厚生労働委員会
(2005年4月15日)



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介護保険法等の一部を改正する法律案



○水島委員
 民主党の水島広子でございます。
本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 まず初めに、大臣にお礼を申し上げたいと思います。
 この前、三月三十日にこの委員会で大臣にお願いを申し上げましたBCGの接種とそれから学童保育のことについて、早速対応していただきまして、子供たちの力になっていただき、本当にありがとうございました。
 また、その後、報告を聞きましたところでは、私がお願いいたしました障害児の学童保育だけではなく、都道府県の意見を聴取したところ、長時間の開設加算についても別枠でまた確保していただけることになったということでございまして、この点もお礼を申し上げたいと思います。
 今回は、ぎりぎりに間に合って大臣にこれをお知らせすることができたので、大臣もこれに気がついて、急遽直していただくことができた。
もしも気がつかなかったらどうなっただろうと思うと、私も背筋が寒くなる思いでございます。
ぜひ、これからも厚生労働省の皆様には、的確なタイミングで大臣に正しい情報を伝えていただきまして、大臣がもっと早くこういう判断ができるようにお力をいただきたいと思っております。
 この間、本当に現場の方たちはパニックの状況でございましたので、本当に今は、最後は胸をなでおろしているところだと思いますけれども、二度と現場の方たちにこういうつらい思いをさせないように、早目早目に対応していただけますよう、そして、何か大きな判断をされるときには、今回改めてやっていただいたように、必ずこうやってきちんと現場の意見を聞いていただいて、その上で判断していただけますように、今回のことを踏まえまして、また、改めてお願いを申し上げたいところでございます。

 そして、今回、今審議をしております介護保険法の改正案についても、何か決まってしまってから、慌てて気がついてやり直すというようなことではなくて、最初から現場の情報をきちんとくみ上げて、本当にみんなが納得できるような形にこの審議を仕上げていただきたいと思っておりますので、ぜひよろしくお願い申し上げます。

 さて、ここまでの介護保険法の改正案の審議を聞いてまいりまして、私は本当に、なぜ厚労省はこんなにおかしな答弁を繰り返すんだろうかと、率直に言って不思議で仕方がございませんでした。
特に、その主役でございます中村局長は大変優秀な方でいらっしゃるのに珍答弁を繰り返されているようにお見受けしまして、大変失礼ながら、この中村局長という方は、人の生活実感とか心もわからない、いわゆる嫌なタイプの官僚の方なのかなと思っていたんですけれども、先輩議員に聞いてみますと、決してそんなことはない、中村局長というのはむしろすばらしいタイプの官僚なんだという話でございます。
 私は、本当にキツネにつままれた気分になりまして、今ここで起こっていることは一体何なんだろうかと、ない頭を絞ってずっと考えてきたんですけれども、私なりに到達しました結論は、実は局長御自身も今回の改正に疑念を持っていらっしゃるという、これは悲しいメッセージなのではないか、そんなふうにも思ったりしているところでございます。
 幾ら、今提案されている改正の内容が悪い、また心配の多いものであるとはいっても、介護について国会での真摯な議論が必要で、浪費すべき時間もないということはもう事実でございますので、きょうからは局長にも本来のよさがわかるような答弁をしていただきたいと、大変僣越ながらお願い申し上げたいと思っております。

 まずは、すっかり有名になりました幾つかのデータについて、この場で軌道修正をしていただきたいと思っております。
 今回の審議におきまして、厚労省がデータの出し方や解釈の仕方において誠実さを欠いてきたということが有意義な審議を大きく阻害してきたという事実を、大臣そして局長にも認めていただきたいと思っております。
介護はもちろん、日本の厚生労働行政は、みんなで現実を共有して、そして、力を合わせて解決していかなければならないものばかりだと思っておりますので、本日からぜひお互いに姿勢を改めまして、本当に前向きな審議ができるようにしていただきたいと思っております。

 まず、その第一号でございますけれども、お手元に資料一として配らせていただいておりますけれども、何度も出てまいりましたこの「介護保険かわらばん」二〇〇四年の九月版でございます。
これは何度見てもわからないわけなんですけれども、この二つ目の「鹿児島県における「居宅介護支援事業所の実態調査」より」というところをごらんいただきたいと思います。
 これは、まず全体のタイトルとして「保険給付は、軽度認定者にどのような効果をもたらしているか?」というテーマを大々的にうたった後に、この鹿児島県のデータがあるわけですけれども、「訪問介護の利用回数が多くなるにつれて、要介護度が悪化するというデータも。」というふうに書いてあるわけです。
私も、医学論文を書いている立場としまして、こんなにすっぱりと結論が出せたらいいなと大変うらやましく思うくらいなんですけれども。
 そもそも、これは対象は何例で、調査期間はどの程度、どういう調査手法でこのような結論が導き出されたのかをきちんと説明していただきたいと思いますし、どういう手法であったとしても、こんなにあっさりと結論が出るわけはないと思いますので、その点について少し、今までの御答弁を軌道修正していただけますでしょうか。

○中村政府参考人
 お答え申し上げます。
 今委員御指摘のございました鹿児島県における居宅介護支援事業所の実態調査でございますが、これは鹿児島県が平成十五年度に実施したケアプランチェック体制整備事業の報告書にあるものでございます。
 調査の対象者数や調査方法は以下のとおりでございます。
 調査対象は、各保険者の、これは市町村になるわけですが、地区内に事業所を有するすべての居宅介護支援事業所、これは平成十五年十月末現在、全鹿児島県で五百十一事業所のうち、休止中または実績のないものを除き四百九十事業所を対象とし、調査方法は、平成十五年十一月一日現在のサービス利用者について、前回の認定期間における最終月のケアプランについての内容などを保険者によって入力したものでございます。
 調査対象となるサービス利用者の選定に当たっては、鹿児島県全体で三千例程度の収集を目標とし、認定者数により保険者ごとの割り当て数を決定し、保険者ごとに地区内の居宅支援事業所から原則同数ずつのサービス利用者を無作為抽出したと聞いております。

 以上の方法により、対象者数については鹿児島県全体で三千二百七十五例が得られた、そのうち千四百四十八例が訪問介護を利用していた、こういう調査でございます。
 鹿児島県の方では、これを県内の保健所管轄単位に集計し、いろいろ分析し、調査しているということでございます。
 その中で、今御指摘の、訪問介護の利用回数が多くなるにつれて要介護度が悪化するというデータについては、ここに書いてございますように、要支援、要介護一の該当者の中で、訪問介護の利用回数区分で改善、維持、悪化について調査をしたものと承知いたしております。

