厚生労働委員会
(2002年6月12日)



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乳幼児突然死症候群、初期救命の一般教育、代替医療など




○森委員長
 次に、水島広子君。

○水島委員
 民主党の水島広子でございます。
 本日もまた質問をさせていただきます。
 私は、この審議を通しまして、ずっと、医療の信頼性についてさまざまな点から大臣の御意見を伺ってまいりました。そして、医療、医学の信頼性というのは、何も生きている間の医療についてのみ問われるものではございません。本日は、そのような観点から、まず冒頭にSIDS、乳幼児突然死症候群についてお伺いいたします。
 昨年十月三十一日の本委員会でも私は指摘をいたしましたが、SIDSは、保育施設や医療施設における外因死の隠れみのとして利用されていることが少なくありません。これは親にとっては、やっと恵まれて大切に慈しみ育ててきた子供を奪われた上に、死因を隠ぺいしようとする相手によってさらに傷つけられていくことになるという構造です。これは、医療事故によって家族を奪われた上に隠ぺいをされる構造と全く同じであると私は思っております。
 そんな状況の中、厚生労働省ではこのたび、SIDSの診断基準の見直しのための研究班をつくろうとしていると聞いております。
 そもそも、どのような問題意識に基づいてこのような研究班を立ち上げようとされているのでしょうか。日本独自の診断基準をつくる必要があるのかどうか、そして、そこでつくられた基準はどういう意味を持つのか、そのような観点からお答えいただきたいと思います。

○岩田政府参考人
 人口動態統計によりますと、平成十二年にはSIDSで乳幼児の死亡が三百六十三件報告されております。これらの中で、SIDSという診断に遺族が納得できないということで裁判になるなどのケースも一部見られております。また、現在、我が国では既にSIDSに関する診断基準がございますが、小児科医や法医学者、病理学者などが複数の診断基準を持っておりまして、研究班や学会などがそれぞれの立場から独自に作成をされている、そういう状況でございます。
 そういうことで、もう既に我が国には診断基準はあるんですけれども、それを統一化したい、そういったような観点から、本年度の厚生労働科学研究におきまして研究班を立ち上げたいというふうに考えております。

○水島委員
 今おっしゃったように、今複数の基準があって、それぞれが勝手なことを言っているというような御指摘であるわけですけれども、ここで診断基準がつくられましたときには、それは全国あまねく拘束するようなものになるんでしょうか。

○岩田政府参考人
 三つの診断基準は、ばらばらということではございませんで、基本的には同じ考え方に立つ基準になっておりますが、例えば子供の年齢をどこまで見るかとか、それからSIDSと診断する場合には必ず解剖が前提になっておりますが、SIDSの疑いありという診断を書く場合に、それでも解剖を前提とするかそうじゃないかといったようなところに今現在三つございます診断基準の中で若干差があります。それらを科学的に統合しようということでございます。
 これができ上がった暁には、基本的には各医療機関、医師によって誠実に遵守されるということが期待されるものでございます。

○水島委員
 この研究班の人選はどのような基準で行われるのでしょうか。

○岩田政府参考人
 厚生労働科学研究で行っておりますので、これは公募によって募集をいたしまして、幾つかのグループが応募なさっておられますけれども、そういうことでございますので、その中から最も適当なものを委員会で審査をして採択するということでございます。
 したがいまして、厚生労働省の方がだれを任命するといったようなものではございませんで、採択されたチームについて、主任研究員という位置づけの方がおられますので、その方が協力研究員の方を募って、研究したい、そういう提案をなさっておられるわけでございます。したがいまして、厚生労働省の方で任命するわけではございませんけれども、小児科や法医学、病理学、こういう特に三学会の関係者から幅広い参加を求めた、そういう研究班が立ち上がり、そこで厳格な医学的な判断がなされることが大事であるというふうに思っております。

○水島委員
 済みません。ちょっとよく理解できなかったんですが、公募に応募してきた人たちを審査するのはだれなんでしょうか。

○岩田政府参考人
 厚生労働科学研究はこれだけではございませんで、その他のテーマについてもそうなんですが、公募であるということと、多くの応募の中からどれが適当であるかということについての審査の委員会がございまして、その審査委員会には、私ども内部の者も何人か入っておりますが、外部の方にもたくさん入っていただいた、そういった審査の委員会で提案が採択されるということでございます。

