青少年問題特別委員会
(2002年4月11日)


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 子どもへの暴力について



○青山委員長
 次に、水島広子さん。

○水島委員
 民主党の水島広子でございます。
 本日は、子供に対する暴力についてお伺いいたします。
 日本も批准している子どもの権利条約では、子供に対するさまざまな形態の暴力を禁止しております。にもかかわらず、いまだに、日本を含めて多くの国では、子供への暴力が公然と行われているのが現状です。こうした状況を前に、国連子どもの権利委員会は、子供に対する暴力についての勧告を、二〇〇〇年、二〇〇一年と二年続けて採択しました。これは、委員会が毎年一回開いている一般的討議で交わされた議論をもとにまとめられたものです。
 二〇〇〇年十月の勧告は、子供に対する国家の暴力がテーマとされ、主に児童福祉施設における暴力の問題が取り上げられました。日本では、昨年末に子どもの権利条約に関しての第二回の政府報告書が出されましたが、二〇〇〇年十月の勧告の内容が反映されておりません。なぜ反映されていないのか、まずその理由をお聞かせください。

○高橋政府参考人
 お答え申し上げます。
 今御指摘のございました、児童の権利委員会が採択いたしました児童に対する暴力に関する一般的な勧告につきましては、法的拘束力を有するものではありませんが、児童の権利の保護促進のための取り組みにおいて一つの参考になるものと考えております。
 昨年十一月に、私ども、児童の権利に関する条約の第二回政府報告書を国連に提出いたしましたけれども、児童の権利委員会の作成いたしました報告書作成ガイドラインにおきましては、同委員会の採択する一般的な報告というものについては必ずしも含めるように求められていないという事情がございましたので、二〇〇〇年のものについては含まれていない、そういうことでございます。

○水島委員
 ガイドラインの中に含まれていないから反映されなかったのか、あるいは時間が間に合わなかったから反映されなかったのか、あるいは尊重すべきものでないと考えたので反映されなかったのか、どれでしょうか。

○高橋政府参考人
 二〇〇〇年の児童に対する暴力に関する一般的な勧告ということだけの御質問でしたので先ほど申し上げましたが、二〇〇一年の児童に対する暴力に関する一般的な勧告につきましては、実は、その中で、このような児童に対する暴力に関する詳細な情報を政府報告に含めるよう求める勧告がございました。これは、二〇〇一年九月に採択されました、家庭、学校における児童に対する暴力に関する一般的な報告に関するものでございます。
 しかしながら、先ほど申し上げましたように、私どもの第二回の政府報告書は昨年の十一月に国連に提出したということでございますので、九月に採択されたものを入手した時点ではもうほとんど完成しておりましたので、そういうことで、これにつきましては、今先生御指摘のように、時間的な余裕がなくて含めることができなかったということでございます。
 いずれにいたしましても、私ども、政府報告書におきましては、先ほど申しました一般的な報告書の作成ガイドラインの次第がございますので、私どもといたしましては、逐一、すべての勧告につきまして反映するという形にはなっておりませんけれども、一般的な報告書の内容につきましては、今後ともできるだけ参考にしていきたいというふうに考えております。

○水島委員
 そうしますと、確認させていただきたいのは、その勧告の内容については尊重すべきものだと考えられているのかどうか、また、今後、各省庁とどのように連絡をとられてその内容を周知徹底されていくつもりであるか、お聞かせいただきたいと思います。

○高橋政府参考人
 外務省といたしましては、関係各省庁と協力、調整いたしながら、児童の権利条約の実施に努めております。児童の権利委員会の一般的な勧告につきましても、できる限り、関係各省に周知をさせていただいて、適切な対応がとれるように努めてまいりたいというふうに考えております。

○水島委員
 それでは、その委員会勧告の内容を踏まえながら、日本の施設の現状についてお伺いいたします。
 日本の子供の施設というと、少年院や教護院、児童養護施設が挙げられます。残念なことに、どの施設にも体罰、虐待事例は発生しております。
 まず、法務省にお伺いいたしますが、少年院の中で少年が教官から暴力的な処遇を受けた場合、どういう申し立て、救済手段があるのか、教えていただきたいと思います。

