国会報告 その238(2005.07.09発行)

水島広子の活動の様子をお伝えするために、毎週1回、発行しております



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国会報告



■ 民主党の「未来世代応援政策」



 7月6日(水)、次世代育成支援プロジェクトチーム(少子化対策)座長と して、民主党の次世代育成支援政策を「次の内閣」に中間報告し、了承を得ま した。今国会中に、製本化に向けての最終報告へと、最後の手続きに入ってい くことになります。

 私たちの政策の名称は、今のところ「未来世代応援政策」としました。
次世代というと生まれてくる世代ですが、現状を見ると、本来は産み育てる権 利を享受できる年頃の人たちが、ニートになっていたり、家庭を持つことに希 望を見いだせなかったり、という状態になってしまっています。
 私たちは、子どもたちには健やかに生まれ育つ権利があると同時に、若い世 代には子どもを産み育てる権利がある、という考えに基づき、次世代だけでな く、若い世代も含めて、「未来世代」として応援対象にしようとしています。

 政府・与党との大きな違いは、本来、子どもを産み育てることは当然の権利 であり楽しめるはずのものであるという視点に立っているということです。政 府・与党は、「国のために何人産むか」という視点が色濃い(少子化問題とい う位置づけしかできていない)だけでなく、子を産み育てることを「面倒なこ と」と位置づけて、どれだけその面倒を軽減できるか、というような視点にと らわれています。本来当然の権利であり楽しめるはずのことを、「応援」して いこう、というのが民主党の基本理念です。

 また、私たちの政策では、生まれ育つ子どもたちを権利主体としてとらえま す。国のために産み育てる対象ではなく、自らが育っていく主体である子ども たち、という位置づけです。ですから、当然のことながら、子どもの権利条約 や関連勧告を踏まえたものです。(政府与党は相変わらず子どもの権利という 言葉が嫌いです)
 さらに、私たちの政策は、当たり前のことですが、女性だけではなく男性も 当事者となっています。政府はさすがにはっきりとは言いませんが、自民党で は、少子化を女性の問題として位置づけています。

 これらの基本理念に基づいて、全体の構造は、全てを包括する未来世代応援 基本法(子ども家庭省や子どもオンブードの根拠法となるもの)を中心に、テ マとヒマ(子どもたちにかける人手と時間)、お金(経済的支援)、個々のニ ーズ(小児医療、虐待や搾取の被害を受けてしまった子どもたち、不妊、非行 や触法行為をした子どもたち、婚外子や無国籍児など現在差別化に置かれてい る子どもたちなど)という三本柱から成り立っています。
 テマとヒマの中心になるのは、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調 和)です。このための基本は、パート労働者の均等待遇ということになります。 もっと安心して労働時間を手放せるようにすることが大前提です。ワーク・ラ イフ・バランスについては、この国会報告でも過去何度か述べてまいりました が、子育て中の人だけでなく、それ以外の大人も地域に帰ることが、日本のほ とんど全ての問題を解決していきます。子どもが健やかに育つためには、地域 の大人たちが必要です。また、地域が再構築されれば、地域が活性化しますし、 地域の安全も確保されます。オランダでは、ワッセルナー合意で、政・労・使 が合意したためワークシェアリングが全面的に進んだわけですが、日本でも、 ワーク・ライフ・バランスのための均等待遇を、一斉に推進すべきです。

 このほか、テマとヒマの政策の中には、「希望する全ての子どもたちが家庭 以外のコミュニティを」として、保育、学童保育、幼保一本化をまとめ、また、 「子育てバリアフリー社会を」ということで、物理的なバリアフリー、歩きタ バコの規制などの他、アレルギー、食の安全、犯罪からの保護、暴力や性暴力 情報から子どもたちを守る、などを含めました。
 お金については、子ども手当、奨学金の他、育児休業中の所得保障の充実を まとめてあります。

 基本的には、今までに私たちが作ったり法案として提出したりしてきたもの ばかりですが、「政策が見えない」と言われていたものをきちんと整理してわ かりやすく提示できるよう、引き続き努力したいと思っております。  



■ 靖国問題



 7月5日、民主党の外務・防衛部門会議に東京大学大学院総合文化研究科教 授の高橋哲哉先生をお招きして、「靖国神社の問題点」というタイトルで、お 話をうかがいました。高橋先生が書かれたちくま新書の「靖国問題」という本 は、26万部という異例の売り上げになっているそうで、いかにこの問題に関 心を持っている方が多いかということを示していると思います。

