厚生労働委員会
(2004年11月05日)



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児童福祉法の一部を改正する法律案@



○水島委員
 民主党の水島広子でございます。
 尾辻大臣、どうぞ、これからよろしくお願いいたします。
 大臣は長い海外放浪歴があると伺っております。
私の海外放浪歴はせいぜい一年ですので、大臣の足元にも及びませんけれども、勝手ながら親近感を持たせていただいておりますし、国際的に社会の隅々までごらんになった大臣だからこそ、幅広い視点から柔軟な厚生労働行政をしてくださると期待をしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、新たに厚生労働大臣になられての虐待問題への大臣の決意を伺いたいと思います。
 現在、日本でこれほど多くの子供たちが虐待されているということは、本当に深刻な問題でございます。
虐待されている子供たちにとって取り返しのつかない人権侵害であるというのは言うまでもございませんけれども、日本が子供たちをきちんと育てられない国という意味でも、政治的に大問題でございます。
 虐待を受けた子供たちは、自尊心に深い傷を負いますので、対人関係面でも、またみずからの能力の発揮という面でも大きなハンディを背負ってしまいます。
本日の御答弁の中でも、もしかしたら財源を理由に難色を示されるというようなものもあるかもしれません。
でも、子供たちをきちんと育てられない結果として、将来どれほどのコストを社会が払わなければならないかということを考えれば、子育て支援、虐待対策は本当に有効な先行投資でございます。
家庭の中でも、たとえ経済的に苦しくても、子供たちの生活費や教育費は何とか捻出するものでございます。
国レベルで見ても、財源がないということで簡単にあきらめられるテーマではないと思います。
まず初めに、この点についての大臣の御決意をお聞かせ願いたいと思います。

○尾辻国務大臣
 とにかくこの虐待の問題というのは、今大変深刻な状態にあるということを認識いたしております。
そして、本当に命を落とせば、もうそのままで、まさに命がなくなるわけでありますし、また、実質、一生を棒に振る、心に傷を負ったままもし生きていくとすると、そういうことにもなります。
したがいまして、これはもう何としてでも防がなきゃいけない問題だと思っております。

 それから、私は、かつて少子化対策などのときに、これは攻める側だったから気楽に言えたのかもしれませんが、そもそも子育てというのは金がかかるんでしょう、金かければいいじゃないですかと迫ったこともあります。
今は逆の立場なのでそこまで言える立場じゃありませんが、かつてそう迫った立場として、その思いだけは変えずに、またこの厚生労働行政を進めていきたい、こういうふうに思っておるところであります。
 そしてまた、虐待問題は、さっきから申し上げていますように、金は結構このところかけてきたと思いますので、金がないからという話は、これは、余りしないようにしたいというふうに思いますということだけをまず申し上げたいと思います。

○水島委員
 力強い御決意を伺わせていただきましたので、以後の御答弁に期待をさせていただきたいと思います。
 まず、今回の児童福祉法改正案で、私が昨年六月六日にこの委員会で問題提起をいたしました乳児院と児童養護施設の年齢要件の見直しについて、法改正という形できちんとこたえてくださったことに感謝を申し上げます。
本日の質疑でもいろいろな点を提起させていただきますので、また引き続きよろしくお願い申し上げます。

 さて、今回の児童福祉法改正案の一つのポイントとなっておりますのが、入所措置に二年間という期限が設けられたことです。
 確かに、今の日本では、ただ漫然と児童養護施設で長い時期を過ごさなければならない子供が多いというのは大変な問題でございます。
私たちも児童虐待防止法を改正する際にこの点を重く認識し、虐待を受けた子供たちが良好な家庭的環境で成長する必要があるということを明記いたしました。
 いつも不思議に思うことですけれども、男女共同参画や選択的夫婦別姓などを議論すると家庭の大切さを主張される方たちが、被虐待児の置かれている状況については必ずしも熱心に取り組まれないのは一体どういうことなんでしょうか。
家庭が大切なのはどんな子供にとっても同じですし、虐待によって心身に傷を負い、さらに愛着関係を奪われた子供たちにとっては、ますます家庭的な環境で愛着関係を育てることが重要だと思います。
家庭の大切さを憲法改正の論点にしようとすらおっしゃっている方たちがおられるようですけれども、あれだけのエネルギーを持って被虐待児に良好な家庭的環境を保障するために努力してくだされば、事態はとっくに改善しているはずなのにと残念に思っております。
 そうはいっても、知らないことには関心も持てないでしょうから、この審議を通して、もっと多くの皆様がこの領域に関心を持っていただきたいと思っております。
 そして、大臣には、家庭の大切さの議論が出たときには必ず、厚生労働大臣として、被虐待児にも家庭的環境が大切なのだということを言い添えていただきたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○尾辻国務大臣
 今、最後におっしゃったことは、お約束をいたします。

○水島委員
 ありがとうございます。
よろしくお願いいたします。

 さて、法案に戻りますけれども、漫然と施設に入所させておかずに、環境改善のための努力を常にしていくという趣旨であれば、二年という期限をまず設けることは理解できます。
ただし、二年という期限だけがひとり歩きしてしまって、二年間何もせずに待てば子供が帰ってくるというふうに親が一方的な期待をするというのが心配です。
 二年目は指導措置の効果や環境調整のチェックポイントであって、二年たてば必ずしも帰すわけではないということを、どうやって親や、また関係者に理解させていくかということが一つの重要なポイントだと思いますけれども、これについてはどのようにしていかれるつもりでしょうか。

○伍藤政府参考人
 今回の法案の改正の中で、御指摘のとおり、従来、子供を親から引き離して措置をする場合に、その期限がなかったわけでございまして、この点について、いろいろな方面から、司法関与を強めるべきであるとか、期限を設けるべきであるとか、いろいろな御指摘がなされておったところでございます。
 そういった観点から、今回、一応、家庭裁判所の承認を得て児童を親から引き離して施設等に措置をする、そういった場合にも一応期限を二年と区切るということで、そういう改正を提案しているわけでありますが、これは、そういう期限を区切ることによって、保護者にも一定の理解を得られるし、それから定期的に第三者がチェックをする、そういうことも期待できるということから行うわけでありますので、二年を経過すると児童が保護者のもとに必ず戻ってくるということではないわけであります。
それは委員御指摘のとおりでありますので、こういった趣旨のことを、私どもこれから、もしこの法律を改正、成立をいたしましたら、児童相談所長会議でありますとか、いろんな各都道府県の担当課長会議等を通じて趣旨を徹底するように努めていきたいというふうに思っております。

