厚生労働委員会
(2000年8月8日)



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雪印牛乳事件について



遠藤委員長
 次に、水島広子さん。

水島委員
 牛乳や乳製品は、私たちにとって極めて日常的なものでございますし、また、特に小さな子供たちや学校給食にとって欠かせないものでもございますので、私は、今回の事件を非常に重大なものとしてとらえております。
 そして、これは雪印の責任というのは免れないものではございますけれども、今回の事件が現在の厚生行政の間隙を縫って起こったことは紛れもない事実でございまして、今回の事件を単なる一企業の問題に帰することは間違っているのではないかと私は思っております。
今後このような事件を再発させないために、私は、特に安全衛生管理について政務次官に質問申し上げたいと思います。
 まず、今回の雪印事件を機に行われた調査では、衛生管理上の指導が行われた施設が、七百四十七施設中五百六十一施設、つまり四分の三以上。
また、HACCPの承認施設でも、百八十六施設中八十八施設、つまり半数近くに上っております。
たとえ衛生上の安全性に即刻直結しないような問題であったとはいっても、事故というのはそのようなすきをついて起こるものであると思います。
今までこのような実態を厚生省では把握されていたのか、また、もしも把握されていなかったとしたら、なぜ把握することができなかったのか、その点についてまずお伺いしたいと思います。

福島政務次官
 お答えいたします。
 今回の点検では、雪印大阪工場における食中毒の原因と思われる事項を中心に、同様な食中毒の再発防止の観点から、乳処理施設における洗浄にかかわる作業手順書及びその記録を整備するように指導したものでございます。
 今回指導した内容につきましては、一般の乳処理施設に対してこれまで指導していなかったということは事実でございまして、今回の事故を踏まえて、改めて指導をしたものでございます。
また、総合衛生管理製造過程承認施設の半数において何らかの指導を受けたことがあったということにつきましても、これは、軽微な内容であったとしても、厚生省としましては、HACCPを推進してきた立場から謙虚に受けとめなければならない、そのように考えております。
 また、この調査に従いまして不備が指摘された施設につきましては、早急に改善を図るように指示をいたしたところでございまして、HACCPの施設につきましては、約半数が指導を受けておりますけれども、全施設が七月中に改善を終了いたしております。
そしてまた、それ以外の施設につきましても、八月中に改善予定というふうに聞いております。
 いずれにしましても、一斉点検を行った雪印乳業乳処理施設を除く現在操業中の七百四十七施設については、衛生上重大な問題がなかったことを確認したところでございます。
 先生の御指摘を踏まえまして、こうした事態があるということも踏まえて今後も衛生管理に努めてまいりたいというふうに考えております。

水島委員
 ぜひそのようによろしくお願い申し上げます。
 また、HACCPの審査が提出された承認申請書に基づいてのみなされていたという点についてお伺いしたいと思います。
 今回の一斉点検の結果、雪印の全工場において承認申請書に製品、調整乳の再利用工程の記載なしということとされているわけですけれども、承認申請書に記載されていなかったことについてはすべてチェック漏れとなっていたということが事実であったと思います。
この点につきまして申請システム上の欠陥はあったと思いますけれども、その欠陥がどのようなものであって、今後どのように改められるおつもりであるか、その点についてお伺いしたいと思います。

福島政務次官
 HACCPとは、製造者がみずから定めた製造工程を自主的に管理することによって、より高度な安全性を確保しようというシステムでございます。
その承認の際にも、今まで申請者側に対して一定の信頼というものを置いて私どもは行ってまいりました。
しかしながら、今回のこの雪印の事例におきましては、こうした信頼が裏切られる結果となったわけでございます。
 ですから、こうした事態を踏まえまして、今後の承認審査におきましても、厚生省が直接に現地調査を行って、その審査の内容に対して誤りがないのかどうかということについて厳重にチェックをしたいというふうに考えておりますし、審査の後、承認をしたといたしましても、その後のフォローアップというものもきちっと行ってまいりたい、そのように考えております。