 靖国神社は、俗に言われているような「追悼」のための施設ではなく、「顕 彰」のための施設だということは、一般に案外知られていないのではないでし ょうか。
 祀られている人も、決して戦死者全般ではなく、特別の戦死者(国家に属す る戦死者)のみとなっています。「朝敵・賊軍」(例えば、西南戦争の西郷隆 盛も祀られていない)、外国人、民間人は排除されています。靖国神社は我が 国における戦没者追悼の中心的施設と言われますが、原爆や空襲で亡くなった 方を含め、民間人は祀られていないのです。

 もう一つ、信教の自由の問題があります。靖国神社への合祀の取り下げを求 めている遺族の方たちとのやりとりの中で、池田権宮司は「天皇の意志により 遺族の合祀は行われたのであり、遺族の意志に関わりなく行われたのであるか ら抹消をすることはできない」と答えています。靖国が追悼のための施設であ るのなら、遺族の意向を無視することはできないはずであり、あくまでも国家 の意思で祀っているもので、遺族の意思は関係ないということになります。
 これはまさに「強制合祀」とすら言えるものであり、信者が抜けたいと言っ ているのに拒否するというのは、カルト宗教と同じです。靖国自身が信教の自 由を認めないのであれば、一宗教法人としての靖国の信教の自由も認められな いのではないでしょうか。

 そもそも、日本における政教分離原則の意味は、他国とは違うものです。政 教分離は近代国家の原則ですが、導入された背景は国によって異なります。日 本の場合は、大日本帝国憲法から日本国憲法に変わるときの重要なポイントが 「政教分離」であり、「万世一系の天皇これを統治する」から「主権在民」へ と憲法の原則が変わる大前提に政教分離があるのです。つまり、主権在民にす るための、国家神道の否定という歴史的背景があります。

 世論調査をする前に、日本人はもっと靖国神社について知る必要があります。 私自身も、政治家になる前は詳しく知りませんでした。まだの方は、ぜひ、高 橋先生の「靖国問題」を読まれることをお勧めします。

 

■ 韓国ウリ党との交流



   7月6日、韓国ウリ党の2人の男性国会議員と、国会議長政策補佐官の方と 懇談する機会がありました。いずれも、386世代(30代で、80年代に大 学で学生運動をやっており、60年代生まれの、ノムヒョン政権を作った人た ち。私も世代としては全く同じです)の人たちです。

 韓日友情の年である2005年の韓日関係は、国交回復の1965年以後の 最悪の状態になっています。北朝鮮の改革・開放、そして南北統一のためには 韓日間の積極的な協力が必要であること、韓日間の関係改善がなければ日本は アジアで活動の幅を広めることができず、結局は孤立することになることなど の背景もあり、日韓は歴史から教訓を学び、関係を改善し、21世紀のアジア における平和と繁栄に貢献しなければならない、という結論は共有できるもの でした。



■ 日本の医療政策



 7月7日、大胆な構想を考えるための「21世紀の社会保障制度を考える勉 強会」に、慶応大学大学院経営管理研究科教授の田中滋先生をお招きして「医 療制度改革の方向について」お話をうかがいました。

 栃木県の中核病院から医師がいなくなるという衝撃的な事件が私の地元でも 起こっていますが、今の日本の医療において、中核的な急性期医療における医 師の疲弊は末期的な状況にあります。今回の栃木県の事件の直接のきっかけは 臨床研修の義務化に伴って大学病院が医師の引き揚げを行ったことですが、そ もそも、自分の命や家族のことを考えたら中核病院の勤務を続けられない、と いう過酷な現実があります。
 医療制度について論じなければいけないのはまさにこういった点であり、株 式会社の参入や混合診療のことで議論の時間を無駄に使っている余裕はないと 思っています。



☆来週の「国会報告」はお休みさせていただきます



 7月9日〜16日、米国マンスフィールド財団の招聘により、公務部門の女 性たちと交流をするための派遣団の一員として、訪米いたします。
 次回の国会報告(7月16日号)はお休みとさせていただき、7月23日号 から再開させていただきます。よろしくお願いいたします。




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