○水島委員
 ぜひそういうふうにしていただきたいですし、本来であれば、法律をつくられるときに、まず二年を期限とするというふうに書き切ってしまうことよりも、そのような定期的なチェックが必要なんだということがもっとわかりやすいような形で法案をつくっていただきたかったとは思いますけれども、いずれにしても、その周知徹底をしっかりとしていただきたいと思っております。
 そして、今度、親元に帰した後のことでございますけれども、親元に帰した後という時期は、特に虐待の再発リスクに注意をしなければならない時期でございます。
指導効果があらわれて、もう虐待はしないと決意をしている親であっても、子供が戻ってくるというのは生活上の大きな変化であって、ストレス要因となり得るわけです。
虐待というのは精神的、経済的余裕のないところに起こりやすいものでございますので、当然、親元に帰した後の時期というのは、虐待再発のリスクのある時期だというふうに言えると思います。
 親元に子供を帰した後は、そういう意味では特に児童相談所とのかかわりが最も重要な時期となると思いますけれども、実際には、これをきちんと確保していくことが難しいという現実がございます。
これをどうやって確保していかれるおつもりでしょうか。

○伍藤政府参考人
 子供が家庭へ復帰をした場合に、その後のアフターケア、これが非常に重要なことは御指摘のとおりであります。
 こういった観点から、どういう体制で家庭復帰後の子供を見守っていくかということでございますが、今回の法律改正で提案をしておりますのは、地域で要保護児童対策地域協議会、いわゆるネットワークをつくっていただいて、身近なところでいろんな関係者がそういう要保護家庭にアプローチできる、あるいは目を光らせるといいますか、そういう意識を持っていただく、こういうことがまず必要かと思っております。
それから、施設を退所するわけでありますが、その施設そのものにも、施設を退所した後も、ぜひ退所後の児童についてどうなっているかという関心を持っていただくといいますか、アフターケア、こういったことを業務としてやっていただきたいということでこれを追加する、そういう法律改正を提案しておるわけであります。

 それから、肝心の児童相談所は、そういうことを踏まえて、児童がどうなっておるか、どういう状況に置かれているかということをきちんと定期的に見守っていくということが大変重要なことでありますから、継続的なかかわりを持つように、持てるように、今後、児童相談所の運営指針などにおきましても、こういう措置解除後の継続的なかかわり、こういったものの重要性について明記をするというような形ではっきりさせ、それを周知徹底を図っていきたいというふうに思っております。

○水島委員
 現在でも児童相談所の側ではそれが重要であるということを十分認識しながらも、実際にはそこまで手が回っていないというのが現実のようでございますので、周知徹底するだけでは恐らく足りないのだと思います。
 その点も含めてきちんと考えていただきたいんですけれども、そのように児相側からのアプローチを続けていったとしても、実際には途中で、指導のため児相とのかかわりを持たせるための児相に親が来なくなってしまうとか、あるいは指導を途中で断られてしまうとか、そのようなケースが実際にはあるわけでございます。
言われたとおりにずっと指導をきちんと受けてくれるような親だったら、もしかしたらそもそも虐待に及ばないのかもしれませんけれども、実際にはその指導が途中で切れてしまって、それをもう一度つなぐだけの人手がないためにそのままになってしまう、そんなケースが多いのではないかと思います。
 虐待が再発すれば、それはもちろん、もう一度、一時保護から入所措置というような手段をとることができるわけですけれども、虐待が再発しているという証拠もない、けれども親が指導措置を受けなくなってしまったと、そのような場合には、法的にそれをきちんと確保する手だてというのが今実際にないわけでございますけれども、これを一体どういうふうに考えていくべきかということなんです。

 私たちの考えとしては、本来は措置解除をするときに条件をつけておいて、例えばきちんと指導を受けるという条件をつけておいて、それが破られる場合には、虐待が明らかに再発している場合でないとしてももう一度家裁の許可を得て入所措置をとるくらいの枠組みが実際には必要ではないかとも思っているわけですけれども、現在、そのような法的な枠組みがない中で、どうやってこれをきちんと確保していくかということについてはどのようにお考えでしょうか。

○伍藤政府参考人
 現実問題として、個々具体的な事例にどう対応していくか、これが一番児童相談所でも頭を悩まし、また大変難しいところでございます。
御指摘のようなケースにどう対応していくか、私どもも明快な方針といいますか、そういうのがあるわけではありませんので、このあたりは、どういうふうに具体的な事例を積み重ねて、ケースワークを積み上げて、どういった方法がいいのか、国レベルでも研究していきたいと思いますし、また現場からのいろんな提案なり具体的な事例というものを集積してみたいというふうに思っております。

 ただ、一般論として、粘り強く保護者指導を受けるということを説得するということがやはり基本でありますが、そうでない場合には、虐待防止法にあります都道府県知事の勧告でありますとか、あるいは、場合によっては児童相談所による立入調査にまで踏み込むというようなことを機動的にどうやって活用するか、こういったことがポイントだろうと思います。
 いずれにしても、そういう、継続的になかなか難しい、保護者を相手にしてどういうふうにしていくかということについては、具体的な手だては限られておりますから、そういったものをいかにうまく駆使して、活用していくかということについて、私どももいろいろ研究をしていきたいというふうに思っております。

○水島委員
 先ほど私が提案をさせていただいたような枠組みも含めて、ぜひきちんと考えていただきたいと思っているんです。
もちろん、現状でも、児童相談所のアプローチが難しくても、例えば母子保健課ですか、のような方たちは、子育て支援としてやってくるのであれば、そんなに警戒しないで受け入れることができるというようなことも当然あるわけでございますので、本当に、使える資源を何でも使っていただきたいと思うんですけれども、そういうやり方を考えていく上でも、やはり子育て支援と虐待対策といわゆる子供の健全育成というのは実は同じことを扱っているのだと私は思っております。
 今まで少年院などの視察を続けてまいりまして、いわゆる非行に及ぶ子供たちで被虐待経験のない子を見つける方が今では難しいというふうに感じております。

