厚生労働委員会
(2002年5月17日)



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医療改革、医学部教育、タバコ問題



○森委員長
 次に、水島広子君。

○水島委員
 民主党の水島広子でございます。
 四月十九日にも私は衆議院本会議で申し上げましたけれども、このたびの政府の健康保険法改正案には大変な憤りを感じております。政府・与党は、医療の抜本的な制度改革を先送りにし、必要な改革を全くしないままに、今回の健保法改正案のように患者負担増だけを求めたり、良心的な医療者を追い詰めるような小手先の財政対策ばかりを行ってきたというのは、既に周知の事実でございます。
 何といっても、私が最も強い憤りを感じるのは、小泉首相の公約違反でございます。
 被用者の自己負担が一割から二割に引き上げられた当時の厚生大臣であった小泉首相は、一九九八年六月の委員会で次のように答弁しておられます。「そこで問題は、どのように総合的に抜本的に制度改革をしていくか、また医療皆保険制度をどのように安定的に今後とも維持、発展させていくか、そして良質な医療を提供していくか、このような問題につきましてはほぼ議論が出尽くしていると思います。
 できるだけ早く結論をまとめまして、平成十二年度実施に向けて全力を投球していきたいと思います。」このように、堂々と、きっぱりと明言されているのです。
 もちろんそれが全く実現していないどころか、予定を二年も過ぎた今なお抜本的な改革が先送りにされたまま、今度は二割を三割負担に引き上げるというのですから、本当にあきれてしまうわけでございます。
 政治家、それも大臣の公約というのはこんなにも軽いものなのでしょうか。政治家は口だけだから信用できないと言われてしまっても、何も言い返せないのではないでしょうか。政治不信の根がこのようなところにあると私は切実に思っております。これは野党の一員として言うのではなく、本当に一人の有権者として私ははっきり申し上げたいと思いますけれども、こんな問題は本当に私は重大であると思っております。
 今回の健保法改正案の附則には、医療保険制度の給付率については将来にわたり七割を維持するものとすると書かれています。この附則の重みについて、坂口大臣は先日の委員会でも、重いものだと答弁されております。坂口大臣のお人柄を考えますと、もちろん本気でおっしゃっているのだと思います。でも、当時の小泉厚生大臣の公約がいとも軽々と破られた後、その小泉内閣の大臣から大臣の言葉は重いと言われても、信用できないのが当たり前の心理ではないでしょうか。大臣が何か言うたびに、どうせそんなことは守られるわけがないと思わなければならないとしたら、そんな不幸な国民はないと思います。
 日本を危機的な状態から救うためにも、政治への信頼を育て、政治への関心を高めることは最優先の課題です。政治不信を払拭するためにも、小泉首相の身内である坂口大臣が、まずは小泉首相の公約違反をきちんと批判して総括することが必要だと思います。この健康保険法改正案の議論を始めるに当たりまして、今ここで坂口大臣にやっていただきたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。

○坂口国務大臣
 水島議員のいつも歯切れのいいお言葉を聞かせていただきまして、大変光栄でございます。
 さて、小泉首相も、自分が厚生大臣のときに公約した抜本改革というものが、なるほど、その後、薬事の問題でございますとか、部分的には確かに行われてきておりますけれども、しかし本格的な抜本改革ができ得なかった、これは大変残念だということを言っておみえになるわけでございます。
 というのは、首相御自身がおやりになって、それでずっとそれが続いてきたわけではなくて、その御主張をなすってすぐその後おかわりになったものですから、なかなか思うように自分の主張したことがそこで実ってこなかったという思いを私はお持ちだというふうに思っております。したがいまして、総理が、どうしてもやはり今回は抜本改革を坂口さんやってくれと、これはやり抜かなきゃならない、もうどうしてもやらなきゃならないからそれを頼むということを、前々から実は言っておみえになったわけでございます。
 ちょうど、もう一年前になりますけれども、五月の二十三日、忘れもいたしませんが、ハンセン病の訴訟の控訴断念を決定されましたときに、その直後に、控訴断念をすると言われたその直後に、小泉総理は、坂口さん、次は医療制度改革だ、医療制度改革の中でも抜本改革だということをそのときにおっしゃいまして、ぜひ坂口さん、そのことを忘れずにやってくれということを言われたわけでございます。
 私も、以来、この抜本改革につきましてのことをいろいろやってきたんですが、正直申しまして、小泉総理がそういうふうにおっしゃったんですけれども、後を引き受けました私も、今回の医療制度改革のときに同時にその案を提出することができなかった。大変私も残念だというふうに思っておりますが、しかし、それにはその理由がございまして、抜本改革が抜本的になればなるほど、他の分野との関連が大きくなってくるんですね。例えば税制改革をどうするかとか、そうした他の分野との関連が非常に大きくなってくるといったようなことで、ずるずると延びてしまうということがございます。
 そこで、今回の医療制度改革を行うにつきましても、平成十五年の四月一日から実際には三割負担なり保険料の上昇というものが起こる、それまでにこの抜本改革の決着というものをつけるという強い姿勢で今臨んでいるわけでございます。その中には、今まで言われてこなかった保険の一元化の問題も非常に大きな問題でございますし、もちろんその中には高齢者保険のあり方というものも含めてその決着をつける。
 そして、もう一つは診療報酬体系。先ほどもございましたけれども、診療報酬体系のあり方、今非常に複雑怪奇でわかりにくい。これには明確な尺度、物差しをつくって、どなたがごらんになりましてもここはなぜ高いか低いかということが明確にわかるようなことを、明確にしていく。
 それにもう一つは、厚生労働省自身が絡みますところの問題、例えば年金、医療、介護等の徴収の一元化の問題でございますとか、あるいは社会保険病院等の整理合理化といったような、自身が痛みを分かたなければならないような問題の決着をこの八月までにつける。
 そうしたことを明確にしながら、今回のこの医療保険制度のお願いを申し上げる、そういうことにした次第でございます。

