厚生労働委員会
(2004年5月7日)



質問バックナンバー|HOME
   

年金審議A



○水島委員
  民主党の水島広子でございます。

   強行採決後の質疑ということで、キツネにつままれたような、大変奇妙 な気持ちで今この場に立たせていただいておりますけれども、とりあえず 質問させていただきますので、本日もよろしくお願いいたします。
 そして、質問に先立ちまして、やはり先日の強行採決につきまして心か ら抗議を申し上げますし、また、強行採決の当日、閣僚の年金保険料の納 付実績についての公表、これを、約束を破って強行採決後まで引き延ばし たということの責任は、私は余りにも重いものだと思っております。
この 点につきましても、改めて強く抗議を申し上げたいと思っております。

 まず、強行採決は大臣の意思ではございませんけれども、内閣の一員と いたしまして、約束を破ったということ、このことについて、坂口厚生労 働大臣から一言コメントをいただきたいと思います。

(発言する者あり)

○坂口国務大臣
   枝野議員との質疑の中で、皆さんにお願いを申し上げて、そのようにさ せていただきますということを申し上げたわけでありまして、閣僚の皆さ ん方にお願いを申し上げて、そして提出の了解を得たということでござい ます。
 時期が若干ずれましたことは申しわけなかったというふうに思っており ますが、しかし、皆さん方がそれに沿ってそれぞれ発表していただいたと いうことでは、責任を果たしたというふうに思っております。

○水島委員
   坂口大臣らしからぬ御答弁でございましたけれども、これは、官房長官 みずからが、採決の時期を考えて公表の時期をずらしたというふうにお認 めになっていることでございますので、内閣として、本当に真摯に反省し ていただきたいと思いますし、きちんとした形で責任をおとりいただきた いと思っております。
 また、私、今、まさかそんなやじが飛ぶとはと思っておりましたけれど も、自民党席から、菅さんに聞けというやじが飛びました。
ここで私が問 題にしているのは、今、約束を破ったということを申し上げているのであ って、なぜあなたは約束を破ったんですかと言われたときに、あの人はこ ういうことをしているじゃないかという、全く見当違いのことを言ってく るというその精神構造が、私は非常におかしいと思っております。
 皆さん、子育てされるときに、御自分のお子さんに対して、何で約束を 破ったんだ、約束を守りなさいと子育てされると思いますけれども、お子 さんに対して、何で約束を破ったんだと言ったときに、だってお父さんは きのうの夜遅く帰ってきたじゃないかなんて言われて、それで済まされる んでしょうか。
その点について、今御自身がやじられた内容について、き ちんとお考えいただきたいと思っております。

   そしてもう一つ、ちょっと気になっていることでございますけれども、 五月三日の朝日新聞を見まして、ちょっと驚きました。
これは安倍自民党 幹事長がワシントンでコメントされたことでございますけれども、この年 金の保険料を払わないということについて、「保険料を払っていない人は もらえない。
年金財政上も、その人には出さないからロスにはならない。
」 と弁護したと書かれております。
 これは、つまり、払わない人はもらえないんだから、その人の勝手だろ うという趣旨のことだと思いますけれども、そのことと、一方で強制徴収 をしてまで年金保険料を取っているということは矛盾していると思うんで すけれども、これはどういうことなんでしょうか、坂口大臣。

○坂口国務大臣
   幹事長の御発言は幹事長にお聞きをいただきたいというふうに思います が、それは、一つは、いわゆる年金財政上の問題として損得勘定がそこに 生ずるかどうかという話と、それから年金制度としての問題と、分けて考 えなきゃいけないんだろうというふうに思います。

   財政再建上の問題としては、払わなかったその分は、その人には年金が 出ないですから、それはプラスマイナス、長い目で見ればありませんよと いう話になるんですけれども、年金制度といたしましては、これは自分の ためのみならず、現在の高齢者のために今負担をし、そして自分たちは将 来また若い人たちの保険料によって年金を得ることができ得る、そういう 制度でありますから、払わなくていいということでは制度としては決して ない、そういうことだと思います。