 今の日本で、子供たちが、ただ物を与えられて放置されて、大人たちにきちんとかかわってもらっていないということも、広い意味でのネグレクトだと思っております。
ですから、子供たちをきちんと育てていく、そういう言葉が好きな方たちに言わせればそれを健全育成と言うようですけれども、いわゆる健全育成というものをしていくためには、まずはどれだけ大人たちが適切な方法で子供たちとかかわっていくかということを考えるのが最優先課題であって、それさえきちんと押さえていけば、子供たちは案外健康に育っていく力を持っていると私は思っております。
 そのときに、そのような意識がないと、健全育成施策だけが現実離れしたゆがんだものになっていってしまって、かえって子供たちにとって有害になり得るというふうにも思っておりますので、全体的な枠組み、今子供たちがどういう環境で育っているのかということへの認識というのはとても重要ですし、健全育成施策と子育て支援と虐待対策というものは常に連携させていく必要があると思っております。
この点についての大臣の御認識はいかがでしょうか。

○尾辻国務大臣
 先ほど御答弁申し上げましたときにも、つい、子育て支援センターということを申し上げました。
あのときに私が申し上げたのは、今まさに委員が御指摘になっておられるようなことを頭の中に描いて申し上げたつもりであります。
したがいまして、今のお話はまずそのとおりだと思います。

 ただ、では具体的にそうしたものをどうやるんだということになりますと、これは私どもが今から真剣に考えなきゃいかぬ問題だと思いますので、そのことはぜひ今のお話を念頭に入れつつ、全体の何か絵をかいてみたいなと今思っておるところであります。

○水島委員
 そのような認識を持っていただいている大臣であれば、小泉内閣の一員として、最近どうも健全育成施策というのが何かひとり歩きをしてしまって、現在子供たちが置かれている状況を何も知らない人たちがあれやこれやと理屈をこね回しているような印象を受けておりまして、大変懸念しておりますので、そのような統合的な考えに立って進めていくべきなのだということを、ぜひそれは声を大にして訴えていただきたいと思っております。
 それは、恐らく、子育て、健全育成というようなことになりますと、むしろ厚生労働省の所管ではなくて内閣府だとか、そういう話になってくるのかもしれませんけれども、そういう縦割りのような考え方はもう一切排して、この現場をよく知っていらっしゃる厚生労働大臣として、しっかりとそれはおっしゃっていただきたいと思っております。

 さて、今度は各論になります。
 そのような総合的な施策の中では、本日も、午前中の審議の中でも指摘がありましたけれども、やはり妊婦健診とか乳幼児健診などを虐待防止にもフルに活用すべきであると私は思っております。
母子手帳をもらいに行ったときから虐待防止は始まるべきだと思っております。
実際にデンマークなどでは、地域のネットワークがきちんとできていて、妊婦健診ですとか、あるいは出産時の病院での様子ですとか、あるいはその後の健診などで、ここはもうサポートが必要だと思うような家庭については、きちんと地域のセンターに引き継がれて、サポートが行われている、そんなふうに昨年も視察で見てまいりました。

 日本では、やるとしたら、まず乳幼児健診に来ない子供たちのフォローをきちんとしていくということだと思っております。
それが今日本で一番現実的な形ではないかと思います。
既に先進自治体ではそのような取り組みを始めているわけでございますし、厚生労働省としてもそのようなお考えだというふうに先ほど伺ったところでございますけれども、ただ、その来ない家庭に対して実際にそこを訪問するという訪問事業、これは当然夜間や休日も行わなければいけないものだと思いますけれども、この点については、きちんと現実的な体制を考えられていますでしょうか。

○伍藤政府参考人
 乳児健診等で、受診をしない家庭に積極的に行政の方からアプローチをする、こういう対策が虐待予防のためにも非常に有効であるということで、本年度から、育児支援の家庭訪問事業というようなことも国の補助事業として進めておるところでございますが、自治体の取り組みがいまだしというところでございまして、これを、まず市町村にそういう趣旨を徹底して、普及をしていくということが必要ではないかというふうに思っております。
 それから、本年三月末に、死亡事例を検証した際にも非常に乳児の割合が高かったというようなことも踏まえて、新生児訪問、あるいは健康診査を受診されない方への対応を図るべきだというような通知を発出して、そういった面での取り組みを今求めているところでございまして、自治体にまずこういったことの意識の浸透を図っていきたいというふうに思っております。

○水島委員
 質問には答えていただいていないんですけれども、意識の浸透を図るとともに、まず実際に、乳幼児健診に行かれないケースというのは、私が住んでいます宇都宮市でも、乳幼児健診の指定日というのは平日になっているんですね。
平日ですから、まず連れていくことができないわけです。
そうやって、行かれなかったところにもし訪問していただくとしたら、当然、平日の昼間は難しいというような家庭であるわけですので、夜間や休日の対応というのをきちんと考えていただくというのは大原則になると思いますけれども、そのあたりのことは御理解いただいていますでしょうか。
 平日の九時から五時に訪ねてみて、いつ行っても留守で会えないんだということで、どこかでまた子供が放置されるようなことがないように考えてくださっているでしょうか。

○伍藤政府参考人
 それぞれの自治体でどういう形で取り組んでおるかというのを全体的、網羅的に把握をしておるわけでありませんから一律に申し上げられませんが、そういう工夫をしている自治体もあるんではないかと思いますが、そのあたりの、御指摘のあったようなことについても少し念頭に置いて、この事業の推進に取り組んでいきたいというふうに思っております。