○水島委員
 つまり、これは研究班をつくってそこで議論をするということではなくて、厚生労働科学研究として委託をする研究になるということなんでしょうか。
 それは通常の厚生労働科学研究への応募の、それぞれの研究を審査するように審査をして、そこで診断基準をそれぞれの研究の中でつくってくるという形になるということは、例えば、ここにございますのが、これは平成八年度から十年度、文部省科学研究費補助金研究成果報告書、乳幼児突然死症候群の法医病理学的診断基準の作成というような、こういったものもあるわけですけれども、つまり、これと同じようなことをもう一度していく。ただ、そのときに、今ばらばらになっている人たちにちゃんと入ってもらって、単に、意見の統一を図るための、何やら政治的な研究という感じもするんですけれども、そのようなことなんでしょうか。

○岩田政府参考人
 政治的な研究ではございませんで、医学的な、専門的な研究をしていただきたいというふうに思っておりますが、先ほども申し上げましたように、これまでの診断基準は、小児科の先生が中心になっておつくりになった診断基準ですとか、法医学、病理学の御専門の方が中心になってつくっておられる診断基準などがございますので、そういう関係者がすべて入ったところで、まさに科学的に議論していただいて、統一的な基準をつくっていただきたいというふうに思っております。

○水島委員
 ぜひ公正な人選、そして科学的にも間違いのない研究をしていただきたいと思っておりますけれども、この一連の問題の解決に向けて、まずここで基本的な知識を確認させていただきたいと思います。
 先ほども局長の御答弁の中に、疑い病名の場合に、剖検を必要とするかしないかというような、そういった基準の違いがあるということをおっしゃっておりましたが、死亡が予測されていなかった突然死に遭遇した場合、医師法二十一条の規定によって、異状死体として届け出、検死を行い、外因死の可能性を除外した上で初めて、SIDSという診断が可能になると私は理解しているんですけれども、SIDSが除外診断である以上、つまり、この道筋をとらずにSIDSと診断をすることはあり得ないということは正しいんでしょうか。

○篠崎政府参考人
 先生の御質問を正確に把握しているかどうか、あれでございますが、ただいま申されましたように、医師法二十一条の関係で申し上げますと、乳幼児の突然死であるか否かを問わず、当該死亡が外因死またはその疑いのある死亡であると認められた場合には、警察に届けることが必要というふうに考えております。

○水島委員
 疑いがあるないというよりも、持っている疾患によって死亡が予測されていたというようなケースを除いては、結局、全くその死亡が予測されていなかったものはやはり突然死であって、この突然死に遭遇した場合には、医師法二十一条の規定によって、異状死体として届け出る、そして、何か先ほどと全く同じことをもう一度申し上げるのもあれなんですけれども、今警察に届け出る義務があるというところまでの御答弁をいただいたわけですけれども、私の質問は、SIDSという診断に至る経路というのは、その届け出、検死を経て、外因死の可能性が除外された上で初めて、SIDSというふうに診断されるという経路以外にあるのかどうかということをお伺いしているんですけれども。
 ちょっと、これは事前通告してある質問なので、時間をとめていただきたいんですけれども、この間。

○篠崎政府参考人
 その突然死が起こった状況等にもよると思いますが、例えば主治医がずうっとおられたという場合と、それから、主治医等がおられないで、病院とかそういうところでないところで突然死があるということで、急にお医者さんが呼ばれるというような場合、いろいろな状況で違うかと思いますが、医師法二十一条によります警察への届け出というのは、病理学的な異状死という意味ではなくて、法医学的な異状死というふうにとらえるべきであるということを言っておるわけであります。