○水島委員
   坂口大臣のおっしゃるとおり、やはり年金制度というのは世代間の助け 合いであって、そのような考え方に基づいて少なくとも運用されているわ けでございますから、このような、幹事長のように、払わなければもらえ ないんだからそれでいいじゃないかというような言い分を、与党の幹事長 ともあろう方がこうやって公然とおっしゃるということは、それこそモラ ルの低下を招きますし、皆さんが、何だ、じゃ、自分のことは自分でやっ ていこうと、この年金制度そのものが崩壊していく危険性を非常にはらん でいるコメントだと思うんです。

   幹事長のことは幹事長に聞けと今大臣はおっしゃいましたが、これは、 与党の中で年金というものについての理解が、幹事長というような方であ ってもこの程度の理解だ、そのようにこちらは思わざるを得ないわけでご ざいますけれども、これは坂口大臣、やはり年金法案を提出している一人 の責任者といたしまして、幹事長に年金制度とはどういうものなのかをき ちんと御講義いただけますでしょうか。

○坂口国務大臣
   多くの皆さん方から選ばれて出てくる皆さん方でありますから、立派な 方々ばかりでございまして、私がお一人お一人、一から御講義を申し上げ るというような人たちではないわけであります。
よく御理解をした上でい ろいろの御発言を皆さんはされるんだろうというふうに理解をいたしてお ります。
 したがいまして、幹事長も財政上の問題についてお答えになったのでは ないかと私は思いますけれども、その前後のやりとりというものは全く抜 きにされまして一部分だけがそこで報道されますと、誤解を生むこともあ り得るわけでありまして、全体としてどういうことであったのか、その場 に私は居合わせておりませんでしたので、それを知ることはできません。

○水島委員
   そういうことでありましたら、これは幹事長御本人にどういう真意でこ のようなコメントをされたのかを伺う必要があると思いますし、また、こ こに書かれていることがもし間違いであれば、これはきちんと訂正をして もらわなければいけないわけでございますので、この発言がひとり歩きし ていきますと、年金制度そのものが崩れていく、本当にそういうリスクの ある発言だと私は大変問題に感じております。
   ぜひ、この委員会に安倍幹事長を参考人としてお招きして、この発言の 真意をただしていただく、そんな機会をつくっていただけますように、こ れは委員長にお願いを申し上げたいと思います。
理事会で諮ってください。

○衛藤委員長
   理事会で相談をいたします。

○水島委員
   ぜひお願いいたします。
 また、強行採決前に私が理事会で諮ってくれとお願いいたしました、全 議員の年金保険料納付の実績ですとかほかの件もございますので、お忘れ ではないと思いますけれども、理事会のメンバーの皆様、よろしくお願い いたします。

   さて、法案についての質問に入らせていただきたいと思いますけれども、 前回の年金改正後に、二〇〇〇年の七月から女性と年金検討会がつくられ まして、袖井孝子座長を初め十六名の有識者の方たちが一年半がかりで 「女性自身の貢献がみのる年金制度」と題した意見書をまとめられており ます。
 ところが、年金分割を除いて、ほとんどすべての論点が先送りされてお ります。
忙しい、貴重な方たちに何度も足を運ばせて大変な知的労働をさ せているわけですけれども、その労力は一体何だったのだろうかと大変む なしく感じております。

   また、当初は意見の開きが多かった委員たちを、袖井座長が懸命にまと め上げたということでございます。
意見の開きを、強行採決ですとかその ように力ずくで結論に導こうとする暴力的かつ破壊的な国会は、このよう な努力にこそ見習わなければならないはずだと私は思っておりますけれど も、それなのに、女性と年金の問題を一段階先に進めようとした袖井座長 の懸命の努力がほとんど報われていないわけでございます。
 これだけの方たちの時間と労力を犠牲にして、また、私たちの税金から 謝礼なども払って進めてきた検討会の結論が全くと言っていいくらい生か されていないという現実を、まず大臣はどのようにとらえられていらっし ゃいますでしょうか。