○水島委員
 済みません、もう一つ、この結論の出し方についても言っていただきたいんですが、これはどう見ても、確かに目で見ますと、訪問介護の利用回数が多いグループの方が要介護度が悪化しているパーセンテージが高いということまでは言えると思いますけれども、利用するに、「多くなるにつれて、要介護度が悪化する」というこの書き方はやはり正確さを欠くと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。

○中村政府参考人
 お答え申し上げます。
 調査の内容につきましては、今委員御指摘がありましたように、要支援、要介護一といった軽度の方については訪問介護利用回数が多いほど要介護度が悪化する傾向が見られたが、要介護二から要介護五までの中重度の方については、訪問介護利用回数と要介護度の変化について、要支援、要介護一の軽度の方のような明確な関係は見られなかった。
さらに、通所介護、通所リハビリテーションについても、要介護度別に利用回数と要介護度の変化を分析しているが、通所型サービスにおいては、いずれの要介護度においても利用回数と要介護度の変化について明確な関係は見られなかった。
そこで、訪問介護については、ここは引用になりますが、要介護度が要支援、要介護一のものに限って見ると、訪問介護の利用回数が多いほど要介護度が悪化する傾向が見られる、こういう分析が鹿児島県の報告書において行われているもので、これを紹介する形で「かわらばん」に掲載したものでございます。

 しかしながら、委員御指摘ございますように、非常に見方として評価が分かれる点でございますし、制度改正につきまして、国民の皆様に対しまして、介護保険制度に関する説明、解説を行うことがますます重要になってくると思われますので、私ども、誤解を受けることのないよう、また真意が十分理解されるように、表現には細心の注意を払ってまいりたいと思います。
 そういった意味で、この見方についていろいろ御批判もいただきましたし、誤解を招き、御指摘を受けるような表現もあったと思いますので、その点につきましては十分注意をして対応してまいりたいと思いますし、また引き続き、研究者を含め、さまざまな方々の御意見を虚心に伺ってまいりたいと思います。
 以上でございます。

○水島委員
 通所との比較ですとかその点については私もきょう初めて伺いましたので、今大変興味深く伺ったところなんです。
 ということは、結局今の結論から言えることは、通所の方がいいんじゃないかという単純な結論ではなくて、恐らく、それぞれの方の生活実態を見て、実際にその方の生活がどうなっているのか、今与えられているサービスが必ずしも適切なものではないのではないか、そういう観点を多分今の現実については持たなければいけないんだろうと思っておりますので、ぜひその辺が、もっと踏み込んで、わかるような調査のあり方あるいは制度のあり方、そのあたりをもう一工夫いただく必要があるんだと思います。
 きょう、この後もいろいろ介護予防のあり方についても質問させていただくつもりでございますけれども、恐らくそういうトータルな知見が必要なんだと思っております。
こうやって書かれてしまうと、単に軽度者への支援を切るために好きなデータを並べているようにしか見えない。
私、そんなに自分が意地悪な性格だと思わないんですけれども、私が見てもそういうつもりなのかなと見えますので。
 これはぜひ、もう一度「かわらばん」、これは定期的に出されているんでしょうか。
そうであれば、この国会の審議を踏まえまして、本当に必要なのは個々の生活に注目をして最も適切なサービスを提供するということであって、家事代行そのものがいけないとか、そういう単純なことを言いたいわけではないんだということがわかるように、ぜひ今度広報をきちんとしていただきたいと思いますし、それが我々にもきちんと整理できるように、引き続き、この審議の間に、先ほどの訪問のことも含めまして、もう少し資料をいただきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 そうはいっても、今きちんと誠実に御答弁をいただきましたので、その点は感謝を申し上げたいと思います。
 そして次に、資料の二に行きますけれども、これもすっかり有名になりました厚生労働省のこの紙なんですけれども、上の参考2というところに、「要支援や要介護一といった軽度の方々は、適切な予防対策を実施すれば、状態の改善可能性は高いにもかかわらず、実際の改善度は低くなっています。」と書いてあります。
この意味もいまだによくわかりません。

 四月六日に山井和則議員が質問をされたわけですけれども、そのときに尾辻大臣は、「まさに軽度の方でありますから、改善をもっと大きくしてもいい、そういう数字を示してもいいというふうに私ども思っておりますから、その期待される数字からすると、今現状で示されている数字というのは低いという判断でありまして、したがって、ここに力を入れよう、こういうことでございます。」と答えておられます。
山井議員が「期待される数字とはどの程度の数字ですか。」と聞きますと、西副大臣は、「指標といたしましては、要介護度が改善するということでございます。」そして尾辻大臣は、「今お尋ねいただいて、すっと期待される数字がこのぐらいですというふうには申し上げられませんけれども、ただ、こうした数字というのは少なくとももっと高くあるべきだというふうに考えておるというお答えを申し上げます。」そういうふうに答弁をされております。

 既に先日、我が党の泉健太議員が指摘をしましたけれども、本当に人は年々年をとるということをわかっておられるんでしょうか。
高齢者の介護というのは病気の治療とは違います。
やはり年々年をとって状態というのは基本的には悪化していくものだというふうに考えているんですけれども、それは事実だと思います。

 また、例えば「介護保険かわらばん」の先ほどの鹿児島県のデータを見ましても、訪問介護サービスの回数が二十九回以上という、ほとんど毎日ですよね、この介護度の高い方たちのうち、約七割が現状維持、五・二%が改善すらしているというのはむしろ喜ぶべきデータのようにも思うわけなんですけれども、大臣も、維持というのはすばらしいと四月八日には答弁をしてくださったわけでございます。

 四月六日から時間もたっておりますので、期待される数字ということについてもう一度答え直していただきたいと思います。
私が察するに、大臣は優しいお気持ちを持った方でございますので、もっとよくなってほしいという気持ちがつい先走ってしまって口を滑らせてしまったんではないか、そのように思っているんですけれども、この点をもう一度ちょっと尾辻大臣、御答弁いただけますでしょうか。

○尾辻国務大臣
 私の言いたいことを見事に言い直していただきましたので、改めて申し上げます。
 つい、皆さんに元気になっていただきたい、山井議員の御質問に、私が現場を見せていただいたときの答えでもそんなことを申し上げたものでありますけれども、そうした思いで期待されるという表現を使ったことは適切でなかったかなと思います。
 要するに、皆さんお元気になっていただきたいなという思いで、そして、今回の私どものこの法律改正もそうした思いを込めてつくらせていただいたつもりでありますということを改めて申し上げたいと存じます。