○水島委員
 篠崎局長は私の大学の大先輩でございまして、大変優秀な方であるのに、なぜいつまでたっても私の質問にストレートに答えてくださらないんだろう、何か隠したいことがあるのかな、だんだんそんな気になってまいりました。
 もう一度伺いたいんですけれども、ちょっと、本当にこんなことで時間を食うつもりはないんですけれども、突然死に遭遇する状況がいろいろあるということなんですけれども、私は最初から丁寧に、その死亡が予測されていなかった突然死というふうに条件をつけています。医師がずっと傍らに寄り添っていて、医師に状況がとてもよくわかる中で突然心臓がとまったというのであれば、それは何らかの医学的な診断が可能かもしれませんけれども、そんなことを言っているのではなくて、SIDSという診断をするときに、SIDSというのはあくまでも除外診断であると私は理解しています。
 医学的に何か、きのう、きょう、違うことがわかったんだったら教えていただきたいですけれども、除外診断である以上、つまり、すべての外因死、あるいはほかの原因による病死の可能性をすべて除外しなければSIDSということは診断できないんじゃないんでしょうか。ここは医学部ではなくて国会なんですけれども、ちょっとそこをきちんと確認したいと思います。

○岩田政府参考人
 そのとおりでございまして、SIDSという診断をする場合には必ずその前に解剖を行うということが、三つの今国内にございます診断基準いずれについてもそうでございます。
 差があるのは、SIDSの疑いありという診断書を書く場合に、その前に必ず解剖があるかどうかというのが基準によって、今は日本の三つの基準によって違うという、疑いがあるという診断をする場合に違いがあるわけでございまして、SIDSの診断書を書くときには必ず解剖があるということでございます。

○水島委員
 ようやく、随分時間がかかって、伺いたかった答弁を得ることができました。つまり、まずきちんとした検死そして剖検も行わないでSIDSなどという診断をするのは間違っているということが確認されたわけです。
 もう一つ、今出てきました疑い病名という、これがまた非常に怪しいものでございます。
 香川県の小鳩幼児園で、ことし二月に、一歳二カ月の藤島飛士己ちゃんが暴行され、殺された事件がございました。この事件におきましても、死体検案書ではSIDSの疑いと書かれていたために、警察の捜査すら阻まれたわけです。これは御両親の必死の努力によって、やっと、この幼児園の元園長が逮捕されたということでございますけれども、鑑定医は、死因が特定できなかったから疑いと書いたんだと記者会見で釈明しているわけです。この場合は、死因不詳、あるいは検査中ですとか、そのように書くべきものであって、特定できないときにSIDSの疑いという病名がこんなに安易に使われているわけです。
 この医師は、一年目の研修医でも何でもなく、香川医大のれっきとした教授です。そんな人がこんなに気軽にSIDSの疑いという病名を使っているということが現実であるわけです。これはもう、親の立場からしますと、保育所で子供が虐待して殺されたというだけでも許せないことですのに、さらに、大学の教授が死因が特定できなかったからSIDSの疑いと書いた、そのために、明らかに外傷があったにもかかわらず警察が動けなかった。こんなばかげたことがことし日本で起こっているわけです。
 この疑い病名についてここできちんと、こんなふうに疑い病名が使われることが正しいのかどうかということをちょっとここで御見解を伺いたいと思います。

○岩田政府参考人
 何度も同じ答弁で恐縮なんですが、ただいまあります診断基準によりますと、その診断基準にもよるんですけれども、疑い病名をまたさらに二つに分けて、解剖に基づくものと解剖をやっていないケースというふうに分けて整理したりしている学会の診断基準もございます。
 いずれにしろ、先生今おっしゃっておられますようなそういう問題が、そういう御意見がありますからこそ、今回、研究班でそういったことも含めて科学的に検討していただきたいということで、研究班を開始させていただきたいと思っております。

