予算委員会第三分科会
(2001年3月2日)


質問バックナンバー|HOME

「最悪の形態の児童労働の禁止条約」を即時に批准せよ。無国籍児、非嫡出子の差別撤廃について



1.最悪の形態の児童労働禁止条約を一日も早く批准せよ

■宮本主査 
 次に、水島広子君。

■水島分科員 
 民主党の水島広子でございます。
 日本が子どもの権利条約を批准してもうじき七年がたちます。秋の臨時国会でも少年法がテーマになりましたが、今、日本社会では、子供たちの問題が大きな不安を持って受けとめられています。子供たちが健康に育たない国に未来はありません。日本が子供たちを育てていく責任をきちんと果たせているのか、子供たちが健康に育つ環境を提供できているのか、政治の責任が大きく問われる領域だと思います。
 本日は、日本が子供の権利を守れているかという観点から、幾つかの質問をさせていただきたいと思います。
 冒頭に、外務副大臣にお伺いします。
 本日は法務大臣への質問ですが、わざわざ外務副大臣にいらしていただいたのは、子供の権利に関して緊急にお伺いしたいことがあるからです。
 御承知のように、ILOは一九九九年六月の総会で、最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約、百八十二号条約を採択しました。この条約は、児童労働の包括的な廃絶を目指した百三十八号条約を補完し、その取り組みの最優先課題として、児童労働の中でも最悪の形態のものを一刻も早く撲滅することを目指したものです。言いかえれば、生命の危機、成長の危機に瀕している子供たちを救うことが本条約の使命であろうと思います。だからこそ、アメリカのクリントン前大統領がいち早くジュネーブに駆けつけて、本条約への支持を表明したのです。日本としても、この条約を批准することが急務であると言えます。
 百八十二号条約の批准に向けての日本政府の取り組みの現状はどうなっているのでしょうか、お伺いします。

■衛藤副大臣 
 水島広子委員にお答えを申し上げます。
 御指摘のILO第百八十二号条約、最悪の形態の児童労働禁止及び撤廃することを確保する条約でありますが、本件につきましては、この条約を締結する意義を政府として十分認識しておりまして、この締結について承認を得るために、今国会に提出すべく、鋭意検討を進めている状況にあります。

■水島分科員 
 日本が子供たちの人権に敏感な国であるということを国際社会に示すためにも、ぜひ六月にジュネーブで開かれますILO総会に間に合うように批准すべきだと思うのですが、重ねてお伺いいたします。

■衛藤副大臣 
 このILO第百八十二号条約は、政府として今検討中でありますが、まだ国会の方にこの法律案を提案しておりません。御案内のとおり、提案した後、国会の審議を待つ、こういうことでございますので、御理解をいただきたいと思います。

■水島分科員 
 この条約は、批准を待たなければならないものだとか、日本の中に乗り越えるべき障害がたくさんあるとか、そのような性質のものではないと理解しておりますので、本当に早期に国会に御提出をいただきまして、そしてILO総会に間に合わせていただけますように重ねて要請をさせていただきます。ぜひよろしくお願いいたします。

2.無国籍児の人権に関して

 さて、次に、無国籍児について法務大臣に質問をさせていただきます。
 子どもの権利条約の第七条では、児童は、出生のときから氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するものとすると規定しておりまして、国籍を有する権利は広く基本的人権として認められております。
 法務省の在留外国人統計によりますと、一九九九年に無国籍外国人として登録されている人は二千百三名です。このうち五歳未満が八百三十七名で、九〇年の十一倍以上に達しております。外国人登録証に国籍が記入されていても本国から認知されていなかったり、また不法滞在の未登録者の子供を入れますと、無国籍あるいは結果的に現在無国籍状態になっている子供は、日本に相当数存在しております。
 まず、この事実を認識されているかどうかを法務大臣にお尋ねしたいと思います。

■高村国務大臣 
 我が国で出生した子が無国籍児となるのは、生地主義を採用している国の国籍を有する者の子の場合などが考えられるわけであります。
 無国籍児は増加しているという御指摘でありまして、今まさに御指摘があったとおりでありますけれども、法務省としては、どのような事情で増加しておるかについては必ずしもはっきり把握していないわけであります。

