衆議院本会議・答弁
(2001年6月8日)



質問バックナンバー|HOME



仕事と家庭の両立支援法案


★鎌田さゆり議員の質問について答弁★


○鎌田さゆり君
 民主党の鎌田さゆりでございます。
 私は、民主党・無所属クラブを代表して、働きながら二人の子を育てる母親として質問をいたしますが、つい先ほど、大阪府池田市の小学生が突然の狂気の事件に巻き込まれたというニュースが飛び込んできました。
大変悲しく、残念であります。
今つらい思いをしておられる方々に、心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 それでは、質問に入らせていただきます。
 ただいま議題となりました衆法の労働者の職業生活と家庭生活との両立を支援するための育児休業、介護休業等に関する法律案に対しましては民主党・無所属クラブの提出者に、政府提出の育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の一部改正案に対しましては関係大臣に質問をいたします。
(拍手)  就任以来、小泉総理は、時にメディアを通じて、男女共同参画社会という言葉を何度もお使いになり、仕事と子育てを両立させること、これが男女共同参画時代のあるべき姿だともおっしゃいました。
私も思わず拍手をしたほど、実に頼もしい限りです。
その後の組閣人事を見ても、女性が五名も入閣するなど、数の上からは大きな前進と、喜ばしく感じております。
 ただ、総理が、人にはそれぞれ個性があるとおっしゃったとおり、女性もまたそれぞれですが、育児や介護の多くの現場を担ってきた我が国の女性、少子化と高齢化を同時に迎える今を生きる男性、女性、ともに共通している思いは、産めよふやせよは時代錯誤、でも、少なくとも、子供を安心して産み育てられる環境整備、システムづくりは国の政策の中で責任を持って確立されていくことを望んでいると思います。
 そのような、時代のニーズがますます顕在化する中で提出された政府案は、その項目を見る限り、賛同したい文字が並んではいますが、中身については、小泉総理の英断はこの程度ですか、いや、そんなはずはない、私が総理になったということは政権交代に等しいと勤労者の祭典メーデーでそう言ったではないか、そういう思いを持って、まず政府にお伺いします。
 政府が描く男女共同参画社会とは、具体的にどのような社会を指すのでしょうか。
女性の社会進出が進んだとはいえ、女性に与えられた人生の選択肢は、意外と狭いことは御存じだと思います。
 まず、女子学生が正社員として就職することが、最近、特に難しくなっています。
せっかく仕事についても、結婚という節目を迎えるとき、仕事と家庭を両立しようと思えば、家事や育児の負担が重くのしかかるという現実があり、ましてや、育児などを理由に仕事をやめたら、再就職は非常に難しくなってしまいます。
これでは、結婚も出産も、いや、待てよとなるのも、うなずけます。
この実態を認知されているからこそ、社会を活性化させるために仕事と子育ての両立は不可欠の条件と、総理みずからが強調なさったのだと信じましょう。
 そこで、男女共同参画担当大臣でもある官房長官、問題は、どのような考えのもとで、どのように具体化するかです。
この点について、きちっとお答えをいただきたいと思います。
 民主党案提出者にも、同様にお聞きします。

