国会報告 その222(2005.03.12発行)

水島広子の活動の様子をお伝えするために、毎週1回、発行しております



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国会報告



■宇都宮の生きがい対応型デイサービス問題について




 宇都宮市で行われている生きがい対応型デイサービス事業は、2000年に、 国の介護予防生活支援事業(在宅福祉費補助金)のうちの生きがい活動支 援通所事業としてスタートしたものです。
 当初は通所介護施設の余力部分において行うものとしてスタートしまし たが、翌年には、生きがい対応型デイサービス専用施設に委託を開始しま した。
 利用人数は、2000年度には9,555人、2003年度には28,914人、2004年度に は55,526人、と大幅に増えてきました。それに伴って、事業費も、2000年 度には4,635万円だったものが、2004年度には1億9,460万円と膨れ上がって います。

 この生きがい対応型デイサービス事業が、この4月から急に見直される ことになり、今まで週3回利用できたものが週1回になってしまうので困る、 という不安の声を事業者や利用者の方たちからいただいたので、調べてみ ました。

 今回、見直しが行われるきっかけになった一つの大きな背景が、明らか に「無駄」と思われる事業所の存在だったと言われています。確かに、そ ういう事業所が存在することは聞いています。
 でも、私が知っているような事業所は、自分では外出できない・外出す る気になれないお年寄りにも送迎サービスをし、手作業などいろいろな趣 味を提供することで、お年寄りを心身ともに支え、元気な状態を維持して いただく、という機能を立派に果たしています。
 施設運営についての指針もないまま、運営実態がある意味では「野放し」 にされてきたという状況で、一部に悪質なところがあるからといって、事 業全体が一律に縮小される、というのは、この事業によって明らかに生活 の質が保たれている当事者の方たちにとっては大変迷惑な話です。
 介護予防も含めて、介護の問題を考えていく上では、「質のチェック」 は避けては通れない道です。それを避けて事業そのものから撤退してしま うのでは、本末転倒な話です。

 また、この事業については、2003年度から、対象者が「家に閉じこもり がちな高齢者」に限定されると共に、補助金が一般財源化されてきました。
 具体的には、2003年度からは人件費を除く部分の半分だけが補助金事業 となり、残りは一般財源化されました。

 2004年度からは、送迎部分以外は一般財源化され、2005年度からはすべ てが一般財源化されることになります。
 一般財源化するということは、総務省の担当の範囲で、地方交付税とし て一括して地方に渡される財源に移る、ということを意味します。つまり、 金額としてはもらうけれど、何に使うかは地方の裁量に任されるお金にな る、ということです。
 念のため厚生労働省に確認しましたが、やはり、これはあくまでも一般 財源化であって、事業そのものを縮小してほしいという趣旨ではないとい うことだそうです。

 また、突然自治体がサービスを切ったりすることのないように、2年か けて半分ずつ補助金を一般財源化をしてきた、ということです。 これか らも、地方分権という方向の中で、同じような構造は起こってきます。
 現在、本当の意味での地方分権が実現せずに、地方へのしわ寄せばかり が来ている状況ですから、市町村にとっては辛い現状にあることは十分に 理解していますが、国が行っていた事業を市町村に移譲していく、という ことは、最も身近な自治体できめ細やかなサービスをしてほしい、という ことですから、ぜひ、宇都宮市には、一人ひとりの利用者の目線に立った 対応をお願いしたいと思っています。
 また、介護保険の議論をしていく中で、市町村への権限委譲と、「悪貨 が良貨を駆逐することがないように」というテーマは本質的だと思います ので、しっかり取り組んでいきたいと思っております。



■小児医療の抜本改革に向けて




   3月10日、日本小児科学会の会長を初めとする皆さまをお招きして、 小児医療についての意見交換をさせていただきました。
 小児医療が危機に瀕しているということは、多くの人たちの「常識」と なりながらも、抜本的な改革は図られずにきました。せいぜい、選挙のた びに、医療費を何歳まで無料化するとか、現物給付(償還払い制度ではな い)にするとか、そんなことだけが論点となってきました。