■水島分科員 
 では、事実としては認識されているという御答弁と理解いたしまして話を続けさせていただきたいと思います。
 まず、なぜ無国籍児が発生してしまうのかということを考えてみたいと思いますが、日本の国籍法では、第二条で、子供が日本国籍を取得できる条件としまして、父母のどちらかが日本国民であるとき、出生前に死亡した父が日本国民であったとき、あるいは、日本で生まれた場合において、父母がともに知れないときまたは国籍を有しないときと規定されております。
 ところが、現実には、第三号の父母がともに知れないときまたは国籍を有しないときの条件が不明確で、法務局の裁量に任されていることに批判の声もございます。
 さきの最高裁で争われたアンドレちゃんの場合も、仮に父母が全くわからない捨て子の場合には国籍法により日本国籍を取得することができたわけです。でも、母親がフィリピン人らしいということになると、日本側は子供をフィリピン国籍と判断して日本国籍は取得できない、でも、フィリピン側では、母親が本当にフィリピン人であることが証明できないと国籍を与えられないということで、子供は無国籍になってしまいました。
 この事件は、一九九五年に最高裁で逆転勝訴しましたが、結局、この子供が国籍を取得するまでに四年もかかりました。また、最高裁判決の後も、子供が母子手帳を持っていたなどという理由で日本国籍が与えられず、無国籍になってしまった子供の例などが報告されております。
 最高裁の判決は、父母がともに知れないことを立証する義務が国にあるということを明らかにしたという点で画期的なものですが、日本政府として、この最高裁判決に基づいて何らかの指導的な文書や通達などを出されたのか、また、現在、父母がともに知れないときの基準については具体的にどのような判断を行っているのか、まずその点をお伺いしたいと思います。

■山崎政府参考人
 ただいま御指摘の最高裁判決、我々としても十分承知をしております。これに基づきまして、最高裁で御判断をいただきましたので、それに伴います実務を全国に指導しております。もちろん、この判決の周知のために、判決内容を送付したり、会議等でいろいろ取り上げて議論をして周知をしているということでございまして、今後もこの判例に沿った実務の取り扱いをしていくという予定でございます。

■水島分科員 
 今の二点目の、父母がともに知れないときの基準について具体的にどのような判断を行っているのかについてもお答えいただきたいのですが。

■山崎政府参考人
 その点につきましても、最高裁の判決で、最終的に特定できない、わからない場合には日本国民ということで言われておりますので、そのように扱うということでございます。

■水島分科員 
 最終的に特定できないという、また不明瞭な御答弁であったと思いますけれども、私は、子どもの権利条約の批准国としまして、日本に生まれた子供がどこかの国籍を取得できるように働きかける義務、そしてどこの国籍も取得できない場合に日本国籍を与える義務が国にはあると思いますが、法務大臣のお考えはいかがでしょうか。

■高村国務大臣 
 直ちにそう言えるかどうかはちょっと私わかりませんけれども、無国籍児ができるだけ少なくなるような配慮というか運用は必要だ、こういうふうに思っております。

■水島分科員 
 つまり、何を申し上げているかといいますと、例えば、この最高裁判決のときの訴訟というのは、日本に住む米国人の夫妻が同じような境遇の子供たちのためにと起こした訴訟です。こうやって心ある人が訴訟を起こしてくれない限り子供たちは日本国籍を取得できないのだとしたら、やはり国籍法の改正も含めて検討する必要があるのではないかということなんですけれども、もう一度お伺いいたします。

■高村国務大臣 
 先ほど申し上げたように、また委員もおっしゃっておられるように、子供にとって無国籍ということは大変でありますから、そういうことができるだけなくなるような運用、解釈をしていく必要はあるんだろう、最高裁の判決を受けてそういうふうに思っておりますが、直ちに国籍法の改正が必要かどうかということについては、私が今ここで必要であるというふうに断言するのはちょっとちゅうちょを覚えるわけでございます。