 さて、男性も女性も仕事と家庭を両立できる環境をつくるため、現行の育児・介護休業法の充実は、働く親にとって不可欠なものであり、保育制度の充実などと並んで、大変重要な施策であると思います。
しかし、今回、政府提出改正案の中身は、実際に育児の負担がかかることの多い母親の目からすると、非常に物足りない、歯がゆい内容と言わざるを得ません。
 小泉総理は、保育所の待機児童ゼロ作戦の推進、放課後児童の受け入れ体制の整備などを打ち出されていますけれども、いずれも大原則の話で、今まで何をやってきたんでしょうねと申し上げたくなるくらいです。
 今、必要なのは、職場復帰後にうまくやっていける仕組みをいかに盛り込むか、多様で豊富なメニューをどう整えるかということにあると思います。
 そこで、政府案が働く親のニーズにどうこたえているか、具体にお伺いしてまいります。
 まず第一に、政府案では、小学校就学前の子の看護休暇制度について、導入に努めなければならないとしており、企業側の努力義務規定にとどまっています。
 しかしながら、育児休業から職場復帰した後、働く親がまず直面するのが、子供の病気やけがです。
そら、熱が出た、やれ、おなかが痛い、体調が悪い、こういったとき、保育園に病児保育があるというところはまだ少なく、多くの親、特に母親は、私もそうでした、迎えに来てくださいと保育園から呼び出され、職場に迷惑をかけるのではないかと心苦しく思いながら、保育園に駆けつけます。
 政府は、この間、家族看護休暇制度がある事業所は全国で八%という旧労働省の調査を引き合いに出され、まだ一般に普及していないから義務化は尚早だとおっしゃっていますが、ちょっと待ったと申し上げたいと思います。
 なぜなら、有給休暇があるから看護休暇制度が要らないのではなくて、看護休暇制度がないから有休をなるべく使わずに、万が一の、子供が病気のときのために大事にとっておかなければいけないのです。
両立支援の次の一手として、独立した看護休暇制度をぜひとも導入すべきと考えます。
 坂口厚生労働大臣の御出身である公明党は、最近出されたアクションプランの中で、「働く女性、働きたい女性を応援します」と、高らかにうたっていらっしゃいます。
また、かねてから、看護休暇の導入も主張されてきました。
さきに、すばらしい英断を下された坂口厚生労働大臣だからこそ、私の期待も膨らむのです。
大臣の前向きなお考えをぜひお聞かせいただきたいと思います。
(拍手)
 第二に、政府案には含まれておりませんが、民主党案の特徴ともいうべき点についてお伺いします。
それは、男性の育児休業の取得をいかに促進するかということです。
 〇・四二%という男性の育児休業取得率、わずか百九十四人という初回受給者数の実態をもっと真剣に見詰めなければならないと思います。
男は仕事、女は家庭、こういった硬直化した役割分担から、今や、男女ともに、仕事も育児も介護も、ともに助け合い、両立させながら家族のきずなを強めていく、そういうライフスタイルが求められています。
 実際に育児を担い、子供の成長と向き合うには、男性の育児休業取得を奨励するだけではなくて、この際、男性の育児休暇の義務づけが必要と思いますが、促進するための具体策とあわせ、大臣及び民主党案提出者にそれぞれお伺いします。
 第三に、育児休業、介護休業の適用対象についてお伺いします。
 最近、いわゆるパートや契約社員と呼ばれる雇用形態が急増していますが、こういった期間労働者に対する育児・介護休業の適用について、大臣、民主党案提出者からそれぞれお考えをお示しいただきたいと思います。
 第四に、不利益取り扱いの禁止についてお伺いします。
 政府案では、育児休業、介護休業の申し出や取得を理由とする、事業者による不利益な取り扱いを禁止するとなっていますが、そもそも、不利益取り扱いを禁止するのは、改めて書く必要もない当然のことだと私は思います。
問題は、不利益取り扱いとは一体何ぞやということだと思います。
 先月発表された厚生労働省の調査によれば、働く女性からの個別紛争解決援助の申し立てが、近年、確実に増加し、中でも、妊娠、出産等を理由とする退職の強要、解雇あるいは不利益な配置転換に関する事案が増加しています。
紛争解決援助の充実を支える法的根拠は、働く人々にとって、非常に重要な、いわば背骨となるものだということを御理解いただきたいと思います。
 リストラという言葉がマスコミ紙面に載らない日がないほど深刻な雇用状況の中で、安心して仕事と家庭を両立させながら働けること、子育て、介護を理由に解雇されず、不利益な取り扱いを受けないということは、将来への不安を取り除く、雇用におけるセーフティーネットの一つになり得ると思います。
今後の雇用環境において重要な役割を果たすと考えられますので、大臣、この点、特に明快な答弁を求めたいと思います。
 同様に、民主党案提出者にも、その認識を伺います。
 景気が依然として低迷する一方、経営者の方の中には、看護休暇の法制化などとんでもないと思う人がいらっしゃるかもしれません。
ですが、社員が家庭や地域に視野を広げ、生活者、消費者としての顔を持つということは、柔軟かつ多様な人材を確保することにもつながるのではないでしょうか。
 以上、仕事と家庭を男女がともに両立できる社会の必要性をるる申し上げてまいりましたが、子育ては、正直言って、大変なこともあります。
でも、朝御飯の三十分のコミュニケーションを確保するため、日々、仙台と東京を往復している私の元気の源は、二人の子供たちの笑顔です。
それは、きっと皆様も同じだと思います。
子供の成長は、親にとって、社会にとって喜びであり、希望の光です。
 二十一世紀の男女共同参画、両立支援は、ここまでやるぞという意気込みでグレードアップさせましょうということを、この場に集うすべての議員の皆様に呼びかけて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
(拍手)