○坂口国務大臣
   いろいろと御議論をいただいたことは決してむだになっていない、これ から大いに生かされていくだろうというふうに私は思っております。
そこ でさまざまな御意見が出されましたし、そして、必ずしもそれは一致した 意見ではなくて、さまざまな御意見であったというふうにお聞きをいたし ております。
しかし、さまざまな御意見でありましたけれども、その中を いろいろとおまとめいただいたことも事実でございます。
 しかし、年金制度というのは、年金だけの問題ではなくて、それを取り 巻きますいろいろの問題があるわけで、それらも解決をしなければ一度に 前進させることができ得ないということも御理解をいただけると思います。
 そうしたこともございますので、御議論をいただきまして出していただ きました成果というものを大事にしながら、今後、やはり年金の制度とい うもののあり方、それはそのときそのときにいろいろと考えていかなけれ ばならないというふうに思っております。
 もう少し前進できればと思った点も私たちもあったわけでございますが、 しかし、さまざまな御意見もこれあり、前に進めることができなかった問 題もあります。
しかし、そのときにしていただきました御議論は大切にし ながら行きたいと思っております。

○水島委員
   この骨抜き、先送りパターンというのは、何か小泉政権に特有のものな のではないかなとこのごろ感じているわけでございますけれども、ちょっ と個々のテーマについて伺わせていただきたいと思います。
 まず、第三号被保険者につきまして、今回の改正で手つかずになった、 また論点としても指摘されていない理由と、そのことについての大臣の御 意見を伺いたいと思います。

○坂口国務大臣
   この第三号被保険者の問題というのは、基本的には年金の世帯単位か個 人単位かの問題だと私は思っております。
根っこのところからここをやろ うと思うとこの問題に突き当たる、ここをやはりどうするかを検討してい かなければならない。
そういうことになりますと、現在の第三号被保険者 の保険料はだれが支払うのかという問題が出てくる、あるいはまた、男性 と女性の賃金格差をどうするのかといったような問題がある。
そうした問 題もございますので、なかなかそこまで踏み込めなかった、一度にそこま で行かなかったというのが現実でございます。
 内閣府の方で世論調査をしていただきまして、そしてこの三号被保険者 の問題の御意見を聞いてもらったわけでございますが、その中で、現行制 度のままというのが三一%、そして夫婦間での厚生年金の分割というのが 三二%、合計して六三%ということになるわけでありまして、世帯単位で の給付と負担という考え方が、お聞きしました世論調査では多かったとい った経過もございます。
 しかし、ここはもう少し突っ込んで議論を進めていけば、また別の結果 が出てくることもあり得ると私は思っております。
もう少しここは議論を 重ねていかなければならない問題だというふうに今思っているところでご ざいます。

○水島委員
   民主党案でも、もちろん、現在の女性の就労率の問題ですとか男女の賃 金格差というこの現状を踏まえまして、民主党案というのは本来は個人単 位化の年金制度ということになるわけですけれども、その修正、修正個人 単位とでも呼ぶんでしょうか、二分二乗方式というものを採用させていた だいているわけでございますけれども、当然それも、今大臣がおっしゃい ました問題点の一つの解決策としては頭に入れていただいているんでしょ うか。

○坂口国務大臣
   今聞いていただいたのは、二分二乗の話でございますか。
(水島委員「はい」と呼ぶ)  二分二乗方式というのは、これも議論しなきゃいけませんが、私個人は 一つの方法だというふうに思っておりまして、理解をしております一人で ございます。

○水島委員
   では、今後いろいろ与野党で御協議いただけるようでございますので、 そのときには、この民主党案の中の二分二乗方式というものをぜひ真正面 から御検討いただきたいと思っております。
   その前に、先ほど大臣は、第三号の問題というのは、年金が世帯単位で あるというそこの部分の問題なんだというふうにおっしゃったわけですけ れども、実際に、では、自営業者の方の世帯というのは世帯ではないんで しょうか。
それぞれ御夫婦そろって一号、一号ということになっているわ けですけれども、第三号の問題というのは世帯の問題ではなくて別の問題 なんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。