○横内副大臣
 少年院というのは少年の再教育の場でございまして、少年院の職員はいわば親がわりで子供たちの再教育に当たっているわけでございます。したがいまして、通常は、子供たちをよく行動観察をしたり、非常に親密に接触したりしまして少年の心身の状況を把握する、そういう中で少年が自由に意見表明ができるような所内の運営をしているわけでございます。
 したがいまして、万が一、その施設でそういう暴力行為等があった場合にも、その少年院の中で職員が探知するという場合がほとんどでございますし、また、その方が望ましいのじゃないかというふうに我々としては考えております。
 いずれにしましても、そういった暴行等の不適切な処遇があった場合には、上級庁に報告して、場合によっては捜査機関に通報するとか、あるいは関係職員に対する処分を行いまして、厳正な措置をとっております。
 そこで、御指摘の、少年自身がそういう不適切な措置を受けた場合に外部に申し出る方法があるかどうかということでございますけれども、いわゆる人権擁護機関や弁護士会に対する人権侵犯申告とか民事訴訟あるいは告訴、告発というような救済手段は利用することはできるわけでございます。ただ、少年でございますから、実際上は、家族との面会というのは自由でありますから、その家族との面会だとか、あるいは部外の民間の篤志家が面接を行いますので、そういった場で、少年がそういったことに遭ったということを話すという場合もあると思います。そして、その家族がそれに対して対応していくというようなことになるというふうに思います。

○水島委員
 もちろん、少年院の大多数の教官の方が本当に家族のように子供たちの矯正に一生懸命努められているということは私も十分承知しておりますけれども、すべての教官がそういう方で、また、今おっしゃったような仕組みが、内部で何とか見つけていくというようなことがうまく機能しているのであれば、時々報道されるような不幸な事件というのは起こり得ないのではないかと思っておりますので、やはり制度上の欠陥があると考えてよいのではないかと思っております。
 また、民事訴訟のこともおっしゃっていましたけれども、二十歳未満の子供であれば、御承知のとおり、親権者の同意がなければ訴訟を起こすこともできないわけでございますので、今の御答弁では不十分ではないかと私は思っております。
 いずれにいたしましても、今回の勧告の中には、これは少年院ももちろん該当するわけですけれども、設備及び記録への全面的アクセスや査察の確保ですとか、また抜き打ちの訪問、かつ子供及び職員との秘密の話し合いを持つこと、また苦情の申し立ての手段が確保されていること、そして、子供がその存在及び運用について十分に情報を提供され、かつ承知していること、このような内容が盛り込まれているわけですけれども、この勧告の内容も踏まえまして、今後の検討の必要性をどういうふうに考えていらっしゃるでしょうか。

○横内副大臣
 先ほども申し上げましたように、人権侵犯の申告とか民事訴訟あるいは告訴、告発という手段は、当然、利用することは可能でございます。少年自身が利用しなくても、家族とは頻繁に接触いたしますから、家族を通じて、あるいは民間の篤志家を通じて、そういうものを利用するということは現在でもできるわけでございます。
 ただ、繰り返しになりますが、少年院というのは子供を再教育して健全な社会人として送り出す場でございますから、子供が何でもしゃべれるような雰囲気をつくっていくというのがまず第一だと思っておりまして、そういうような事案に遭遇した子供については、他の教員にそういうことがあったのだということをフリーにしゃべれるような、そして、院の中でそういうことが発見されるような、そういう仕組みあるいは雰囲気をつくっていくということが一番大事じゃないかというふうに我々は考えておりまして、そういう努力をしていきたいと思っております。

