厚生労働委員会
(2002年6月5日)



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レセプト開示、精神医療の質、研修制度、保健点数、画像診断、低用量ピル、ジェンダー・スペシフィック・メディスンなど



○森委員長
 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。水島広子君。

○水島委員
 民主党の水島広子でございます。
 今回の健康保険法改正案は、一言で言えば患者負担をふやすものであると言えると思いますけれども、医療の質がよくなるから患者負担がふえるというのであれば、まだ納得できると思います。また、医療のむだをなくした上でどうしても財政が難しいというのであれば、まだ納得できると思います。でも現状では、医療の質も上がらないのに、また、医療にさまざまなむだがあるのに、患者負担ばかりふやされても困るというのが多くの人の実感だと思います。そもそも、何にどれだけのお金がかかっているのかわからないのに負担できないというのも実感だと思います。
 先日も、私の地元の方からこんな話がございました。親戚ががんで亡くなった、亡くなってから病院からとても高額な医療費の請求があった、突然の請求でとても払えない、何にそんなにお金がかかったのか明細を見せてほしいと言ったけれども見せてくれない。医療機関が発行する領収書について、その内訳を明記することが義務づけられていないというのももちろん一つの問題ですけれども、現状では、まずこの方は何ができるでしょうか。

○大塚政府参考人
 大変失礼いたしました。
 一つには、医療費に関しまして、医療機関との関係でございますけれども、いわゆる領収書、金額を示す領収書、これは当然当事者の関係ですから、提示をしていただく、発行していただくことになりますが、その内容がわかるような領収書、これもできるだけ患者の求めに応じて発行していただけるとありがたいわけでございます。一方では体制の整備という面もございますから、そうした面も勘案せざるを得ませんが、体制整備ができました医療機関におきましては、その方向で御努力いただくということを私どもからも関係団体にお願いをしてございますし、また、関係団体も、その方向で管下の会員などに御指導、御連絡をお願いしているわけでございます。
 また一方、そうした当事者のやりとりとは別に、一つには、保険者が定期的に医療費通知、これは内容が詳細があるわけではございませんけれども、医療費、まあ数カ月まとめてというケースが多いんですけれども、これだけの医療費が全体としてかかっておりますというようなことを、これは大部分の保険者が実施をいたしております。
 さらには、必要に応じてということになろうかと思いますけれども、レセプトを見たいということを患者さんの方が保険者に御請求いただければ、原則として、これも当委員会で御議論ございましたけれども、特定の、特別の事情がない限りこれをお示しを保険者からしていただくということもお願いしておりますし、今実際にそういう形で動いているというふうに理解をしております。こういった幾つかの方法といいましょうかツールがあり得るのではないかと考えております。

○水島委員
 今のレセプトの開示請求でございますけれども、確かにレセプトの開示請求をするという手段はございます。ただ、これについては過去にもこの委員会で議論がありましたけれども、現在、例えば私がその方にレセプトの開示請求をしたらどうですかというふうに申し上げるといたしましても、実際には多くの方が二の足を踏まれるわけです。
 レセプトの開示請求をすると、一般には医療機関に連絡が行くようになっております。まだまだ開示請求というのは一般的ではございませんので、開示請求をしたことが知られたために、自分たちを信用していないのかと思われて、医療機関との関係が悪化するというケースもございます。患者さん御本人の場合もそうですし、これはたとえ御遺族ということであっても、小さな地域社会で大きな病院はそこしかないというようなこともあります。その病院との関係を御遺族自身が患者として持ち続けていかなければいけないということも少なくないわけです。あの人は自分の御遺族のことでレセプトの開示請求をした、つまりここの医療機関を信用していないんだというような目で見られることによって医療機関との関係が悪化してしまう。そのことを恐れて、実際にはレセプトの開示請求に踏み切るのにはかなりの勇気が要るというのが現状であるわけです。
 レセプトの開示を受けて、それで実際にここにこれだけお金がかかったのかということで納得されるケースも私は多いと思います。そういう意味では、レセプトの開示請求のハードルは低い方がよいと思います。レセプトの開示を受けて、そこで何かの問題を感じて、そこでさらに次の行動を起こすかどうかということになると、またそれはその中のごく一部の方ということになっていくわけですので、最初の入り口は広ければ広い方がいいと思いますけれども、病院との関係が悪化することを覚悟してからでなければレセプト開示の請求ができないというのでは、本末転倒なのではないか。そのような機能は実際にはうまくいかないのではないかと思います。
 組合から医療機関への連絡について、それをしないようにするなど、見直す必要があると思われませんでしょうか。これは大臣にお答えいただきたいと思います。

○坂口国務大臣
 先日もここでレセプトのお話が出まして、保険者にレセプトの開示を求める、必ずしもそれは義務づけられているわけではありませんけれども、保険者はそれを医療機関に、こういうことがあったということを知らせる、そのことがその患者の皆さんに対して悪い影響を与えると申しますか、人間関係等にうまくいかないというようなことも生まれてくる可能性があるという御指摘があったわけでございます。
 そのときにもお答え申し上げたわけでございますが、必ずしも義務として求めているわけでは決してありませんけれども、しかし、そういうふうに一応保険者に対しまして、そういう開示が、求めがありましたときには医療機関にそういう報告をしてほしいということを言っていることも事実でありますから、だからそこを、まあちょうど五年、これはもう始めましてから五年たつんですね。五年経過もいたしましたし、かなり今までの状況も変わってきておりますので、一応その辺のところ、整理をして見直すときに来ているのではないかというふうに思っている次第でございます。

○水島委員
 つまり、今の御答弁は、保険者から医療機関への連絡をこれからはやめていくように見直すということを大臣がお考えであるというふうに解釈してよろしいんでしょうか。