○坂口国務大臣
   被用者保険の場合には、これはもう世帯単位になっているわけでありま すから、まさしくこの被用者保険の問題として今起こってきているという ふうに思います。
国民年金は個人単位でありますから、それはそのとおり でございまして、この被用者保険の中で今後どうしていくか。
 とりわけ、今民主党さんが出されているように、一元化の問題等になっ てまいりますと、そうすると、個人単位の制度と世帯単位の制度を一本化 していかなきゃならないわけでありますから、そうした問題をどうするか ということが私は基本になってくる。
 ですから、一元化の問題は、この世帯単位か個人単位かという、ここを 先に決着をつけなければ前に進まないと私は思っております。

○水島委員
   済みません、しつこいようなんですけれども、今、今度は、被用者保険 が世帯単位だということが問題だとおっしゃったんですけれども、そうな りますと、今度は、共働き夫婦で二号、二号の夫婦というのも当然いるわ けです。
ですから、被用者保険そのものが世帯単位だ、そういう問題とも またこの三号の問題というのは違うように思うんですけれども、そこの部 分はどのように整理されているんでしょうか。

○坂口国務大臣
   もちろん、被用者保険の中には、御主人あるいは奥様が働かれて、そし てその配偶者の人が働いておみえにならない、御家庭におみえになるとい うケースもございますし、双方とも働いておみえになるというケースもあ るわけであります。
しかし、第三号被保険者といいますのは、被用者保険 の中の一つの形として生じていることだけは間違いがないわけであります から、ここの問題をどうするかということは個人単位か世帯単位かに関係 してくるということを私は申し上げたわけであります。

○水島委員
   そうしますと、大臣は、やはり第三号というもの、今は被用者保険の中 での位置づけがあるわけですけれども、これはきちんと見直していかなけ ればいけないというお考えに立たれているんでしょうか。

○坂口国務大臣
   これを、今後年金制度をどうしていくかということと非常に大きなかか わりを持った問題であるという問題意識を持っているということを申し上 げているわけであります。

○水島委員
   今の御答弁、年金の見直しをしていく上での重要な論点としては御認識 になっていらっしゃるという御答弁でございましたので、そうであれば、 本当に、今回の附則、パート労働者のことについては附則に辛うじて書い ていただいているわけですけれども、せめて、そこに今後の論点として書 いていただくくらいのことは必要ではないかと思いますけれども、いかが ですか。

○坂口国務大臣
   そこへ行きますためには、かなり幾つものハードルを越えなければなら ないわけでありまして、周辺整備をかなりやらないといけないという気が いたします。
 ですから、そこまでは至りませんけれども、今後の年金制度のあり方を 考える上では、大きな論点の一つ、私は今後の最大の論点の一つというふ うに思っておりますが、それだけに、その周辺の問題もまた多い。
それら もあわせて、もしも個人単位なら個人単位にしていくのであれば、一体何 をどう解決していったらいいのか、もう少しやはり整理をしなきゃいけま せんし、改善をしていく必要もあるというふうに思っております。

○水島委員
   一つだけ確認させていただきたいんですけれども、この第三号の問題を 指摘しますと、ちまたではすぐに、女同士の足の引っ張り合いなどと言わ れるわけでございます。
 でも、これは女性だけが結婚の状態によって制度が変わるということで ございまして、これは、女性がどういう立場に置かれているか、今現在二 号なのか三号なのかということを超えて、制度に翻弄されているというよ うな意味では、私は、女性全体が被害者なのであって、違う立場の女性が 足を引っ張り合っているという構造ではないと思っているんですけれども 、大臣もそのような御理解でよろしいんでしょうか。

○坂口国務大臣
   そこは、私はそんなに足を引っ張っているとも思っておりませんし、し かしながら、ここが一つに意見が一致しているかと言われれば、なかなか 一致もしていない、そういうふうに思っております。
 今回も、配偶者である第二号の被保険者が負担をする保険料については、 第三号被保険者が共同して負担したものであるとの基本的な認識を法律上 明らかにするということはやっているわけでありまして、そして、離婚の 問題等は今回取り上げたということでございます。
 したがって、現在のところは、三号被保険者の立場を認めた上で、認め た上でと申しますか、その存在を認めた上で、どういうふうにそこを位置 づけるかということで決着をつけているということでございます。