○水島委員
 大臣、ありがとうございます。
また誠実にお認めをいただきまして、これで審議を先に進めることができると思います。
(発言する者あり)
 褒めぬ方がいいぞという声が今飛びましたけれども、ぜひこの評価にこたえて、この先の答弁もスムーズにいただきたいと思います。
 次に行く前に、今の大臣の御答弁でございますけれども、要は、皆さんが本当に最後まで自分らしく生き生きと年をとっていただきたい、そのために厚生労働省としてよりよいサービスをこれからも工夫していきたい、そういうお気持ちというふうに受けとめさせていただきましたけれども、それでよろしいかと思いますが、大臣、ちょっとうなずいていただけますでしょうか。
はい。
ということでございますので、先に進ませていただきたいと思います。

 次に、次はちょっと厄介な話なんですが、資料三を見ていただきたいと思います。
これは厚生労働省が山井和則議員からの請求に対しまして出された回答文書でございまして、資料三、資料四、資料五とセットになっています。
英語の論文をだらだらつけても仕方がないので、資料四と資料五は、そこに添付されておりました英語の論文の要約が載っている部分のページだけつけさせていただいております。

 この回答文書、これは山井議員がもともと、筋トレの長期的な効果についてのエビデンスはあるんですかと厚生労働省に食い下がって、やっと出していただいたデータというふうに聞いておりますけれども、これに対して、四月六日に山井議員は、「筋力トレーニングを中心とした予防に、長期的な効果について科学的な根拠があると。
 世田谷区、三カ月終わってからも四〇%が体操などを続けていた、こういうのを科学的根拠というんですか、」と厳しく迫っておられました。
 私もこの紙を見たときすごく違和感を持ったわけですけれども、仮に例一の世田谷区、これを科学的根拠と呼びたいのであれば、そもそも、筋トレに志願してきたお年寄りを無作為に筋トレ群とそうでない群に振り分けて、それぞれ終了した後に何%が体操をしているかということを比較して初めて科学的根拠と言えると思いますし、百歩譲ってそこまでやるのが面倒だとしても、通常、このくらいに志願してくる程度の健康なお年寄りの何%が日常的に体操をしているのか、その程度の基本データがなければ、比較して科学的と言えないと思うんです。

 おかしいなと思いまして、これは厚生労働省の方に、本気でこんなのを科学的根拠と考えているんですかというふうに聞きましたところ、いやいや違うんです、科学的根拠というのはこの下に書いてある海外の文献の方が科学的根拠であって、上についているのは単に我が国の事例でありますと。
その点については書き方が逆転してしまったようでよくなかったというようなことであったんですが、ああ、そうですかということで、私もその書き方については不満があるんですけれども、では海外の文献はどうなっているだろうかということで読ませていただきました。

 そうしましたら、まず例の二なんですけれども、例の二、これがつけられている論文でいくと資料五に当たるんですが、まず資料四と資料五を見ていただきたいんですけれども、この中にお読みになれる方いますか。
英語が得意な方でも多分読めないと思うんです。
 というのが、傍聴者の方は見えないと思うんですが、ちっちゃい字がファクスで送られてきていまして、字がみんなつぶれていまして、英語が得意な人でもちょっと単語が読めない。
私も、まずこの原著を検索しようと思いまして、著者の名前をこれで見ようとしたんですけれども、著者の名字も読めない、そんな状態のつぶれた字で送ってきてくださったもの。
これは私は山井さんからそのままいただいたので、この状態で送られてきたものだと思うんですけれども、そもそもこの論文を読んでもらおうという気持ちがないんだなとここから感じられるわけです。

 さらに、でも、そうはいっても、この日本語の紙、資料三に戻っていただきまして、日本語の紙の例一、例二と下に書いてあるので、ああ、これを英語が苦手な人のために日本語でちゃんと端的に書いてくださったんだろうなと思って読みましたところ、まず、この例二は、つけられてきている論文と内容が異なっておりまして、例二は別の論文の要約なんですけれども、これは一体どういうことなんでしょうか。
 例二は、これは「百三名を対象とした変形性膝関節症を有する高齢者に対する、」ということが書いてあって、ここについております英語の二枚目の論文は、これは健常者、健康なお年寄りに対して、これは人数も違いますね、健康なお年寄り。
これは、ちゃんと読めるように、この二に当たるものを私は別のコンピューターのデータベースから引っ張ってきて読んでみたんですけれども、これは健康なお年寄り百四十二名に対して二年間行われた調査ということで、違う論文なんです。

 まず、この例二の日本語と、ここにつけられてきている二本目の英語の論文の内容が全然違うということをお気づきになっていましたでしょうか。

○中村政府参考人
 今委員御指摘の科学的というお話については、委員の御指摘のとおりでございまして、私ども、先ほどの答弁でも申し上げましたが、介護予防サービス評価委員会で検証していただいておりまして、まず、介護予防の有効性に関する文献のレビューもしていただいております。
そのレビューの中から、水島委員御指摘の例を出し、それのもと論文をお送りさせていただいたと思いますが、そのレビューでは、運動機能の向上で八十七ページから百三十ページまで、大体一ページ一論文でございますので、四十数論文、掲げております。
これは前にも御提出したことがあるかと思いますが、水島委員の方にはこれをもう一回御提出させていただきたいと思います。

 今申し上げました運動器の機能向上のほかにも、その他の項目として研究論文が百三十六ページから百五十一ページにございますので、そういった論文をチェックしていただいております。
それは、委員がおっしゃっておられる、ランダマイズした研究成果など、いわゆるEBMに足り得るもの、ランダム化比較試験などの文献をやらせていただいていますので、ファクスでお送りしたものに手違いがあったのであればおわび申し上げますし、手違いだったと思います。
 それと、そういうことで、まず介護予防の有効性に関する文献調査をいたしておりますので、そこの点については改めてその資料をお届けさせていただきます。

○水島委員
 手違いだったんだろうなとは思うんですけれども、当時、今もそうですけれども、山井義員は、かなりこのことを真剣に思い詰めて、毎日、筋トレの効果、効果といって、本当に朝から晩まで走り回っていました。
そういう人に対して資料を送るときに、その論文の内容をきちんとチェックしないで、それもこのつぶれた字で、まだこっちの英語がすっきり読めるような論文だったらいいんです、こちらに日本語で書いてあるのとまた違うのがついてきたんだなと思いますので。
これだけ字がつぶれていたら、当然、この要約がこの日本語だと思うじゃないですか。
ですから、そういう態度がちょっと私も非常に問題だと思っているところなんです。