○坂口国務大臣
 その辺、整理をすべきところは整理をしなきゃならないというふうに思っておりますが、そういうことも念頭に置きながら整理をしたいと思っております。

○水島委員
 そのレセプトの開示請求をしたということも、広い意味で見ればやはりその方に関する情報ということになると思いますので、これはやはり個人情報保護という観点からもまたぜひ考えていただきたい。
 やはり、医療機関にそれを伝えるときには少なくとも御本人の了解をとって、医療機関に開示請求があったということを伝えてよろしいですかという了解をとった上で伝えるというのが当然のマナーであると思いますので、ぜひこれはきちんと見直していただかないと、レセプトの開示請求というものが常に訴訟を目的としたような、そういった特殊なものになっていってしまいますので、すべての人が自分の受けている治療について当たり前のように知ることができる、そんな当たり前の権利として認めていただきたいと思います。
 そしてもう一方の、領収書の内訳の問題ですけれども、今、これは整備をするように伝えてはいるけれども義務づけられていないという、先ほどの御答弁でもまた確認できましたけれども、こちらについても一つの問題だと私は思っておりますので、少なくとも入院機能を持っているようなところであればもっときちんと整備していく必要があるのではないかと思いますので、そちらもあわせてよろしくお願いいたします。
 さて、今提供されている医療が本当に私たちの望むものになっているかどうかという点もかなり怪しいものであると思っております。この観点から幾つか質問させていただきます。
 摂食障害や精神療法については今までもこの委員会で私は伺ってまいりました。医療鎖国状態のような日本でございますけれども、一日も早く国際水準にという思いで、諸外国の情報をきちんと収集して、行政がリードして日本の精神医療の質を上げてほしいという思いで今まで質問をしてまいりました。それに対しての厚生労働省の姿勢は、日本の学会や専門家からそのような意見が上がってこないとできないというような趣旨に終始してきたと私は受けとめております。
 例えば、昨年五月十八日の厚生労働委員会で私が、
 日本では有効な治療法が確立していない、でも欧米では治療法のスタンダードがほぼでき上がっている、そういう場合に、厚生労働省として、その治療法を日本に取り入れることができるかどうかについて何らかのリーダーシップを発揮すべきだと思いますけれども、それについてはどうお考えになりますでしょうか。 と質問したのに対しまして、大臣は、
 
 厚生労働省が、医療の中の医療保険、とりわけその中の医療点数等の配慮をいたしますときに、それは、厚生労働省が最初から全部そのことを知っていて、そのことをやるということにはなかなかいかないのだろうと思うのです。
 
 その場合には、それぞれの学会等でその治療方法が採用されて、やはりその中で確立をされていくといったようなことが先行してあって、そして、精神療法としてこういう治療方法がやはり望ましいといったようなことが一般化されてくる中で、よしそれではこれを取り上げていこうということに、手順としてはなっていくのだろうというふうに思います。専門の先生に入っていただいて、そこから提案をしていただいてということになっていくのだろうというふうに思っています。 これは坂口大臣が答弁されています。
 ところが、先日の衆議院本会議で、心神喪失者医療観察法案の中の再犯のおそれについて質問をされた坂口大臣は、「現代の精神医学、例えば、国際的に標準的と言われておりますオックスフォード精神医学教科書、これは二〇〇〇年版でございますが、これによりますと、」と答弁されていました。日本精神神経学会の声明とは全く異なる内容を答弁されたわけでございます。
 このときの御答弁そのものの内容については今後法案の審議の中できちんと伺ってまいりたいと思いますけれども、ここできょう確認させていただきたいのは、厚生労働省として方針が変わったのかということでございます。
 日本の学会の現実的なレベルよりも国際的な水準に合わせて施策を講じていくことにされたのでしょうか。そうであれば、摂食障害にしても精神療法にしても、もっと国で予算をつけて、治療者の海外研修をしていくようなことが必要になると思いますけれども、そのような方向に施策を変えられたのでしょうか。大臣にお答えいただきたいと思います。

○坂口国務大臣
 医療も質、量ともに非常に大きいわけでございますから、問題によりましては、国内の中で成熟をして、そしてそれを取り上げていかなければならない問題もあると私は思っております。しかし、国際化の中で、日本が非常におくれている分野につきましては諸外国の分野のものを参考にしなければならない分野もある。一律に一つの物差しで国内の成熟度あるいはまた諸外国との差といったものを取り上げるということはできない、それはやはり物によって違ってくると私は思っております。

○水島委員
 そうしますと、物によるということでございますけれども、先日もお伝えさせていただきましたように、例えば摂食障害の中でも神経性無食欲症によって非常に重篤なやせになってしまいまして、それが命を落とすことにつながったり、あるいは人生の長期にわたって取り返しのつかないような、そんなことになってしまうという、これは非常に重大な病気であるわけでございますけれども、大臣の御認識といたしましては、そのように摂食障害で健康を損ねていく人が多いということについては二の次の問題であって、司法精神医学の方がより上位にある、そのようにお考えだということなんでしょうか。

○坂口国務大臣
 そういうことを申し上げているわけではありません。
 摂食障害は摂食障害として大変大事な問題でありますから、その治療方法等をどうするかという問題は日本の国内よりも諸外国の方が進んでいる分野も当然あるんでしょう。しかし、それを一つの制度として、あるいはまた診療報酬体系の中で位置づけていくということになれば、それは若干の時間を要するということを私は前に申し上げたのではないかというふうに今思っておりますが、前回申し上げたことを十分に覚えておりませんので、記憶をたどりながら言っているわけでございますけれども、そのように私は思っております。

