衆議院本会議・答弁
(2002年4月19日)


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患者の権利法



○山井和則君
 民主党の山井和則です。
 ただいま議題となりました、医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案、私どもはいわゆる患者の権利法案と呼んでいますが、これについて、提出者を代表し、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。(拍手)
 今、医療事故が国民の大きな不安となっており、年間二、三万人が医療事故や医療過誤で亡くなっているとの推計もあります。そんな中、調査でも、八七%の人がカルテ開示を求め、医療事故に関する情報公開が不十分だと感じている人が七一%にも達しています。さらに、医療についての満足度調査でも、医療情報の公開は、待ち時間の長さ、医療費の高さに次いで、三番目に高い不満の原因となっております。
 先ほど坂口大臣から、健康保険法等の改正案の趣旨説明がありましたが、国民が求めているのは、三割への自己負担アップではなく、この患者の権利法のような医療情報の開示であります。
 二十一世紀のキーワードは、情報公開と国民の主体的参加です。そして、医療は、患者を中心に、患者と医師との共同作業で行われるべきものです。患者の理解と選択に基づく医療のためには、医療内容の十分な説明、診療情報の積極的な開示が前提で、それによって、患者と医師との間に信頼関係が生まれ、良質かつ適切な医療が可能になります。そのためには、法的な整備が必要不可欠であります。
 以上が、本法律案提案の趣旨で、次に、法律案の概要を申し上げます。
 第一は、基本的理念及び責務です。医療は、患者と医療従事者との信頼関係のもとに患者の理解と選択に基づいて行われること、患者と医療従事者との間で情報が共有化されることなどを基本理念として定めております。
 第二は、医療機関に係る情報提供を定めるとともに、広告規制の緩和について、原則自由化の方向を示しております。
 第三には、医師等は診療について十分な説明を行うこと、患者は医療適正化委員会に相談できるとしております。
 そして第四に、カルテなど診療記録の開示等です。医療機関の管理者は、患者等から請求があれば、患者に悪影響を及ぼす場合などを除き、診療記録を開示しなければならないとし、医療に要した費用の支払い明細書、レセプトの交付もすることとしています。
 また、第五には、安全かつ適正な医療確保のための体制整備の規定、最後の第六に、患者等からの苦情の解決策を定めています。
 以上が、本法律案の趣旨及び概要であります。
 日本の医療費は、GNP当たり、先進国に比べて少ないにもかかわらず、国民からもっと医療にお金をかけようという声が上がりにくいのは、医療費をふやしても、むだな検査や薬に使われるのではないかという不安が強いからです。
 医療情報の開示のメリットは、患者の満足度を高め、選択肢をふやすことにとどまりません。支払い明細書、すなわちレセプトを患者がチェックすることは、不正請求、過剰請求、検査漬け、薬漬けの防止になり、医療の質向上とともにむだな医療費を削減する、一石二鳥の効果があるのです。
 小泉首相は、三割負担にしないと医療改革は進まないと言っておられます。しかし、病気で苦しむ患者という最も弱い立場の人々に痛みを押しつける前に、医療情報の開示によって、むだな医療費を削減することが先決ではないでしょうか。(拍手)
 患者の三割負担により補われると見込まれる約八千五百億円の経費は、情報開示をすれば削減できるのではありませんか。不正請求、過剰診療を減らすことは、本当に必要な医療や良心的な医療機関に十分な医療費を回すことにもつながるのです。
 医療情報の開示なくして医療改革なしです。カルテ開示は四年前に、レセプト開示は五年前に、その方向性が示されましたが、遅々として進んでいません。今こそ、法制化が必要です。
 小泉首相、国民の声を聞いてください。私の知人も、四十歳で、経営難で、二歳と六歳の子供を置いて自殺しました。今、年間三万人以上が自殺しているこの国において、最も切実な、どん底の不況の中での優先課題は、有事法制よりも、不況対策、そして、安心してかかれる医療や福祉ではないでしょうか。小泉首相、国民の痛みを感じてください。国民の声を聞いてください。
 以上で、提案理由説明とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
 
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 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び健康増進法案(内閣提出)並びに医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案(山井和則君外三名提出)の趣旨説明に対する質疑