○水島委員
 そもそも、SIDSというのが、それを積極的に診断する根拠のあるものではなくて、ほかのあらゆる可能性を除外した上で初めて成り立つ診断名である以上、SIDSの疑いというのは、そもそも私は、非常におかしいんじゃないかなと、これは医学的に思います。
 常にSIDSというのは一〇〇%確定できるものではなくて、ほかの可能性がないからSIDSになっていくものなわけですから、では、SIDSとSIDSの疑いというのはどう違うのかということは、もはや理屈が成立しなくなってくるのではないかと思います。こんなひどい状況がずっと放置されてきたということに、私も今回また改めて調べまして、小さな子供を持つ親といたしましても、本当にこれは許されないことだと改めて思っているところでございます。
 そして、今まで外因死の隠れみのとして使われてきた、そして、乳幼児の急死をめぐって五十件を超える裁判が提起されておりまして、病院または保育所側は必ずと言ってよいほどSIDSであると主張し、裁判所はほとんどについてこれを認め、被害者側の敗訴で終わってまいりました。昨年からことしにかけては、東京高裁並びに大阪高裁において、SIDSという主張が退けられ、病院等の過失責任を認める判決が下されているわけですけれども、このような事例をずっと検討してまいりますと、そもそも、このSIDSという病名が余りにも安易に使われている。中には、全く剖検も経ないで、あるいは異状死体として届け出ることもしないで、医者が積極的にSIDSというふうに診断するようなものすらあると言われているわけです。
 先ほど確認させていただいた基本的な知識によりますと、SIDSというのは、ちゃんと医師法二十一条の規定によっての届け出を経て、検死、剖検を経て初めて診断されるということであるわけです。つまり、この問題の中にあるのは、例えば、それは医師法二十一条の規定に基づく異状死体の届け出の義務違反が含まれていたり、あるいは積極的な誤診というようなものも含まれているわけですけれども、このような深刻な問題が今まで放置されてきたということを、それがなぜなのか、今までの反省も含めまして、またかと思うこの構造を根本的に解決していくためにどうしたらいいと思うか、これは最後に大臣の御答弁をいただきたいと思います。

○坂口国務大臣
 乳幼児突然死症候群と言われておりますこの問題につきましては、先ほどからいろいろの答弁があるとおりでございますが、やはり、先ほどから御議論ありますように、これは症候群であって、一つの原因によって起こるというわけではないんだろうというふうに思います。したがいまして、除外すべきものを除外して、残りは、残ったと申しますか、この疾病が出てくるのであって、先ほどおっしゃいましたように、この疑いというのは、私も、それはちょっとどうかなというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、このSIDSの原因というものももう少し明確にしていかないといけないと思いますから、症候群ではございますけれども、そうした原因究明のための研究というのも一方で進めなければなりませんし、そして、不幸にして起こりましたときに対する問題というのも、これは整理をしなければならないわけでございますから、もう少し周辺が明確になるように努力をしなければならないというふうに思っております。
 医師の側の方も、最近、小児科の先生がなかなか生まれないということの理由の一つに、やはりこうした難しさというものがあって、それが原因になっているということを言う人もあるぐらいでございますから、そうしたことも含めて、原因究明と、そして起こりましたときの処置そして対応といったものにつきまして明らかにしていく必要があるというふうに思っている次第でございます。

○水島委員
 大枠の御意見をいただきまして、とにかく、前向きにこの問題にしっかりと取り組んでいただけるということではあると思います。
 私が昨年この委員会で指摘をさせていただいたのが十月の末でございますので、それから半年以上もたっていますけれども、その後、またこんな大きな事件が起こって、そして同じような構造がまた繰り返されているということに、本当に驚きました。これを今まで、これは本来学会がやるべきことだというようにおっしゃるかもしれないけれども、こんな状態がずっと放置されてきたということについて、私は、大臣としても責任の一端をしっかりと感じていただきたいと僣越ながら申し上げさせていただきたいと思います。
 さて、次に移りますが、医療や健康の問題を考える上で、また医療財政というものを考える上で、医療現場以外での健康への取り組みが重要であるということは、皆様も共通した御理解だと思います。
 そして、自分の健康だけではなく、他人の健康を守る取り組みとしまして、心肺停止時の心肺蘇生処置というものがございます。現在、我が党の山井和則議員が中心となりまして、救急救命士の問題に積極的に取り組んでいるところでございまして、これについてはぜひ積極的に御検討していただきたいと思いますけれども、私は、本日は、その前の段階について質問させていただきたいと思います。
 ドリンカーの救命曲線という有名な曲線がございまして、それによりますと、呼吸停止二分後に心肺蘇生を始めると九〇%くらいの確率で生命が救えるけれども、三分後になりますと七五%、四分後は五〇%、そして五分後になりますと二五%となって、十分後には救命率はほとんどゼロになってしまうということが、そのドリンカーの救命曲線によって示されているわけです。救急車が現場に到着する時間を考えますと、救急車が到着する前に、周りにいる市民がどれだけ心肺蘇生ができるかということが、実際には救命の成否に大きくかかわってくる問題であると思います。
 そもそも、この救急について、心臓マッサージですとかそういった心肺蘇生についての基礎知識というものは、学校教育の中で教育をされているんでしょうか。そして、そもそも、学校の先生、養護の先生ではない普通の学校の先生というのは心肺蘇生ができるんでしょうか。これは文部科学省にお伺いします。