○水島委員
 副大臣が今おっしゃったことはもちろん私も賛成でございますし、まずは、そういった本当に矯正のためによい環境がつくられるべきだと思っております。
 ただ、家族がいるというようなことを今おっしゃいましたけれども、子供に何か暴力があったときに一緒になって親身になって訴えてくれるような家族がいれば、そもそもこんな少年院に収容されるような事態に巻き込まれないというような事例が実際には多いわけですので、やはり今の答弁は不完全だと私は思っております。ぜひ、今後、この勧告の内容を踏まえまして前向きに御検討いただけますように、改めてお願い申し上げます。
 次に、児童養護施設についてお伺いいたします。
 社会福祉法の対象となっている児童福祉施設については、都道府県社会福祉協議会に運営適正化委員会が置かれるということが二〇〇〇年に制定されました。
 社会福祉法上の条文は極めて簡単なもので、例えば八十五条では、「運営適正化委員会は、福祉サービスに関する苦情について解決の申出があつたときは、その相談に応じ、申出人に必要な助言をし、当該苦情に係る事情を調査するものとする。」とされております。
 ところが、この調査に関しては、施設が拒否した場合の規定がございませんので、任意の調査しかできないという実態になっております。調査に応じることを法律上義務づける必要があるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○真野政府参考人
 苦情の対応ということになっておりますが、三段階の対応を私どもは考えておるわけでございます。まず第一義的には、社会福祉事業の事業者みずからがその解決に努める。それから、今先生からお話がございました、都道府県の社会福祉協議会に運営適正化委員会を設けまして、いわば当事者間では解決が困難な事例に対応するために、公正中立な第三者機関としての対応を行う。さらに、行政権限を持っております都道府県がそれに対応する。そういう三層構造を持っております。
 運営適正化委員会は、どちらかといいますと、そういう意味では、事業者との対応によって対応しようということでございまして、今御指摘のございますような、虐待などの不当な行為を行っているおそれがあると認められる場合で、運営適正化委員会が調査を施設側から拒否されるというような場合には、これは速やかに都道府県知事に通報していただきまして、都道府県知事は、社会福祉法及び児童福祉法、その他の個別法に基づきまして立入調査を行い、そして、必要に応じて行政処分を行うという役割分担をしているということでございます。

○水島委員
 今おっしゃった内容でございますけれども、確かに、厚生労働省の局長通知、運営適正化委員会における福祉サービスに関する苦情解決事業実施要綱によりますと、「虐待や法令違反など明らかに改善を要する内容の苦情を受けた場合には、都道府県知事に対し、速やかに通知すること。」とあります。今の内容の部分だと思います。
 ただ、ここで、「明らかに」という表現が多少気になるわけでございますので、具体的にお伺いしたいと思いますけれども、例えば、その施設の職員が子供をけったとか、ごみ箱を子供に投げつけた、このようなことの内部告発がその施設の他の職員からあったというような場合などはこれに該当するのでしょうか。

○真野政府参考人
 今申し上げましたように、虐待等の「不当な行為が行われているおそれがあると認めるときは、都道府県知事に対し、速やかに、その旨を通知しなければならない。」というふうに、社会福祉法上、八十六条でそうなっておりまして、今のは個別事案になりますので、なかなかずばりお答えは難しいかと思いますけれども、内部告発で、不当な行為が行われているおそれがあると、どういう状況かというのは個別の事案になりますけれども、十分それに該当するわけでございますので、適正化委員会としては通知をしなければならないということになろうと思います。

○水島委員
 個別の事例で、どういう状況でとおっしゃいましたけれども、子供をけるとか、ごみ箱を投げつけるというのは、どういう状況で行われたとしても、虐待に相当すると思います。その点、そうですとお答えいただけますでしょうか。

○真野政府参考人
 当然、そういうふうに該当すると思っております。

○水島委員
 そして、そのような児童養護施設での体罰や虐待の事例の場合、被害に遭った子供はもちろんのこと、証言をする子供たちから事情聴取をする必要があるわけでございます。施設内の虐待などの事例で子供から事情を聞くときには、施設側、つまりサービス提供者側が同席しない環境でその事情聴取が行われるのが制度の趣旨からいっても当然であると思いますけれども、これはそれでよろしいでしょうか。