■水島分科員 
 確かに、日本の国籍法におきましてもその例外措置としての生地主義をとっているという点では、無国籍児をなくさなければというその配慮はもちろんうかがい知ることができるわけです。
 ただ、現実には、例えば、先ほど申しましたように、全くの捨て子であればすぐに日本国籍が取れるけれども、ただ、何か親の形見を少しでも持っていると、そこから親の国籍が推測されるというような理由によって国籍が取れなくなってしまっているというのが現場で起こっていることでございます。そうやって子供に何も親の形見を持っていてはいけないと言えるのか。
 そしてまた、日本側がその国の人であると勝手に判断をしても、結局本国側がそれを認めない限り子供は無国籍になるというこの現状を本当に一刻も早く改善するために、やはりこの最高裁の判決に従いまして国籍法を改正する必要があるかどうか。
 また、改正しないのであれば、現状の父母がともに知れないときということの運用基準を、本当に、日本のどこでそのような子供が発生してもきちんと均一の基準で運用されるように、そして結果として無国籍児が一人もいなくなるように、そのような検討も早急にしていただきたいと思っております。
 これは、私は本当に日本の中での大きな問題であると思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

3.無国籍状態の児童について

 そして、今のは無国籍児のケースですけれども、もう一つ深刻な問題といたしまして無国籍状態児という存在がおります。親が不法滞在をしている場合に、そのことが露見するのを恐れて子供の出生を届けず、また外国人登録もしないというケースは実際には多くございまして、結果として多くの子供が無国籍状態になっております。
 無国籍児は国民健康保険への加入が認められておらず、医療費が高額で病院に行けません。心臓手術が必要なのに受けられずに死を待つのみという子供も存在しております。未熟児で生まれた場合、保育器の使用が十分に行われないということもあります。予防接種、特にポリオについては、集団接種の対象から外される自治体もあります。また、公立保育園への入所ができません。小学校への就学を認めない自治体もあると聞いております。小中高を通して私立への就学はほとんどできません。
 いずれにしても、無国籍児であれ無国籍状態児であれ、日本国内に居住していながら日本の法の保護下にはなく、子どもの権利条約には反した状態となっているのが現実でございます。子供の中には、学校にも通わされず、狭いアパートの一室で終日テレビを見て過ごしているというようなケースもあるわけです。
 親の不法行為と子供の人権とは全く別次元の問題です。こうした子供たちへの人権侵害を解決するために、日本政府として現実的で温かみがある取り組みが必要だと考えますが、法務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

■高村国務大臣 
 今委員がおっしゃることはよくわかるんですが、これは法務省が管轄する国籍の問題として処理すべき話なのかどうかということが一つあるのと、それから、届け出ないからそうなっているというのをどうするかというのを、私がどうやったらいいか、今直ちにお答えできないわけですが、ちょっと考えてみたいと思います。

■水島分科員 
 この問題を親子をセットで考えている限り、恐らく子供の人権というものはずっと報われないのではないかと私は思っております。例えば、子供のことを届け出るとそれがそのまま親につながってしまうので届け出られない、結果として、親は望む望まないにかかわらず子供をそういう不健康な状態に置かざるを得ないということが日本の中で現実に起こっているわけでございまして、本当にそういったときの子供の人権をいかにして救済していくかということを、今法務大臣からも前向きの御答弁をいただきましたけれども、ぜひ法務大臣の見識で、この問題、本当に子供たちの人権をしっかりと救済できるような取り組みを考えていただきたいと思っております。
 これは私自身の考えでございますけれども、例えば、児童虐待に対する処置のように対処することはできないんでしょうか。親権などの問題がありますから強制することが目的ではありませんけれども、先ほど申し上げたように、福祉や医療の枠外に置かれていることを是正するための緊急避難的な措置として、一時的には親と別に保護することがあってもよいのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

■高村国務大臣 
 要するに、子供が何らかの理由で医療等を与えるそういう保護の対象外になっているということをどう救うかという問題で、人権の観点から法務省としても考えたいと思いますけれども、直接的に地方自治体なりあるいは厚生労働省なり、いろいろ政府全体で考えなきゃいけない問題かな、こういう感じはいたします。
 ただ、不法滞在者の子供が不法滞在者が届け出ないがゆえに不利益なことになっておる、子供と親は違うんだから子供については保護が与えられるべきだというのは、それは一つの考え方だと思いますし、私もある程度賛成したい部分もあるわけでありますが、一方で、基本的な問題は、不法滞在者をなくすということをしないと、やはり法務省が一番考えなきゃいけないことは、不法滞在者をどう減らしていくかという話なのかなと。そうはいってもたくさんいるわけですから、そういう中で親の因果が子に報いみたいな話はなくしていかなきゃいけないよという話は、それはもっともな部分がかなりの部分ある、こういうふうに思っております。

