけておくように、それから、少なくとも一年間は、ハローワークとの連携で、中途退学した人たちに対しては一年間は定期連絡をやるとか、そういうことを今実施いたしておりますが、今御指摘のあった点は、さらに仕組みの中にきちっと入るようにしていきたいと思います。

○水島委員
 ありがとうございます。
ぜひお願いいたします。
 その際に、やはり若者の場合、一カ所の職業になかなか居つかないというところもありますので、一回就職したからもう後は自分でやりなさいということではなく、本当に安定して仕事ができるようになるまで、そういう子供たちが自分がかかわった学校に相談に行って温かく受け入れられるような仕組みをきちんと整備していただきたいと思いますけれども、よろしければ、その場でうなずいていただくだけでも結構でございますが。
――今、大臣のうなずきが見えましたので、ちょっと時間が限られておりましたので、約束をしていただけたということで、先に行かせていただきたいと思います。

 そして、本当にこの問題は、実はニートの問題のかなり根幹の部分にもなりまして、学校を卒業もしくは中退した直後から就職も勉強もせずに何もしていなかったというような割合は、失業者では七%にすぎませんけれども、ニートでは、学校をやめた直後から既にニートになっていたという人が四一%もいるということでございます。
また、自分の就労経験や学習経験のなさが劣等感につながっているというのは、ニートの七割に達しているということでございます。
 やはりそうやって経験することで自信がついていくということもございますから、ぜひこの点の対応はよろしくお願いしたいと思います。

 また、先ほど、学校の中での職場体験、これは大変実際に意義があることだというふうに現場からも聞いておりますし、実際にそれを利用した子供たちからもよい評判があるようでございますのでぜひ拡充していただきたいと思っておりますが、義務教育の段階で、先ほどから大臣は、働くことの意義ということを教えるということは答弁してくださっているんですけれども、働くことの意義と同時に、やはり労働者の権利というものももっときちんとした形で教えていくべきだと思っております。
 例えば、労働基準法という法律があって、労働時間は週四十時間と決められていて、年次有給休暇も半年したら二十日間あるとか、理由なく解雇させられることがあったら労働基準監督署に相談すると監督官が相談に乗ってくれるとか、雇用機会均等法があって、男性と労働条件で差別してはいけないことになっているとか、セクハラが禁じられているとか、差別されたりセクハラを受けたら雇用均等室に相談すればよいとか、そのような情報を義務教育の段階できちんと持たせていただきたいと思っております。
 私は学校ではこういうことは一切習いませんでしたけれども、とにかく、これをこういう義務教育の段階で学んでいくことによって、自分がその後いろいろなトラブルに遭遇したときにまた対応していくこともできますので、こういう現実的な知識が身につくように指導していただけますでしょうか。
これも約束をしていただきたいところです。

○河村国務大臣
 これは、うなずくだけじゃなくて、はっきり明言をさせていただかなきゃならぬと思います。
 義務教育段階は、年代に応じた教え方があると思います。
そういうことの大事さというのは学習指導要領の中にも、小学校段階、中学校段階、指摘してございますけれども、きちっと対応したいと思います。

○水島委員
 ぜひその点もよろしくお願いいたします。
 さて、次に、坂口大臣への質問に今度また戻らせていただきますけれども、先ほど大臣は、ニートについての質問をさせていただきましたときに、忙しいお父さんがいるということをなぜ感じないのかということが問題だと。
これは坂口大臣と私との年齢差もあるのではないか。
また、物事に感動することがなくなってきているとか、いかに意欲を持たせるかとか、そういうことをおっしゃっているわけですけれども、やはりこの年齢差というのは重要なことでございまして、年齢差が重要だというのは、感性の違いということで重要なのではなくて、社会環境がかなり違ってきているということで重要だと思います。
 昔は、やはり地域に自分の身近な大人がたくさんいましたので、親が多少忙しくて、なかなか家では親とかかわる時間がなくても、地域のほかの大人たち、近所の人であったり駄菓子屋のおばさんであったり、だれでもいいんですけれども、親がかかわれない部分を地域の大人がかかわってくれていた。
だから、トータルとしては、子供はかなりバランスのとれた自尊心というものを育てていくことができたのではないかと思っております。