○水島委員
 どちらの問題にしても全国のいろいろなところで発生することであって、またどちらの問題にしても諸外国の方が進んでいるというような問題であると思いますが、その違いというのは一体何なんでしょうか。

○坂口国務大臣
 もうちょっと言っていただけませんか。ちょっと質問の御趣旨が十分理解できませんでした。

○水島委員
 片方の心神喪失者の問題、この内容にはきょうは踏み込みませんけれども、この問題と、もう一つ、摂食障害という病気の問題。このそれぞれの患者さんというのは全国のどこででも発生し得るものであって、そして、それらに対する取り組みは、少なくとも学問的なレベルということでは諸外国の方が進んでいるというのも共通していると思いますが、それでもあえて前者の方だけオックスフォード精神医学教科書を標準として認めて、それに日本の施策を合わせようとされている。そして摂食障害に関しては、こちらが諸外国の、例えばアメリカ精神医学会の治療ガイドラインのことなどを引き合いに出しましてもなかなか今までつれない御返事しかいただけていない、この違いは一体何なんでしょうか。

○坂口国務大臣
 オックスフォードのブックのお話は、それはそういう意見もあるということを申し上げたまででありまして、ただ、国内における意見だけではなくてそういう意見もあるということを私は申し上げたわけです。
 前回に御質問をいただきましたときの摂食障害のお話は、それは、先生がいろいろと御指摘になった、そして日本においてそれがまだ諸外国に比べて認められていない、そのことは十分に私も承知をしながら、そのことを制度として位置づけていくためには、やはりもう少し日本の国内で、諸外国で行われていることを一般化させていく努力が必要ではないかということを申し上げたわけでございます。

○水島委員
 それでは、今いただいた御答弁、諸外国のものを日本に取り入れていくためには時間が必要ではないかという御答弁をきょうのところではいただきまして、ちょっとこれはまた次の法案の審議のときにその続きを伺ってまいりたいと思いますけれども、そうしますと、大臣の御認識としては、施策の転換を行ったわけではない、テーマによるんだというような御認識だというふうに本日のところは承っておこうと思っております。
 さて、そのような流れの中でさらにお伺いしてまいりたいと思いますけれども、二〇〇四年度から臨床研修が義務化されることについては先日もさわりの部分をお尋ねいたしました。本日もさらにお伺いしたいと思います。
 ここに持ってまいりましたが、「裸のお医者さまたち」という本がございます。これに書かれておりますことは、私が留学経験のある先輩から伺ってきました内容と共通することが多々書かれていて、大変おもしろく読んだ本でございます。これは、日本で東大の医学部を卒業して六年間まじめに外科医として働いた著者がアメリカに行ってみて、そこで経験したことが書かれているわけでございますけれども、まず、大臣はこの本を読まれたことはございますでしょうか。

○坂口国務大臣
 残念ながら、読んでおりません。どなたかに、この本を一遍読んでみたらおもしろいですよというふうに言われた経験はございますけれども、残念ながら読んでおりません。

○水島委員
 本当に御多忙だと思いますけれども、ぜひ時間を見つけてお読みいただけると本当におもしろいと思いますが、内容を簡単に、いろいろな観点から書かれておりますけれども、本日は、臨床研修という点について、この本の内容を少々御紹介させていただきます。
 今申しましたように、この本の著者、桑間雄一郎さんという方は、東大の医学部を卒業して六年間まじめに日本で外科医として働いていたわけですけれども、アメリカに行ってみますと、卒後二年目の医者にもかなわなかったということが書かれているわけでございます。そして、卒後研修の根本的な違いに直面したということが書かれているわけです。この本は、患者の立場として読んだ場合でも、日本ではこんな貧困な医療しか受けられないのかというふうにぞっとするものであるわけですけれども、逆に、既に臨床研修を終えてしまった立場の私のような者からしましても、大変むなしくなる一冊でもございます。
 この本では、アメリカでは勉強することも大切な仕事として位置づけられる、でも、日本では勉強というのは一日の勤務の外の時間にすべきものとして位置づけられていると書かれております。
 確かに、私たちは自助努力で勉強するように求められてきました。ただ働きをしながら、見よう見まねで医療を身につけさせられました。でも、私が研修医のときに指導を受けた医師の中には、国際的にはおかしいとされている自己流の多剤併用を教えてくる人たちも少なくはありませんでした。自分がなぜそんな処方をするのか説明できない人の方が多かったと思っております。これではだめだと思って、私も、自分で海外の文献を読み、留学経験のある先輩を見つけていろいろ教えていただいたりしてきたわけでございます。
 そんな自分の研修医時代を振り返りますと、臨床研修が義務化されても、果たして日本の医療の質が上がるのか、不安がございます。きちんとした臨床研修を受けていない指導医が後輩を指導するということになるわけですけれども、そんな仕組みが機能するのでしょうか。
 先ほど申しましたように、心神喪失者医療観察法案では、日本で立ちおくれている司法精神医学を学ぶために外国に研修に行かせるための予算をとるというような内容が含まれているわけですけれども、それでは、臨床研修の指導医も、我流ではなく、国際水準の医療を身につけた人をつくるために、同じように予算をとって研修させる必要があるのではないかと思います。医療の本質ということではそちらの方がよほど重要なような気がいたしますけれども、大臣はどのようにお考えになりますでしょうか。

