海外の戸籍制度
(ぴぴさん)


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 ご存知の方も多いとは思いますが、いわゆる「戸籍」があるのは日本、韓国、台湾の3国です。
 韓国については、現在のように家族の中での身分を表す公証制度となったのは日本によって統治されていた時期です。

 戸籍とは違いますが、ドイツには「家族簿」というものがあり、家族単位の身分登録が行われています。(他に事件別登録もあったと記憶しています。)この家族簿はナチス時代に人種政策に用いるため導入されたものです。
 ただし家族簿には筆頭者が無く、夫婦は書類上平等な形で記載されています。
  その他に家族単位の登録を行っているのはスイスです。

  家族単位での登録は、国民の管理を目的に導入されているのが目立ちます。これらの国では、国による個人の姓への干渉が比較的強いようです。ドイツも別姓が選べるようになりましたが、婚姻時の姓の指定についてはこまごまとした決まりがあります。

 個人単位での登録を行っているのはスウェーデン、オランダです。

 人間を単位にした登録ではなく、事件別(出生、結婚、死亡)の登録を行っている国もたくさんあります。完全に事件別で、個人の身分変動を一覧できない仕組みになっているのがカナダ、アメリカです。これらの国では州によっては婚姻にあたって姓の選択の届出が必要ですが、多くは特に干渉していないようです。

  事件別登録を行ってはいるけれど、附表などを用いてその後の身分変動を記録し、個人登録に近いことをしているのがイギリス、フランス、中国、旧ソ連諸国です。これらの国はもともと姓の変動が無かったり、法律で管理するような習慣が無かったりします。

  現在の中国の身分登録制度は「戸口」と言い、これは日本の戸籍と住民登録制度の両方の機能を併せ持つものなのです。
実際の生活単位を元に登録されるので、一人暮らしの人は「戸主」になりますし、集合住宅などに住んでいる場合はそこの住民全体を一つの「戸口」に登録する事もできます。
というわけで、日本や韓国の親族を中心とする戸籍とは性質がだいぶ違うのです。それで、いわゆる「戸籍」がある国、には入れませんでした。
ちなみに、戸籍がある国でも、台湾は中国に近い制度ではないかと思います。


戸籍に関する一考察(掲示板におけるぴぴさんの発言より転載)

 各国の状況を簡単に書きましたが、戸籍を当たり前として育ち、戸籍の姓が「本当の」姓と考えがちな日本人の目には、諸外国の身分登録制度はかなりいい加減と映るでしょう。
  しかし、権利・義務の台帳としての住民登録制度は、どこの国にも必要でしょうが、その上戸籍のような管理システムが本当に必要なのか、日本の国民も一度考えてみたほうが良いのでは?と思います。
  身分変動、親族関係、居住地の変遷(これは附表を見なければわかりませんが)を一覧できるだけでもプライバシーの問題があるというのに、(しかも戸籍は原則公開と法律で定められているのです。)
  それを家族単位で行うために、さらに身分登録制度としては欠陥の多いものになっているのではないかと私は思っています。

  ちなみに、数年前の法改正によって戸籍の電算管理が認められるようになりました。
現在のところは導入している自治体は少ないですが、戸籍のコンピュータ管理は10年後ぐらいには当たり前になっているかもしれません。
  コンピュータ管理が全国に行き渡ったら、それらをオンラインでつなぐという構想もあるようです。その際にはプライバシーの保護が課題になるでしょうが、現在プライバシーに非常に鈍感なこの制度が本当にこの問題をクリアできるのでしょうか。

  最後に素朴な疑問です。現在の戸籍の筆頭者は単なる「インデックス」と説明されています。(大嘘ですが。)インデックスが必要なのは、今までの戸籍がいわばカード式のデータベースだからです。
  しかし、これをコンピュータ化するのなら、データの各フィールドは全て検索対象となるわけですから、特にインデックスを立てる必要はないですよね。だったら、筆頭者を無くすという考えが出て来ても良いのではないかなー、と。
 しかし、実際にはそうではありません。民法改正に関する論議で、別姓夫婦の子の姓をいつ決めるのか、という問題がありますよね。婚姻時に指定するという主張の理由は出生時に決めるという制度だと、両親のあいだで揉めた場合、姓が決まらず子の不利益となるからと説明されていますが、それならば、両親の協議がまとまらない場合の決定法を決めておけば良いはずです。
 それなのに、子供を持たない夫婦、持つことのできない夫婦にまで選択をさせるのは、婚姻時に決めさせれば、子が名乗ることになっている姓の持ち主を自動的に筆頭者にできるので、戸籍制度をあまりいじらずにすむ、という理由があるのでしょう。
  戸籍謄本だって何だって、現在と違って単なるデータ出力の一形態となるわけなのに、現在のように「民法上の姓」だの「呼称上の姓」だの、変な概念を駆使してまで守ろうとしている「戸籍」って何なの?と思ってしまうのです。


(追記)
  まず、私は現在の戸籍システムは問題が多いと思っていますが、身分登録制度が全く不必要だとは思っていません。前回の書き込みだと住民登録だけで良い、というふうに解釈されても無理ないですね。申し訳ありません。
  それで、どのような制度が良いと考えているかと言えば、エイサクさんがおっしゃっていた「個籍」です。

  なぜ戸籍が良くないか、といえば、現在の戸籍は基本的に一生に一度だけ結婚して、法律婚の相手との間だけに子供を作り、離婚はしないで一生を終える、という人向けにできているからです。そこに当てはまらないような選択をした人、せざるを得なかった人、あるいは選択権すらなくそのような状況に追い込まれた人にはかなりの割合で不快感を味わったり、不利益をこうむるようになっているのです。
また、筆頭者を固定しそれ以外の人を出入りさせる、というシステムは旧民法下の家制度の名残であり、「戸籍は筆頭者のもの」という誤解の元になっています。

  普段の生活では戸籍をあまり意識しないですむ人が多いと思いますが、離婚を経験した人(特に結婚時に姓を変えた女性)に戸籍に疑問を持つ人が結構いるのでは、というのが私が普段感じていることです。(これは特に根拠があるわけではないので、あくまでも感触ですが)

  戸籍の長所としてよく一覧性が挙げられますが、これも一概には言えません。筆頭者が転籍していると古い戸籍での除籍者などは新戸籍からは落ちてしまうので、たとえば離婚した元妻の籍に入った子は(相続権を持っているにもかかわらず)新戸籍を見ただけではその存在を確認できない、ということになるわけです。

  身分変動を登録するならば、個人別にしたほうがよほどすっきりするし、「戸籍が汚れる」なんて変な考えも無くなると思うのですが。
  個人別登録にしたところで治安が悪くなりはしないでしょうし。

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