○水島委員
 政治不信といえば、私はこの国会の出席率というのも政治不信につながるかなと思っておりますけれども、現状の、特に与党の皆様の委員の、御出席の方に申し上げても仕方がないのかもしれませんが、この空席の多さをぜひ御注目いただければと思っているところでございます。
 さて、今の御説明、実情はそのとおりなんだろうと思います。実情はそのとおりなんだと思いますし、本日、この後にも何度かこの日本の縦割り行政の弊害ということについては触れさせていただきたいと思っておりますけれども、真剣に進めようとすればするほど他省庁との兼ね合いの問題にぶつかっていくということは、全くそのとおりなんだと思います。だからこそ、官僚にはできない、そのトップに立つ政治家が解決していかなければいけないことであって、だからこそ、国会議員である坂口大臣が大臣として省庁のトップにいらっしゃるのであると思います。
 その大臣のリーダーシップに本当に心から期待を申し上げたいと思いますけれども、私がここでもっと問題にしたいのは政治家の言葉の軽さということであるわけです。小泉首相の当時の答弁、読めば読むほど本当にはっきりと、いかにこの問題が簡単であるかのように語られております。
 私は、現実には大変難しい問題だということを承知しているわけでございますけれども、できないことであればできないと言うべきであって、ほかの省庁とのぶつかり合いがあってできないのであればそれをそのまま表現するべきであって、自分の力がどこが足りないのかということがわかっていればそれをそのまま表現するべきであって、そのように本当に心からの正しい誠実な一言一言があれば国民は今の政治でどこが問題なのかを理解することができますし、どのような人が大臣に座っていけばこういったことが可能になるかということも理解できるのではないかと思っているわけです。
 できもしないことを、あたかも今すぐにもできるかのように発言をしているこの当時の小泉厚生大臣の答弁というものの問題の大きさということを私は改めて感じているところでございますけれども、もう一度確認させていただきますが、少なくとも、この委員会で坂口厚生労働大臣が御発言される内容につきましては、そのように軽々しく言うのではなくて、本当に、現状を誠実に坂口大臣らしく一言一言語っていただけるということを、ちょっとここで改めて確認させていただければ幸いでございます。

○坂口国務大臣
 先ほど申しましたように、経緯はそういう経緯で来たわけでございますが、抜本改革はもう避けて通れない、どうしてもやり抜かなければならない問題であります。縦割り行政の話も先ほど少し触れたわけでございますけれども、やはり考えてみれば、昨年の段階で私もそこまで思わなかったわけでありますが、しかし、今にして考えてみれば、どこかがやはり決定をして、そして先鞭をつけなければ全体が動かない、全体が同じに動くのを待っていたのではなかなか動かないということを私も学習したわけであります。
 今度は、他の分野がたとえ動かなくても、厚生労働分野の医療保険制度につきましてはそれを動かす、先鞭をつけて動かす、他の分野に議論を巻き起こすということがやはり大事ではないかというふうに思っておりまして、そこは責任を持ってやらせていただきたいと思っているところでございます。(発言する者あり)

○水島委員
 だまされるなという声が聞こえてはきておりますけれども、私は、本当に、坂口大臣を信用できなくなったら日本の厚生行政は終わりではないか、そのくらいの気持ちを持ってここからの質問をさせていただきたいと思います。党利党略の野党の意見というふうにはくれぐれも受け取らないでいただきたいと思いますし、本当に一人の有権者として、そして小さな子供を持ってこれからの日本の将来を真剣に憂えている一人の人間の声として、ぜひ真剣に受けとめていただければと思います。
 それでは質問に入らせていただきます。
 私たちは、医療保険制度改革の議論を進めるためには、まず医療そのものが国民に信頼され、かつ医療を取り巻く環境の変化に十分対応し得るものとならなければならないと思っております。その基盤をつくる一つが、私たちが、医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案、いわゆる患者の権利法を通して提案をしております医療情報の提供の問題でございます。
 四月十九日の衆議院本会議で、患者の権利法についての大臣の考えを我が党の釘宮議員が質問されました。それに対して大臣は、何でも法律で決めるというのもというような趣旨の答弁をされました。でも、現在の余裕のない医療現場を考えますと、制度としてきちんとつくらなければなかなか前進しないと私は思っておりますけれども、もう一度この点について御答弁いただけますでしょうか。
 
 
 
 〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕

○坂口国務大臣
 ちょっと最初のところを聞き漏らしましたが、医療情報開示のお話でございましたでしょうか。
 医療情報開示につきましては、いわゆる医療の質を高めるという意味で避けて通れない問題だと私も思っております。ここをどう進めていくかということでございますが、一方におきましては、今現在電子カルテの問題等が進められておりますし、この電子カルテの問題がかなり進んでまいりましたら、ここは飛躍的に進むんだろうというふうに私は思っています。
 現在、医療機関等に調査等をいたしますと、もし御本人の申し出があれば開示をいたしますというのは大体九割近くになっているんですね。そのデータが正しければの話でございますけれども、そういうふうになっております。ですから、以前に比較をいたしまして、情報開示というものがかなり進んできていることは間違いがございません。ただし、まだその一割ぐらいなところはしていないというふうにお答えになっている、そういうところもあるわけでございますから、さらに一層、我々としましては、情報開示を進めるようにどうするかということをやっていかなければなりません。
 釘宮先生からも御質問を先日本会議でちょうだいしたわけでございますが、それは法的に縛るべきだというのも一つの御意見でございましょう。しかし、すべてのことを法律で縛るというのではなくて、できることならば医療機関が、医療機関の一つの意思としてそういうふうになっていくことが望ましいというふうに私は思っているわけでございます。
 しかし、これがどうしても意思として進まないということであるならば、それはそのときに考えなければならない問題だというふうに思っておりまして、できる限り医療機関の意思によってそういうふうにしていただけるようにしていきたいというふうに思っている次第でございます。

○水島委員
 今までの時点で既に遅々として進まなかったという評価をされている方もいるんじゃないかと思いますけれども、少なくとも、今の大臣の御発言に基づきまして、では、どのように自発的に行えるような仕組みをつくっていかれるおつもりなのか、もう少し具体的にお聞かせいただけますでしょうか。

○坂口国務大臣
 一つは、病院の方の広告規制等の緩和の問題がございまして、これは四月にも第一弾を行ったところでございますが、いわゆる病院の中の専門性、治療方法あるいは手術件数等々を明確にしていく。このことがいわゆるカルテの開示の問題とは直接にはかかわりませんけれども、そうした規制緩和を行うことによりまして、患者の皆さん方に、病院の選択の幅を明確にすると申しますか、選択してもらいやすくするといったようなことをしていかなければなりません。
 それから今度は、一つは、IT化との関連におきまして、カルテの記載の仕方、いわゆる用語の標準化といったものも現在進めております。そして、電子カルテを導入しやすくするということを現在行っておりまして、それによって相互にカルテが、内容が病院から病院へ示されるということにもなりますし、そのことは、ひいては患者の皆さん方にもそれを開示していただきやすい、わかりやすい形にしていきたいというふうに思っております。
 ただ、今までのようなカルテの書き方でたとえ見せてもらっても、何が何やらわからないというのでは、これはならないわけでございますから、患者の皆さん方がごらんをいただいてもそれがわかるような内容のカルテにしていくということも大事なことでございますので、そうしたことをこれから進めていきたい、そういう環境を整備していきたいというふうに思っております。
 公的機関によりますインターネットを通じましたこの問題等につきましてもやっておりますが、これは、一々個々の問題ではございませんで、トータルでどうかということを示す話でございますから、個々の内容の開示ではございません。トータルとしてはこういうことだということの開示、そうしたことも進めていきたいというふうに思っている次第でございます。

○水島委員
 もちろん、そういったことを進めていくことは必要なわけですし、今御指摘のあったように、確かに、今のカルテというのは患者さんに見せることを前提に書かれているカルテではございませんので、今それを全部開示しろと言われても、それ自身が意味がなかったり、あるいは有害ですらあるような現状もあるとは思っております。ですから、書き方から何から含めた、これはかなり抜本的な改革になるんだと思います。
 また、電子カルテも大変結構だとは思いますけれども、ただ単に電子カルテを導入するといった場合に、当然、年輩のお医者さんにはかなりお気の毒なことにもなってまいりますし、また、これだけ抜本的な改革をしていく、きちんとしたスタンダードな用語でカルテを記載し、患者側に十分な情報を含んでいるようなものをきちんと書いていくこと、それが電子的に処理をされたり、またきちんと敏速に開示できるような状態にしていくこと、また、カルテを見せればいいだけの話ではなくて、当然、それについて誠意のある説明をしていかなければいけないわけでございますので、これは、医療現場で働く立場の人間にとっては、率直に申し上げると、負担がかなりふえる作業にはなります。だからこそ、制度としてきちんと確立をして、その負担を十分に補っていけるようないろいろな仕組みを仕掛けていかなければいけないと思っておりますので、だからこそ、私たちは、これだけ大きな一つの法案として提案をさせていただいているわけでございます。
 なかなか、そのような努力を医療現場から自発的にというようなことを待っていても、やる気があっても日々の診療に追われてとてもできないというのが、良心的な医療者であってもそれが現実だと思っておりますので、これは、私は行政としての責任は大きいのではないかと思います。
 今のような観点をもう一度きちんと取り入れていただいた上で、きちんと期限を切って、どのような仕組みをつくっていかれるかというようなことを御検討いただきたいと思いますけれども、今十分なお答えをいただけないのであれば、また後日委員会で、この診療情報の問題についてはいろいろな角度から質問させていただきたいと思っておりますが、今もう一言、じゃ、お願いいたします。