○坂口国務大臣
 研修医制度をこれからどうしていくかということを詳細に詰めていかなければならない時期を迎えております。研修医制度というものが大事だということは皆さん御理解をいただきましても、それじゃ、その内容をどうするのかといったことについて、そこのところはいろいろの御意見があるというふうに私は思っております。
 それで、今お話しになりましたように、昔、研修医制度というのはありましたけれども、そんなに手をとって教えてくれるわけではなくて、みんなが先輩のやっておることを見ながらこういうふうにするんだなというふうにやってきたり、あるいはまた、今先生が御指摘になりましたように、先輩がやっていたけれども果たしてこれがいいんだろうかという疑問を持って、また、それに対してそれよりも違う方法を勉強したりといったようなことだっただろうというふうに思うんです。
 今回、この研修医制度というのをつくって、できるだけそれを指導してもらう、指導してくれる医師を研修すると申しますか、医師をつくるということをこれからやっていきたいというふうに思っておりますが、さりとて、一〇〇%でき上がった人がそんなにたくさんいるとは、正直言って私は思いません。ある程度のことは教えてもらうでしょうけれども、しかし、結局のところは、その教えてもらったことをもとにして御自身で勉強をしていただかなければならないのではないかというふうに思います。
 現在のやり方というのは、それは医療の世界には大変さまざまなやり方がございます。必ずしも一律いたしておりません。大学は大学によります大学流のやり方も私はあるというふうに思いますし、また、その教授なら教授のやり方というものも私はあるというふうに思います。その辺のところを、いわゆる根拠に基づく医療をどうつくり上げていくかというのが、今、一つの考え方でございまして、そのことにつきましては今進めていただいているところでございますけれども、それを、よしでき上がったといたしましても、現場におきましてはさまざまなやり方をやはり勉強していただかなければならないのではないかと私は思っております。

○水島委員
 御丁寧に御答弁をいただいたわけでございますけれども、そうしますと、今の御答弁にもございましたように、ある程度それぞれのやり方があるだろうということで、それぞれの現場の自助努力に任されてきたというのが今までの臨床研修のあり方だったと思いますし、大臣がおっしゃったように、少しは教えるけれども最終的には自分で勉強しろというのも今までの臨床研修の場にあった雰囲気であると思いますけれども、そうしますと、今度、臨床研修制度が義務化されるというときに、そのあたりの発想の転換というものは余りないと考えてよろしいんでしょうか。今までのようなものが義務化されるというふうに考えていいわけではないと思うんですけれども。

○坂口国務大臣
 そう申し上げているわけではありません。研修医に対します指導をする人をちゃんとつくって、そして、そういう人があるところで研修をしていただくようにしなければならない。特に、今、プライマリーケアに重点を置いていこうということになりますと、やはりその指導する人がちゃんとしていなきゃならないということは当然でございます。
 しかし、私が申し上げているのは、一〇〇%指導できる、そういう人ばかりかということになれば、今までの経験からいたしますと、いわゆる治療方法につきましてもさまざまな治療方法が行われてまいっておりますから、指導をする人をつくるといいましても、一〇〇%それでいいかといえば、必ずしもそうはいかない問題がやはりつきまとってくる。そこは御自身で御勉強をしていただくということになるのではないかということを申し上げたわけであります。

○水島委員
 指導医を今からつくるということになりますと、これはまた大変な作業であるわけですけれども、例えば、お考えの中で、アメリカならアメリカでいいんですが、アメリカ流の臨床研修をきちんと受けてこられた方を特別に今回のその指導医の中で位置づけていくというようなお考えはおありでしょうか。

○坂口国務大臣
 中にはそうした方もおみえになるというふうに思いますが、そうした人だけに限定をしてしまいますと、そうしますと、やはり研修を受ける場所というのは非常に限定されてくるというふうに思います。今までは大学病院のみにこの研修をされる方が偏ってきたわけでありますが、もう少し幅広く、プライマリーケアというものを勉強していただこうと思えば、やはり大学だけではなくてもう少し広い医療機関で御勉強いただく方がいいのではないかというふうに思っております。
 そういたしますと、今の指導者の質の問題になってまいりまして、アメリカ等で最新の医学を御勉強になった方がおみえになるところだけということになりますと、非常に限定されてくる問題がある。そこをどうするかという問題がそのときに生じてまいりますから、やはりそこは、もう少し指導者の範囲というものは広くとっていかないと私はいけないのではないかというふうに今は考えております。

○水島委員
 ぜひ、その指導者を育成する効率的な方法を考えていただきたいと思いますけれども、この指導医の問題とも関連してまいりますが、医療の質を決めるのは、何もこれから医者になる人たちだけではなく、既に研修が終わってしまった医者たちでもあるわけですし、当面はそちらの立場の人たちの方が大きな影響を与えるわけでございます。
 現在、医師の生涯学習は医師会ですとか各種の学会で自発的に行われているだけであって、忙しいと参加できないなどということにもなっていますし、また、やる気がないと参加しないということにもなっていくわけでございます。
 この生涯学習という問題はかなり重要なテーマであると思いますけれども、また、指導医の質をずっと維持していくということからいっても、その指導医も生涯学習を受けていかなければいけないということになるわけですけれども、今回、卒後の、これから医者になる人たちに対する制度が義務化されることを機に、それ以外の医者については、この生涯学習ということについてはどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。

○坂口国務大臣
 それも大事な問題でありまして、この生涯教育を医師がどう受けていくか、これは今までも大事だったんですけれども、今までよりも、医学の進歩がこれだけ速くなってまいりますと、さらに大事になってくるというふうに思っております。
 それも先ほどお話ございましたように、医師会でありますとか、あるいはさまざまな学会を中心にしてお願いをしてきたわけでありまして、それに対しまして、国なり都道府県なりがバックアップをしていくという体制で参りました。
 その生涯学習のあり方というものも、これも今までのままでいいのか、もう少しこれを体系化をして、皆さんが受けていただけるようにするというようなことをしていかねばならないのか、その辺もやはり整理をしなきゃならないと私も思います。