○真野政府参考人
 当然、両当事者からお話を聞くということになりますけれども、虐待を受けた、または受けたおそれのある子供から話を聞くときに、一方の当事者を置いて両方の当事者から聞くということはないわけでございますので、当然、そういうプライバシーに配慮し、児童の保護に配慮した調査が行われるというふうに思っております。

○水島委員
 また、被害を受けた当事者でない子供から証言を得るという場合にも、当然、そこで施設側にとって不利な証言をすれば処遇に直接かかわってくる問題でありますので、証言の匿名性は確保されるべきだと思いますけれども、こちらもそれでよろしいでしょうか。

○真野政府参考人
 調査を行うのは、合議体が行うということになっておりますので、そういうことも含めまして、別々に話を聞く、そして、保護されるべき子供の保護が欠けるようなことがあっては、これはもともと調査の趣旨に反するわけですので、当然、そういうことに配慮した調査が行われるということでございます。

○水島委員
 今の事情聴取について、ちょっと教育現場のことをお伺いしたいと思うんです。
 教師による体罰が発生した場合、その事実確認がどのように行われているのか。その事実確認の方法というのはどこかで明文化されているのか。また、教育委員会が聞き取りを行うと思いますけれども、そのときに、当事者の体罰教師あるいは校長などを同席させないというようなことは確保されているのでしょうか。

○矢野政府参考人
 学校教育法におきまして、体罰は厳に禁止されているものでございます。児童生徒が体罰を受けたとされる場合には、事実関係を正確に把握すると同時に、当該児童生徒に対する教育上の十分な配慮が必要なわけでございます。
 したがいまして、体罰の事実確認手続につきまして、明文で定められた制度があるわけではございませんけれども、このような観点に立ちまして、御指摘のように、体罰を行ったとされる教員及び当該児童生徒から事情を分けて聞くことを含めまして、各教育委員会や学校において、適切な配慮、対応がなされることが大切であろうと考えるものでございます。

○水島委員
 そのときに、学校事故報告書に子供の言い分を記入することは義務づけられているのでしょうか。

○矢野政府参考人
 先ほど申し上げましたように、そういう事実確認等について、明文で制度というものがあるわけではございませんけれども、当然のことながら、そういう事実確認を行う場合には、子供の言い分をちゃんと聞くということは必要なことだと考えます。

○水島委員
 改めてお伺いします。その言い分を聞くのは重要だというところはいいんですけれども、その聞いた言い分をどこにも記入しないということになりますと、実際、機能していないというふうにも考えられるんですが、この学校事故報告書にも子供の言い分というものを記入すべきであるとお考えになりますでしょうか。

○矢野政府参考人
 学校事故報告書なるものが恐らくそれぞれ学校でさまざまだと思いますから、一概にどうだこうだということは申し上げにくいと思いますけれども、きちんとした事実確認をするという意味において、そうした聴取したことをきちんと文書として記録し報告することは大事だと思っております。

○水島委員
 今の点は現場では実はかなり問題になっている点であると思っておりますので、後でその保護者がさかのぼってそのことを問題にしようとしたときに、その事故報告書にどのように書かれているかということがやはり重要になってくると思います。そこに子供の言い分を記入することの義務についても、今後ぜひ御検討いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 さて、再び児童養護施設についてお伺いいたします。
 この委員会勧告では、あらゆる施設の設備及び記録への全面的アクセス、また抜き打ちの訪問、かつ子供及び職員と秘密の話し合いを持つ、また職員による暴力の事件に関する義務的通報など、さまざまな内容が盛り込まれております。これらは主として児童福祉施設を対象とした勧告であり、当然、厚生労働省は担当省庁として既にその内容を承知されていると思いますけれども、内容をどう受けとめ、どのように取り組んでいこうと思われているか、お聞かせください。