○水島委員
 ぜひそうしていただきたいと思います。
 それから、先ほど乳幼児健診の受診率が約九割というような御答弁があったかと思うんです。

 例えば、私の例で申しわけないんですけれども、私もそんなわけで子供を乳幼児健診に、二人目の子はなかなか連れていけないんですけれども、そうしましたら、先日宇都宮市からはがきが来まして、乳幼児健診に来なかったのはどういうわけかと、その理由に丸をつけるようなはがきが来ました。
私はとりあえず、主治医にやってもらったというところに丸をつけて送り返しましたら、その後何のおとがめもなしで。
 私の場合は、たまたま親しい小児科医の方がいらっしゃるので、実際に診ていただいてはいるんですけれども、これがもし、私がいいかげんに、ただ丸をつけて返しただけだったとしたら、これっきり何もないというのでは、余りにもちょっと不安だなというふうにも感じましたし、先ほどの九割という数字は、もしかしたら、そのように、別の機関でやったというようなことも単に統計的に処理をしての九割なのかもしれないなと思いながら伺っていましたので、そのあたりの実態をもう少しきちんと調べていただければということを希望させていただきたいと思います。
 実際に、乳幼児健診の当日はまだ虐待をするに及んでいなくても、そこで、実際に出かけていって、ついでにいろいろな人と交流して話も伺って、またそれで少し子育ての幅が広がるということもありますので、それは虐待のリスクを低下させるということにもなると思いますので、ぜひこの乳幼児健診については、仕事をしている人にとっても行かれるようなときにきちんと設定をしていただきたいと思います。
実は、これは予防接種についてもそうなんですけれども、それができないときの対応というものも、それはきちんと施策として取り組んでいただきたいと思っております。
 そして、支援の連続性という点から考えますと、実はこの虐待施策に関して大きいのは、転居への対応ということでございます。
転居先の児童相談所にうまく引き継がれずに、虐待が再発という事例は、報道されているだけでも少なくないわけでございます。
もう大丈夫だと思ったなどという弁明がよく述べられていますけれども、転居というのは普通の人にとってもありふれたストレス要因でございますので、虐待再発のリスクが高まるというのは常識的にも考えられるはずだと思います。

 改正虐待防止法で、「関係省庁相互間その他関係機関及び民間団体の間の連携の強化、民間団体の支援その他児童虐待の防止等のために必要な体制の整備に努めなければならない。
」というようなところでも、この関係機関の連携強化の一つとして、転居時の引き継ぎというものを含めるということが児童虐待防止法改正時に確認をされたことでございますけれども、残念ながら、この委員会できちんとその確認をする時間がございませんでしたので、ちょっときょうここで改めて、転居時の対応というものも今回の改正虐待防止法においてさらにきちんと法律に盛り込まれて認識が深められたというふうに理解させていただいてよろしいか、その確認だけいただきたいと思います。

○伍藤政府参考人
 先般の児童虐待防止法の改正によりまして、国及び地方公共団体の責務として、「関係省庁相互間その他関係機関及び民間団体の間の連携の強化、」というのが法律に明記されたところでありますが、その趣旨につきましては、一つは、国の関係省庁、厚生労働省でありますとか警察庁、文部科学省その他の関係省庁間の連携が一つでありますし、それから二つ目は、児童相談所と市町村、福祉事務所あるいはNPO法人、現場、地方におけるそういった関係機関の連携、これが二点目であります。
 そういった横断的な連携ということのほかに、児童が転居したときの自治体相互間の連携ということも当然含まれるというふうに理解をしております。

○水島委員
 ぜひこれからは、転居が理由で虐待が再発するのを防げなかったという事例が本当に一つもなくなるように、しっかりとこの虐待防止法の改正の趣旨を踏まえてお取り組みをいただきたいと思っております。

 さて、今回の児童福祉法の改正案で、虐待をした親に、児童相談所の指導を受けるよう、家裁が勧告するという仕組みが初めてつくられると聞いて、大変期待をしていたわけでございますけれども、実際の改正案を見てとてもがっかりいたしました。
なぜかというと、その勧告が、親に対してではなく都道府県、つまり児童相談所に対してという仕組みになっているからでございます。
これは、なぜ親に対しての勧告にしなかったのか、その事情をお知らせいただきたいと思います。

○尾辻国務大臣
 この辺のところは、関係省庁ともいろいろ調整をしたようでございます。
その中で出てきた理屈というのは、まず裁判所があります、児童相談所があります、この間の関係はいわば司法の関係で出てくる。
今度は、児童相談所と保護者との間というのは行政の部分であるから、司法の部分と行政の部分だと。
 したがって、司法の家庭裁判所が、司法、行政とくる、ここのところにいきなり、一挙に保護者にまで何か物を言うのはどうだろうかと、どうもこういう理屈の整理になって、こういう形にこの法律がおさまったというふうに聞いております。

○水島委員
 多分、その関係省庁というのは、一言で言うと法務省なんだと思います。
今おっしゃったように、児相が当事者であって、保護者は当事者ではない、何かそういう理屈を法務省の方がどうもおっしゃっているようなんですけれども、これは次回、時間がありましたら、法務省の方にぜひこの委員会に来ていただきたいと思っております。
 実際には、少年審判を見ましても、少年法の改正によって、法律上、保護者への訓戒、指導等ができるようになっているわけです。
この場合も保護者というのは決して当事者ではございませんので、そういう仕組みが既に法律上存在しているわけですから、今回の法務省の言い分というのは、私は法律の専門家でなくて申しわけないですけれども、そんな立場から見ても、ちょっとへ理屈ではないかなというふうに思っておりますので、これは次回、質問の時間がとれましたら、また法務省にも伺ってみたいと思っておりますけれども、とりあえず現行の枠組みできょうは質問をさせていただきたいと思います。

 勧告が児童相談所にされるということで、勧告そのものにお墨つきを与えようというのが今回の趣旨ではないかと思います。
この場合、指導措置を受けない場合、どうなるかということを考えなければいけないんですが、今回のこの法律の枠組みで考えますと、指導措置を受けない限り、親元に子供は帰されないというふうに解釈をしてよろしいんでしょうか。

○伍藤政府参考人
 この保護者指導というのは、虐待問題にどう対応していくか、あるいは再統合をどう図っていくかという上で非常に大きな論点でありますから、保護者指導を受けていただくということが非常に重要なファクターでありますが、いろいろな状況を勘案して、子供を親元に帰すかどうかということを最終的に、総合的に判断をするということでありますので、法律上、保護者指導を受けなかったということだけをもって、それのみの理由で必ずこの子供は帰すべきではないという結論に行くようにはなっておりません。
それも非常に大きなファクターでありますが、それも含めて総合的に判断をする、法律上の枠組みはそういうふうになっておるというふうに理解しております。