 ただ、厚労省の弁護を多少させていただくと、きのう私が改めて請求しましたときには、この例二にそのまま該当する論文を今度はつけてきてくださいましたので、多分、山井議員に送ったときには本当にミスだったのかもしれないなと思うんですけれども、ただ、山井議員にはこういう形で送って、今度私には英語の論文を二本つけてきて、二本目は、今度ちゃんとこの例二に、正しかったと。
(発言する者あり)
 また、私がいただいた方のは一応読めるんです。
読めるサイズのものを送ってきてくださいました。
 ですから、本当に、今、何で対応が違うんだと山井議員がおっしゃっていたんですけれども、やはりそれぞれの国会議員は真剣に資料を要求しておりますので、きちんと読める形のものを誠実にお届けいただきたいと思います。

 それで、さらに私がこれを読みまして問題だなと思いましたのは、そんなに間違ったことが書いてあるわけではないんですが、例えば、これはどちらの研究も、原著を読んでみますと、どういう研究デザインになっているかというと、この高齢者のグループ、それも変形性膝関節症ということをきちんと診断されたグループを、つまりそういう医学的環境のもとで三つのグループに分け、その一つは有酸素運動、つまりウオーキングです、もう一つは負荷トレーニング、つまり筋トレです、そしてもう一つは単に健康教育を施す。
この三つのグループに無作為に振り分けて、それぞれが、例一の方の研究は十八カ月間、これは持続したトレーニング。
二つ目も、三カ月と十五カ月、これは両方とも、施設で最初やって、その後おうちでやるという形で、十八カ月間の継続したトレーニングです。
十八カ月間継続をしてその結果を見ているという、どちらもそういうデザインでございます。
 もともと山井議員が質問していたのは、三カ月だけやって、その後長期的に見てどうなんですか、そのエビデンスがあるんですかということを聞いていたので、十八カ月間トレーニングをやりっ放しで、その最後のときの効果がどうかというのを答えていることでは、山井議員の要求には多分答えていないということなんだと思います。
まずそのことをお認めいただきたい。

 それから、これはそうやって三グループに分けていて、例えば、この例一の方の結果を見ますと、有意な差かどうか、きちんと統計を自分で解析しているわけではありませんが、少なくとも、有酸素運動、ウオーキングの方が筋トレよりも効果が上がっています。
どちらも効果が上がっているんですけれども、ウオーキングの方が若干効果が高く上がっています。
例二の方の論文を見ますとそうでもないので、これもやはり有酸素も筋トレもどちらも効果が上がっているんですけれども、結局これは、例一、例二、ここに正しく日本語で書いていただくとすれば、有酸素も筋トレも指標がすぐれていた、そういうふうに書いていただくべきなんです。
 また、例一も、「明らかに」かもしれないけれども、もともとの原著を見ますと、これはモデストという言葉を使っていまして、物すごく効果が出ているわけじゃないんですね。
そこそこ効果が出ているという言葉ですから、筋トレで明らかに効果が上がったというふうに胸を張っていただくのは、ちょっとどうかなと。
それも、有酸素というもう一つの有力な選択肢があるにもかかわらず、そっちを見事に隠して筋トレだけの論文があるかのように見せているというのはどうかなと、ちょっと私、このあたりには問題を感じるわけなんです。

 実は、私は前から筋トレよりも多分ウオーキングなどの有酸素の方が、これは後で申し上げようと思っていたんですけれども、最近の論文を見ますと、有酸素運動は抗うつ効果もある、うつ病を治す効果もある、薬物と同程度の効果があるなんというのが示されていまして、この有酸素運動というのは、歩くのはどこでもできますし、みんなで歩くというのは楽しいことだし、また、みんなで体を動かすというのは楽しいこと。
ひとり黙々と器械に向かってやるというのは、私も運動として嫌いです。
ですから、そういうもっといろいろな選択肢の中で、本当にお年寄りがみんなで集まって楽しくできる運動で、かつ効果が高いもの、さらにうつにも効くもの、それが有酸素運動であるとしたら、むしろそっちを率先すべきじゃないかなと思うんです。

 ただ、ここで私が断定するほどにはまだエビデンスがないのではないかなとも思っておりますから、本当にこの辺の議論というのは非常に重要な議論なんですね。
こんなところで余り我を張って、今までの自分たちの説明に、「かわらばん」をまいてしまったのでいこじになって、筋トレがいいんです、いや筋トレがいいんですと言い続けることは本当に不毛だと思いますので、ちょっとこの有酸素運動ということも重要な選択肢の一つとして、きちんとこれから、本当にこれからエビデンスを積み重ねていただきたいと思っているんです。

 日本は全般にエビデンスが少ない国で、これはあらゆる領域について言えることです。
それが、日本という国が抱えている課題の一つだと思いますし、厚生労働省の皆様が抱えている課題だとも思っています。
それなのに、こんなものを集めて科学的根拠があるとか言い切ってしまっていては、いつまでたってもレベルが上がらないんじゃないかということが真剣に心配でございます。

 私自身も、もともと頭の構造が余り科学的な方ではないので、科学的な人間になろうとして苦労した一人ですから、日本の学術的なレベルを上げるためにも、偉そうに言うわけではなくて、自己反省も含めまして、本当にみんなが科学的に考えなくちゃいけないんだなということを考えているんです。
ぜひ、エビデンスはないから、また不十分だから、これから一緒に集めましょう、集めていくためにはどうすればいいんでしょうか、そういうことを素直に言ってもらった方がずっとよいわけでございます。
 医学もそうですけれども、エビデンスベースドというのは、客観的な根拠に基づいてそこから何かを導き出してくるということであって、決して、自分たちの結論、最初から決めた結論に合うデータだけを適当に集めてきてこれがエビデンスですというような意味ではないはずだと思います。

