国会報告 その235(2005.06.18発行)

水島広子の活動の様子をお伝えするために、毎週1回、発行しております



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国会報告



■会期延長の議決時に自民党議員泥酔



 郵政「民営化」法案を今国会中に成立させたいという一心で、与党は通 常国会の会期の延長を強行しました。延長の採決が行われた本会議に、自 民党議員が泥酔して出席していたのには本当に驚きました。野党からの再 三の要求にも関わらず退室をさせず投票を許した議長にも驚きました。
 最前列で泥酔していた秋葉賢也議員は投票後に自主退室しましたが、彼 の他にも、何と、小泉首相、森喜朗前首相、その他数名の議員が飲酒で赤 い顔をしていたのには呆れました。

 それにしても郵政「民営化」法案の審議の内容は滅茶苦茶です。過去の 大臣答弁について、竹中平蔵大臣は「それは大臣の政治家としての心情を 述べたものだろう」などと言ってのけただけでなく、今度は、知人の会社 に、契約日も偽って、郵政民営化PRの1億5千万円もの政府公報を随意契 約した、というのですから、驚きです。
 小泉「民営化」がいかに国民に有害かということも審議の中で示されて きています。政治が小泉さんや竹中さんに私物化されないように軌道修正 する必要があります。

 

■山崎拓発言について



 6月12日のNHKの日曜討論で、山崎拓議員が発した言葉は本当にひど いものでした。
 会期延長に野党が反対しているということについて、「会期というのは 電車のレールのようなもので、会期延長に反対するというのは、レールに 置き石をするようなもの。投身自殺ならまだ男らしいが・・・。」という 趣旨の発言をしたのです。
 当日は奇しくもJR西日本の事件からちょうど49日目でした。そんな日 に、置き石事故をほのめかすようなことを言う神経も信じられません。

 また、公党に法律上認められている「会期延長に反対する」という政治 的意思表明を、置き石という世にも卑劣な犯罪と同列に語るという神経に も驚きました。
 それ以上に驚いたのは「投身自殺ならまだ男らしい」という発言です。 自殺者の数が3万人以上という状がもう7年も続いていることは、日本の 政治家にとって重要なテーマです。

 そして、男性の働き盛りの方たちが自殺することによって、残された家 族、特に子どもたちが、どれほど悲しみ苦しんでいるか、ということは、 政治家ならば誰でも知っているべきことです。
 そんな現実を知っていれば、そして、残された家族の苦しみに思いをは せていれば、「投身自殺ならまだ男らしい」と肯定するようなことが言え るでしょうか。

 党派や政治信条の問題という次元ではなく、やはりこの人は深刻な問題 を抱えている、と改めて痛感しました。



■子どもの「権利」について



 6月16日の「子ども家庭省設置準備ワーキングチーム」に早稲田大学 教授の喜多明人先生をお招きしてお話をうかがいました。 喜多先生は、 子どもの権利条約にライフワークとして取り組まれているわけですが、日 本では、まだまだ「子どもの権利」という言葉でブレーキがかかってしま う、とおっしゃいます。
 「子どもに権利を与えることは、わがままを助長するだけだ。今の子ど もには権利よりも義務を与えるべきだ」という意見は、国会内でもよく聞 かれます。日本の社会は、まだまだ本当の意味で「子どもの権利」を受け 入れていない、と言えるでしょう。
 でも、喜多先生の経験からは、反対の方も勉強すれば理解してくれるこ とが多く、子どもの権利とは何かを知らない人が、誤解して、子どもの権 利に反対しているようです。

 喜多先生は、「rightの翻訳がまずかった」とおっしゃっていました。本 来のrightとは、「社会的、法的に承認を受けた正当な人間としての意思、 ニーズ」を指す言葉で、権力や利益を思わせるような言葉に翻訳したことが 問題だったのではないか、とのご意見です。

 実際に、フランスのジャン・シャザルは、子どもの権利というものが、実 は子どもが持っている様々な要求(物質的、生物学的要求。安全と愛情に対 する生命的情緒的要求。理解されたいという、情緒的であると同時に知的な 要求。成長の要求、外界発見の要求、自己主張の要求)の法的承認にほかな らないことがわかってくる、と述べています。
 これを初めて認めたのが、1924年に国際連盟で採択された「児童の権 利に関するジュネーブ宣言」であり、人類が児童に対して、人種、国籍、信 条のいかんをいっさい問わず、最善のものを与える義務を負うことを認めて います。
 つまり、子どもの権利というのは、そもそも、大人の義務だということな のです。こういった観点からは、「子どもの権利を認めると、子どもがわが ままになって家庭が崩壊する」という説は全く間違っていて、実際には、「 子どもの権利を認めるために、家庭をきちんと守らなければならない」とい うことになります。