 つまり、家では余り親とコミュニケーションできなくても、地域のどこかに、自分を褒めてくれるにしろ、しかってくれるにしろ、何かしら自分を見詰めてくれている人がいるということは子供にとってかなり大きな体験になりますので、そのような地域の状況、転勤族もふえてきまして、身近な親戚すら身近なところにいないという子供も多くなっておりますし、そのような中で、また、少子化で子供の親世代も兄弟が少ないということですから、そもそも親戚の大人の数も少なくなっていたりと、いろいろなことがありまして、恐らく、坂口大臣が幼少期を過ごされたころと今の子供たち、今の子供たちの方がそういった意味では危機的な状況で育っているのではないかと思っております。
 ですから、お父さんが忙しいということは、昔はほかの大人がそれを干渉してくれたかもしれないけれども、今は本当に大人と会う機会がないということになってくる、大人とコミュニケーションできる機会がないということにそのままつながってくるということですし、そうやって自尊心をきちんと育ててもらえないと、感動しようにも意欲を持とうにも、そういうことができない。
 これは坂口大臣も、虐待問題の所管の大臣として、虐待をされて自尊心が傷ついた子供たちがどうなっていくかというようなところから、十分御存じのことだと思っております。
 ですから、今は、このような中でまた地域をきちんと今の時代に合った形につくり直していくということはもちろん重要なことでございますし、そのためにも、私はここで、やはりワーク・ライフ・バランスというものを特に取り上げさせていただきたいと思います。
 これは直訳すると仕事と私生活の両立ということになると思いますけれども、実は、このワーク・ライフ・バランスと言われるものは、私は、社会のほとんどあらゆる問題とかかわっているのではないかと思っております。
これは、働く個人の心身の健康というのはもちろんでございますけれども、家庭や地域でのさまざまな問題とつながっていると思います。
 これは家庭においてということでしたらわかりやすいですけれども、今地域をつくり直していくというようなことを申し上げましたときには、自分の子供だけではなく、よその子供にもある程度余裕を持って目を向けていけるような、そんな気持ちを持っていかなければいけないわけですから、仕事と私生活のバランスというものがうまくとれていないと、今のようにもう本当に仕事だけになってしまって、地域にだれが住んでいるかわからない、家では疲れ果てて寝ている、そんな状態では、とてもよそ様のお子さんまで面倒を見ていられないという方が多いのではないかと思っております。
 このワーク・ライフ・バランスというのは、働く女性の待遇を改善するだけでは決して解決しない問題です。
女性についても男性についても、全従業員のワーク・ライフ・バランスを考えていくということは重要でございまして、先進的な取り組みをしているアメリカでは、この考え方を取り入れ、真剣に取り組んだ企業はむしろ業績が上がっているという統計も出ているそうです。
つまり、私生活が充実している人は仕事の効率もよいということなのだと思います。

 日本においても仕事と家庭の両立のための施策はございますけれども、これは今ほとんど育児休業、介護休業といった、子育て支援、介護支援といった領域に限局されております。
 子供が小さなころの育児においてですとか、また介護中のワーク・ライフ・バランスの重要性というのはもちろん政府もわかっているんだと思いますけれども、私がここで申し上げたいのは、ワーク・ライフ・バランスが必要なのは何も小さな子供の育児中や介護中の人だけではなく、もっと全体的に必要なことなのではないか。
特にこのような今の地域の状況などを考えますとそのように思いますけれども、坂口大臣はどのようにお考えになりますでしょうか。