○水島委員
 保護者指導が必要だということを家庭裁判所も判断するようなケースであって、家庭裁判所が児童相談所に、保護者に指導を受けさせるようにという勧告をしているような枠組みがあってもなお保護者指導を受けようとしない保護者のもとにも、子供が帰されるということがあるんでしょうか、今の御答弁ですと。

○伍藤政府参考人
 基本的には、そういったことで帰すという判断はしないということが通常であろうと思いますが、全く制度的にそういうのがあり得ないのかというと、それはあり得ないようになっておるという仕組みではないということを申し上げたわけで、現実論としては、保護者指導を行うべきだという勧告を受けたようなケースについて、保護者が指導を受けない、保護者指導は受けないけれども保護者の状態が非常に改善されたということが論理的にはあり得るわけでありますから。
そういったことではありますが、実態としては、御指摘のようなケースについては、通常、親元に子供を帰すというような判断にはならないんではないかというふうに考えるところでございます。

○水島委員
 実は今、大変重要な審議をしておりまして、今回の勧告というものにどれだけの重みを与えるかということが今の御答弁にかかっているわけでございます。
 ここで、そういうケースは親元に帰すことはまずあり得ませんというふうにはっきり言っていただけると、これは、子供を帰してほしい親にとっては、ちゃんと指導を受けなければいけないというインセンティブが働くわけですが、ここで最初から、あり得ないわけでもなくて、あり得るんですけれどもというような答弁をされてしまいますと、何か、親としても、じゃ、そのちょっとしたチャンスをねらってみようかなというような気持ちにもなってしまうかと思うんです。

 ちょっと、もう一度整理して御答弁いただきたいんですけれども。
 そもそも、指導しなくても親が改善するようなケースに対してまで指導を受けることを勧告するということは、確率からいっても、まず非常に低いことだと思っておりますので、指導措置を受けることが家裁によって勧告されるようなケースであって、そして、それを親が拒否して指導措置を受けないという場合には、まず親元に帰されることはないでしょうと、ないでしょうで結構ですので、そういうふうに御答弁いただけますでしょうか。

○伍藤政府参考人
 家裁によってそういう指導の勧告がなされるというケースでありますから、かなりの問題があるケースであろう、そういう観点からいきますと、御指摘のとおり、基本的には帰すことはないというふうに考えてよろしいかと思います。

○水島委員
 ありがとうございました。
 そして、今回の枠組みの中ではそのようなことで進めていかれるということなんですけれども、やはり先ほど大臣が答弁してくださったように、裁判所の相手が児童相談所であって、保護者というのはその枠外であるというような、そういう構造が、ちょっと、私はそもそも問題だなと思っております。
 現在、裁判所がこの件にかかわっているポイントというのは親権にありまして、保護者と都道府県の間に入って調整をするという立場に裁判所はとどまっているわけでございます。
でも、本来は、子どもの権利条約によっても保障されている子供の権利を守るために司法がもっと機能すべきではないかと私は思いますし、そういう意見をお持ちの方もたくさんいらっしゃるわけです。
 このことについて、当然、裁判所のあり方ですから、厚生労働大臣としての御答弁は難しいかもしれませんけれども、裁判所がもっと子供の権利というものをきちんと守っていくように機能してもよいのではないか、家庭裁判所のもともとの生い立ちから考えましても、そのような機能を、もっと福祉的な機能を担っていってもよいのではないかということを、ちょっと一人の政治家としての御意見をお聞かせいただけますでしょうか。

○尾辻国務大臣
 児童の保護につきまして、司法がより積極的に役割を果たすべきだという御意見があることは私も承知をいたしております。
どちらかというと、私もそうは思いますが、この場でのお答えはそこまでにさせておいていただきたいと思います。

○水島委員
 私もそう思いますと答えていただきましたので、ありがとうございました。
 実際に、そういう枠組みについて真剣に議論すべきときが来ていると思っております。
子供の虐待だけではなくて、DVについてもそうでございますし、高齢者虐待という問題もございます。
そのように、司法といわゆる福祉施策の接点といいますか、そのような事例がここのところ本当に問題になっているわけですので、そういう中での司法の位置づけというものを、ぜひそのグランドデザインをきちんと描いていかなければいけないと思っております。
私たちもそういう努力をしていきたいと思っておりますけれども、ぜひ大臣の方でもお考えをいただきたいと思っております。
 今回、指導勧告ができるという仕組みになりましたので、そうなりますと、ますます指導の内容の充実というものも問われてくるわけでございます。

 改正虐待防止法第四条でも、児童虐待を行った保護者の指導及び支援のあり方についての調査研究及び検証を行うものとすると規定をさせていただきました。
この体制の整備はどうなっているのかということをお伺いしたいわけですけれども、それを伺おうとしましたところ、きのう、今私の手元にあります「子ども・家族への支援・治療をするために 虐待を受けた子どもとその家族と向き合うあなたへ」この冊子を御紹介いただきました。
これは児童虐待防止対策支援・治療研究会が編集をしているものでございまして、ことしの六月に発行をされているものでございますので、私が春に、通常国会のときに伺いましたときに、全く予告もしていただけなかったというのは、相変わらず情報の出し惜しみをされているなと思ったんですけれども。
きのうこれをいただきまして、ざっと読んでみたんです。
大変すばらしい内容だと思います。
本当に第一線の方たちが書いておられて、すぐに役に立つような、そんな冊子として仕上がっていると思いますので、私、読んで感動したわけでございます。
 このようなよい冊子ができて、私もきのうまでこの存在を知らなかったわけですけれども、実際に多くの方がまだ、きょうお集まりの議員の皆さんも初めてごらんになる方ばかりじゃないかなと思います。
つくったはいいけれども、活用されないというのは本当にもったいないことでございますので、この冊子の活用の仕方をどのようにされているのかということも含めて、またそちらの調査研究及び検証の体制の方は、これはもう法律事項で、この十月一日から施行されている法律に規定されていることでございますので、これらについてお答えをいただきたいと思います。