○水島委員
 ぜひこれを機会に前向きに整理をしていただきまして、またしばらくたったところでその経過をお伺いしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 その中では、先ほど我が党の加藤公一議員からも質問にございました医局講座制の問題というものも、真剣にとらえていかなければいけない問題ではないかと思っております。
 やはり今は患者さんの顔色よりも教授の顔色をうかがうようになってしまう、また、臨床よりも研究に価値を見出してしまうというような弊害が指摘されていることは事実でございますので、この点についても大臣は前向きに取り組まれるということでございますので、ぜひよろしくお願い申し上げます。
 そしてまた、患者さんの立場から見ますと、とても熱心にやってくれるよい医者にかかっても、あるいはとてもいいかげんな医者にかかっても、どちらでも医療費が同じだというのが納得できないという声が、この健康保険法改正案の審議が始まりましてから一段と多く聞かれるようになってきております。医師の質をどう評価するかということは、医療の公正さにも大きくかかわる問題であると思いますし、私は医療者のやる気にもつながってくる問題であると思っております。
 この評価の仕組みを考える上で、例えばある患者さんが外科手術を受けるというような場合に、どの医者がその手術を今までに何例経験してきたか、そのうちの成功率は何%だったのか、そのようなことを知るというのは、医療を選択する上で重要な要因だと思っておりますけれども、こういった内容を開示していくという方向性について、大臣はどうお考えになりますでしょうか。

○宮路副大臣
 私の方から答弁させていただきますが、医療機関に関する情報提供というものを進めて、そして、そのことによって患者の皆さんが医療の選択をできるようになる、そして、そのことによって医療の質の向上と効率化が図られていくということでありますので、医療情報の提供ということは、これは大変大切であるというふうに考えておるわけであります。
 したがって、ことしの四月から、御案内のように、医師の専門性や、それから手術件数等を広告できるように、これまでの広告規制を大幅に緩和させていただきました。そして同時に、私どもとしては、公的機関によりますインターネットを通じた情報提供というものを今後ともさらに充実強化していきたい、このように思っておるわけでございます。
 そこで、そういった情報提供の対象として、手術の成功率というものをどう取り扱うかということでありますが、この問題については、まず一つは、手術の成功という、その成功というものはどういうものとしてとらえていったらいいのかというなかなか困難な問題もありますし、また、患者の症状についての重症度等をどう評価するかといったような難しい問題もあるわけでありまして、こういったことから、仮に手術の成功というものを情報提供の対象とした場合に、提供されたその当該情報の比較の可能性、あるいは客観的な検証可能性といいましょうか、そういった客観的な評価、比較というものがなかなか難しい側面があるということでありますので、今後のこれは検討課題ではないかなというふうに思っております。
 いずれにしても、医療情報の積極的な提供を進めていくということは、先ほど冒頭申し上げましたように大変大切な課題であると思っておりますので、今後とも一層の努力を払ってまいりたい、こういうように思っているところであります。

○水島委員
 例えば、今おっしゃった成功をどうとらえるかとか、症状の重症度をどういうふうに考えるかといったようなことについては、これは今までの長年の臨床研究ですとか薬の治験などのときに、もう長年、ある程度積み重ねられてきている議論がございますので、症状の重症度をきちんと評価する指標もあれば、また、それらに対してどういう治療を行ったときの転帰が、先ほど私はわかりやすく成功率というふうに言いましたけれども、何も成功失敗だけではなくて、いろいろな転帰がもちろん分類としてあるわけでございますので、これは今から白紙の状態から始めなければいけない議論ではないと理解しております。
 いずれにしましても、そのような点は考えていただくといたしましても、もう一度ちょっと確認をさせていただきたいのですけれども、今、御答弁の最後が、いずれにしても情報公開は推進していくという御答弁でございまして、ちょっと個別のテーマからまた離れて総論で終わってしまったわけでございますけれども、やはりそのような、医療者がある疾患に対して、このような治療法をそれまでにどのくらい経験してきていて、その転帰が重症度別に大体どんなふうになってきたかというような、そういった情報を医療を受ける者として受け取る権利がある。
 そのような環境を整備していくような、そういう姿勢に厚生労働省はあるというふうにこれは理解してよろしいのでしょうか。

○宮路副大臣
 御指摘のそのものずばりということじゃないかもしれませんが、いずれにしましても、より患者の皆さんの選択の幅を広げていく、選択肢を広げていくというような観点からの医療情報の提供、これに積極的に取り組んでいくべきであるということはもとよりでありますので、そうした努力を行う中で、もろもろのそういった御指摘の問題なども当然考えながらやってまいりたい、こう思っているということでございます。

○水島委員
 ぜひいろいろと考えていただけますようにお願いいたします。
 そして、さらに伺ってまいりますけれども、医療の効率化という観点から、また情報提供という観点からも、少し画像診断についてお伺いしたいと思います。
 MRI、つまり磁気共鳴映像については、日常診療の中で臨床診断における役割が一層大きなものになってきております。委員の皆様も、MRIという言葉を一回も聞いたことのないという方はそろそろいらっしゃらないのではないかと思いますけれども、MRIの解像度につきましては、磁場強度が大きな影響を与えます。
 例えば脳動脈瘤のスクリーニングにおいて、磁場強度が〇・五テスラよりも一・五テスラの方が検出率が二〇%ほど高いという結果が、これは旧厚生省の研究費による研究によっても明らかになっているわけでございます。ところが、現在のところ、管腔撮影については一・五テスラでという条件こそつけられていますけれども、それ以外の撮影であれば、磁場強度が幾つであっても算定される保険点数は同じでございます。
 これから時代は一・五テスラを超えて三テスラに向かっていこうというようなときに、日本ではまだまだ〇・五テスラのものが広く普及しているわけでございます。これは検査を受ける患者の立場から見ますと、MRIを受けたから大丈夫だ、多くの方がそのように普通に思われるわけですけれども、そう思っていても、それが〇・五テスラであったのか一・五テスラであったのかによって、診断能が変わってくるわけです。でも、保険点数も同じでございますので、また、磁場強度など、現在は伝えられてもわからないわけですので、自分が受けた検査について全くわかっていないというのが現状であるわけです。MRIを受けたからもう大丈夫だと思っていても、もしかしたら、〇・五テスラではなくて一・五テスラで受けていれば、自分の小さな脳梗塞が見つかったかもしれないけれども、そんなことも含めて全くわかっていないというのが現状であるわけです。
 このような問題を大臣はどのようにお考えになりますでしょうか。専門家の意見の中には、〇・五テスラと一・五テスラで保険点数を変えるべきだというような意見もございますし、あるいは、受けた検査の磁場強度の情報公開をさせるべきだというような意見もございますけれども、これについては、どのようにお考えになって、どのような方向に解決されていくおつもりでしょうか。