○坂口国務大臣
 厚生労働省の中でございますけれども、保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザインの公表というのを十二月の二十六日から始めておる。これは、医療制度改革の試案をつくるという作業の中の一つでございまして、患者さんの視点、医療提供者の視点、基盤整備、この三つを中心にしまして、昨年の十二月の二十六日にスタートいたしております。
 かなり回数を重ねておりまして、この七月には、医療供給体制の改革に関する考え方、中間取りまとめを発表することになっております。そうした中で今まで議論をしてまいりましたことも明確にしたいというふうに思っておりますし、その中に一部含まれていることも事実でございます。

○水島委員
 今決められていることはもちろんぜひきちんとやっていただきまして、ただ、今申し上げました内容、坂口大臣も医師御出身ということでございますので、かなりのことをしなければうまく進んでいかないということは恐らく実感されているのではないかと思いますので、いま一度抜本的な問題として考えていただきたいと思いますし、ぜひ私たちが提出をしております法案にも御理解をいただき応援をしていただければと、改めてお願いを申し上げます。
 そして、さらに基本的な問題が教育であると私は思います。どんなすばらしい制度をつくろうとも、そこで医療を施す医師の質が低ければ、行われる医療の質も低くなってしまうのは当然のことです。
 現在、二〇〇四年度からの臨床研修の必修化に向けて医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会で議論が行われておりまして、四月二十二日に出された中間取りまとめ案を私も拝見いたしました。この時点で何を伺っても、それはこれからの議論を待ってということになるでしょうから、本日は大臣の基本的な考え方ということでお伺いしたいと思います。
 臨床研修の中で、例えば三カ月で一つの科を回るというような方式にいたしますと、体験ゼロの研修医がやってきて、三カ月かけて教えたところでほかの科へ動いていきます。そしてまた体験ゼロがやってきて、というようなことが際限なく続いていくことになるわけです。こんな体制ではとても臨床研修がまともな成果を生むとは思えないという声が現場からは既に上がっております。
 そもそも、一人の指導医が何名くらいの研修医を指導するのが望ましいかというようなことも含めまして、臨床研修制度をきちんと機能させるためには最低限どのような条件が満たされている必要があると大臣はお考えになりますでしょうか。
 
 〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕

○坂口国務大臣
 この臨床研修につきましては、いろいろの角度からのお話が出ておりますが、まず最初に大事なことは、この臨床研修医の皆さん方がアルバイトをすることなしにちゃんとやっていける体制をまずつくらないといけない。これはもう一番の根っこの、根っこの話だと思うんですね。ですから、そこを、その財源を確保して、そして、そんなにたくさんの、あり余るほどの給料は難しいと思いますけれども、少なくとも外にアルバイトに行かなくてもいいような所得というものが得られるようにしてあげないといけない。そして、労働時間というものにつきましても、ちゃんとそれが守られるような形にしてあげないといけない。これが一つだというふうに思っています。
 その上で、どういう病院をこの研修病院にするかということにこれはかかわってくる話でございますが、確かに、この研修病院に、今までは大きい病院が研修病院になっていたわけでありまして、大学病院でありますとかあるいは国立病院あたりのところが多かったわけです。しかし、考えてみれば、そういう大きい病院だけを研修にしていていいんだろうかという気も率直に言って私はいたしております。たとえ小さな病院であったとしても、それが地域にありまして、いわゆる地域医療というものがどういうものであるかということをやはり勉強していただく、そのためにはかえって地方の病院であった方が、そのことがよい勉強になることもあると思います。
 いわゆるプライマリーケアと申しますか、一番最初にどういうふうに対応するかということがわかれば、あとはまた勉強で進んでいくわけでございますから、一番最初のそのプライマリーのところをどう扱うかということが多くの医師はわかりにくくなっている。だから、そこを行いますためには地方の病院で、そのかわりに、地方の病院であれば全部の科がそろっていないかもしれません。そうした場合にはその病院と連携をして、近くにあります病院とをセットで考えてもいいし、あるいは中には開業医の先生の御協力をいただくということでも私はいいと思うんです。実質的にその皆さん方が本当に身になるような研修が行われることが大事ではないだろうか、必ずしも大きい病院に限る必要はないというのが私の考え方でございます。
 そうしたことで、さらにそれをどう進めていくかはまたこれから細かく詰めなければなりませんけれども、そうした基本的な考え方のもとでやっていく。
 ただ、先ほど御指摘になりましたように、三カ月ごとというのが短過ぎるというお話は、それは場合によってはそうかもしれませんが、しかし、過去のいわゆる研修医制度のときにはなかなか三カ月もございませんで、一カ月交代ぐらいなところでぐるぐる回ったという経緯もございまして、確かに短かったなという気は私も率直に言ってしておりますが、しかし、限られた期間の中で一巡してそれぞれの大事なところを勉強するということでございますから、期限というものはある程度お許しをいただかざるを得ないのではないか、私は率直にそう思っております。