■水島分科員 
 おっしゃるように、これは各省庁にまたがる問題であると思いますので、本当に政治家としての大臣に、ぜひその省庁の枠を超えて積極的な取り組みを御提案いただけますようにお願い申し上げます。
 そもそも不法滞在者がいるからこういう問題が起こるのであって、不法滞在者を減らさなければいけないということはもちろんそうなんですけれども、そういう原因をなくしていくことの結果というのはかなり先にあらわれてくるものであって、今現在人権侵害に苦しんでいる子供たちがたくさんいるというこの現実がございますので、その原因をなくしていくための措置とともに、今現在のこの人権問題をどうやって解決していくかという現実政策の両方をぜひしっかりとお取り組みをいただきたいと思っております。
 今法務大臣は、かなりの部分というふうに、全体的に御賛成はくださらない、極めて慎重な物言いをされておりましたけれども、私は、やはり親の因果が子に報いという考え方をなくしていかない限り、本当の意味で我々が人権を尊重できる社会というものは手にすることができないと思っております。
 ですから、かなりの部分とおっしゃらずに、これはもう親の問題と子供の人権というのは本当に全く別のものなんだ、親が幾ら不法行為をしているからといって、だからといって子供が法の保護下に置かれるべきではないなどということは、本当にくれぐれも日本に暮らすあらゆる大人に言っていただきたくないですし、ぜひ、そういう意見をリードしていく法務大臣としましても、本当に積極的に親の問題と子供の問題は別なんだというメッセージを日本国じゅうに発していただきますように、心よりお願いをいたします。

4.非嫡出子の差別撤廃について

 さて、同様の問題が実はほかにもございます。自分には何の責任もないことで子供の人権が侵害されているあしき例が、日本の非嫡出子の問題であると私は思います。
 国連の児童の権利に関する委員会では、一九九八年の六月に、日本の第一回報告に対して、主な懸念事項といたしまして、「法律が、条約により規定された全ての理由に基づく差別、特に出生、言語及び障害に関する差別から児童を保護していないことを懸念する。」「嫡出でない子の相続権が嫡出子の相続権の半分となることを規定している民法第九百条第四項のように、差別を明示的に許容している法律条項、及び、公的文書における嫡出でない出生の記載について特に懸念する。」と記し、勧告として、「特に、嫡出でない子に対して存在する差別を是正するために立法措置が導入されるべきである。」としております。
 まず、この勧告に対しての日本政府としての姿勢を教えていただけますようにお願いいたします。

■高村国務大臣 
 御指摘の人権委員会や児童の権利に関する委員会の各最終見解につきましては、法的拘束力を有するものではないものの、その内容等を十分に検討の上、政府としてこれに適切に対処していく必要があると考えております。
 もう少し申し上げますと、民法第九百条第四号ただし書きの規定は、法律婚の尊重と嫡出でない子の保護との調整を図ったものでありまして、嫡出でない子を合理的理由もないのに差別するものとは言えない。市民的及び政治的権利に関する国際規約第二十六条や児童の権利に関する条約第二条が禁ずる差別には当たらないと考えております。
 なお、最高裁は、民法第九百条第四号ただし書きについて、憲法第十四条第一項に反しないと判断しているものと承知をしております。
 また、平成八年二月に、法務大臣の諮問機関である法制審議会から、嫡出である子と嫡出でない子の相続分の同等化を図る旨の答申が出されておりますが、この問題につきましては、家族制度のあり方や国民生活にかかわる重要な問題として国民の意見が大きく分かれていることから、今後の議論の動向を見守りながら適切に対処していく必要があると考えております。
 それなりに合理的な理由がある区別であるのかな、こう思っておりますが、これは、世論調査なんかしますと、直すことについて反対の方が多いんですね。特に女性の方に多いという結果が出ておりまして、この問題について、余り政治的主導というよりも、やはり国民の世論の動向を見つつ決めていく問題なのかな、こういう感じを持っております。