○水島委員
   何となくぱっとしない御答弁なんですけれども、意見が一致していない というのは、今提示されている選択肢が限られているからどれか一つに皆 さんが満足できないのであって、これは、どんな立場の女性であっても、 どういうライフスタイルを選択しようと、中立的に、満足できるような制 度をきちんと提示していくということは、当然大臣にやっていただかなけ ればいけない仕事だと思っておりますので、ぜひ民主党案を十分に御参考 いただきまして、これはもう早急に御検討いただかなければいけないと思 いますし、私は、附則にこの三号の問題をきちんと書き込んでいただきた いというふうに、これは改めてお願いをしたいと思います。

 また、今大臣がおっしゃいましたように、今回、分割という制度が初め て盛り込まれまして、これは私も年金の個人単位化の第一歩としては評価 できるわけでございますし、我々の二分二乗方式とも共通する部分は当然 ございますので、これは一歩前進というふうに受けとめているわけですけ れども、合意なしに年金分割ができるのが、妻が第三号の場合だけという ふうに限られてしまった理由は何だったんでしょうか。

○森副大臣
   今委員が御指摘のとおり、今回の改正では、三号については、二分の一、 二分の一ということで、一歩前進という評価をいただいたわけであります けれども、一方、第三号被保険者期間以外の期間も含めまして、離婚時に おける厚生年金の分割制度を導入することといたしているわけでございま す。
 この分割に際しては、それぞれが保険料負担を行い年金保険料納付記録 を得たことを考慮いたしまして、夫婦双方の標準報酬の合計額の二分の一 の範囲、つまり、足して二で割った範囲で、夫婦間の協議もしくは裁判所 の決定により定めることといたしております。
この点についても、私ども は、大きく前進したんじゃないかというふうに考えておるところでござい ます。

○水島委員
   ちゃんとお答えいただいていないんですけれども、時間があと五分とい うことになってきましたので、ぜひここで問題点をきちんと指摘させてい ただきたいと思っております。
 今回、三号だけでもそうなったんだから前進だということであるようで すけれども、分割というのが実際に協議によってできるようになったとい うことは、それはきちんと協議離婚できるような方にとってはよろしいで しょう。
でも、実際にDV離婚というものが現にあるわけでございますけ れども、DV離婚のときに、暴力を振るった相手に自分の居どころなども 知られることなく、きちんと自分の年金権を分割してもらうということが できるような仕組みは当然考えていてくださるんでしょうか。
これは妻が 三号の場合も二号の場合もあると思いますけれども、この点については当 然きちんと考えられているんでしょうか。

○森副大臣
   まず、DVで合意や協議をするような環境にない場合についての御指摘 については、必ずしも厚生年金の分割制度だけではなくて、離婚一般の手 続を行う上での課題ではないかと考えるものでございます。
 そういった観点から、今回の改正案における離婚時における厚生年金の 分割制度においては、分割割合の合意、協議ができない場合には、最終的 に裁判所の決定により定めることで解決を図ることといたしております。
 しかしながら、今後、施行に向け、分割制度の細則や運用方法の検討を していくこととなるわけでございますけれども、その際には、御指摘のよ うな場合の具体的な対応について、司法当局や専門家の意見も聞きまして 検討してまいりたいと考えております。

○水島委員
   これは相当丁寧にその仕組みをつくっていただきませんと、DVについ ての、例えば市町村の理解というのはまだまだ十分ではございません。
 今、私も地元で相談を受けておりますケースは、家に泊まりに来るよう な男性に暴力を受けたという方が、なぜかそれをもって事実婚であるとい うふうに受け取られて、その間の児童扶養手当を返せということを今、市 から主張されていて、DVの傷もまだ大きく残っているというのに、おか しなところからお金を返せと言われて、大変苦しんでいらっしゃるわけで す。
これについて、きちんと私も調べて、必要な対応をぜひ厚生労働省に していただきたいと思っているわけでございます。

