国会報告 その65(2001.10.15発行)

水島広子の活動の様子をお伝えするために、毎週1回(月曜日)発行しております




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国会報告(10/7〜10/13)


★産休中のため、恒例のマンデーリポートを6週間程度(10月下旬頃ま で)お休みさせていただいております。
本紙「国会報告」は、ボランティ アの方々のご協力により、毎週月曜日朝に街頭での配布を続けております。 どうぞご覧ください。(電子メール版も毎週発行しております)



●栃木県連の役員が変わりました

10月12日、民主党栃木県連の臨時党大会が開かれました。
小林守代表が「参議院議員が二人になったので人身一新を図りたい」と辞意を表明したことと、阿部元治幹事長が亡くなったことを受け、役員の改選が行われたのです。
新体制は、簗瀬進代表、渡辺直治幹事長のもとに進められることが決まりました。
私は従来通り、副代表と組織委員長の兼務という形になりそうです。
簗瀬進代表にはエネルギーを発揮していただき、市民が主役の民主党を栃木県から実現できるよう、私もできる限りの協力をしていきたいと思っております。



●米国同時多発テロについて(その4)

 米軍による空爆が続き、やはり恐れていた通り、罪のない民間人の被害者が出ました。
誤爆の可能性も否定できないとされています。
関係のない人間を絶対に巻き込まない完璧な空爆などまずあり得ません。
何人かの犠牲は、攻撃する側からすれば、小さな誤差なのかもしれません。
でも、その誤差に巻き込まれて犠牲になる人の命はかけがえのないものです。
自分には何の罪もないことで命を突然奪われるという点では、米国のテロの犠牲になった方も、空爆に巻き込まれて犠牲になった方も、全く同じであって、どちらかの命が軽いということはないのです。
人数は少なくても、一人の命の重さは変わりません。
 テロリズムに対して全世界が一致して立ち向かうという大義を失わないためにも、戦略はくれぐれも慎重であるべきです。

 ところで、とにかく新法を拙速に通せば国際貢献になるとでも言いたげな政府の対応を見ていて、また、日本での議論が自衛隊の派遣や武器使用緩和へとどんどん収束してくるのを見ていて(最近受けたマスコミのアンケートもそうだった)、どうも日本ではかねてからの懸案事項に乗じて、今回のテロ対応にとっては本質的でないことばかりを議論しているのではないか、という違和感を抱いてきましたが、やはりそうだったのだと納得する話を聞くことができました。
 このところマスコミにもしばしば登場している、ペシャワール会代表の中村哲医師が民主党の勉強会で話をしてくださったのです。
中村医師は、1984年からパキスタンとアフガニスタンで医療活動を続けてこられ、2000年8月からは医療活動の一環として水源を確保するための井戸掘りなどもされています。
ペシャワール会の活動のおかげで、アフガニスタンの東部一帯では、日本の国際貢献は十分に認知されているとのことです。

現在のアフガニスタンの状況を知るために大変貴重なお話だと思いましたので、以下に概略を記します。

●アフガニスタンは世界で最も対日感情の良い国の一つである。
タリバンも例外ではない。
アフガニスタン人が日本について知っていることは「日露戦争、ヒロシマ・ナガサキ」。
つまり、北からの圧力と米英との対立、という国際環境がアフガニスタンと日本では似ているという親近感がある。
また、日本は欧米諸国のように価値観を押しつけたりしない、気前が良い、ということも評価されている。
中村医師自身、日本人であるということで生き延びた経験が2度や3度ではない。
 だが、日本が米英による攻撃を支持したということによって、「敵の敵は味方」だったはずの日本への感情が微妙に変化してきているのが心配。
中村医師たちの活動もやりにくくなりそうだ。

●日本の役割を云々と言う前に、ぜひとも現地の実状を知ってほしい。
日本は何もわかっていないじゃないか、と言われるような対応をして日本の恥になるようなことだけはしてほしくない。

●今のままでは、カブール市内だけでも人口百万人のうち一割がこの冬を越せずに確実に死ぬ。
今、アフガニスタンに必要なのは水と食糧である。
テロが発生したり、それを支持する人々がいるという背景には、追いつめられた現地の人々の心情がある。
水と食糧が満たされない限り、この構造はなくならない。