 今の一連の、私ばかりべらべらしゃべりましたけれども、このエビデンスという言葉を厚生労働行政で本当に前向きに正しい意味で使っていけるように、今のこの議論の感想を大臣に、総括をしながらちょっと一言御意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○尾辻国務大臣
 今いろいろお話しいただきましたけれども、運動器の機能向上を初め新たな介護予防サービスの検討におきましては、お話しいただきましたように、客観的な根拠を踏まえてなされるべきである、これを私どもも重要視してきたつもりでございます。
そして、そのことについて、その分野の専門家による国内外のデータや論文の収集と、それに基づく有効性の検証というのを私なりに行ってまいりましたということは申し上げているところでございます。
 しかし、いろいろお話がございまして、説明が不十分であった点などについては、御指摘を真摯に受けとめて今後に生かしてまいらなきゃいけない、こういうふうに考えております。
(発言する者あり)

○水島委員
 今いろいろな声が委員の間から出ていたんですけれども、今回の議論をしていく上で、データが欲しい、エビデンスが欲しいという声は、これは党利党略ということではなくて、何に基づいてこれから制度をつくっていくべきかということを本当にみんなが知りたいと思っております。
例えばトレーニングの効果につきましても、これだけ例えば有酸素という、今まで全然ここの審議の中心課題になっていなかったものにこんなに効果があるとしたら、やはりそれは見過ごすわけにはいかないことだと思います。

 また、皆さん国会議員というのは、別に英語ができることが必要要件でも何でもありません、日本の国会議員ですので。
ぜひ、英語の論文をぽんと渡すんじゃなくて、少なくともサマリーの部分だけでも日本語できちんと正しく訳して、それをおできになる方は厚労省に幾らでもいらっしゃると思いますので、きちんと訳して、少なくともこの根拠となるような外国の文献を示していただけますでしょうか。
それをちょっとお約束いただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

○中村政府参考人
 今委員御指摘の翻訳のことについては、やらせていただきます。

○水島委員
 ありがとうございます。
 いつまでにというのを詰めないと多分怒られると思うんですけれども、きょうは金曜日で、来週の審議が多分水曜日ですので、多分このくらいの仕事でしたら水曜日までにできると思いますから、水曜日の審議までに、日本語で、少なくとも質問する議員が読めるようにきちんと翻訳をしていただけますように、よろしくお願い申し上げます。

 私も、何かこんなふうに、厚労省から資料をいただくたびに自分で別のデータベースをあさって、本当にこれが正しいかなんというのを一々チェックするのは本当に疲れますので、これから、厚労省からいただいたものは一〇〇%正しいんだと思えるようなデータの出し方をしていただけますように、よろしくお願いいたします。

 さて、このエビデンスについての議論を聞いていまして思い出したことがございます。
これは介護保険とは直接関係のないように聞こえるかもしれませんけれども、女性の高齢期の健康にも重要な関係のあることなので、ここで一つ質問させていただきたいと思います。
 以前から、日本子宮内膜症協会の方たちが子宮内膜症に低用量ピルを保険適用してほしいという要望を出されています。
この三月七日にも厚生労働大臣あてに要望書が出されたばかりです。
この要望書の中に「低用量ピルには十分なエビデンスがある」という項目がございます。
そこを読ませていただきます。

 「以下の多くの証拠により、低用量ピルが子宮内膜症に伴う月経困難症の標準治療薬であることは、日本を除いた世界で長く周知された事実であると容易にわかります。 よって、これ以上のRCT」、これは無作為振り分け比較対照試験と訳すと思いますけれども、この「RCTを要求なさるのは、一九七〇年代という三十年近くも前から今日まで、世界で日本の子宮内膜症の女性だけが被ってきた”ピルを当たり前に使えない不幸”を延長させるだけでなく、患者の人権保護を重視したヘルシンキ宣言に触れるのではないでしょうか。」と書かれてあります。
私も本当にそのとおりだと思っております。

 ここでエビデンスとして上げられているのは、欧米のガイドラインやそれに準ずるもの、論文としては、ファータリティー・アンド・ステーリリティーという有名な雑誌にUCLAの方たちが書かれたエキスパートコンセンサスが添付されています。
また、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンという超一流雑誌、ここに論文が載ることはすべての医学者の一生の夢ではないかと思われる一流雑誌ですけれども、このニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンに載りました子宮内膜症の治療についての総説も添付されております。
 また、やはりファータリティー・アンド・ステーリリティーの論文ですけれども、子宮内膜症に対するRCTを報告したものも添付されていますし、その他、有名な医学教科書であるセシル、またイギリスやアメリカの処方解説書なども添付されていますけれども、いずれを見ましても、一九七〇年代から経口避妊薬は子宮内膜症の薬物療法で用いられるようになり、近年では低用量ピルが子宮内膜症の薬物治療の第一選択であるということを示していると思います。
 産婦人科医の中には、保険適用のない薬を処方されることを嫌い、ピルを希望しても保険適用のある中用量ピルを処方するというねじれ現象が起こっております。
低用量ピルよりも中用量ピルの方が副作用が強いのは当たり前で、血栓リスクは四倍です。
また、自治体病院の多くが保険適用がないことを理由に低用量ピルを置いておりません。
ですから、自由診療で使いたいといっても、それが病院に置いていないということになっているわけです。

 重大な問題は何かというと、低用量ピルがなかった時代はもちろん、導入されても自由診療のためスムーズに処方されない現在に至っても、リュープリン、ナサニール、スプレキュアというGnRHアゴニストの使用量が世界で突出して高いということで、日本の内膜症の女性のQOLを低下させているということでございます。
 GnRHアゴニストは、脳下垂体に作用して性ホルモンを去勢状態にする薬ですので、エストロゲンもプロゲステロンも、更年期どころか閉経後の老年期レベルまで落とし込まれるために、骨量の減少、脂質代謝の悪化、認知機能の低下、不眠、うつ、脱毛、関節異常、甲状腺機能異常というような症状が進んでいくわけでございます。
時には生殖機能が不可逆的なダメージを受けてしまい、無排卵になって性器萎縮にすら至る人がいます。
つまり、これは閉経を早期にしてしまうということを意味しているわけです。
 このような特徴を持つ薬ですので、六カ月以上は使用しないようにということになっております。
ですから、六カ月以上使えない薬というのは、そもそも子宮内膜症という慢性疾患に対して使うことが余り適さない薬なのではないかというふうに思っております。