○坂口国務大臣
 ワーク・ライフ・バランスというのもなかなか難しい言葉だというふうに思いますし、私の頭の中でも概念ができ上がっているわけではございません。
 しかし、現在行われておりますのは、御指摘のとおり、一家庭を単位として、その中で労働というものと子育てというものとをどういうふうにしていくかといったことを中心にしてやられている非常に限られた範囲の話でございまして、いわゆる地域でありますとか社会全体をにらんで、お互いがどう生きていくかという全体のバランスを考えているわけではないというふうに思っております。
今まではそれが自然の中で発生してきておりましたから、それにゆだねてきたということだろうというふうに思いますけれども、最近は、いわゆる隣は何をする人ぞということになってしまって、全体としてのバランスが欠けてきている。
 そうした中で、最近のNHKのテレビ等を拝見いたしましてもいろいろの、公害の問題でございますとか、あるいはまたさまざまな取り組みをしておみえになる姿がございまして、ごみの処理の問題でございますとか、あるいはまた自衛の問題、自衛といいますのは、その地域の安全をどう守るかといったような問題をお互いにおやりになっているといったような姿が出てきておりますから、新しい動きではないかというふうに思っております。

 さて、それは国としてどこまで手を差し伸べるべき問題なのか、みずからがそれはおやりをいただかなければならない問題なのか。
そこは、国だとか県だとかというのが余り手を差し伸べ過ぎて、そしてその人たちの自主的な動きというものを拘束するようなことになってしまってもいけない。
みずからがおやりをいただくことに対して、どうそれをバックアップしていくかということを考えていかなきゃいけないのではないかというふうに思います。

○水島委員
 ちょっと答弁がずれたような感じもいたしますけれども。
 そもそも、地域において何をやっていくかというようなことを考える以前の問題として、やはり働き方、その中で、働くという時間を自分の生活の中でどのような形で位置づけていくかというような、これは時間的な位置づけでもあり、質的な位置づけでもあると思います。
 そこで、これは私はかなり大きく労働政策ではないかと思っているわけですので、これはまたぜひ今後、厚生労働委員会の中などでも坂口大臣にさらに御研究をいただきたいと思っているところですけれども、このワーク・ライフ・バランスというものを中心に施策を早急に組み立てていかないと日本はつぶれるのではないかというくらいに私は実は深刻にとらえております。
 地域の問題、子育ての問題、そういったことを考えましても、一人一人のワーク・ライフ・バランスをとっていかなければ、ほかの人に対してもっと高いモラルを持っていくということもできないと思います。
精神論を振りかざす方は多いですけれども、これはやはり、基本的にどういう生活をしているかというところから精神性というのは出てくるものがございますので、ぜひ御検討をいただきたいと思っております。
 このワーク・ライフ・バランスを考えていく上でもやはり重要なのは、一つはワークシェアリングということだと思います。

 近年、日本の雇用の流動化は激しいものがございまして、今のところ、企業は、主に人件費抑制のために、パートや派遣、請負など非正規雇用と言われる方たちを採用しているわけです。
多様な働き方があることそのものは否定しませんし、それが個々人のワーク・ライフ・バランスにつながっていくのであれば大変結構なことだと思いますけれども、現時点での日本の雇用の流動化には、大きく二つの問題があると思っております。

 一つは、労働力の質的向上という問題です。
 正社員が中心だったかつての労働者は、その教育訓練を主に企業が担っていたわけですけれども、雇用が流動化してくる中では、労働者の教育訓練の主体は一企業から社会に移ってくるべきでございます。
そういう政策の柱を立てないと、人件費の抑制ばかりに目が行ってしまって、日本の労働力を育てていくということにはならないわけです。
デンマークでは、国民の四割が常時何らかの教育訓練を受けているということでございますけれども、日本も労働者を育てていくという視点をしっかりと持っていかなければ、当然国際競争にも勝てないのではないか、そのような考えを持っております。
 この雇用の流動化を受けて、今まで一企業任せにしていたこのような教育訓練、これを政策として重要な領域として位置づけていくということを大臣はお考えになっておられますでしょうか。