●「難民支援のため」と言うが、難民とは誰か。
アフガニスタンからパキスタンに逃れ出る難民を待つのはむしろ非人道的である。
カブールだけでも10万人が死ぬという状況であっても、アフガニスタンの人は、よほどのことがない限り国境を越えない。
パキスタンに出てきた人を救う前に、アフガニスタン国内の人たちを救ってほしい。
短期的には水と食糧の支援、中期的に必要なのは、雇用機会を増やすことである。

●パキスタンやアフガニスタンでは、武器を持って歩いていると何らかの敵意を持っていると思われる。
丸腰の平和があるか、という議論があるが、あのあたりでは丸腰の方が安全である。

●タリバンについて。
報道されている姿は実際とは異なる。
一番大きな問題は、ニュースソースが北部だけだということ。
アフガニスタンの3分の2以上を構成するパシュトゥン族の動きが全く報じられていない。
タリバンの大半の兵士は「普通のお百姓さん」。
そもそも、アフガニスタンでは、各地域の長老会が地域にとって重要なことを決めるという方法で、権力が成立する。
タリバンもそうやって受け入れられた。
タリバン侵攻前のカブールでは、市街戦・婦女暴行・略奪が日常茶飯事だった。
カブールにタリバンが侵攻してきたとき、多くの市民がホッとした。
誰も前のような無政府状態を望んでいない。
今は世界一治安が良い。
見せしめの処刑はあるが、ケタが少ない。
以前よりずっと血なまぐささはない。
パシュトゥン族の多くは、タリバンの崩壊を望んではいない。
タリバンに協力して北部同盟と戦っているところもある。
タリバンに対しては、過激な政策をとらないよう圧力をかけている。

●オサマ=ビンラディン氏について。
一般のアフガニスタン人は決して良い感情は持っていない。
対アラブ感情はもともと良くない。
ただし、アフガニスタンでは「客」という言葉に特別な響きがあって、自分の命にかけても客を守らなければならない、という感覚がある。
タリバンも、本音では「自分から出ていってくれれば」というところだと思う。
もしかすると、目立たぬように国外退去させるかもしれない。
本音と建て前がずれているので、圧力をかけすぎて追いつめると、かえって硬直化して逆効果になると思う。

●現地からの報告によると、米国による食糧投下については、ジャララバードとカブールについてはまともなものはなかったとのこと。
宣伝の割には大したものは落とされていないので、人道的なポーズではないか。
日本は「ポーズ」ではなく、本当に人道的な気持ちを持ってやれば、政治的にも良い結果になると思う。

★最後に、中村医師ご自身が書かれた文章の一部を抜粋します。

「帰国してから、日本中を沸かせる『米国対タリバン』という対決の構図が、何だか作為的な気がした。テレビが未知の国『アフガニスタン』を騒々しく報道する。ブッシュ大統領が『強いアメリカ』を叫んで報復の雄叫びをあげ、米国人が喝采する。湧き出した評論家がアフガン情勢を語る。これが芝居でなければ、みなが何かに憑かれたように思えた。私たち文明は大地から足が離れてしまったのだ。
 全ては砂漠の彼方にゆらめく蜃気楼のようである。アフガニスタン! 茶褐色の動かぬ大地、労苦を共にして水を得て喜び合った村人、井戸掘りを手伝うタリバン兵士たちの人懐っこい顔・・・回顧は尽きない。『自由と民主主義』は今、テロ報復で大規模な殺戮戦を展開しようとしている。おそらく、累々たる罪なき人々の屍の山を見たとき、悪夢にさいなまれるのは、報復者その人であろう。瀕死の小国に世界中の大国が束になり、果たして何を守ろうとするのか、私の素朴な疑問である。」


 アフガニスタンは今まで「忘れ去られた国」と言われてきました。
バーミヤンの石仏のことは心配しても、そこで暮らす生きている人たちが餓死することは誰も心配してくれなかった、と皮肉られています。
今回、独りよがりな「報復」と「人道的ポーズ」だけが行われ、さらに絶望的な状況に陥ったアフガニスタンが再び「忘れ去られた国」にならないよう、国際社会の目をしっかりと向けていかなければなりません。


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