○水島委員
 今大臣がおっしゃったこと、アルバイトをしないで済むようにとか、あと大きな病院に限る必要がないとか、その点については全く同感でございます。
 ただ、これは、今期限のことをおっしゃいましたけれども、私も三カ月が長い短いということを言っているわけではなく、つまりそのように三カ月単位で回していかなければいけないのだとすると、問題は、どのような状態の人をどのような体制で受け入れるのかという、そこが問題になるというふうに考えております。全くの白紙の状態の人が来るのか、そして受け入れる側が極めて貧弱な体制で受け入れることになるのか、そこのところはきちんと手当てをしておかなければいけないと思います。
 今、日本はOECD諸国の中でも医療密度が低いと言われているわけでございますけれども、これは何も患者さんにとっての医師の密度が低いということだけを意味するのではなくて、この臨床研修ということを考えますと、研修医にとっても指導医の密度が低いということにもなるわけでございまして、私はこの今の日本の医療全体が抱えている問題がそのままこの研修医問題にも引き継がれてくると思っております。
 だからこそ、この人手の問題、一名の指導医が何名の研修医を、責任を持って、できれば専従で指導していくような体制がつくれるかというところが、この研修医制度がきちんと機能していくかどうかの重要な分かれ目になるのではないかと思っておりますので、ぜひ、今後の議論を取りまとめていらっしゃるときには、本当に人手がどれだけかけられているかということに十分な御注目をいただきたいと思っております。
 形だけアメリカ式の臨床研修をまねても、アメリカでは御存じのように十分な数のスタッフが研修医に張りついて指導をしているわけでございますので、きちんとそのような中身にまで注目をして見ていかないと、形式だけまねをして結局機能しなかった、医者の側から見ればモラトリアムの時代が二年延びただけだった、そんな結末にならないように、きちんと機能する体制をつくっていただきたいと思っております。
 そして、アルバイトをしないで済ませるというのはもちろん最低限の条件であると思います。私自身も研修医の時代、月に二万五千円しかいただいておりませんでしたので、アルバイトをしながらどうにかやっておりましたけれども、そうはいっても、アルバイトをしないでちゃんと自分が研修を受けている病院にいた日というのも当然、週に六日程度ですか、ございまして、その中で自分が果たして十分な臨床研修を受けたかというと、必ずしもそうは言えないというのが現状ですので、アルバイトをしないで済むというのは本当に最低限の条件であって、その上に、今申しましたように、少なくとも、人手という観点からどれだけ臨床研修に割けるかということが一番大きなポイントになってくるのではないかと思っております。
 そして、もう一つの方の、どのような状態の人をそこで受け入れるかということなんですが、これについては、ちょっと、卒前教育にも関係してまいりますので、この後にお伺いしたいと思いますけれども、ここで臨床研修のプログラムについて一つ御質問をさせていただきたいと思います。
 私が拝見しました限りでは、中間取りまとめ案には精神科のセの字も入っていないわけでございますが、臨床研修のプログラムには精神科は入ることになるのでしょうか。
 精神科を研修内容に入れる必要性については、二〇〇〇年十月に厚生委員会で質問しましたときに、当時の福島豊政務次官が、「患者さんと医師の間の関係をどうつくっていくのかということが極めて大切だというふうにさまざまな方から指摘をされているわけでございます。そういう視点からいいましても、どのような臨床研修の形になるかはともかくとしまして、そうした要素が二年間の臨床研修の中に盛り込まれることは必要だというふうに思います。」と答弁されています。
 患者面接がうまくできなかったり心を診ることのできない医者への反省が言われている今の時代においては、当然、精神科でのトレーニングが必要だと思います。
 また、内科受診患者の二割がうつ病と言われております。また、身体的な異常がないのに繰り返し検査を要求する身体表現性障害の患者さんも相当いますので、精神科を研修の中核に入れるべきだと私は思っておりますけれども、この点についてはいかがでしょうか。

○宮路副大臣
 研修内容につきまして、研修プログラムでありますが、どうするか。これは、先ほど委員の御指摘のあった中間取りまとめ案をごらんいただきますと、そこで、「幅広い基本的な診療能力が身につけられるよう、基本となる診療科のローテーションとともに、具体的な研修内容を明示する。」というふうに中間取りまとめの中でもなっておるところであります。
 申し上げるまでもなく、今度の必修化いたします、義務化いたします臨床研修は、プライマリーケアの基本的な診療能力を身につけることを目的としているところでありますが、御指摘のように、患者と医師との良好な関係を築くための研修のあり方という観点、そういう観点も踏まえながら、今後、研修プログラムの具体的な内容につきましては検討をさらに進めてまいりたい、このように思っておるところでございます。

○水島委員
 今私が質問させていただきました第一部は、今御答弁のあった患者さんとの関係のつくり方という方でございますけれども、第二部の方は、内科受診患者の二割がうつ病であったり、身体表現性障害の患者さんが繰り返し検査を要求することによって医療費をさらに膨れ上がらせているというようなそういう現状を踏まえまして、これは、ただ単に良好な関係が築ける一般の医師としての素養に加えて、やはり精神科というところで研修を受ける必要があるのだということを申し上げたんですけれども、いかがでしょうか。