 私自身が二〇〇二年六月五日に厚生労働委員会で坂口大臣に質問をしましたときには、「薬事全般にわたりますことにつきましては、」「それは今御指摘になりましたように、企業からそういう承認の申請があったからそれは認める、認めないということではなくて、この範囲のこういう薬については認めるということをやはり明確にしていくということも大事かなというふうに思いながら、私は今聞かせていただいた次第でございます。」と坂口大臣らしい答弁をされたわけです。
 その質問をしましたときには、こんな得にもならない薬に対して企業からの承認申請などないだろうから、厚生労働省にきちんとリードしていただかなければいけないというふうに思って質問させていただいたわけなんですけれども、その後、一つの会社が治験を始めたそうでございます。
この質問がどうもきっかけになったようなんですけれども。

 そして、ことしの一月に開催されました第二十六回エンドメトリオーシス研究会、これは日本における子宮内膜症の学会に当たるものですけれども、ここにおきまして、東京大学の百枝幹雄先生たちが、低用量ピルのRCTのデータを発表され、子宮内膜症に伴う月経困難症に有意に効果があるだけではなく、チョコレート嚢胞を縮小する効果があるということも明らかにされたそうでございます。
 国際的なコンセンサスも踏まえ、このようなものこそエビデンスと呼ぶのだと思いますけれども、日本子宮内膜症協会の要望を厚生労働省としてどのように受けとめられているでしょうか。

○阿曽沼政府参考人
 お答えを申し上げます。
 御指摘のように、日本子宮内膜症協会の方から、三月七日に厚生労働大臣と医薬品医療機器総合機構の理事長あてに要望書が出されまして、私どもの厚生労働省の職員二名とそれから機構の職員二名とで意見交換をいたしました。
 それで、御要望の趣旨は、今御説明ございましたように、低用量ピルについて、子宮内膜症に伴う月経困難症について適用の早急な承認をしていただけないか、保険適用をできないかということでございますが、この問題につきましては、今お話がございましたように、国内で今開発をしている企業が一社ございまして、既に治験が進行しております。
昨日確認いたしましたところ、かなり順調に治験が進行しているというふうに聞いておりまして、厚生労働省といたしましては、この薬ができるだけ早く、早期に開発できるように、今後また、独立法人の医薬品医療機器総合機構とも治験相談の活用などをいたしまして十分相談をいたしまして、適切に対応していきたいというふうに考えております。

○水島委員
 当然、これだけの国際的なエビデンスがあるわけでございますので、申請されたときには優先審査扱いにしていただいて、欧米の低用量ピルを参考に、高過ぎず安過ぎない薬価で保険適用として、一刻も早く日本の子宮内膜症の女性たちが使えるようにしていただきたいと思いますけれども、この点はよろしいでしょうか。

○阿曽沼政府参考人
 この薬につきまして承認の申請がなされた際には、臨床試験の成績などの提出データといいますものを有効性、安全性につきまして適切に審査いたしまして、承認された後につきましては速やかに保険適用をしていきたいというふうに考えております。

○水島委員
 承認された後に保険適用というのは、むしろ当たり前のことなんですけれども。
 大臣、先ほどちょっと私早口で申し上げましたので、よく御理解いただけなかったかもしれないんですけれども、そのように、前からずっと外国では使われてきている低用量ピルという薬が、日本で保険適用されていないために日本の子宮内膜症の女性たちがその薬を使えない。
 その結果として、GnRHアゴニストという薬を使わなければならなくて、それが女性たちを早期に老化に追い込むような、ホルモン系の非常に強い副作用が出るような薬であって、日本に生まれた女性だからというだけの理由で、子宮内膜症の方たちが本来もっと楽に使える薬が使えていないという現状がかなり放置されておりますので、国際的なエビデンスを踏まえて、申請されましたときには本当に速やかにその審査に取りかかっていただきたいということを、ちょっと大臣からも一言、お約束いただけますでしょうか。

○尾辻国務大臣
 かねて、薬の承認につきましてのいろいろな御要望というのはお聞きをいたしておりまして、スピードアップしなきゃいけないということはお答え申し上げておるところでありますから、そのように努めてまいります。

○水島委員
 では、ぜひよろしくお願い申し上げます。
 それで、また介護保険の方の質問に戻らせていただきます。
きょうは私は、本当は一番質問したかったことは高齢期のうつについてなんですけれども、だんだんと時間がなくなってまいりまして、審議時間を本当にきちんととっていただけるかどうか、だんだん心配になってまいりました。

 まず、今回、介護予防全体を考えていく上で、一つちょっと参考になる事例を御紹介したいと思うんです。
私の選挙区でございます宇都宮市では、生きがい対応型デイサービスをやっているんですけれども、それは地域保健研究会の二〇〇三年度老人保健事業推進費等補助金、介護予防優良事例集、ここにございますが、ここにも取り上げられております。
宇都宮市の生きがい対応型デイサービスということで、優良な事例ということで評価していただいているものなんだと思うんです。
 この事業は、二〇〇〇年に、国の介護予防生活支援事業のうちの生きがい活動支援通所事業としてスタートしたもので、当初は通所介護施設の余力部分において行うものとしてスタートしましたが、翌年には、生きがい対応型デイサービス専用施設に委託を開始いたしました。

 利用人数は、二〇〇〇年度には九千五百五十五人、二〇〇三年度には二万八千九百十四人、二〇〇四年度には五万五千五百二十六人と大幅にふえてきました。
それに伴って、事業費も、二〇〇〇年度には四千六百三十五万円だったものが、二〇〇四年度には一億九千四百六十万円と膨れ上がってきているわけです。
 この事例集を今回初めて見ましたけれども、この中に、宇都宮市の生きがい対応型デイサービスの「今後の課題と抱負」として書かれているのは何かというと、二〇〇七年度までに、

 規模を現在の二・五倍にまで高めようと考えています。
そのため専用施設も増やしていきますから、それにともなって対象者の登録人数やサービスの利用回数なども増えていくことになる、というように、高齢者が通いやすい身近なところに拠点を増やしていくことが重要です。 今後は、通所介護の余力を利用するような通所介護施設での事業は減らしていく方針を立てています。
その反面、生きがいデイサービス専用施設を、中学校区に一カ所整備し、現状の心身機能の維持という予防的観点から、介護保険の該当者以外で、虚弱や閉じこもりがちな高齢者を対象とする事業を展開していこうと考えています。