○狩野副大臣
 児童福祉施設に入所している子供たちに虐待を与えるということは、本当にあってはならないことだというふうに考えております。
 このためにも、児童福祉施設最低基準に懲戒権の濫用禁止を明記いたしましてその徹底を図るということと、児童福祉法等の規定に基づき都道府県において立入検査等を適切に実施する、また、社会福祉法に基づく運営適正化委員会を初めとする児童のプライバシーにも十分配慮した苦情解決システムを整備すること、そして、児童や保護者に苦情解決システムに関するパンフレットを配付して説明するなど、児童相談所や運営適正化委員会などに苦情を伝えやすい環境整備を図るように指導をしております。
 一昨年秋に児童の権利委員会から勧告された事項については、こうした取り組みによって対応しているというふうに考えておりますので、今後とも、この勧告の内容を尊重しながら、我が国の将来を担う子供たちの幸せを第一に考えて、児童福祉施設における良質かつ適正なサービスの確保に取り組んでいきたいと思っております。

○水島委員
 ぜひそのようにお願いしたいですし、またどこかの時点でお伺いしたいと思っております。
 この児童養護施設というのは、既に自分の家庭で虐待を受けた子供たちも当然入る場所でございまして、一度虐待を受けて施設に入ったのに、その施設でまた虐待を受けるということになりますと、もう本当にその子供たちにとってはそれ以上の不幸はないというようなことだと思いますので、ぜひ力を入れてしっかりと取り組んでいただきますようにお願い申し上げます。
 さて、先ほど外務省からも御報告がございましたけれども、二〇〇一年の勧告では、従来からの委員会の姿勢を反映して、家庭及び学校におけるあらゆる形態の暴力、しつけ及び規律の維持の形をとるものも含むとされておりますけれども、たとえ軽いものであっても禁じることが勧告されております。
 ところが、日本の民法では、親の懲戒権について何の制約原理もございません。このようなむき出しの懲戒権というのは、少なくとも先進国では珍しくなっていると言ってもよいと思います。そして、日本では、親の懲戒権が前提となって、教師の懲戒権、児童福祉施設長の懲戒権が法律で認められておりますので、これらが家庭内虐待、学校での教師による暴力、施設内での虐待などの正当化の根拠に使われてしまっております。もちろん法的には体罰が禁止されているわけですけれども、国民の意識としては、いまだに、子供が悪いことをしたのなら学校の先生が殴った方がよいのではないかというようなものがございます。私も、実際に、そのようなことを有権者の方から言われることもございます。
 このような状況を踏まえまして、官房長官にお伺いしたいんですけれども、まず、官房長官は子供への暴力の是非についてどうお考えになりますでしょうか。

○福田国務大臣
 子供への暴力は、これはいけませんよ。特に、先ほど来いろいろ議論されていますような、公的施設において、しつけという名目でもって暴力を振るうということは、これはあってはならぬことだと思っています。

○水島委員
 子供への暴力というのはもちろん公的施設だけで行われるわけではございませんで、今ちょっと家庭での暴力についてお伺いしたいわけですけれども、よく、暴力にはよい暴力と悪い暴力があるというようなことをおっしゃる方が政治家の中にもいらっしゃいます。最近の子供はたるんでいるからびしっと殴って育てた方がいいなどと言う方もいらっしゃいますけれども、官房長官はどういうお立場でしょうか。

○福田国務大臣
 ですから、今申し上げましたように、子供に対する暴力というものは許されないことだと。これは家庭でも公的施設でも同じことだと思います。
 ただ、公的施設というのは、子供をお預かりしている立場ですね。それだけに、注意を払わなきゃいけないということであります。家庭の場合には、我が子に対する責任を持つという意味において、多少その程度については、多少の違いがあるのかなというようには思いますけれども、いずれにしても、暴力ということであってはいけないと思います。

○水島委員
 今、家庭においてはある程度はとおっしゃった。そこの部分が非常に微妙で、重要なところなのではないかと私は思うんです。その、このくらいが、例えば虐待をする親たちは、これは必要な体罰だと大体言うわけでございます。今、官房長官は、このくらいと、議事録に載せるために、三センチぐらいとおっしゃったわけでございますけれども、それはかなり主観的に変化し得るものでございます。
 確かに、殴れば、その場では子供は大体黙ります。育児はその方が楽だと言えると思います。でも、殴らずにじっくりと子供に言い聞かせる、コミュニケーションすることが、私は、今まで子供の心の問題に取り組んできた経験からも、今の親子関係には何よりも必要とされているのではないかと思っております。
 殴って黙らされた子は、他人との意見対立を暴力で解決しようとしがちでございます。そして、子供の問題を解決していくには、やはりコミュニケーションの手段としての暴力というものは、子供に対して肯定すべきではないと思っております。
 このような状況を踏まえまして、私は、親がするものであっても、子供に対するあらゆる暴力を禁止することが必要なのではないかと思いますけれども、官房長官はいかがお考えになりますでしょうか。