中略

○水島広子君
 答弁に先立ちまして、一言申し上げます。
 本日午前中の大阪教育大附属池田小学校の事件で、四人のお子さんが亡くなられ、多くのお子さんがけがを負われたということに対しまして、犠牲となられた方たちに心から哀悼の意を表するとともに、本当に安全に、責任を持って子供たちを育てられる社会をつくることをここに改めて決意し、その思いを込めて、鎌田さゆり議員の質問にお答えいたします。
(拍手)

 まず、仕事と育児の両立について、基本的な考え方と、それをどのように具体化するかについてお尋ねがございました。
 もちろん、現に育児や介護と仕事の両立に苦しんでいる人たちの苦労を軽減するということも、重要な目的の一つです。
また、育児や介護のために働きたくても働けなくなってしまうようでは、日本の唯一の財産である労働力が活用できず、いつまでも経済が健全化しないということもあります。
 でも、私たちが仕事と家庭の両立の施策を整備することには、それ以上の意味があると思っています。
 今、子供たちの心は危機的な状況にあります。
大人たちと十分なかかわりが持てないため、健全な自尊心とコミュニケーション能力が育たず、多くの問題につながっているというのが現場の実感です。
日本ではかなり前から少子化が進んでいるため、今の子供たちにとって、親戚の大人たちの数は少なく、地域社会のつながりも薄れ、身近な大人が少ないという、致命的な問題を抱えています。
 そんな中、子供の権利を守る法律を整備し、保育や学童保育を充実させたり、地域の大人たちの意識を変えていくことによって、社会全体で子供を育てる体制を整えていくことは重要ですが、今、親一人一人が子供に及ぼす影響がかつてないほどに大きくなっているということをしっかりと踏まえた上で、親が子供に余裕を持って接することのできる環境をつくっていかなければなりません。
 そのために必要なのは、時間的な余裕と精神的な余裕です。
働きながらでも時間的な余裕を持って子供と接するためには、今回提出した民主党案のような具体的施策が必要です。
また、人間として精神的な余裕を持つためには、それぞれの多様なあり方が尊重されていることが重要です。
 人間は多様な存在です。
個々人の価値観や事情によって、生活のあり方も多様です。
子供を持ちたい人もいれば、子供を持ちたくない人もいます。
子供が欲しくても、持つことのできない人もいます。
子供を持って働き続けたい人もいれば、働かざるを得ない人もいます。
いずれも、人間としてひとしく尊重されるべき存在です。
その多様性を認めていくことが、大人たちの心に余裕をつくり、子供たちを健康に育てられる社会をつくっていくのです。
政府案よりもはるかに選択肢の幅が広い民主党案は、多様な働き方を保障する確実な第一歩となるものです。
 今回、私たちが本法案を提出するに当たって望んだことは、日本がこれから、本当に子供たちを大切に育て、人間の多様性を尊重できる社会に生まれ変わることです。
 また、仕事と子育ての両立を具体化するためには、職場環境の整備のほか、保育の整備も欠かせません。
私たち民主党は、一昨日、児童福祉法の一部改正案を衆議院に提出しております。
無認可保育所の届け出を義務づけることによって、まずは、行政が虐待問題などに積極的に取り組める体制をつくることが必要だと考えています。
そして、保育に関しても、子供たちの権利を守り、多様性を尊重するという観点から、抜本的に見直す必要があると考え、現在、さらなる施策を検討しているところでございます。
 次に、男性の育児休業取得を促進するための具体的施策についてのお尋ねがありました。
 現在、男性が育児休業をとりにくいのは、それを許さない職場風土が強く影響しています。