と、かなり前向きの内容がここに「今後の課題と抱負」として書かれているんです。
 この生きがい対応型デイサービス事業が、宇都宮市においてこの四月から急に見直されることになり、今まで週三回利用できたものが週一回になってしまうので困るという不安の声を利用者の方たちからいただきまして、私も調べてみました。
 今回、見直しが行われるきっかけになった一つの大きな背景が、明らかにむだと思われる事業所の存在だったと言われています。
確かに、そういう事業所が存在することは聞いています。
元気なお年寄りがカラオケを歌い放題で五百円というように、そもそもの制度の趣旨を取り違えているとしか思えないようなケースもあるようです。
 でも、私が知っているような事業所は、自分では外出できない、外出する気になれないお年寄りにも送迎サービスをして、みんなで一緒に昼食をとり、手作業などいろいろな趣味を提供することで、お年寄りを心身ともに支え、元気な状態を維持していただくという機能を立派に果たしているわけです。

 施設運営についての指針もないまま、運営実態がある意味では野放しにされてきたという状況で、一部に悪質なところがあるからといって、事業全体が一律に縮小されるというのは、この事業によって明らかに生活の質が保たれている当事者の方たちにとっては大変迷惑な話でございます。

 介護予防も含めて、介護の問題を考えていく上では、質のチェックは避けては通れない道でございまして、それは多くの方が既に指摘されていますけれども、それを避けて事業そのものから撤退してしまうというのでは、まさに悪貨が良貨を駆逐するということになってしまい、本末転倒な話だと思います。
 質のチェックをどうするかということと、制度設計全体をどうするかということは、一部共通する部分もございますけれども、基本的には違うレベルの話です。
今回も、一部の不適切なケースのチェックをどうするかという議論よりも、制度全体の見直しに一気に飛びついているというふうに見えるということは、宇都宮市で起こったことと同じ構造ではないかと思います。

 宇都宮市につきましては、私から厚生労働省にお願いをして、問い合わせもしていただきまして、少しは柔軟な姿勢が示されてきたようでございますし、また、利用者調査もしてもらえることになりました。
でも、この介護の今後というものを考える上で、非常に象徴的で不吉な事件だったというふうに私は思っております。

 まず、今回の改正で、このように悪貨が良貨を駆逐しないようにということはどこで担保されているんでしょうか。

○中村政府参考人
 今の生きがいデイのお話は承りまして、この生きがいデイは、各地で要介護認定に該当されていない方を対象にして市町村でやっているところでございます。
これからも市町村事業としてぜひ実施していただきたいというふうに考えておりますが、特に閉じこもり等を予防する、こういう事業の趣旨で組み立てられれば、地域支援事業の中の介護予防事業の中でもやっていただけるのではないかな、そういうふうに思いながら聞かせていただきました。
 それから、今の御指摘の例のように、悪貨が良貨を駆逐しないようにするにはどうしたらいいかということだと思いますが、それはやはり、地域のケアマネジメントをきちんとしていただく、そういった中で、みんなでケアプランチェックをしたり、それからケアカンファレンスをする、そういう中で、その地域においてもどこが問題があってどの事業所がきちんとやっておられるかというのを評価していく、そういったことがまず第一歩ではないかと考えております。

○水島委員
 そういったこともとても重要だと思いますけれども、既にいろいろなところで指摘されていますけれども、例えばケアマネジャーの独立性を確保するということの方が本質なのではないかと思います。
待遇を今よりもずっとよくするかわりにサービス事業所との接触を禁ずるというような仕組みにどうしてすることができないんでしょうか。

○中村政府参考人
 御指摘のとおり、ケアマネジャーの独立性、中立性を高めることは大変重要だと考えております。
 今回の見直しでは、ケアマネジャーが担当します件数の見直し、それから中立性、独立性を高める方向での報酬の見直しを行うとともに、保険者の方では、ケアマネジャーごとにどのケアマネジャーさんがどういうケアプランをつくっていただいている、その件数や偏りをチェックする仕組みを導入することといたしております。
そういったことを通じまして、ケアマネジャーの独立性、中立性の確保に向けて取り組んでまいりたいと思います。
そのほか、ケアマネジャーさんの更新制なども組み込ませていただいております。

○水島委員
 今のは一つの手法かもしれませんけれども、ケアマネジャーの立場に全然立っていないと思うんですね。
 ケアマネさんは本当につらい立場に置かれていて、事業所に所属していらっしゃる方の場合には事業所からのプレッシャーを日々感じ、ノルマを課され、そしてまた、独立してやっておられる方は今度は営業攻撃にさらされ、本当に、落ちついてケアプランを立てるという自分の仕事に専念できないような状況に置かれているわけです。
 それを今度は適切に行われているかどうかをチェックするというようなことでは、全然ケアマネさんが置かれているつらい現状にきちんと対応しているとは思えないし、ケアマネさんが本当に自分の仕事に誇りを持って、本当に職務の中できちんとやっていただくということが、力を存分に出していただくということにもつながると思うんですけれども、その辺、もうちょっと踏み込んで御答弁いただけないものなんでしょうか。

○中村政府参考人
 お答え申し上げます。
 今回、市町村に行っていただきます地域の包括的支援事業の中では三つの事業をお願いしておりますが、その一つがケアマネジメント、ケアマネジャーの支援ということでございます。
 先ほど来お話出ておりますように、市町村が主軸になってこの三事業を行うということは、元来、ケアマネジメント全体を見直すということ、支援するという方向性でやっているわけでございます。
地域包括支援センターが中立公正なケアマネジメントの支援を行う、また、それは市町村が大きな役割を果たしますし、運営協議会は市町村が主宰してやるわけでございますので、そういう体制をとるということが、今委員御指摘のございました、孤立して、いろいろな方面から苦しい立場にある現在のケアマネジャーさんを支援する力になるのではないかと考えております。

○水島委員
 ちょっとずれていると思いますし、多分効果がないと思いますので、もしもそういう考えでなさるのであれば、そういう効果が出たのかどうかというのはきちんと検証していただく必要がありますし、最終的には、私は、先ほど私が申し上げましたように、そういう仕組みをちゃんとつくる、それが絶対に必要ではないかと思いますので、この点はやりっ放しにしないで、ケアマネジャーさんたちの現状をきちんと聞いて、もっとよい工夫をしていただきたいと思います。
この審議の間に間に合えば、そういうことでもう一度方向を決めていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 そして、うつの方に行きたいんですけれども、もう一つ、どうしても気になりますので聞かせていただきたいんですけれども、先日ここに参考人として来られました池田省三さんが、生きがいデイには何の意味もないと言い切っておられたのがちょっと耳に残っておりまして、実際には意味のある方もいらっしゃるという現実を知っている立場からすると、大変違和感がございます。
専門家として国会に呼ばれた池田省三さんがああいう言い方をされてしまったので、現場で頑張っておられる方たちはさぞがっかりしたと思うんですけれども、専門家の方にはぜひ現場をもっと見ていただきたいと思います。