■水島分科員 
 現在の民法では、生まれた子供だけが生涯にわたって非嫡出子としての戸籍上の記載を背負いまして、また相続上の差別を受けるわけです。
 もちろん、そこに法律婚を守るという大義はあるわけで、だからこそ今おっしゃったような世論調査の結果になっているんだと思いますけれども、法律婚を守るという大義があるとしても、なぜ法律婚をないがしろにした親は何も法律上の差別を受けずに、子供のみにその影響が及ぶという構造になっているのでしょうか。なぜ当事者の大人ではなく、みずからの出生に何の責任も負わない子供が差別を受けなければならないのか。この民法の構造について御説明いただけますか。

■高村国務大臣 
 一夫一婦制といいますか、法律婚主義を守ることは大切だということは御賛同いただけたんだと思うのですが、責任のある親が何のとがも受けない、おかしいじゃないかというのは、そうかなという気もいたします。いたしますが、ではそれについてどういうふうなことをしたらいいのかな、なかなかよくわかりませんので、同じ子供でありながら、片方が一とすれば片方が半分である、そういうことの中で親も心の痛みを感じてもらうということなのかな、それで十分だとは思いませんが、何かいい案があったら教えていただきたいと思います。

■水島分科員 
 実はいい案を持っておりますが、ちょっときょうは質問事項の関係上、その案をここで御披露するわけにはいきません。ぜひ今後機会を見つけて法務大臣にその案を検討していただければと思いますので、よろしくお願いいたします。私の申し上げたことはきちんと御理解いただけたと思います。
 そして、今言ったように、なぜ当事者ではなくて、一番人権を尊重されるべきである子供にその害が及んでいるかという、こんな法律を残しているということは、私は日本社会に大きな恥であると思っております。大人の問題のツケを子供たちにとらせるという子供の人権に鈍感な国の構造が変わらない限り、子供たちが日本に生まれてよかったと思えるような国にはならないのではないでしょうか。一刻も早い民法改正が必要であると思いますが、今私が示そうとしております新たな案の検討も含めまして、民法の改正について、その必要性について、法務大臣の御見解を改めてお伺いしたいと思います。

■高村国務大臣 
 私は、委員がおっしゃっていること、反対だと言っているわけじゃありません。国民世論の動向を見て決めたい、こういうふうな感じを持っております。

■水島分科員 
 先ほど法務大臣は、これはそれなりに合理的な区別である、そのような政府としての見解を示されたわけでございますけれども、ただ、先日、あれは秋の臨時国会でしたでしょうか、森首相が私生子発言なるものをされました。私が私生子のように生まれたと言われるのは不愉快であるという、問題の非常に多い差別発言をされているわけです。
 これは森さんだけではなく、もしかしたら森さんだけが特殊な方なのかもしれませんけれども、実際のところ、日本社会では、大臣がそれなりに合理的な区別とおっしゃっているその法律上の区別によって、現場では、森さんのように、それを差別に転用している人がたくさんいるというのが日本社会の現状でございます。
 ですから、これをもしも合理的な区別とあくまでもおっしゃるのであれば、現場で起こっているさまざまな差別を是正するための新たな立法というものが私は必要になると思います。ただ、何といっても、その立法というのは、恐らくそれこそ各省庁にまたがる、多岐に及ぶものであると思いますので、そんなことであれば、やはりこの問題のもとをつくっている民法を改正することが何よりも必要なことであると思っております。
 きょう私が申し上げましたことに関しては、高村大臣からは、私はかなり御理解をいただけて、また前向きな御答弁もいただけたものと理解しております。
 この民法の問題というのは、非嫡出子の問題だけではなく、もう一つの大きな柱であります選択的夫婦別姓の導入という側面もございます。こちらに関しては世論調査でも非嫡出子の問題よりも随分と賛成する人がふえてきているということでございますので、ぜひその世論の動向を、本当に、何ら恣意的な操作なくきちんと聞き入れていただきまして、そして、結局のところは、この人権問題というのは常に少数派の、日の当たらない領域に起こってくるものでございますので、少数だから切り捨てるというような態度をくれぐれも持たれずに、本当にきちんとした人権国家を日本に築いていただけますように、そのためにも何としても今国会で民法の改正を御検討いただけますように、改めて強く要請を申し上げまして、そして大臣の高い御見識を信頼申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。

■宮本主査 
 これにて水島広子君の質疑は終了いたしました。




  質問バックナンバー|HOME