○伍藤政府参考人
 この「子ども・家族への支援・治療をするために」この冊子につきましては、初めてこういう形でまとめさせていただきましたので、これを都道府県などの現場にできるだけ周知するように配布していきたいというふうに考えております。
 それから、そのほかの調査研究とか検証、そういった問題についてでありますが、従来から研修につきましては虹センターという国の設置した研修機関があります。
ここで研修を進めておりますので、これの充実を図っていきたいと思っておりますし、それから調査研究につきましては、来年度の厚生労働科学研究で包括的に児童虐待におけるいろんな、効果的な早期発見の方法でありますとか子供のケアでありますとか、こういった、残されておる課題につきまして総合的に研究を進めていく、調査研究課題を設定して進めてまいりたいというふうに思っております。

○水島委員
 日本においても非常に立ちおくれている領域でございますし、こんなものがつくられているとは、私も知りませんでしたし、今まで虐待関係でいろいろな……(発言する者あり)これを知らなかったので、いろいろな虐待関係の、自治体の方もお集まりのようなところに私も講演などで顔を出させていただくと、どこに行っても、大体指導のやり方というのがないんだから、そうやって指導の勧告ばかりつくられても困るんだというような意見の方が現場でかなり多くいらっしゃるわけですので、とてもその周知徹底度というのは足りないと思います。
 またさらに、先ほどおっしゃいました研究につきましても、もちろんここを最終点とすることなく、もっときちんと進めていただきたいと思っております。

 今、同僚議員から希望が出ましたので、これを何部刷ったのかということを教えていただきたいと思います。

○伍藤政府参考人
 ちょっとこの場では、今何部刷ってあるのかというようなことは答えができませんので、調べてみたいと思います。

○水島委員
 済みません。
今の部分は私自身は通告していなかったので。
ぜひ後でお知らせいただきたいと思います。
 そしてこの本を読んでおりましても、中を見ますと、指導と言うけれども、指導してやるんだというような、そういう態度ではなくて、やはり支援する、一緒に取り組んでいくという姿勢がとても重要なんだということがこの本の中にも書かれておりまして、まさに私も同じ気持ちでございます。
だからこそ、虐待防止法を改正しますときには、指導ではなくて、指導や支援という形で、支援という言葉も使わせていただいたわけですけれども。
 今回は児童福祉法の改正案の中で一貫して指導という言葉が使われておりますので、それに沿って質問させていただいているわけですけれども、ぜひこのあたりの言葉の使い方についても、もちろん大きなくくりでいけば指導なのかもしれませんけれども、実際にやっている作業、また実際に親たちが必要としているものというのは、どちらかというと支援であって、虐待がどういうところに起こるかといえば、先ほども申しましたけれども、経済的な余裕がなくなったり精神的な余裕がなくなったり、そういうところに起こってくるものに対して厳しく指導していたら、ますます余裕がなくなってしまいますので、かえってそれは逆効果であるということを、多分厚生労働省の皆様は御認識だと思いますけれども、それはこんな言葉の使い方一つにもあらわれてくるところでございますので、ぜひその辺、これから言葉の使い方をもう少し慎重に考えていただきたいと思いますし、支援という色彩をもっと強く出していただきたいと思います。
 もちろん、私は虐待をする親をかばうつもりは全くございません。
子供にとっては、人権侵害であるということは間違いがないですし、そういう点では加害者であるわけですけれども。
 その点は、子供と分離して、子供の安全を図るという点で、きちんと対処するとともに、じゃ、実際に加害者はどういう人なんだということを見ていきますと、往々にして支援が必要な人であるという場合の方が多いわけでございますから、ぜひそのあたり、法律の用語につきましても、これに基づいて次のいろいろなものがつくられていくわけですから、一度慎重に見直しをしていただきたいと思っております。

 さて、今回の児童福祉法の改正で、児童福祉についての相談の一義的な窓口が市町村に移されるという大改正が行われるわけで、これについては既に質問されている方もいますけれども、私から見ても、大変懸念すべき改正点の一つだと思っております。
現在の市町村の状態では、とてもこの役割を担えないだろうと思っておりますし、多くの人が、市町村の方も含めてそのようにおっしゃっているわけでございます。
 窓口は身近なところで、そして難しい問題は後方でという考え方は確かに合理的な考え方だと思います。
でも、この考え方をとる場合には、窓口に専門家を置く必要があります。
この問題は一体どこで対応すべきなのかというのを判断するのは、まさに専門家でなければできない仕事であるわけです。
医療においても、ホームドクターと専門的な医療機関ということで役割分担を進めるという考えに私も賛成ですけれども、その場合、ホームドクターに問われる資質としては、これが一体どの程度の医療を必要とするものなのかという、その仕分けですよね、その専門的知識が必要となるわけで、虐待についても全く同じふうに考えなければいけないと思っております。

 九月に大変悲惨な児童虐待殺人事件が栃木県の小山市で起こりまして、民主党でも、私たち早速現地調査を行わせていただきました。
 この事件はまさに窓口の判断の誤りが致命的だったわけでございます。
虐待ケースとしてとらえていれば、あるいは虐待の可能性を少しでも念頭に置いて臨んでいただいていれば、その後の対応はがらりと違ったものになったでしょうし、最悪の事態も防げたと思います。
あのような初動ミスが児童相談所でも起こり得る。
小山の事件を扱った栃木県の県南児童相談所というのは決して素人の児童相談所ではございませんでしたので、そのような児童相談所でもあのような初動ミスが起こり得るという現実に直面をいたしまして、私は瞬間的にこの児童福祉法改正案のことを思い出しまして、背筋が寒くなる思いがしたわけでございます。
 今回の改正をする大前提となるのは、やはり市町村の窓口の専門性をどう確保するかということだと思います。
まず、このような改正を提案された厚生労働省としての考え方と、その取り組みの方針を、これは大臣にお答えいただきたいと思います。

○尾辻国務大臣
 冒頭にお話しいただいたものですから、つい私からもお話ししたくなったんですが、御尊父とは参議院の委員会でも随分いろんな議論をさせていただきました。
そのころに、今のお話で申し上げると、総合診療科などというのが必要なときになったんじゃないですかねなどという話をさせていただいたことを思い出しました。
 そんなことを申し上げて、今の御質問に対してお答え申し上げたいと思います。