○坂口国務大臣
 そこは御指摘のとおりと私も実は思っております。
今までは企業の中で全部おやりをいただいていたわけですけれども、今はそれができなくなってきた。
そのできなくなってまいりました部分は、国全体と申しますか、公的な機関でそこはバックアップをしていかなければならないというふうに思います。
 そのバックアップをしていきますときに、どういうところでそれをバックアップするか。
もちろん、公的な機関もございますから、公的な機関の中でバックアップをしていくということもございますし、それだけでは恐らく足らないんでしょう。
したがいまして、民間のさまざまな企業がございますから、そこを利用していただいて、それに対してどう支援をしていくかという二つの側面があるというふうに思いますが、国の方がそこはしっかり、今まで以上にやはりやらなきゃならない問題であるという意識は十分に持っておりますし、これからも進めていきたいと思っております。

○水島委員
 それはぜひお願いしたいと思いますし、また追って、どんな状況か、お聞かせいただきたいと思っております。
 また、もう一つの問題は、やはり均等待遇の実現ということでございます。
 雇用の流動化が多様な働き方として評価されるようになるためには、均等待遇の実現がかぎとなると思います。
私たち民主党では、パート労働者の均等待遇を確保するための法案を今国会に提出するつもりでございますけれども、均等待遇が実現すると、本質的なワークシェアリングも進み、結果としてそれぞれのワーク・ライフ・バランスも改善していくということ、これは大臣も御理解いただけると思います。
 政府の方では、まだまだ法案化には追いついていないという現状であるようですけれども、今後、雇用労働政策を均等待遇を基盤とした多様なあり方に抜本的に転換していくというような覚悟を大臣はお持ちなのかどうかということをお伺いしたいと思います。

○坂口国務大臣
 国の方も、パート労働法の指針を見直しまして、そして、できる限り今御指摘のような状況に近づけるように努力をしているところでございます。
これは、やはり労使の皆さん方に御理解をいただいて前に進まなければいけない問題でございますので、積極的にその協議も重ねているところでございます。
 そして、そうしたお話し合いを進めていきます中で、例えばパート労働の皆さんの中にも、いわゆる本当に、本当にパートと言うと言葉は悪いですけれども、働く場所は私はここでしかだめです、私は何時から何時までです、主として私はみんなのまとめだとかそういう役職にはつきませんというような方と、皆のまとめもやります、あるいは近所だったら違うところへも行きますというような方とは、若干そこは振り分けをしてやっているということでございます。

○水島委員
 もちろん、そんなことを均等待遇と呼んでいるわけではございませんので、大臣も百も御承知だと思います。
私たち、今国会に法案提出予定でございますので、ぜひ、そのときには与党の皆様にも積極的に御賛成をいただいて、真摯な御議論をいただけますように、あらかじめお願いを申し上げておきます。

 最後に、残された時間は少々なんですけれども、今国会でもかなり大きな争点となってまいります虐待について、ちょっと一言質問させていただきたいと思います。
 もっと細かい質問につきましては、今後、法案審議のときなどにまた委員会で質問させていただきたいと思っておりますが、きょう、一点だけお伺いしたいのは、今、日本には虐待についてのセンターがないということを指摘させていただきたいと思います。
 虐待をした親へどのような指導をしていくか、サポートをしていくかというようなことは、例えば全国の児童相談所の所長会議などでマニュアルをつくるというような話を、先日厚生労働省の方から聞いたわけでございますけれども、例えば家族再統合と一口に言っても簡単なものではございませんし、私もその領域を研究していた研究者として、そんな簡単なものではないとはっきり申し上げたいと思います。
児童相談所というのは実務の場であって、それも人手が足りなくて実務に追われているわけでございますし、そもそも研究機関ではないわけです。
 こういう虐待についての研究ですとか専門家を養成したりするためのセンターが日本にないというのは非常に疑問なんですけれども、こういったセンターをつくれないでしょうか。
これは、坂口大臣、そして大学につくるという可能性もございますので河村大臣にも、ぜひそれぞれ前向きな御答弁をいただきたいと思います。