○大塚政府参考人
 現在の診療報酬の点数につきまして、事務的な内容でございますので、御説明申し上げますと……(水島委員「点数そのものの話を聞いているのじゃないので、やはり大臣にお答えいただかないと」と呼ぶ)
 一言だけ申し上げますと、現在の診療報酬上は、MRIにつきましては、単純MRI撮影と特殊MRI撮影、一・五テスラという話もございましたが、現状では一・〇テスラで線を引きまして、それぞれ点数が異なっておりまして、当然特殊MRI撮影の方に高い点数をつける、こういった仕組みを導入しているわけでございます。すべての画像診断というわけではございませんが、MRIにつきましては、ただいま申し上げたような手当てをいたしているところでございます。

○宮路副大臣
 点数の問題は今保険局長の方からお答えしたのでありますが、どういう高度医療機器を保有しておって、そしてそれによる診療行為を受けたかどうかという、そのことを情報提供の対象とすることについてどうか、そういう御趣旨の御質問でもあったかと思うのでありますが、当該医療機関がそうした高度医療機器を保有しているかどうか、使っているかどうか、それを現在は、情報提供の対象として掲げていないところであるわけであります。
 それといいますのも、それを対象とすることについては、ともすれば、そうした高度医療機器を保有している病院といいましょうか医療機関に、患者の方々が、殺到すると言ってはなんでありますが、そちらにたくさん、そこで診療を受けたがるという方々が多くなってくる可能性というか、そういう問題もあるわけでありまして、中には、MRIについて共同利用をしておりましたり、あるいは、アウトソーシングと申しましょうか、ほかの医療機関にその点は頼んでいるといったような、そういう病院も、医療機関もあるわけでありますし、また他方では、高度医療機器のいわば導入についての医療機関の中における、競争激化と言ってはなんでありますが、お互い過当な競争をして医療機器の導入を図るといったようなことが起こってくる可能性ということも否定できない。
 そうなりますと、医療機関内における機能分担と申しましょうか、そういったことに対する影響で、むしろ好ましからざる影響というのも出てくるのではなかろうかといったような、そういった懸念材料も多々あるわけでありますので、したがって、現在のところ、そうした機器の保有状況、あるいは使用状況についての情報を情報提供の対象とは目下のところしていない、そういうことでありまして、この問題も慎重に検討していくべきテーマであるというふうに思っておる次第であります。

○水島委員
 大臣にお伺いしたことに対して、御丁寧に局長と副大臣までお答えくださったわけですので、もしかするときょう私が用意してきた質問が最後まで行かないかもしれないので、ぜひもう一度チャンスを与えていただきたいと思いますけれども。
 今の副大臣の前の、局長の御答弁については、私も既に十分理解して、了解している知識、それを教えてくださったということですので、私はそのような御答弁は求めておりませんでしたし、私の質問の中でその点についてはきちんと触れておりましたので、ぜひそれを踏まえた答弁をいただくのであればいただきたかったのですけれども。
 それはそれといたしまして、今の副大臣の御答弁を簡単にまとめさせていただきますと、つまり、患者という生き物は情報を提供すると非常にパニックになって、どこかに殺到したりとかおかしな行動をするかもしれないから、情報はできるだけ慎重に公開していって、コントロールしなければいけないというような姿勢に私は受け取りました。これが今まで日本の行政全般に共通する姿勢だったんじゃないかなと私は思いますけれども、いつも最初からきちんと正しい情報を出せばいいのに、小出しに小出しにしていって、最終的にさらに行政への信頼感を損ねるというような事件が過去に何回もあったと思います。
 最初からきちんと提供をした上で、同じ目線で国民と一緒に話し合っていこうというような、そういう率直な態度が、建設的な態度が必要なのではないかと思いますけれども、だからいつまでたっても医療に対する国民側の意識というものも変わってこないんじゃないかと思います。
 ですから、ちょっとこの点についてさらにお伺いしたいと思うんですけれども、では、情報を公開していない現状、どうなっているかというと、よくわからない、検査の正確性についてもよくわからない、でも大学病院に行けば少なくとも最先端のいい検査をしてくれるだろうから、心配だから大学病院に行ってしまおうというのが、多くの方たちの行動パターンであるわけです。ですから、これは逆に、情報を公開していれば、自分の地元の一見小さく見えるところであっても、そこに非常に最先端の機器が入っていることがわかれば、何も電車を乗り継いで大都市の大病院に行かなくてもいいわけであるわけですから、実際に今情報を公開していないからみんなが落ちついているかというと、必ずしもそういうことにはなっていないと思うわけです。
 また、そのような過当競争が起こってくるということでございますけれども、本来、この問題につきましては、いまだに、だんだんと標準が一・五テスラになっている、少なくとも学問の場では一・五テスラが当然の前提として語られているような時代であっても、なお多くの日本にあるMRIの磁場強度が〇・五テスラにとどまっているということは本当に恥ずかしい現状だというふうに言っている方もいるわけです。
 ただ、これはもちろん〇・五テスラのMRIを禁止するなどという方法をとるべきではないと私は思いますけれども、もちろん整形外科領域などで、非常に粗大な病変であれば〇・五テスラでも十分であるということはあるわけですけれども、だんだんと、この医療機器の進歩という中では、きちんと情報を公開して、自分の受けたい検査がどこに行けば受けられるかということがわかっていく中で、本来望ましい姿に医療というものは収束していくのではないかと思います。
 このような観点も踏まえまして、これは大臣のお考えを伺いたくてもともと質問していることでございますので、もう一度繰り返して質問いたしますと、今自分が受けている検査について、それがどんな磁場強度のものであるのかも全くわからないような現状について、大臣はこのままでよいとお考えになるかならないか、それだけで結構ですので、お願いいたします。