   このように、DVの方が置かれた状況、またどういうことが必要なのか ということについて、まだまだ自治体でも理解が足りないですし、そして、 御本人もとてもそんなことを、経済的にも苦しい、心の傷も非常に負って いる、自分の安全を図らなければいけない、そしてお子さんがいらっしゃ る場合には子育てのことも考えなければいけない、そういう中で、例えば、 何度も裁判所に通うとか、自分からどこかに申し出て手続を自分で全部し なければいけないとか、そういうことは本当に現実性のない話でございま す。
 DVのことについては、これをきちんと決めていく中で、本当に、ある 意味ではほとんど自動的にそれが御本人のものとなるような道筋をきちん とつくっていただきたいと思っておりますけれども、これは大臣、お約束 をいただけますでしょうか。

○坂口国務大臣
   そうしたケースは、ケースケース、さまざまあるだろうというふうに思 います。
そうした場合にどういうふうにするのが一番いいのか、これはよ くよく考えてやらないといけないというふうに思いますから、よく検討さ せていただきたいと思います。

○水島委員
   よく検討して、DVの被害者の方たちが安心して、また経済的にも満た されるような仕組みを必ずつくっていただきたいと思っております。
 そして最後に、もう時間がなくなってしまったんですが、パート労働者 の厚生年金加入の問題というのも非常に重要な問題でございます。
女性と 年金検討会の意見書に従って、厚生労働省案として、厚生年金加入条件を 週二十時間以上に拡大するということをきちんと提案されていたのに、極 めてわずかの間にそれが翻ってしまって、そして附則に辛うじてその痕跡 がとどまっているというような状況でございます。
 先ほど大臣は、三号の方はまだまだ環境の整備が必要だから附則に書け ないというようなことをおっしゃったので、恐らく、パートに関しては、 環境の整備がほとんど整いつつあるから附則に書いていただけたのかなと 思っておりますけれども、これを週二十時間以上の労働というふうにした 場合には、当事者の方たちが懸念されていたことの一つに、事業主は労働 時間を週二十時間以内に一方的に変更するのではないかというようなこと もございまして、これは歯どめが必要な部分だと思っております。

   この歯どめ策といたしましても、私は、やはりこれは総賃金制にして、 きちんと事業主負担というものを考えていかなければ、歯どめ策というの はどこまでいってもイタチごっこになってしまうのではないかと思ってお ります。
 それも含めまして、どのような環境整備をこの附則の規定に従って行っ ていくのか、そして、この歯どめ策をどのように考えられているのかとい うことを、最後に大臣から御答弁をいただきたいと思います。

○坂口国務大臣
   整備しなきゃならない点もたくさんありますが、今回、我々は、できれ ば実現したいというふうに思っていたわけでありますけれども、前回にも どなたかに御答弁申し上げましたとおり、やはり働いている皆さん方から、 パート労働をしている皆さん方からの反対が大変たくさん寄せられたとい うことでございます。
これは予測しなかったことでございまして、もう少 し周辺の、それこそ三号被保険者の問題もありますので、そうしたことと も絡んで決着をしなければならない問題ではないかというふうに私は思っ た次第でございます。
 しかし、これは前進をさせていくということを決めていることだけは間 違いありませんで、それを行いますためにどういうふうに企業の皆さん方 にそれを御負担いただくか、そのいただき方について、今御指摘をいただ いたのも一つの方法だと私も思います。
ただ、御本人からも若干は出して いただかなきゃならないということでありますから、それをどうするかと いった問題も残るというふうに思っております。

○水島委員
   ぜひ、御本人に向けては、今払えば厚生年金がもらえるんだということ の啓発をきちんとしていただきたいと思いますし、事業主がこれを逆手に とって、パート労働者の労働時間を減らしていくようなことがないような 仕組みをきちんと検討していただきたいと思っております。

   また、もう質問は終わりますけれども、先日指摘しましたように、附則 の第二条の五〇%という規定につきましては、先日も、極めて人に誤解を 与えるものだというふうに指摘しました。
実際に、モデル世帯が、受給開 始時には五〇%もらえていても、それが時とともに下がっていくというよ うなこともその後きちんと明らかにされてきているところでございますか ら、それも含めて、私は、この附則の第二条の五〇%をもらえるのだとい うところは削除していただくように改めてお願いを申し上げまして、質問 を終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございました。



質問バックナンバー|HOME