また、育児休業が分割してとれないという不便さも、男性の育児休業取得という新たな挑戦を妨げている側面があります。
 私たちの法案では、育児の責任が父母の双方にあるということを明確にするためにも、初めて、いわゆるパパクオータ制を採用しています。
 夫婦が共働きしている場合に、一人当たり七カ月の育児休業が保障されていますが、このうち、配偶者に譲ることができるのは六カ月までとしております。
つまり、一カ月は、その親に固有の権利であって、相手に譲り渡せないものとされています。
父親も母親も育児休業を取得すれば、最長十四カ月までとることができますが、どちらか一方しかとらないと、最長でも十三カ月となってしまいます。
 このことが即、男性の取得促進にはつながらないかもしれませんが、育児の責任はどちらか一方のみが果たせばよいのではなく、それぞれに責任があるということを法文上明記することは、大きな意味があると思います。
 また、民主党案では、配偶者が働いていない場合にも、七カ月までの育児休業をとることができ、それは労使協定によって妨げられないとしています。
 両親がそろっている場合の父親不在の育児の弊害が、随所で指摘されています。
つい最近発表された民間のデータによっても、夫のサポートを切実に必要としている母親の声が多く、孤独感を抱き、子育てに悩む姿が浮かび上がっております。
 妻が専業主婦だから夫は育児に参加しなくてもよいという考え方が、妻を孤立させ、虐待を初め、さまざまな問題につながっていきます。
私たちの法案は、その点にも配慮したものです。
 さらに、育児休業を分割取得できるようにしてあります。
まず母親が育児休業をとり、次に父親がとってみて、うまくいかなければ再び母親がとれるというように、夫婦で相談しながら、少しでも前向きに取り組んでいくことができると思います。
 法案に盛り込んだ具体策は以上ですが、もちろん、育児は女の仕事という社会全体の意識が変わらなければ、男性が育児休業をとりにくいという状況は改善されません。
 提出者の山花議員も、先日、父親となられ、八日間の産休をとりましたが、賛否両論が沸き起こって、議論を呼んでおります。
この問題が議論になること自体が、今の日本の現状を物語っていると思います。
 イギリスのブレア首相も産休をとりました。
北欧では、大臣が育児休業をとることは、もはや当たり前のこととして受け入れられています。
これらの国では、一般社会での施策も進んでおります。
 日本もそのような社会に生まれ変わる覚悟があるということを示すために、ぜひ、小泉総理が率いられる与党の皆さんにも、民主党案に賛成していただきますようお願いいたします。
(拍手)  次に、期間労働者に対する育児・介護休業の適用についてのお尋ねがありました。
 鎌田議員が指摘されたように、今の日本では、パートや契約社員という雇用形態が、特に女性の間で多くございます。
期間雇用と一口に言ってもさまざまで、本当に限定された期間だけ働く人もいますが、契約を繰り返し、実質上期間の定めなく雇用されている人も少なくありません。
そのような場合に、期間雇用者だからというだけの理由で育児・介護休業を与えられないという現実に、多くの人たちが苦しんでいます。
 民主党案では、実質上期間の定めなく雇用されている期間労働者についても、育児・介護休業が保障されるということを法文上に明記し、さらに、その要件について、厚生労働省令で定めるものとしています。
 男女雇用機会均等法が施行されても、男女差別がパート差別あるいは期間雇用者差別という形に姿を変えただけという実態も多く見受けられます。
真の男女共同参画を考えるためには、雇用形態によって差別されることなく、労働者としての均等な待遇が保障されるような法整備が今後の重要な課題だと考えております。
(拍手)






質問バックナンバー|HOME