 本来、自治体の役割というのは、医療費の負担を単に肩代わりすること だけにあるのではなく、地域に根ざした医療ネットワークを整備すること にあるのだと思うのですが、大きな骨組みが見えないまま、今まで小児医 療の本質的な議論は政治のテーマになりにくい、という状況が続いてきま した。
 その一つの原因は、実は、小児科の「政治力のなさ」にもあります。本 当に子どもたちのことだけを考えて黙々と仕事をしていらっしゃる小児科 医の方たちは、声が大きい存在でもなく、ことさらに政治的にアピールす ることもなく、今まできてしまいました。

 今回ようやく小児科学会の方たちと懇談する機会を設定することができ たのですが、これを機会に、もっと政治の中核の議論に入っていただきた いと思っています。



■藤原帰一先生をお招きして




 3月9日、東京大学の藤原帰一教授をリベラルの会にお招きして、「国 際紛争にどう向き合うか」というテーマでお話をいただきました。

 「平和主義=理想主義」という思い込みをまず捨てるべきで、平和主義 というのは、交渉と妥協の産物である老人の知恵のようなものだ、という 藤原先生のお考えが私は大好きです。
 今の日本(とアメリカ)で、むしろ「理想主義」的で現実を見ていない のは、軍事力を過信している人たちの方なのだと思います。
 老人の知恵の外交ができる日本になるよう、現実を直視できる政治を実 現できるよう、がんばりたいと思います。



■性犯罪問題のアイルランド専門家と懇談




 3月7日、「ECPAT/ストップ子ども買春の会」の主催で、COPINE(ヨーロ ッパにおけるペドファイル(小児性愛者)情報ネットワーク根絶)プロジ ェクトの副代表であり、インターネット上の子どもポルノ調査、被害防止 のための介入、加害者への治療研究等に携わっておられるEthel Quayle博 士(臨床心理学)を迎えての意見交換会が開かれました。
 Quayle博士は、夫のMax Taylor教授と共に、外務省主催のオピニオン招 聘プログラムで来日されました。

 COPINEプロジェクトというのは、1997年にアイルランド・コーク大学内 に設立されたもので、インターネット上のポルノグラフィーと児童に対す る性的暴力の調査、実態の分析を行い、防止策として加害者の心理を分析、 加害者に対する刷新的治療法を開発しています。
 COPINEはEU等の財政支援の下、この専門分野での世界的に主要な機関と して知られています。

 Qualyle博士との懇談で改めて確認しましたが、やはり一部の人にとっ て、児童ポルノの写真を見れば見るほど、性犯罪を起こす確率が高くなる というのは事実です。
 性犯罪者本人や、一般人の中にも、「児童ポルノがあるから、自分は本 当の罪を犯さないでいられるのだ」と言い張る人がいますが、それは全く ウソなのです。
 性犯罪の予防という観点からも、やはり児童ポルノの規制は必要だ、と いうのが私たちの結論です。

 Taylor教授に、法律の実効性を持たせるにはどうしたら良いか、という ことを質問すると、「法律だけでなく、市民社会との協調が必要。市民社 会の中では、インターネットプロバイダーやクレジットカード会社が重要 な役割を果たしうる」というお答えでした。



■自民党・中西議員強制わいせつ事件




 自民党の中西一善衆議院議員が路上での強制わいせつのために逮捕され るという、言語道断の事件が起こりました。
 もちろん、国会議員が強制わいせつで現行犯逮捕されたというのは、歴 史上初めてということです。特に今国会は、性犯罪が大きな話題ですから、 よりによって、という気持ちでいっぱいです。
 私も女性議員の一人としてメディアからいろいろとコメントを求められ ていますが、「中西議員はちょっと飲みすぎたのだ、とか、同情するよう な声についてはどう思うか」という質問も受けます。やはり、これだけあ からさまな性犯罪であっても「酒の勢い」として文化の一部であるかのよ うな捉え方をしている人がいることには問題を感じます。

 衆議院の本会議場でも、「こんな、誰でもやっているようなことについ て大騒ぎするな」と野次っていた議員がいたそうですが、こうした意識の 積み重ねが、性犯罪についての憂うべき現状を生んでいるということが、 どうしていつまでもわからないのでしょうか。





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