○宮路副大臣
 今の御指摘は、最近、身体表現性障害、そういった病気と申しましょうか、そういう疾病も多く見られるといったようなことも踏まえながら、精神科を研修科目として取り入れるべきである、こういう御指摘だというふうに理解をいたすわけでありますけれども、先ほど御答弁申し上げましたように、そういった具体的な診療科目をどういうぐあいに今後研修プログラムの中に取り入れていくかということにつきましては、精神科領域の専門家の方々も含めてさまざまな関係者から現在いろいろな御意見を賜っているという過程にあるわけでありまして、今後、御指摘の患者と医師との良好な関係を構築するための研修のあり方といった観点も踏まえながら、どういう研修科目にするか、どういう診療科を研修の対象とするかといったことについて具体的な検討を進めていきたい、こう思っておるところであります。

○水島委員
 今、精神科医も含めて話を聞いているというふうにおっしゃいましたけれども、私が先日伺いました限りでは、確かに精神科医がヒアリングの講師として来てはいるようでございますけれども、そのときの発言は、精神科医としての発言ではなくて、あれは四病院団体協議会でしたか、後できちんと訂正していただきたいと思いますけれども、その立場としての発言だったというふうに伺っております。
 あくまでも、例えば今申しました、本当に、うつ病で見られる身体症状の問題、また身体表現性障害の問題、こうしたところは、最近、前よりもぐっとわかってきたことが多くある領域でございますので、ぜひそこはきちんと押さえていただいて、精神科を入れることの必要性を認識していただきたい、それは特にお願いを申し上げたいと思います。
 後になって苦労するのは医者本人でございますので、きちんとそこで患者さんまた医療者双方にとってスムーズな医療が行われていくように、プライマリーケアの一つとしてそのような視点を入れることが必要だと思っております。
 次に、卒前教育と卒後教育の役割について伺います。
 例えば、コモンディジーズを一通り診断したり対応したりできるようになるのであれば、卒前でも十分なはずだと言う人もいます。文部科学省の方でも、知識詰め込み型で十分な臨床能力を身につけることが困難であったなどの反省のもとに、医学・歯学教育改革に取り組んでおり、モデル・コア・カリキュラムを作成しています。
 先ほど私は、臨床研修のときにどのような状態の人を受け入れるかというのが一つの重要な要素だと申しましたけれども、どのような状態の人をつくるかというのが卒前教育の役割であるわけです。
 そもそも大臣は、卒前教育と卒後教育の役割をそれぞれどのようにお考えになっておられるでしょうか。

○宮路副大臣
 私の方からお答えさせていただきますが、卒前教育につきましては、これは委員御案内のとおりだと思いますけれども、医師としてまず基本的に備えるべき知識そして技能の修得、これを行うことが卒前教育の目的であるというふうに承知をいたしております。そして一方、卒後研修でありますが、これは侵襲性の高い行為など医師免許取得後でないと実施できないそういった研修も含めまして、診療に必要なプライマリーケアの基本的な診療能力、そして、医師としての人格の涵養、これは先ほどの中間報告にもそのようなことがうたわれているわけでありますが、そういうことを行うことが卒後研修の目的であるというふうに私ども整理をさせていただいておるところであります。

○水島委員
 今の御答弁は、書類上そうなっているというか、そういうことなんでしょうけれども、ちょっと次の質問はぜひ大臣にお答えいただきたいと思うんですけれども、現在、学校教育は一律文部科学省の担当、そして卒業すると厚生労働省の担当ということになっているわけでございます。
 今の御答弁の中でも、医師としての基本的な素養は学校教育で文部科学省が担当して、そして、それだけれども、何か、医師としての人格を養うということは卒後でというように、何だかよくわからないところが一部にあるわけでございますけれども、担当省庁が違うということについて、これは実は、今、司法制度改革の法科大学院の議論の中でも、法曹について同じような議論が出ているわけでございますけれども、質のよい医師を育てるという一つの目標の中で、単に卒前であるか卒後であるかという区別だけで担当省庁が変わるという今の仕組みについて、私はこれは典型的な縦割り行政だと思うんですけれども、これについて率直に大臣のお考えをお聞かせいただけますでしょうか。

○坂口国務大臣
 医学教育及び卒後教育の問題、いつも問題になるわけでございますが、確かに、大学時代の管轄は文部省で、卒業されますとそれが厚生労働省になるということは、現実の問題としてそのとおりでございますけれども、たとえ同じ省庁にしたところで、その中で局ごとに分かれておりましたりとか、いわゆる縦割りがあります現状におきましては、同じことになってしまう。むしろ、省庁は違いますけれども、医学教育、それが卒前、卒後、その時期的な違いはありますけれども、一貫性のものにしていきますためには、文部科学省とそして厚生労働省がいかに連携をしていくかということにかかっているんだろう。そこがスムーズにいっておりましたら、それは省庁が違ってもいいんだろうというふうに思っています。
 ただ、今までの場合に、いわゆる卒前教育の問題につきましては文部科学省にすべてお任せ、そして卒業してしまったらこれは厚生労働省にすべてお任せというふうに、完全では、話し合いもされてはおりますけれども、ややそういう嫌いがある。そこにやはり一番問題があるんだろうというふうに思っております。
 最近、大学におきます教育もかなり多様化をしてきておりまして、国立大学等におきましても、一年入りますと二年生から臨床のことを教えるようなところが出てまいりましたり、さまざまなことが行われております。それはなぜかと言いますと、余りにも医学教育の中で教えなければならない分野がふえてきたということだろうというふうに思いますが、部分的な技術でありますとか、あるいはそれに対する知識というものに多くの時間が費やされて、そして、卒前教育の中で、いわゆる、人間という、一人の人間をトータルで見て、それを一体どういうふうに判断をするのかというところが十分に私は教えられていないのではないかという危惧を持っております。
 そうしたことも含めまして、卒前教育の中で最も基本的なこと、ここまではひとつ卒前教育でお願いをしたい、そして、卒後においてこういうことに力点を置いて医師というものを育てていくという、やはりそこに役割分担というものも私はあるというふうに思いますから、その辺のあり方というものを考えていかなきゃならないというふうに思います。
 幸いにいたしまして、今月からでございますけれども、文部科学省と厚生労働省との間で、いわゆる大学病院のあり方について話し合う場をつくりまして、この二十七日というふうに記憶をいたしておりますが、私も出席をいたしまして、そこでいろいろお話し合いをすることにいたしております。そうした中で、卒前教育、卒後教育の問題につきましてもできれば触れさせていただいて、どういうふうに協調をしていくかといったことも話し合いたいと思っているところでございます。