○坂口国務大臣
 今、MRIを中心にしてお話をいただきましたが、どういう医療機器であったといたしましても、最初それが開発されたときから時を経ますと、だんだんと優秀なものが出てくるだろうというふうに思っております。その質が高くなるということは当然あるわけでありますから、私は、質が高くなれば、やはり診療報酬にもそれは影響が与えられてくる、どこかでやはりそれがわかるようにするというのは当然だろうというふうに思っています。
 だから、これはコストにも当然のことながらはね返ってくる問題だというふうに思いますし、精度の高いものは高いものとしてわかるようにしていくのがやはり制度としては必要だというふうに思っております。

○水島委員
 ぜひそのような御認識に立たれまして、ではどういう仕組みをつくっていくのがよいのかということを御検討いただければと思います。
 薬については、今までも薬効が違えば扱いも違うというようなことは一般的に受け入れられてきて、制度もそのようになっていますけれども、検査ということに関しては、実はそういう意味では手つかずであったのではないかと思っておりますので、医療財政の問題がこれだけ深刻になっているのであれば、やはりこの点もいつまでも手つかずのままでよいとは思えませんので、お願いいたします。
 そして、これから医療機器というものはどんどん高度化していくわけでございますし、MRIにしましても三テスラの時代になっていくと言われておりますけれども、そうなってまいりますとますますメンテナンス費用もかかってまいります。
 そのようなことを考えましても、高度な機器はなるべく共有できる仕組みをつくった方が、医療費の医業外流出を防ぐためにも、そして全体的な医療財政の健全化を図っていくためにもよいと思いますけれども、この機器の共有化ということについてはどのような施策を講じていかれるおつもりでしょうか。

○宮路副大臣
 MRIの今お話が出たわけでありますが、そうした高額医療機器の共同利用につきましては、厚生労働省としても、これまで積極的に取り組んでおるわけでありまして、例えば補助事業につきましても、共同利用の高額医療機器の整備に対する補助事業を従来から行っておりますし、また診療報酬につきましても、MRIやあるいはCTの撮影に関し、共同利用率を評価した点数の設定を行っております。
 さらにまた、都道府県でつくります医療計画の段階におきましても、医療機器の共同利用を明確に位置づけてもらうことにいたしておりまして、その上で政策誘導を行って、共同利用を進めるということにもいたしておるわけであります。
 こうした共同利用の推進ということは、医療資源の有効活用あるいは地域医療のレベルアップという面でも、これは効果、効用を大いに有しているわけでありますので、その推進に今後ともさらに力を尽くしていきたい、かように思っております。

○水島委員
 患者の立場から見ますと、本当に望んでいる医療が行われているかという点から見ますと、薬剤についても実は問題はたくさんございます。具体例を一つ挙げさせていただきます。
 女性のライフスタイルの変化に伴って、子宮内膜症になる方の数がふえているわけですけれども、子宮内膜症に対してマイルドで持続的効果がある低用量経口避妊薬、いわゆる低用量ピルは、日本では子宮内膜症の治療薬として認められていないだけではなく、子宮内膜症と合併していることが少なくない子宮筋腫があると使用禁忌となっているというおかしな状態になっております。
 まず、どのようなデータに基づいて子宮筋腫が使用禁忌になっているのでしょうか。

○宮島政府参考人 
 低用量経口避妊薬につきましては、避妊の適応で承認されているものでございまして、健康な女性が長期間服用するものというふうにされております。したがいまして、低用量経口避妊薬の承認審査におきましても、特に安全性に関して慎重に審査を行ってきたという経過がございます。
 御指摘の子宮筋腫につきましては、子宮頸がん、乳がんと同様にエストロゲン依存性の腫瘍であるという報告がございますことから、子宮頸がん、乳がんと同様に入念的に禁忌としたものでございます。

○水島委員
 ところが、私が調べました範囲では、いろいろなデータを見ますと低用量ピルというのは子宮筋腫に対して治療的な効果もあるということになっておりまして、これが禁忌であるということはおかしいということが専門家からも指摘をされているわけでございます。また、これは当然適応症の問題があって、避妊目的で使う場合と子宮内膜症の治療薬として使う場合とは当然扱いが変わってくると思いますけれども、これは私はぜひきちんと御検証をいただきたいと思っております。
 また、中用量ピルは子宮内膜症の治療薬として認められているのに低用量ピルは認められていないということは、医学的に整合性がとれないわけです。これは単に企業による承認申請がなかったというような現実的な理由によるものだとは思いますけれども、私はいつも日本の薬事行政を見て思うんですけれども、そもそもすべてを企業から申請があった、なかったということだけで決めているような、そんな企業の申請任せにするような薬事行政でよいのでしょうか。子宮内膜症の患者さんからすれば、低用量ピルの方が自分にとってマイルドでよい治療薬であると思って、国際的にも使われていることを知っているのに、少なくとも保険医療の中ではそれを使えない。また、避妊目的のような形にして自費で使っていこうとすると、今度は子宮筋腫が合併していると使えない。
 そんなおかしな形になっているわけですので、これはきちんと現場の声を吸い上げていただきたいと思うんですけれども、このように薬事行政をすべて企業の申請任せにするようなことでよいのかどうかということについては、大臣はどうお考えになりますでしょうか。