○上原政府参考人
 お答え申し上げます。
 心肺蘇生に関します教育の現状でございますが、基本的には、学校では、小学校であれば体育科、それから中学、高校であれば保健体育の中で、応急手当ての一環としての教育がなされてございます。
 ただ、御案内のとおり、小学校の段階でありますれば、簡単な切り傷、すり傷に対する教育ということで、中学校の段階でありますれば、一応、人工呼吸法、止血法それから包帯の仕方というふうな形で教えてございまして、高校の段階になりますと、今御指摘ありました心肺蘇生法ということで、気道の確保それから人工呼吸それから心臓マッサージという形ではなされてございます。
 それから第二点の、教員それから養護教諭の関係でございますが、学校の教員につきましても、昭和六十一年以降、二つの研修が行われております。一つは、指導者のための学校安全教育指導者研修会という形で、毎年二百人程度の人間を集めまして、先生御指摘の心肺蘇生の研修会を実施するとともに、大体、毎年三千人を対象といたしました心肺蘇生実技講習会というのを学校の先生方を中心として実施してございまして、今後とも、こういう努力を継続したいと思ってございます。
 以上でございます。

○水島委員
 私がふまじめな学生だったからかもしれませんが、少なくとも私は、学校教育の中では、心臓マッサージなどは全くできるようにはなりませんで、医者になって初めて、自分の技術としてできるようになったようなところがございました。
 ですから、私は、そもそも、教えているとはいっても、その教え方が、一部の優秀な生徒さん、学生さんに対してはそれで十分かもしれないけれども、やはりあまねくすべての人たちが自分の当たり前の技術としてできるようになるためには、学校教育の中での重きというものもまだ十分ではないのではないかと思っております。そして、医療費を抑えるという意味でも、そもそも国民の健康を増進させるという本来の目的のためにも、一般人への初期救急知識を普及させる必要があると私は思っております。
 今回、このことについて質問しようと思いましたら、それは担当は総務省ですと言われました。確かに、救急車、消防庁でいろいろ研修をやっておりますので、担当は総務省なんでしょうけれども、これが一たび医療現場になりますと、突如として、その担当は厚生労働省になるわけです。また、子供がのどにあめを詰まらせたですとか、そういう子供の救急事態に関しては、これは恐らく子育て支援という中に位置づけられて厚生労働省が担当されているのではないかなと想像しておりますけれども、私は、こんなふうにあちこちに行っている仕組みがやはりおかしいと、改めて縦割り行政の問題を感じさせられました。
 初期救急を重要な予防医学として位置づけて、例えば地域の保健所が中心となって、これは厚生労働省がしっかりとその中心に座って推進していくべきではないかと思いますけれども、医療の問題を論じるときに、必ず、この予防医学という問題はセットとして、重要なものとして論じていかなければならないと思いますので、この救急の問題についても例外ではないと思いますけれども、大臣はどうお考えになりますでしょうか。

○坂口国務大臣
 これはいわゆる国だけがやるだけではなくて、都道府県、市町村も含めて、連携の中で、さまざまな場所で行わなければならないことだというふうに思っております。
 一つ保健所というふうに限定をしてしまいますと、限られた人間の中でなかなか十分なことができ得ませんから、やはりもう少し広い範囲で、市町村なりそうしたところも含めて、あるいはまた学校も含めて、全体として、この救急のときの対応のあり方というのは教えていかないといけないというふうに思っています。その連携をどういうふうにとることを企画するかということが大事ではないかというふうに思っておりますので、そこは十分考えたいと思います。