○水島委員
 今の教育の問題については、非常に重要なテーマですので、今後も取り上げさせていただきたいと思います。
 また、健康保険法関連でお伺いしたいことがほかにもたくさんございますけれども、時間の関係で次に回させていただくことにいたしまして、最後に、健康増進法案に関連いたしまして、一つ質問をさせていただきたいと思います。
 健康増進法案そのものについては、その成り立ちや思想、効果等について私自身多々の疑問を持っておりますけれども、その中でも唯一評価できる点は、たばこの問題でございます。今回、健康増進法案で受動喫煙の防止が初めて法律上位置づけられたのは、遅きに失したとはいえ、大変意義深いことであると思っております。
 ところが、その内容を見ますと、多数の者が利用する施設を管理する者の受動喫煙防止が努力義務にとどまっているわけでございます。諸外国の法制度を見ましても、公共の場での分煙は努力義務ではなくて義務とすることが必要なのではないかと思いますけれども、大臣いかがでしょうか。

○坂口国務大臣
 喫煙の問題につきまして、初めてそこで法律上取り上げさせていただいたわけでございますが、この喫煙の問題というのは、人によりましてさまざまな意見が実はございまして、だからこの委員会の中でお決めいただきましてもいろいろ御意見が出るんだろうというふうに思いますけれども、各立場立場によりまして本当にたくさんの意見が出て、我々が思っておりますように一律にこれをやっていくということがなかなか難しいというのが率直なところでございます。
 しかし、そういうことを言っておりましては進んでいきませんから、ここで努力義務ではございますけれどもまず取り上げさせていただきました。そして、ここをもう少し私たちも積極的に進めていきたいというふうに思っています。我々がいろいろ調査をいたしました喫煙に関しますことにつきましても、できるだけ情報公開をしていきたいというふうに思っておるところです。
 先日も、日本の中で、非常にタールが少ないとかいろいろの数値が出ておりましたけれども、いろいろの検査方法によってはそれが二倍にも五倍にもなっているというような数字を先日出させていただきましたけれども、これすらなかなか発表することに対する抵抗というのがございまして、厚生労働省もかなり苦労をしながら、しかし決断をしたということでございます。
 こうしたことは、これからも勇気を持って取り組んでいきたいと思いますし、喫煙問題につきましては、私たちもさらに進めていきたいと思っているところでございます。

○水島委員
 大臣の御苦労もとてもよく理解できるところがございますけれども、やはりこれだけ喫煙あるいは受動喫煙による害についてのデータがたくさん出てきているわけでございますので、これは勇気を持って進めていくのが厚生労働大臣としての本当に大きなお仕事になるのではないかと思っておりますので、ぜひ、五年後の見直しというものがこの健康増進法案の中に入っておりますけれども、そのときには当然義務化することも視野に入れていらっしゃると思いますけれども、この点について一言だけ御答弁いただけますでしょうか。

○坂口国務大臣
 努力をいたします。

○水島委員
 また、この法案の規定について少しお伺いしたいと思いますけれども、受動喫煙の防止対象となる施設は、「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設」となっておりまして、ここに交通機関というものが書かれていないんですけれども、交通機関も含まれますでしょうか。

○下田政府参考人
 健康増進法案の二十五条に規定しております受動喫煙防止に関する努力義務規定の中に、「多数の者が利用する施設」というのがございますけれども、その範囲のお尋ねだと考えております。
 この範囲につきましては、受動喫煙の防止を通じた健康の増進という本規定の趣旨を考えてまいりますと、社会通念上「多数の者が利用する施設」に該当するものであれば、広くこれに含まれると考えております。
 したがいまして、タクシーを含む公共交通機関も、本規定に基づいて受動喫煙を防止するために必要な措置に取り組むよう努めなければならないというふうに解しておるところでございます。