○福田国務大臣
 先ほどから私が申し上げているのは、暴力はいけないと言っているんですよ。しつけを目的とする、暴力に至らない程度のもの、アメリカの子供たちは自分が何か悪いことをしたということを自覚した場合には自分からおしりを出してスパンクを受ける態勢をとる、こういうふうなこともありますけれども、その程度のものである。暴力であってはいけない。程度の問題ですね。その、程度というのは、どこで分かれるかというのはわからないでしょう。いずれにしても、傷がつくようなことはいかぬですね。

○水島委員
 私の娘は、四歳でございますが、悪いことをしたと思ったときには、おしりを出さないで、ごめんなさいと謝ります。それが正しい姿だと思います。
 例えばドイツのような国では、一九七九年の民法改正によって、従来の親権概念を廃止して、監護という概念を採用して、そこに始まりまして、一九九七年九月、二〇〇〇年七月の改正を経て、現在は、身上監護は、子を世話し、教育し、かつ居所を指定する義務と権利を包含する、子供は、暴力を行使しない教育を受ける権利を有する、体罰、精神的に傷つけること及びその他の屈辱的な手段は許されないなどとされているわけでございます。ドイツでは二十年の間にこれだけの法改正が行われまして、親子の関係が根本から問い直されていると言えます。ほかの国でも、親子の関係は、法律上、さまざまな形で見直されております。
 ところが、日本の民法は明治以来手つかずで、親子関係について真剣に検討されてこなかったと言えるのではないかと思います。私は、この際、官房長官にもしっかりと御検討いただきまして、その懲戒権のあり方についても、日本でもきちんと検討すべきではないかと思います。
 また、体罰をしている親に聞きますと、悪いとは思うけれども仕方がなくというふうに言ったり、また、しつけのためには必要なことだと言いわけしながらやっているわけでございます。たたかれて、私もそうですけれども、自分自身が子供のころ多少たたかれて育った親は、たたく以外の危機管理方法をなかなか知らないということがございます。
 言うことを聞かない子供とどう話し合うか、暴力を使わずにどうしつけるか、親に知識を与えることが重要だと思いますが、子育て支援の中で、このような知識を与えていくことの重要性をどのように認識し、今後どのように取り組んでいかれるか、また、現状はどうなっているか、最後に、厚生労働副大臣にお伺いしたいと思います。

○狩野副大臣
 委員がいろいろと専門的な立場でございますけれども、たたかれて育った子供というのは自分が親になったときにも同じようなことをするということで、次の世代にも大変影響を与えるというふうに考えております。先ほど、体罰とかいろいろありましたけれども、やはり感情に走ったしつけというのはいけないような感じがいたします。
 厚生労働省といたしましては、児童虐待防止対策を推進するためにも、児童相談所等における相談機能の強化、それから、妊娠している方、育児中のお母さんに対しても、母子健康手帳、両親学級とも言いますけれども母親学級、乳幼児健康診査などを活用した子育て支援、子育て相談などを行う地域子育て支援センターの整備、そういうことをやっていきたいと思っておりますし、また、平成十四年度からは、育児に不安や悩みを抱える親などが気軽に集い、交流できる場を提供する、つどいの広場事業の創設をいたしております。
 子育て家庭の相談支援体制の強化を図っていくことが大変大事だというふうに思っておりますので、また委員のいろいろ御指導をお願いしたいと思います。

○水島委員
 ぜひ力を入れていただきたいと思います。どうもありがとうございました。




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