○議長(綿貫民輔君)
 ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。

(中略)

釘宮磐君。
 
  〔釘宮磐君登壇〕

○釘宮磐君
 民主党の釘宮磐です。
 民主党・無所属クラブを代表して、健康保険法改正案など政府二法案並びに山井君外三名提出による、いわゆる患者の権利法案について質問します。(拍手)

(中略)

 さて、ここで、民主党の法案提案者に伺います。
 まず、民主党提案者は、そもそも、医療制度改革はどうあるべきと考えているのでしょうか、そして、どのような理由から今回の法案を対案として提出されたのか、その背景を詳しく御説明ください。
 私は、民主党案の提案理由説明にもあったように、二十一世紀のキーワードは情報公開と国民の主体的参加だと考えます。患者は医療サービスの消費者です。私は、民主党案で示されている、医療に関する情報公開と第三者評価を行うことによって、医療の質を向上させ、患者が選択できるようなシステムへの改革がまず必要ではないかと考えます。
 総理、民主党のこうした提案にどのような見解をお持ちでしょうか。いいものはたとえ野党の提案でもどんどん取り入れると、たびたびおっしゃってこられたあなたですから、当然、賛同いただけるものと思いますが、お考えをお聞かせください。(拍手)
 最後に、小泉総理、本法案は、国民注視の中、二十一世紀にこの国の医療制度が、国民合意のもとに制度維持ができるのか否かが問われています。
 党利党略を超えた、真に国民が納得できる結論が見出せるまで、徹底した議論を尽くすべきであります。内閣のメンツで早期成立をさせることだけが目的であるかのような拙速な国会審議は絶対に避けるべきであるとの意見を申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

 
 〔水島広子君登壇〕

○水島広子君
 釘宮議員にお答えいたします。
 まず、医療制度改革はどうあるべきかという御質問をいただきました。
 議員の御質問にもございましたが、政府・与党は、医療の抜本的な制度改革を先送りし、今回の健保法改正案のように、必要な改革を全くしないまま患者負担増だけを求めたり、良心的な医療を行おうとしている医療者を追い詰めるような、小手先の財政対策ばかりを行ってまいりました。
 このような政府の姿勢では、医療そのものの質も上がりませんので、国民の医療に対する不信、不満は解消しませんし、さらなる負担への理解を求めることもできないと考えております。
 そもそも、医療は、患者を中心にして、患者と医療者との共同作業として行われるべきものでございます。趣旨説明にもございましたが、抜本改革を行う際のキーワードは情報の公開と国民の主体的な参加だと考えております。患者を、医療の受け手としてだけではなく、消費者という観点からもとらえて、医療に関する情報の開示と第三者評価、そして、患者の理解と選択を促すことで、医療の質を向上させるような制度改革を目指すべきであると思います。
 実際には、医療情報の提供をしたくても、制度の不備のために、時間的余裕がなく、十分に対応できないという医療者も多いのです。医療制度さえきちんと整備されていれば、よい医療を追求する患者と医療者の利益は一致すると私たちは考えております。
 現在、そのような考えに基づいて、民主党の医療制度改革案をつくっております。小泉首相お得意の論理のすりかえに惑わされることなく、真に日本に必要とされている医療制度改革を実現させていきたいと思っております。(拍手)
 次に、どのような理由から今回の法案を対案として提出したのかというお尋ねがございました。
 政府の健康保険法等改正案は、抜本改革のための法改正案ではなく、法案の附則に改革項目を並べただけの、極めて粗末なものでございます。今、国民が求めているのは、医療制度の抜本改革であり、単なる政管健保の財政安定化法案ではございません。
 医療保険制度改革の議論を進めるためには、まず、医療そのものが国民に信頼され、かつ、医療を取り巻く環境の変化に十分対応し得るものとならなければなりません。民主党案が定める医療情報の提供と安全かつ適正な医療の確保は、まさにその基盤となるものであり、そのためにも、対案として提出させていただきました。
 日本の医療の質を向上させるため、本法案の成立に向けて、党派を超えて、多くの議員の皆様の御理解を賜りますようお願い申し上げまして、答弁とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)




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