○水島委員
 今のタクシーなんですけれども、含まれるのは当然だと思いますが、具体的にはどのような対応になるんでしょうか。

○下田政府参考人
 タクシーにつきましては、現行におきましても道路運送法におきまして、乗客がいる場合の乗務員による車内での喫煙禁止が規定されておる、また、事業者が禁煙車両とした車内におきましては乗客に対して禁煙の要請ができるというふうな定めがあるところでございます。
 こういった現状もございますけれども、さらに適切な受動喫煙対策がとられますよう、関係省庁と連携しながら、関係業界と相談をし、協力を得ながら実施をしていきたいというふうに考えておるところでございます。

○水島委員
 ちなみに、この「多数の者が利用する施設」には国会も含まれるんでしょうか。

○下田政府参考人
 含まれるものと考えております。

○水島委員
 そうしますと、私も入っております禁煙議連では、国会内の禁煙、分煙を目標の一つに掲げているわけでございますけれども、今回のこの法案が成立いたしますと、この禁煙議連の目標は一つ達成されたというふうに考えてよろしいんでしょうか。

○下田政府参考人
 受動喫煙につきましてはあくまでも努力義務規定ということでございますけれども、たばこを吸わない方、吸う方、それぞれおられるわけでございますが、お互いに迷惑のかからないような形での分煙対策をそれぞれの施設ごとに実情に応じて実施していくべきものというふうに考えております。

○水島委員
 ぜひこれは、私は立法府が率先して範を示すべきものではないかと思っておりますので、国会内での議論も議員の皆様に率先してやっていただければとお願いを申し上げたいと思います。
 また、ここで書かれております「学校」なんですけれども、これは学校という建物だけを意味するのでしょうか、それとも機能を意味するのでしょうか。修学旅行や移動教室など、学校に関連する活動についても含まれるものなのでしょうか。

○下田政府参考人
 厳密に考えておりますのは、学校の施設の中ということで考えておりますが、学校教育の一環として当然その活動をおやりになるわけでありますから、そういった教育上の観点から種々の御配慮がなされるべきもの、このように考えておるところでございます。

○水島委員
 健康増進法案は、受動喫煙の防止義務が、努力義務とはいえ初めて法律上位置づけられるものでございまして、受動喫煙の害を初めて政府が公的に認めたものであるとも言えると思います。そして、これを機に、さまざまな環境について見直す必要があると思います。
 本日は時間がありませんので、一つだけお伺いして終わりにしたいと思いますけれども、例えば労働安全衛生法に基づいて出されている指針では、必要に応じ作業場内における喫煙場所を指定する等の喫煙対策を講ずることとなっておりますが、必要性の判断をだれがするかということを考えましても、この規定は実際には何も定めていないとも言えるものだと思います。労働者は一日の大半を職場で過ごしているわけですから、職場における分煙は本当に重要なものだと思います。
 健康増進法の制定を機に、改めて労働環境について取り組まれる予定はございますでしょうか。受動喫煙に特定した通知を出したり、特別な義務を事業主に課したりするような予定があるかどうか、具体的にお答えいただきたいと思います。

○日比政府参考人
 職場における受動喫煙の問題でございますが、かねて、職場における健康問題ということもございまして、一定のガイドライン等は今委員御指摘のように出しておるところでございます。今般、健康増進法案ということ、こういう機会でございますので、この成立を見ましたら、私ども、さらに対策を強化しなければならぬと思っております。
 今、具体的にということでございますが、これは精神論だけというわけにまいりませんで、現実に、分煙の手法につきましてどういうことが効果的なのかなどについても、実は今検討会ということで一部やっておりまして、そういうことの成果も見つつ、具体的な内容については今後考えさせていただきたい。いずれにいたしましても、これを機会にやはりやっていくべきものであろうと思っております。

○水島委員
 たばこについてはまた今後の委員会でさらに質問させていただきたいことがございますけれども、最後に大臣にお伺いしたいと思います。
 冒頭に大臣は、このたばこの問題は本当に難しいとおっしゃいました。ただ、今回この健康増進法案の目的を達成するためには、厚生労働省が各省庁を束ねられるようでなければ、内容が骨抜きになってしまうと思っております。今までのたばこの議論を見てまいりますと、今回一歩踏み出そうとされているのは大いに評価できるんですけれども、どうも、そんなことが本当に厚生労働省にできるのかということには大いに疑問を持っているところでございます。縦割り行政の中で他の省庁を束ねられないのであれば、例えば内閣府に健康増進本部を置いて、環境政策も含めて根本から健康問題を考えるなど、法律の組み立てを変えなければならないのではないかと思っております。
 たばこ対策において大臣がリーダーシップを発揮できるかどうかが健康増進法案の成否を占うことにもつながると思いますけれども、最後に大臣の決意表明をお聞かせいただきまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

○坂口国務大臣
 たばこに関します問題といたしましては、喫煙に対します問題のほかに、たばこを生産する生産者の問題でありますとか、税制の問題でありますとか、さまざまな問題がございまして、そうした問題も込みになっていろいろ意見というものが複雑になっているというふうに思います。
 しかし、単に健康上の問題ということだけに絞り込んでいえば、これは厚生労働省が積極的に働きかけをしなければならないわけでございますので。そして、これはもう科学的なデータとしましても、たばこの与える害というものは明確になっているわけでありますから、明確になっております以上、ここは厚生労働省が中心になりましてしっかりと対応しなければならないというふうに決意をしているところでございます。

○水島委員
 ありがとうございました。



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