衆議院憲法調査会
(2003年6月12日)



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「人間の安全保障」について



○中山会長
 次に、委員各位からの御発言に入ります。
 御発言は、会長の指名に基づいて、所属会派と氏名を述べられてからお願いをいたします。
 それでは、ただいまから御発言をお願いいたしたいと存じます。
 御発言を希望される方は、お手元のネームプレートをお立てください。



○水島委員
 民主党の水島広子でございます。
 今国会での議論全体を振り返ってみまして感じたことをお話しさせていただきたいと思います。
 今ずっと安全保障に関するいろいろな御意見を伺っておりまして、一度も人間の安全保障という言葉が出てこなかったのはどういうことだろうと思いながら伺っていたところでございますけれども、やはり、本当に一人一人の人間の安全保障という概念に基づいて、これから日本がどう歩んでいくべきかということを議論していかなければいけないと思っております。
 もちろん、現状と憲法との乖離というような観点も立法府としては重要かもしれませんけれども、それとともに、憲法というのは国の骨格をなす枠組みでございますから、日本がこれからの社会の中、どのように国際的な社会の中で歩んでいくかということをきちんと示せるような議論を、人間の安全保障、世界に暮らすさまざまな事情を負った一人一人の人たちにとっての本当の安全というのは何なのかということを、ぜひさらに議論をしていただきたいと思います。
 また、このときには当然、いつも安全保障というと、国民の生命と財産を守るというのが定型句として使われるわけですけれども、守らなければいけないのは生命と財産だけではないというのは、もう皆様も十分御承知だと思います。
例えば、変な例えで申しわけないんですけれども、子供をひどく虐待して、ひどい育て方をしている親であっても、最低限、子供の生命と財産は守っているという人は結構たくさんいまして、そうやって考えましても、人間の幸せ、人間の健康というのは一体どういうところにあるのかというのは、いろいろと想像をめぐらせることができるのではないかと思っております。
 また、人間の安全保障ということを考えますときには、やはり、今までのいろいろな心のバリアを取り払っていかなければいけないと思っているわけですけれども、これは私の個人的な印象です、印象を言わせていただきますと、多分、これを個人的な印象じゃなくて正確なデータとしてきちんとするには、議員の皆様がアンケートに協力していただければ、私はその相関性ということでデータをお示しできるんじゃないかと思うんですけれども。
国の主権、国家の主権ということをかなり声高におっしゃる方というのは、割と、憲法上で権利の抑制をすべきだとか義務の規定をすべきだというようなことをおっしゃる相関が非常に高いなと感じておりまして、これは大きな目で見ると、ちょっと矛盾しているような気がしないでもございません。
 私はまた、憲法調査会、今全体を振り返って意見を言わせていただきたいのは、小委員会がそれぞれございますけれども、小委員会での議論というのは、そこで完結して、ああよかったというものではなくて、そこで得られたことを、それぞれの小委員会同士でその結果をきちんと交流させながら、またこの総会で議論を発展させていくべきだと思うんです。
 そういう観点から申しますと、先日、私が所属をしております基本的人権の保障に関する調査小委員会で、小林参考人からいただいたコミュニタリアニズムという考え方、実は私は、ほかの分野にも非常に含蓄に富む話だなと思って聞かせていただいたわけでございます。
 そこで、国をコミュニティーとしてとらえていくのであれば、それは押しつけられる公というものではなくて、やはり一人一人が積極的に参加をしていく、そういうコミュニティーであるべきであるわけですし、また世界というのもそういった場になるんだと思いますので、そういうときに、何らかの価値観を押しつけていくような制度をつくってしまうとかえってゆがんだ結果が出るということも、この前、小林参考人が今までのデータを挙げて説明をされていたわけですけれども、ぜひこれから、こういう国の枠組みを考えるときにはそこのコミュニティーで、一人一人の人が積極的に他人のために善意で参加していけるような、そういう枠組みをつくらなければかえっておかしな関係を生んでしまうことにもなりますので、ぜひそのコミュニティー論をほかの分野、特に安全保障の分野に関しても応用して、いろいろと議論を深めていただきたいと思います。
 また、武力について考えますと、確かに自分の、本当に最低限の身の安全も保障されないような社会がよいなどとは私は口が裂けても言うつもりはありませんし、そういう意味では、治安の維持というのは大切なことだと思っておりますけれども、それと同時に、武器が身近にあることで、暴力が身近にあることで非常に不健康な心の状態になったり、いろいろと人格が侵害されるというようなこともございます。
 また、今イラクにおいても、結局この不安定社会の原因は武器を各自が持っていることだというようなことから、武器回収が最近行われたということを、イラクからお帰りになった首藤さんから先ほど聞いたところでございますけれども、アメリカが銃社会の結果としてどういう状態になってしまっているかというようなことも頭に入れながら、武力というものに関してはまた特別な観点から考えていって、本当の意味での人間の安全保障が実現できるような世界の構築に向けてのこの憲法調査会でのさらなる議論をお願い申し上げたいと思います。
 以上でございます。







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