 各市町村におきまして児童虐待に対応するための体制を整えていくということは、もう今のお話のとおりに大変重要なことだと考えておりまして、国といたしましても、今年度予算におきまして虐待の未然防止の観点から、みずからは訴え出ない、過重な育児負担のある家庭を訪問し、育児支援を行う事業を創設するとともに、市町村の保健師について、虐待予防を担うことも念頭に、平成十三年度から十六年度までに、全国で千三百人の増員が行われるよう地方財政措置が講じられるなど、その充実に努めてまいったところでございます。
今申し上げておりますのは、保健師に大きな期待をしたいということを申し上げておるわけでございます。
 市町村において、児童相談を担当する職員や保健師の増員など、所要の交付税要望を今私どもも行っておるところでありまして、ぜひこの要望が実現するように努力して、今の窓口でまずはきっちり対応できるという体制を整えたいというふうに考えておるところでございます。

○水島委員
 今回の改正の中でも、児童相談所の所長さんに研修が義務づけられるですとか、やはり児童相談所そのものの専門性を高めるということも一つの大きな課題であるわけで、今までその枠組みにそういう形で入っていなかった市町村が、ある意味ではそれ以上の専門性をこのたび要求されるということになるわけですので、これはちょっとやそっとの対応では間に合わないのではないかというふうに思っております。
 これは、私たちは、市町村にまずは児童福祉司を必置するぐらいのところから始めなければ、こんな改正はできないんじゃないかというふうにも考えて、今まで主張をしてきたわけでございますけれども、実際にこの法改正がされて動き始めたときに、窓口ミスというものが今までよりもふえるようなことがあったら、法律なんて変えなければよかったということになりますので、その点については、どんなに慎重に対応しても慎重過ぎることはないと思います。
 もう少し、それならば安心というような何か御答弁が考えられれば、まあ、きょうのところの御答弁はそのようなところだと思うんですけれども、まだ審議は続いておりますので、できましたら、この審議が終わるまでの間に、そういうことだったらこちらも安心して今回の改正に踏み切れるというような、もう少し取っかかりをいただきたいというふうに思っておりますけれども。
 ちょっとここで、その先を読んで心配をしまして質問させていただきたいんですが、これは、法改正された場合でも、虐待について児童相談所に直接通告するということももちろん認められるんでしょうか。

○伍藤政府参考人
 当然、児童相談所にも通告をできますし、現在でも、児童相談所と、それから、社会福祉事務所にも通告をできるよ、こういう体制になっている。
それにさらに市町村が加わる、こういう重層的になるということでございます。

○水島委員
 そして、基本的には、虐待については児童相談所が責任をとるという形になりますでしょうか。
その点を確認させていただきたいと思います。
 窓口が市町村で、虐待など難しい事例については児童相談所でというふうに説明を伺っておりますが、虐待というのは基本的に全部難しいケースですので、虐待はすべて児童相談所で責任をとっていただくというふうに理解をしてよろしいでしょうか。
何か事件が起こったときに、児童相談所の方が出てきて、いや、これは市町村のせいですなんというふうに言いわけをするのを、もう絶対に聞きたくないと思うんですけれども、その点、ちょっと大臣にこれはきちんと御確認をいただきたいと思います。

○尾辻国務大臣
 おっしゃるとおりに、もう虐待というのは深刻な事態でありますから、そうなると、今私どもが御説明申し上げておるところでは、当然児童相談所の役割になる、このことはもうはっきりしていると思いますから、そのことを別にここで否定するものでも何でもございません。

 それから、先ほどのお答えにもう一つだけつけ加えさせていただきますと、市町村の相談援助に関するガイドラインを私どもつくろうということは先ほど来御説明申し上げておりますから、今の先生の御指摘などを踏まえたガイドラインにさせていただきたい、こういうふうにお答え申し上げておきます。

○水島委員
 恐らく、市町村の体制が整備されていく、またそこで人がきちんと確保されて、その質が一定レベルに達していくまでにはある程度時間がかかるというのは、普通に考えても当たり前のことだと思いますので、今度法改正されたから、これは市町村だ、これは児童相談所だということで、そのすき間に落ち込むようなケースが出ないように、しっかりと軌道に、いつ乗るのかわかりませんけれども、軌道にしっかりと乗っていくまで、これは市町村合併のこともありますので、本当に軌道に乗るには、私、かなり時間がかかると思うんですけれども、それまでは、児童相談所がやはり今までどおりの役割を果たしていくということ、当然、窓口としての役割を果たすということも重要だと思いますので、その点については、法律が変わったからさっと手を引くというようなことがないように、しっかりと御指導いただきたいと思っております。
 そして、今おっしゃった市町村のガイドラインにも関連してくると思うんですけれども、私も、今回小山の事件を見てまいりまして、最初の認識が間違った背景には、警察と児童相談所の連携の悪さももちろんございましたけれども、虐待を把握するためのアセスメントツールの不備がやはり気になりました。
 児童福祉司個人の経験と勘だけを頼りに虐待を見つけるような段階はもう超えなければならないと思っております。
もちろん、最後のところでは経験と勘というのは常に重要な要素になるわけですけれども、少なくとも基本的なレベルでは、だれがやっても一定水準が確保されるようなツールをつくる必要があると思っております。
どんなケースの相談を受ける場合でも、面接において聞くべき事項、注意すべき事項をきちんとリストアップして、虐待の可能性をまずは検討するということが、これは虐待相談という形で受けたものでなくても、どんなケースでも子供に関するものであればまず虐待の可能性を除外する、そういう作業が必要になると思っております。
 厚生労働省でもこのアセスメントツールをつくる準備を進めているというふうに聞いておりますけれども、いつまでにどんなものをつくろうとされているのかをお答えいただきたいと思います。