○坂口国務大臣
 その具体的なお話につきましては少しお許しください。私もそこまでちょっと存じませんので、お許しいただきたいというふうに思います。
 薬事全般にわたりますことにつきましては、どういうものを今後認めていくかということは、それは今御指摘になりましたように、企業からそういう承認の申請があったからそれは認める、認めないということではなくて、この範囲のこういう薬については認めるということをやはり明確にしていくということも大事かなというふうに思いながら、私は今聞かせていただいた次第でございます。

○水島委員
 今、申請があった中でこの範囲でという御答弁でしたけれども、申請がなくても、今申しましたように、医学上の整合性ですとか、それこそ国際水準から見ると、日本にもこれがきちんと使えるようになっていないとというものも多々ございますので、ぜひもう少し広い目で承認ということを考えていっていただきたいと思っております。
 さて、時間がいよいよ残り少なくなってまいりましたが、さらにお伺いいたしますけれども、今度は医療の質という観点から、ジェンダー・スペシフィック・メディスンについてお伺いしたいと思います。これは性差を考慮した医療と訳されておりますけれども、アメリカでは既に一つの確立された領域になっています。
 例えば血中の総脂肪の値一つ考えましても、心血管障害やがんのリスクとの関係は男女で明らかに異なっております。日本の臨床ではまだまだコレステロールは下げないといけないとして、抗コレステロール薬などが使われますけれども、がんのリスクの高い家系の男性にとってはこれは危険なアプローチということになりますし、また女性の場合、心血管障害のことを考えても、適正なコレステロール値の範囲は現在適正と言われているところよりも高いところにあるということがわかってきているわけでございます。
 厚生労働省として、このジェンダー・スペシフィック・メディスンを現在どのように位置づけられていらっしゃるでしょうか。

○岩田政府参考人
 患者の特性を考慮した医療を提供していくということは、一人一人の国民の健康を増進するために大変大事なことであるというふうに思っております。そして、患者の特性の一つとして、男性と女性の差、性差があるということはそのとおりでございまして、医療の提供の中で性差を科学的に考慮していくということは、生涯を通じた女性の健康支援という観点からも大変大事だというふうに思っております。
 しかしながら、これまで厚生労働省として、この問題についてこういった観点からの本格的な調査研究はなされてまいりませんでした。そこで、初めてでございますが、今年度から三年間の予定で、厚生労働科学研究の中で研究をやってまいりたいというふうに思っております。
 諸外国の成果を学習するということはもちろんでございますが、日本の女性の健康に関するデータの収集ですとか、医療の提供や医薬品の開発あるいは医学、薬学の研究レベル、そういうさまざまなレベルで性差の考慮がどの程度現状なされているかということの現状の把握ですとか、さらには、今後、医療機関などにおいて性差を考慮した医療などをどういうふうに進めていくかというようなことについても研究していただき、提言をいただけるものというふうに思っております。

○水島委員
 実は、きょう岩田局長がお見えであるのを見ました私の先輩議員が、水島さん、きょうも子育てについて質問するんですかというふうに先ほど声をかけてこられました。私も非常に違和感を感じるんですけれども、なぜこのジェンダー・スペシフィック・メディスンについての御答弁が雇・児局長の岩田局長ということになっているんでしょうか。ちょっとその認識をお伺いしたいと思います。

○岩田政府参考人
 私は、雇用均等・児童家庭局という局を所掌いたしておりまして、その所掌の範囲の中に、母子保健の分野を持っております。ですから、周産期の問題を担当いたしておりますので、生涯を通じた女性の健康問題ということで大変深くかかわっております。
 しかしながら、このジェンダー・スペシフィック・メディスンは、今研究レベルですから、たまたま私どもの局でイニシアチブをとって調査研究を始めていただきますが、それを受けて、実際どういう形で行政レベルで受けとめられるかということになりますと、各局横断的な問題になりますので、各局とも御相談しながらやっていく課題だというふうに思っております。

○水島委員
 これは別にいわゆる女子供の問題ではございませんで、男性と女性、それぞれの特性を考慮する医療であって、男性も十分にかかわってくる問題であるわけですので、それを雇・児局に今割り当てているというところに、そもそもこの問題をよく御理解になっていないんじゃないかなとちょっと心配になるわけですけれども、これから研究を始められるということですから、今からでもちょっと変えられるのなら変えていただきたいと思いますが、少なくとも研究を経た後には、ここで最初に雇・児局に割り振ったということはおかしかったというようなことをきちんと公的に表明していただかないと、国民がこの問題に初めて入っていくときに、これはしょせん女性の問題なんだろうとか母子保健なんだろうとか、そういう目で見てしまうのではないかと思いますので、これは正しい理解ということできちんと位置づけていただけますようにお願い申し上げます。
 もう時間が終了しておりますが、実は、本日、事前通告させていただいておりました質問、質問し終わっておりません。非常に重要なテーマも残してしまいましたので、ぜひまた後日質問をさせていただきたいということをお願い申し上げまして、本日の質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。



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