水島委員
 ぜひそのように、承認時の審査について、現行のものよりも厳しくしていただけますように改めてお願いいたします。
 そして、今回、承認申請書に記載された以外の方法をとっていたということが致命的な欠陥であったわけですけれども、今後、承認時の審査を厳しくするとしまして、承認申請書に記載された以外の方法をとったことが承認後になってから発覚した場合に、それに対してペナルティーを科すようなおつもりはありますでしょうか。

福島政務次官
 現在の制度におきましては、虚偽の申請を行ったことに対してペナルティーがあるのかということでございますけれども、雪印大阪工場におきましても承認の取り消しを行いました。
承認を取り消されること自体が、社会的に見ましても一つのペナルティーであることは間違いのないところではないかというふうに考えております。
 そして、罰則を強化することが今後必要なのかどうかということでございますけれども、先ほども申しましたように、承認審査の体制、そしてまた承認後の監視、指導というものを強化していくということでまずもって厚生省としては対応してまいりたいというふうに考えております。

水島委員
 承認を取り消された場合に、その後もう一度承認を得るということは可能にされるおつもりでしょうか。

福島政務次官
 この点につきましては、再度承認の申請をしまして、その内容が承認に関して内容を満たしておりますれば可能でございます。

水島委員
 そうしますと、承認を取り消されてから次の承認を申請するまでの間に、何らかの研修プログラムを義務づけるとか、きちんと反省をしてもう二度と虚偽の申請をしないということは、どのようにして確認されるおつもりでしょうか。

福島政務次官
 今回の事件を踏まえまして、HACCPの運営に当たりまして、今後さまざまな形で専門家の助言を得られるようにしますとか、そしてまた、経営者の姿勢が大切であるということも午前中の参考人の意見にもございました、経営者に対してのさまざまな啓発事業を行っていくことも考えております。
 そういうことを踏まえまして、今後、そのような施設がありまして再承認を求めてきた場合につきましては、一にも二にもきちっと審査をするというところに尽きるのではないかというふうに思います。
もちろん、その審査の内容には、適切に運営できるのかどうかということで、HACCPチームというものも定められているわけでございまして、そうした人的な体制も含めて、詳細な点検を行うことが必要であろうというふうに考えております。

水島委員
 先ほど承認取り消しというのが十分な社会的ペナルティーというお話でございましたけれども、全く我々の目につかないところで承認がこっそりと取り消されるようでは社会的なペナルティーとは言えないと思いますが、その点についてはどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。

福島政務次官
 先ほどもございましたように、食中毒事件等の発生におきまして、一般の国民の皆様に情報の周知を図ることが必要である、そしてまた図ってまいりたいというふうに厚生省の姿勢を示させていただきました。
 ですから、おのずと、そういう事件があった場合にさまざまな情報というものが当然国民に対して発信されるわけでございまして、その中で、これは仮定の話でございますけれども、HACCPの承認の取り消しというようなことも、当然これは知られるところとなるのではないかというふうに推定をいたします。

水島委員
 ちょっとくどいようなんですが、食中毒が起こってからHACCPの承認が取り消されて一般の知るところとなるというのはわかりやすいのですけれども、食中毒が起こらずに、定期的な立入調査によってHACCPの申請以外のことをしていることがわかった場合にも、それを広く知らしめるようなおつもりはありますでしょうか。

福島政務次官
 雪印の事件に重ね合わせて答弁をさせていただきましたが、一般的な事例としましても、HACCPの承認を取り消した場合につきましては、厚生省としましてはこれを公表いたします。

水島委員
 今後、業界にHACCPの導入を義務づけるおつもりはございますでしょうか。

福島政務次官
 業界というのは、要するに、すべての事業者に対してHACCPの導入を義務づけてはどうかという内容でよろしいのでございましょうか。
(水島委員「はい」と呼ぶ)  その御意見につきましては、何回か繰り返し御答弁をさせていただいておりますけれども、HACCPの導入ということは一定のコストをもたらすものでございます。
午前中の参考人の御意見にもございましたけれども、まず一般的な衛生管理、食品衛生法の規定の中でさまざまなことがございますけれども、まずそれがありまして、さらに高度な衛生管理を目指すということでHACCPが導入をされたわけでございます。
 コストとの兼ね合い、そしてまた、今申し上げました食品衛生管理というのが二段階のものであるということを踏まえますと、それを一律に義務づけることは、現在のところ厚生省としては考えておりません。