○坂口国務大臣
 専門家の皆さん方にお集まりをいただいて、そこでいろいろ御議論をいただきながら、マンパワーもそこでどういうふうに養成をしていくかというようなことはやっておりますけれども、これは緒についたところでございますので、これからそうした検討、そしてまた、そこで人をどう育てていくかというようなこともやっていきたいというふうに思っております。

○河村国務大臣
 確かに、虐待のための何かセンター的なものは今ありませんが、現実に調査研究をしなきゃいかぬということで、科研費を使いまして、今専門家の皆さんにお集まりをいただきまして、十四年、十五年、二年間で、学校はどういう支援策をとればいいのかとか、あるいは虐待されている人たちをどう指導したらいいのかとか、家族はどうあったらいいかとか、今研究していただいています。
それも受けながら、学校においては、スクールカウンセラーの配置等々をしながら、要するに虐待を未然に防ぐものをどういうふうにしたらいいかとか、特に親の教育といいますか、そういうことを、子育てサポーターを入れるとかいうことで今進めております。
 今後、この研究も踏まえながら、どうあるべきかということを厚生労働省とも御相談しながら考えていきたいと思います。

○水島委員
 本当に、虐待はもう社会の根幹を揺るがす重大な問題でございますので、虐待された子供たちの命が失われているということもそうですし、その子たちがこれからずっと生きていかなければいけないということを考えますと、しっかりとした力を注ぎ込んでいかなければいけない領域だと思いますので、これはぜひ早急に、前向きに御検討いただきたいと思います。
 最後に一言だけ河村大臣にお伺いして終わりにしたいと思いますが、今、子供たちが置かれている閉鎖的な状況を考えますと、子供自身がいつでも気軽に相談できる場が必要とされております。
最も手軽な相談方法は、やはり電話ということになると思います。
 今、チャイルドラインが全国に広がっておりまして、役割が大きくなってきております。
先日の岸和田の虐待事件でも、チャイルドラインの存在を被害者の子供が知っていればもう少し違ったのではないかというふうにも考えているわけでございますけれども、河村大臣はチャイルドラインの設立当時からかかわっておられると聞いておりますが、このようなNPOを今後どのように支援していくおつもりか、最後に御答弁をいただきたいと思います。

○河村国務大臣
 今、水島議員御指摘の岸和田の事件も本当に、あの子がチャイルドラインの存在を知っていて、あれは家庭でほっておかれたわけですから、その間に電話でもしてくれたらという思い、チャイルドラインを実際に動かしてみて、そういう思いがいたしております。
 世田谷で平成十年にスタートしたものでありますが、これが今全国に広がりつつございます。
これはNPOでございますけれども、これをどういうふうに支援するか。
イギリスのチャイルドラインが一番先駆的な役割を果たしておりますが、そこでは、ブリティッシュ・テレコムあたりは全部フリーダイヤルにしてやってくれておる、国を挙げてそういう体制ができつつあるということであります。
 私の方は、今、子供をどういうふうにそういう体験をさせたり、非行から守ってやるかというので、子供の居場所づくりということで予算もつけておるわけでありますが、これは、体の居場所だけじゃなくて心の居場所ということも考える必要があるんじゃないか。
こういう方面からチャイルドライン流に支援をできないか、今、事務当局にも検討させている段階でございますが、大いにチャイルドラインを全国的に広めていく必要を私も感じておりますので、支援を考えていきたいと思います。

○水島委員
 よろしくお願いいたします。
どうもありがとうございました。






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