 もちろん、これは、一部の政治家が主張するように、家庭のあり方に国家 が踏み込むべきだということではありません。家庭のあり方を規定する資格 は法律にはなく、子どもに「家庭的環境」を整備すること(実の親子にこだ わらず、養親、里親、家庭的なグループホームなども含む)に法律は責任を 果たすべきだという喜多先生のご意見には私も同感で、昨年の児童虐待防止 法改正のときに、「親子再統合」しかなかった与党案に「良好な家庭的環境」 を書き加えられたことを改めて嬉しく思いました。



■日中関係で史実を直視する



 6月15日、超党派の恒久平和議連(鳩山由紀夫会長)に作家の保阪正 康さんをお招きして、「史実を直視すること」というテーマでお話をうか がいました。保阪さんは、「取り憑かれたように」(ご本人の弁)昭和を 書いてこられた方です。
 2005年7月号の「現代」に保阪さんが書かれた「周恩来の「遺訓」 を無視する首相の靖国参拝」という論文が大変わかりやすいので、一部を ご紹介します。

 周恩来元首相の「ひとにぎりの日本の軍国主義者が行った罪過は、中国 人民だけでなく日本人民もまた犠牲者であった」という有名な発言は、戦 後の日中関係の基礎を作っています。
 この発言について、2000年8月に中国に招かれた際に、付き添って くれた元外交官で日本研究者でもある方に、保阪さんは疑問をぶつけてみ たそうです。

(以下、引用)
 「周首相の「日本人民も犠牲者だ」という言はおかしいのではないか、こ れはむしろ「侵略」の本質を正面から受け止めることにはならないのでは ないか」と率直に尋ねてみた。Aさんはしばらく考え込んでから、口を開 いた。
 「1952年にハルピンである事件がありました。それはハルピンの公 式の機関が、日本からスケート選手を招いて中日友好のスケート試合を 行うと発表したのです・・・」
 以下、Aさんの話を要約すると次のようになる。

 その発表を聞いたハルピン市民は激怒し、その公式機関を幾重にもとり 囲んで、なぜ日本人選手を招待するのかと、何日も抗議運動が続いたとい うのだ。自然発生的なこのデモは、かつての日本軍から直接被害を受けた 中国人の怒りに端を発しているが、もし日本人選手を招いたりしたら暴力 事件が起きかねない状況だったというのである。
 そのため日本人選手の招待計画は中止と決まり、それでデモはおさまっ た。

「東北地方をはじめいくつもの地で、日本軍はあまりにもひどい残虐 行為を働いています。私の通っていた新京(今の長春)の小学校では級友 の6割が肉親や親戚を何らかの形で日本軍に殺されています。
 こういう人たちのなかには、日本人に復讐しろ、決して許さないという 人も多かったのです。周首相はこうした状態が続けば将来大変なことにな ると考え、そういう人たちに、日本人兵士もまたひとにぎりの軍事指導者 にだまされていた犠牲者だと説得したのです。そう説得することによって、 感情を和らげるよう指導したわけです。」
 昭和28年、29年に早くも周首相がこの言葉を口にしていたのは、こ のハルピン事件の教訓が伏線だったということになる。加えて、それは"日 本人民"にむけてのことではなく、"中国人民"にむけて「過去をのりこえて いこう」と呼びかけていたことをあらわしてもいた。
 Aさんの話から、私は改めて日本軍の行為によって精神的、肉体的に傷つ いた中国人がどれほど多いかを知ったし、周首相の言葉の意味も理解する ことになった。
(以上、引用)

 先日も中国に詳しいメディアの方に直接うかがいましたが、小泉政権が 中国人の感情を逆撫でするようなことを繰り返すほど、親日政府の国内基 盤が危うくなっているそうです。
 先日、小泉首相との会談をドタキャンして中国に帰った副首相について も、小泉首相に会って靖国参拝を断念させなければ、彼女の政治生命が危 うくなるところだったため、ドタキャンせざるを得なかったとも言われて いるそうです。
 保阪さんのおっしゃるように、史実を知ることは本当に重要なことです。 民主党でも、日本の近現代史調査会(藤井裕久会長)がスタートしました。 民主党の中でも歴史認識を共有できるように、日本の明治以降の歴史を勉 強するためのものです。



☆テレビ出演のお知らせ☆
『日本のこれから―人口減少社会―(仮)』
6月25日(土)
19:30〜22:30
NHK総合テレビ(全国ネット)




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