水島委員
 政務次官も御指摘のように、中小企業の場合には、コストの関係上、HACCPの承認を得ることは極めて難しいと思いますけれども、今おっしゃったように、一般的な安全衛生管理があって、さらにより高度なということになりますと、明らかに大きな企業の製品の方がより高度に安全であるというようなことになってしまいまして、私は、それは中小企業にとって必ずしも喜ばしいことではないと思います。
 ですから、HACCP承認外のものについても安全性をやはり同じように確保しなければいけないと思いますけれども、その点について何かお考えがあればお教えいただければと思います。

福島政務次官
 HACCPを導入するということは、先ほどの参考人の御意見の陳述にもありましたように、できる限りといいますか一〇〇%の安全性を目指そうという観点から導入されたわけでございます。
その導入に当たりまして、さまざまな形での仕組み、システムというものをつくらなければいかぬ、そしてまた、さまざまな記録というものもつくっていかなければいかぬとか、そういうことが現実問題としては中小企業にとりましては負担になるということはあろうかというふうに思っております。
 しかしながら、このHACCPというのはシステムでございます。
そして、一つ一つの重要なクリティカルポイントでございますけれども、ここのところのコントロールをきちっとする、コントロールをして、さまざまな問題があった場合にはフィードバックをかけることによってそれを見直す、そのプロセスをどれだけきちっと手順としてやっていくのかということの積み重ねがHACCPの本質だというふうに私は思っております。
 そういう意味では、形式的な承認ということではなくて、中小の事業所でありましても、みずから生産いたしております食品に関しての安全を守るために、同じような考え方で事業を行うことは可能であろうというふうに私は思います。

水島委員
 ぜひそのような御指導をお願いしたいと思います。
 そして、先ほど参考人の御意見にもたしかあったと思いますけれども、HACCPの承認を受けた営業者への継続指導、監視は、年十二回という努力目標が掲げられているわけですけれども、実際のところは年八回しか行われていなかったということです。
 それは、当然、人員の不足ということがあると思いますけれども、年十二回というのがたとえ努力目標であるとはいっても、努力目標と現実との乖離がこれほど常態化していることがそのまま放置されているというのは、私は行政にも何らかの責任があると思いますけれども、その点についてはいかがお考えでいらっしゃいますでしょうか。

福島政務次官
 午前中の参考人の御指摘は、私もお聞きをいたしました。
 法定監視回数を下回っているのではないかということでございますけれども、この監視回数は、あくまでも努力目標として定めたものであるというふうに理解されているとお聞きをいたしております。
 しかしながら、監視回数というものをきちっと確保しなければいけない、その指摘はそのとおりであろうというふうに私は思っておりますし、厚生省としましても、各自治体に対しまして、今後とも、食品等の安全性の確保に万全を期すために、監視、指導内容の充実というものを指導してまいりたいというふうに考えております。

水島委員
 その場合、恐らく現場の方は既に努力されているのではないかと思うのですが、やはり人員を確実にふやす必要があるのか、あるいは現在のような人員配置の中で個人の努力によって成し遂げられるものであるのか、そのあたりはどのようにお考えでしょうか。

福島政務次官
 行政改革の時代でございまして、スリムな政府ということが言われておるわけでございます。
しかしながら、単にスリムということではなくて、パフォーマンスのいい政府をつくろうということも今言われているわけでございまして、食品衛生監視にしましても重点化をしていく、そしてまた効率化を図る。
そのあり方について、私ども厚生省としても、しっかりと検討し、また各自治体に対し指導してまいりたいというふうに思います。

水島委員
 次に、先ほど来お話にも出ております衛生指導というものについてお伺いしたいのです。
 まず、一般に厚生省が飲食物を扱う工場に対して義務づけているあるいは指導されている衛生教育というものですけれども、単に清潔にというだけではなく、細菌学の初歩くらいは教えていらっしゃるのでしょうか。
つまり、例えば加熱をしてもあらゆる食中毒を防げるわけではないというようなことであるとか、屋外で作業することがなぜいけないのかとか、そのようなことについては触れられているのでしょうか。