○伍藤政府参考人
 さまざまなケースに児童相談所がどういうふうに対応していくかということで、それをある程度マニュアル化する、こういうことが必要でありますが、そういった観点から、本年の二月に専門家による研究会を設置いたしまして、御指摘のようなアセスメントツールといいますか、そういったものについての検討を今進めておるところでございます。
 内容については、例えば、相談を受け付けた段階で、相談援助の方向性とかあるいは初期対応などを検討する際に必要な基本情報をどういうふうに確認をして集めるか、こういった評価の指標を集める、あるいは子供の年齢等に応じて、適切な相談援助の方針を決定する際に必要な基本情報はどういう形でどういうふうに整理するか、こういった幾つかのアプローチを試みておるところでありますが、こういったものをきちっと評価して、その整理をして、それで、それぞれの児童相談所で使えるように、こういうふうな体制に持っていきたいと思っております。

 具体的には、これらの指標について、本年度中にできれば作成をしたいということで、今研究会の作業を進めておるところでございます。

○水島委員
 今、それぞれの児童相談所で使えるようにというふうにおっしゃったんですが、これは、窓口が市町村になりますと、市町村でも使えるようにというふうに考えていいんでしょうか。

○伍藤政府参考人
 児童相談所以外にも、御指摘のような市町村でありますとか、あるいは場合によっては児童福祉司の関係施設等でもそういったものを活用できる、そういうふうにしていきたいというふうに思っております。

○水島委員
 活用できるというよりは、実際に最初の受け入れ段階で虐待の可能性というのをチェックするためのガイドラインであるとも思いますので、必ず市町村では、受けたときにはそれに基づいてチェックをするというような形で体制をつくっていただかなければならないと思いますので、よろしくお願いいたします。

 さて、小山の事件でもう一つ思いましたことは、児童相談所の第三者評価をどうするかということでございました。
処遇会議という相談所内の検討会議はございますけれども、基本的に、児童相談所というのは閉じた場でございます。
ですけれども、小山の事件のように、児童相談所そのものが間違ったとらえ方をして対応を進めている場合には、大きな事件にでも発展しない限り、それが修正されるチャンスというものがございません。
そして、今回の事件のように、そのときには既に手おくれになっているということが多いのが現実です。
チェックをするには専門家の目が必要でございます。
小山の事件でも、加害者を父親が力で抑えるというようなところに児童相談所が期待をして、子供を返してしまっているわけですけれども、暴力をもって暴力を抑えるという構造がどれほど危険なものかは専門家であればだれでもわかることだと思います。
 そのような観点をもって、児童相談所のやっていることをチェックしていくための仕組みというのをどのように今考えられますでしょうか。

○衛藤副大臣
 現在においては、私どもとしては、職員の専門性確保のための取り組み、業務の方法等について、実情を把握することが重要というぐあいに考えております。
厚生労働省職員及び外部有識者をすべての都道府県それから政令都市に派遣して、ヒアリングを行いたいというぐあいに考えております。
 なお、ふだんの中におきましては、モデル事業等を導入しまして、外部の方々の意見がもっともっと反映できるように、いろいろな形で相談ができるようにという体制整備を急いでいるところでございます。

○水島委員
 今現在でも、自治体で児童相談所がみずからそのケースをかけて議論する、そのような協議会というか審議会というか、そういうものはあるようですけれども。
 実際に、小山の事件のように、事件化するまで児童相談所側に問題意識がなかったというようなケースは、そういう仕組みではどうしても救済されないわけですので、専門家が中に入って、定期的に児童相談所の抱えているケースについてきちんと評価するとか、あるいは、最初に受け入れて、その処遇を決定する段階で、もっと外部の専門家の目を入れるとか、何かそういう形の仕組みが必要だと思っております。

 私も、今これといって、こういう仕組みをすぐつくってくれというアイデアを持っているわけではないんですけれども、今申し上げたような方向に沿って少し御検討いただきたいと思います。
こちらでもまた考えさせていただきたいと思っております。
 時間がなくなってきましたので、多分次の質問ぐらいまでしかできないんですけれども、ことしの二月に、厚生労働省は虐待による死亡事例の検証を初めてしてくださいました。
前から、検証してくれしてくれと言い続けてきましたので、やっとやってくださったというので、ちょっと遅かったという気はするけれども、何もやらないよりは、とにかくやっていただくというのはいいことでございますので、遅かったけれども、よくやってくださったというふうに評価をしております。
 死亡事例の検証をしていただいて、そしてそれを全国の自治体に周知をしていたはずなのに、今回の小山の事件をなぞってみますと、その検証の中の、児童相談所がかかわっていた例というところに挙げられているその要件がかなり当てはまっている、つまり、その検証例をなぞるような事件が実際に小山でまた起こってしまったわけでございます。
これは、まさにその検証、そしてその周知徹底作業というものが生かされていなかったということになるわけですけれども、この点については、今後、どういうふうに改善されていかれますでしょうか。

○衛藤副大臣
 そのとおりでございまして、早速現地に厚生労働省の方からも行きまして、派遣をして、そのことをちゃんと調べたところでございます。
 そういう状況の中で、社会保障審議会児童部会のもとに児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会を設置いたしまして、専門的、多角的な観点から、児童虐待の死亡事例などの重大事案の検証を行うということをまず第一点目としてやりたいと思っております。
 それから、先ほど申し上げましたように、全国の児童相談所の実情を把握するために訪問調査を行います。
 それから、初期段階の情報収集とその評価のための指針を、専門家の意見を得つつ作成し、周知徹底したいというぐあいに思っているところでございます。

○水島委員
 周知徹底ができていなかったのをどう改善するかということを質問したので、ちょっと今のは御答弁に余りなっていなかったように思うんです。
 時間がなくなってしまいましたので、ちょっとその点は本当に――周知徹底といっても、ぱっと書類を送っただけで、それが自分のところの問題なんだ、自分のところでも起こり得ることなんだという意識を持っていただくということが周知徹底の際の重要なことでございますので、この点については、きちんと改善されたということがわかるような何かお取り組みを考えていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。
 通告をしていた質問も全然終わっておりませんし、また、小児慢性特定疾患についても質問をさせていただきたいところもございますので、また来週時間をぜひいただきたいと思っておりますが、この領域、本当に幾ら質問しても、し足りないくらいにまだまだ取り組みが必要な領域でございますので、ぜひこの審議を通して、また、審議が終わった後も、大臣にはしっかりとした御認識を持ってお取り組みいただけますようにお願い申し上げまして、質問とさせていただきます。

ありがとうございました。





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