○水島委員
 健康増進法案の枠組みを考えましても、また、たばこの問題でも先日指摘をさせていただきましたけれども、連携でいい、連携をどうとるかの方が重要であるというのが、ここのところの大臣の御答弁の一般的な傾向であると思います。その場合、連携というのは、だれかがとるだろうと思っているととれないところがございますので、やはり厚生労働省がしっかりと責任を持って、連携をとることについても、その体制づくりについても責任を持って、この初期救急を予防医学の重要な柱として位置づけていっていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 最後にまたお伺いしたいのですが、医療のむだを省いて医療の質を上げる、その双方の目的にかなうものとして、代替医療は重要な位置を占めていると私は思っております。
 私もかつて漢方外来で診療をしておりましたけれども、高齢者の患者さんで、複数の科から大量の薬をもらっている方に対して、きちんとした東洋医学的診断に基づいて処方をした漢方薬を与えますと、スーパーの袋のような薬が不要となって、自覚症状もよくなる。つまり、漢方薬一剤で、このくらいのスーパーの袋のような薬が要らなくなる、そして患者さんの自覚症状もよくなる、そのような経験を少なからずしてまいったわけでございます。
 これは高齢者の問題だけではございませんけれども、このようなみずからの経験を踏まえまして、代替医療については二〇〇〇年の十月にも質問させていただいておりますけれども、まず、現状の検討状況はいかがでございましょうか。

○篠崎政府参考人
 代替医療についての取り組み状況についての御質問でございますが、漢方などのいわゆる代替医療につきましては、科学的に未解明な部分もございますけれども、漢方薬のうち、有用性の認められるものにつきましては、薬事法上の承認を行い、保険給付の対象としているところでございます。
 また、はりとかきゅうにつきましては、法律により資格制度を設けまして、医師が必要と認めた場合には、医療保険制度の中で療養費の支給対象としているところでございます。
 さらに、その有用性について科学的な解明を待たなければならないものにつきましては、厚生科学研究費補助金などを活用しながら研究支援を行ってきたところでございまして、今後とも必要な支援に努めてまいりたいと考えております。

○水島委員
 それは今までの姿勢であって、かなり消極的な前進状況ではないかなと思います。
 これほど医療の問題が、今回もこれだけ長時間をかけて審議をされているところでありますし、そんな中でもこの老人医療というものがかなり大きなテーマになっているわけでもございます。そんなときに、今私も個人的な経験をお話しいたしましたけれども、これは、私個人だけではなく、一般に専門家の間では言われていることですけれども、なぜこんなにいい手段があるのにそれをもっと積極的に推進していこうとしないんだろうかという疑問を現場で多くの人たちが持っているわけでございます。
 最後に、そのような今の私の意見を踏まえた上で、大臣がこの問題について今までよりもきちんとスピードを上げて取り組んでいかれるおつもりがあるか、代替医療をもっと医療の中核の方に持ってこられるおつもりがあるかどうか、その点についての大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

○坂口国務大臣
 代替医療というのももう内容はさまざまでございますから、なかなか一つにまとめて申し上げることはでき得ませんが、先日もマスコミに報道されましたように、この代替医療についてひとつ厚生労働科学研究でやろうということになったことは間違いがないわけでありまして、これは一つの進歩だと思っております。
 今までこうした問題は取り上げなかったわけでございますが、ただいまはがんにつきましての代替医療について研究を行っているところでございますが、これから、がんだけではなくて、あらゆる分野における代替医療につきましての検討を行っていきたいというふうに思っているところでございます。

○水島委員
 与党席からも重要なことだという声も上がっておりました。
 アメリカでも、既にNIHでかなりしっかりとした分野として位置づけていると聞いておりますけれども、本来、例えばこの漢方医学というものは、中国から来ましたけれども、日本で江戸時代に非常に発展をした、本当に精緻な理論を持った、非常に多くの臨床経験を持った医学で、日本が世界に誇るものであると私は思っております。くれぐれも、今だんだんとそんな様子になってきていますけれども、これを日本が西洋からまた逆輸入するような形に研究の世界ではなってきてしまっておりますので、私たちが、私たちの先輩がしっかりと培ってきたこの大切な漢方医療につきましても、もっと世界に発信できるような、日本を世界の中心地にしていかなければいけないと思っておりますので、改めてお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。



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