福島政務次官
 監視、指導に当たりまして具体的にどのようなことをしているかということでございますけれども、細菌学的な見地から、必要に応じて、微生物等につきましても食品等の収去検査を行いましたり施設のふき取り検査というようなものを実施しているわけでございます。
そしてまた、屋外作業につきましても、先ほど石毛委員からの御指摘もございましたけれども、食品衛生上問題がある場合にはこれを禁止させたりというような監視、指導を行っております。
 そういう意味では、現場におきまして、細菌学的な見地から必要なことにつきましては対応をしているわけでございまして、そしてまた監視、指導を受けられました方にとりましても、その点につきましては御理解をいただいていると思います。

水島委員
 今回の雪印の場合には、外で作業をしようと何をしようと、どうせ加熱してしまえばみんな菌は死ぬだろうからというような安易な感覚が現場にあったというふうに聞いておりますが、それでは、厚生省では、細菌学の、エンテロトキシンのことなんかも含めまして、指導をするようにしてはいるけれども、雪印側でそれをきちんと教えていなかったというふうに理解してよろしいでしょうか。

福島政務次官
 大阪市が大阪工場に対しまして具体的にどのような指導を個別にしたかということにつきましてつまびらかにしているわけではございませんけれども、しかしながら、屋外におきます調合作業を行っていたということについて十分な認識がなかったのではないかというふうに私は思います。
 むしろ責められるべきは、そうした細菌学的に大変問題のあるプロセスというものを、本来であれば安全管理に関しまして、業界のトップ企業でございますから当然深い理解を持っているはずでございまして、そうした点について理解をしておりながらこのような形での作業をしておったということはまことに遺憾であると私は思っております。

水島委員
 今のこともまたそうなのですけれども、やはり雪印の現場では食品を扱っているという意識が抜け落ちていたということがきょうも指摘されているわけです。
ただ、飲食物というのは私たちにとって命にかかわる問題でありまして、今後、飲食物を扱う業界の人たちに重い責任と自覚を持ってもらうために、厚生省としては何をされるおつもりでしょうか。

福島政務次官
 今回の事件というものを踏まえまして、実際に食品を製造しておられる方には、いま一度原点に戻って、食品の安全というものは一体いかなるものなのかということについて理解を深めていただく必要があるというふうに考えております。
 今回の事件を契機としまして、営業者による食品等の衛生的な取り扱い、また食中毒発生時の対応について、再度都道府県と連携を図りつつ、営業者に対して指導したいと思っておりますし、HACCP施設につきましても、HACCP対象業種ごとに食品衛生講習会を開催することといたしておりますけれども、さらに、午前中の参考人の御発言にもございましたけれども、経営者みずからの姿勢というものが大事であるということを踏まえて、経営者のトップに対しても指導を行いたいと考えております。

水島委員
 厳しい指導とともに、やはり飲食業にかかわる人間としての誇りも必要だと私は思っております。
先ほどから指摘されているような雪印の体質を考えましても、直属の上司を通さないと問題提起もできないとか、そのような閉塞感のある職場においては往々にしてモラルが低下するということが指摘されておりまして、これは飲食業のみならず、あらゆる企業が抱えている問題だと思います。
 そして、もう時間なのですけれども、最後に一言だけ。
 原料の再使用ということで、雪印では容器に移したものの再利用をやめるということでありますけれども、厚生省としまして、原料を再利用すること、また、それに伴う品質保持期限の再設定などについてどの程度研究されているのかということだけお伺いして、質問を終わりにしたいと思います。

福島政務次官
 重ねての答弁になりますけれども、製品の再利用につきましては、製造者の管理下にあって、十度以下に保存される等の衛生管理がされており、かつ品質保持期限内のものであれば、食品衛生法上は問題とならないというふうに考えております。
 そしてまた、現在流通している乳・乳製品の品質保持期限については、定められた方法により保管した場合に食品の安全衛生が十分確保されるように各製造者において設定がなされておるとも伺っております。
 しかしながら、いずれにしましても、厚生省では、乳・乳製品の再利用の問題については、有識者から成る検討会におきまして御議論いただくことといたしております。


水島委員
 ありがとうございました。


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