 また、厚生労働省にはきょうはもう少しまともなことを言っていただきたいと思うんですけれども、厚生労働省として、介護予防の中に生きがい対応型デイサービスをどのように位置づけておられるのか、また、そこでどういう活動をすることに意義があるかとか、あるいは週何回以上そうやって外出するのが望ましいかとか、そのようなデータはお持ちなんでしょうか。

○中村政府参考人
 先ほど来お答え申し上げております介護予防の評価検討会でも、閉じこもりとか、うつ、それから認知症、これはもう大変重要な問題ですけれども、なかなかエビデンスが確立しているところまではいっていない、したがって、市町村において、地域支援事業の中で実施しながら考えていく必要がある、工夫しながらやっていく必要がある、こういうふうに報告書の中でも閉じこもり等については触れられているところでございます。

 先ほど私御答弁申し上げましたように、閉じこもり等の予防という趣旨に立って、地域支援事業の中で、介護予防事業の中で、生きがいデイサービスというのは位置づけられる可能性はあると思いますけれども、例えば週何回あれば効果があるかというのは、また実態を踏まえて、やはり、そこの地域の専門家あるいはサービス提供者、それから事業者の皆さんがケアカンファレンスする中で見出していただきたい、いくべきことではないかと考えております。

○水島委員
 恐らく、ケアカンファレンスの中で位置づけていくにしても、その参考になるデータというのはやはり必要だと思いますので、国として、介護予防などについてのナショナルセンターをちゃんとつくっていただいて、研究を積み重ねていただく必要があると思うんです。

 大臣にぽっと伺いますけれども、極めて素直に答えていただければ結構なんですが、直観として、週三回、つまり約一日置きに生きがいデイサービス、生きがいデイに出かけて、みんなと一緒に御飯を食べていろいろ手作業をしたりという生活と、週一回だけ、そこに出かけていくことしか許されないというのでは、大分介護予防効果が違うような感じがしませんでしょうか。
週三回、つまり一日置きに出かけていくのと、週一回だけというのでは、大分効果が違うような、直観で結構なんですけれども、しませんでしょうか。

○尾辻国務大臣
 それはやはり週三日の方が効果があるというふうに思います。

○水島委員
 さすが、現実感覚を忘れていらっしゃらない大臣の御答弁と伺いましたので、宇都宮市の方たちにもぜひ今の大臣の答弁を参考にしていただきたいなと思います。

 きょうは、本当は私、もともと介護についてはうつについての質問を担当しようと思っていたんですが、どうしてもここまでの議論の中でのデータの扱い方を見ていられなくなってしまって、大分質問の時間を余分に使ってしまいましたので、ぜひ、理事の皆様には、私にあと三十分ほどうつで質問時間をいただきたいなということをお願いしておきたいと思います。

 最後に、きょう、残りました一、二分を使いまして、一つだけ、うつと関係のないことを質問させていただいておきます。
 介護保険の対象なんですけれども、末期がん患者を介護保険の対象に含めるという議論について最後に一つお伺いします。
 私は基本的にはそうすべきだと思っておりますけれども、二月十六日の日経新聞を見ましたら、「末期のがん患者 介護保険対象に」という記事が載っておりまして、「政府・与党が調整」と書いてありました。
なかなかそれ以外で記事を見つけることはできなかったんですけれども、この中に、「乳がんや小児がんなど「加齢」を原因としないがんは対象から外すなど、給付対象とする患者の条件を詰める。」と書かれていて、私も医者の端くれとしてすっかりわからなくなってしまったんですけれども、加齢を原因とするがんというのはどういう定義なんでしょうか。

○中村政府参考人
 お答え申し上げます。
 なぜ加齢ということが問題になるかと申し上げますと、四十歳以上で現行の介護保険制度の対象となりますのは、特定疾病に該当している人というふうになっております。
特定疾病の要件としては、加齢に伴う心身の変化に起因する疾病ということになっておりまして、現在、十五の疾病が指定されているわけでございます。

 今の末期がんの議論は、一方、がんは我が国の第一の死因であり、末期がんの方で、介護サービスがあれば住みなれた自宅で最期を迎えることも可能であり、そのような希望をお持ちの方も少なくないという状況でございますので、現行の介護保険制度の枠組みの中で、特に末期がんの方々について、可能な対応方策について検討するようにという与党からのお話もあり、私どもも、審議会の中でも、介護保険部会の中でも、ここについては早期に検討すべきではないかという宿題をいただいておりますので、検討させていただきたい。
 その際、さっき申し上げました、特定疾病の加齢に伴うという要件があるので、がんが全部入るのか入らないのか、こういう議論になっているということです。
 それで、ちょっとお答えさせていただきますが、新聞の報道ではそういう紹介のされ方をしておりますが、私どもとしては、この点については、それこそがんの専門家の御意見もよく伺い、また末期がんの問題に取り組んでおられます医療の現場の方、それから御家族の方、あるいは当事者の方の御意向もあると思いますので、もちろん法律で許される範囲ということもあると思いますので、とにかくまずは専門家の御意見を伺いたいと考えております。

○水島委員
 これは、原因という言葉を新聞で使っていたので驚いたのもあるんですけれども、がんの原因というのがそんなに簡単にわかるものだったら、多分みんな治っていると思いますので、何が原因のがんかなんというのはやはりわからないと思うんですね。

 例えば先天性の小児がんなんかを除けば、それは特殊な例ですが、それ以外のがんというのは、いろいろな環境はありますけれども、毎日生活をしていく中で、その習慣の中でいろいろなものにさらされ、例えば大腸がんだったら、大腸を繰り返し同じ食べ物が通っていくことによって、それが明らかにがんを発症するきっかけになっていくわけです。
 ある意味では、ほとんどすべてのがんが加齢に伴う、原因という言葉を使うんだったら加齢を原因とするということなんだろうなと思っておりますので、いろいろな方の意見を聞いていただいて、最終的には、小児がん以外はすべて、成人を対象としているがんの末期状態になったら、すべて介護保険の対象とする、その結論しかないんじゃないかなと思いますので、ぜひそんな方向に落ちつきますように、引き続きお取り組みをいただきたいと思います。
 質問を、うつのところを全部残しましたので、次回、もう一度質問させていただきたいということをお願いいたしまして、終わらせていただきます。
ありがとうございました。









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