国会報告 その204(2004.10.09発行)

水島広子の活動の様子をお伝えするために、毎週1回、発行しております



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国会報告



■小山事件その2(現地調査)




 10月5日、小山の児童虐待殺人事件について、民主党の調査団が現地調査を行いました。調査団の団長は「次の内閣」の子ども担当大臣である小宮山洋子さん、そして私は事務局長を務めさせていただきました。国会議員9名(うち県内選出3名)と県議6名という大きな調査団でした。
 視察先は、栃木県南児童相談所、小山警察署、栃木県(保健福祉部、児童家庭課、中央児童相談所)としました。現場の皆さんと有意義な意見交換ができましたし、私自身も厚生労働省からの聞き取りだけでは疑問だった点を明らかにすることができました。大変な雨の中、ご協力いただいた皆さまに感謝申し上げます。
 以下、現時点での問題意識をまとめてみたいと思います。


児童相談所と警察の連携

 今年はじめに発覚した岸和田の虐待事件の時にも私は現地調査に行きましたが、あの事件の特徴が児童相談所と学校(教育委員会)の連携の不十分さにあったのに対して、今回の事件の特徴は児童相談所と警察の連携の不十分さだったと思います。
 私は、常々、虐待を防ぐには、あらゆる関係者が最大限「お節介」にならなければいけない、と言っていますが、いろいろな悲劇が、まさに「誰かが対応しているはず」という思いこみの隙間に起こっています。
 今回も、最初に子どもたちを保護した小山署が、同居人による暴力の明らかな痕跡と証言まで得ておきながら、父親の「警察沙汰にしたくない」という言葉によって、また、父子がその家を出るという知らせに安心し、傷害事件として立件することはおろか、加害者の事情聴取すらしていません。この時点で警察が事情聴取などを行っていれば、事態は変化したと考えられます。父親が希望していなくても、現行法内で十分に対応は可能だったと警察の方も認めていました。
 さらに、警察は、同居人に対して何もしないことになったという旨を児童相談所に連絡しませんでした。ここで連絡がとられていれば、子どもへの暴力の再発防止に向けて、警察と児童相談所で知恵を出し合うこともできたでしょう。

 栃木県警では、今回の事件を教訓とし、実務担当者レベルでの連携をどうするか、検討を進めていきたいということでした。ぜひ、早急に進めていただきたいと思います。


児童相談所のチェック機能

 今回、児童相談所の対応に問題があったということは県も厚生労働省も認めているところです。まず、初期の情報収集不足。父親という限られた情報源からしか情報を得ずに判断しています。この情報不足が虐待のリスクの過小評価につながり、後々まで響いているのです。
 また、子どもたちを父親の元に返す条件として「祖母宅に住む」ということが約束されていたのに、それが破られたことが7月22日には明らかになっていたのです。この前提条件の変化(本来、初期の調査をきちんとしていれば十分予測できたことかもしれませんが)に際しては、もう一度子どもたちの処遇を考える話し合いを持つことが最低限必要なことでしょう。ところが、児童相談所は祖母と電話で連絡を取り合うという手段に頼ってしまいました。
 なぜこんな初歩的なミスを犯してしまったのか。県南児童相談所の今までの実績を見ても、決して「初心者」の児童相談所ではありません。今回は、「父親は虐待をするような人物ではない」という先入観によって、父親の養育力不足をどうやって補うか、ということに児童相談所の対応が集中してしまったようです。

 父親は警察に対しては「自分も痣が残らない程度にこづくことはあるが」と子どもへの暴力を認めていたということですから、警察と児童相談所の連携がもっと良ければ、と悔やまれます。また、警察が同居人の事情聴取をしていないという事実を児童相談所側が知っていれば、もう少し大きな視野での取り組みができたと思います。
 そうは言っても、現在、児童相談所で「虐待ではない」と判断してしまった場合、大きな事件にでも発展しない限り、それが修正されるチャンスはありません。現在の仕組みでは、所長を中心とする児童相談所の判断に全てが委ねられており、そのシステムの危うさが今回の事件につながったと思います。児童相談所の取り組みをチェックする第三者的な機能をどう確保していくかは大きな課題です。

 それと同時に、虐待の有無を調べる際に個々の児童福祉司の勘と経験に頼るだけではなく、誰がやっても一定レベルが確保できる、標準化されたアセスメントツール(評価のためのチェックリスト)を作ることも重要です。

 今回、「父親の方が強い立場だから同居人の暴力を抑えられる」と児童相談所は期待していたようですが、これも、「暴力をもって暴力を抑えつける」という構造であり、そのひずみがどこに向かうか、という視点を児童相談所には持ってもらいたかったと思います。

 スペースの関係上、続きは次号以降に掲載します。



■宇都宮市長選への民主党の取り組み




 9月10日、民主党栃木県第1区総支部幹事会を開きました。6日に福田富一市長が県知事選への出馬の決意を表明したため、この日が民主党として初めての市長選に向けての正式な議論となりました。「遅すぎる」というご意見もあるようですが、福田市長は昨年四月の市長選に際して、「任期の途中で知事選に出馬することはあり得ない」と明言していたわけですから、出馬表明以前に市長選対策を考えるなどという失礼な行動はとれませんでした(民主党としては福田市長を推薦していませんが、民主系の市議団と連合栃木は福田市長を推薦しています。当然、任期途中で放り出さないということがその条件であったと理解しています)。 
 9月10日の会議では、「反自民」で独自候補を擁立すべし、という結論がまとまりました。そして、水面下での候補者探しはすでに始められていましたが、それらを速やかに行っていく、ということで合意されました。 

 ところが、同じ時間帯に、主に知事選について話し合うために開かれていた四者会談(民主党県連代表、県連幹事長、連合栃木会長、連合栃木事務局長)で、「谷博之参議院議員擁立」という方針が示され、翌朝の朝刊に大きく載ってしまったのです。
 9月11日朝の県連幹事会で、谷議員の擁立に向けて努力することが改めて確認され、「市長選対策本部」が設置されました。私が1区代表として本部長に任命されましたが、今回の宇都宮市長選は知事選とも大きな関係があり、県連として総力で取り組むべき選挙であることからも、簗瀬県連代表には本部長代行をお願いしました。1区所属の県連幹事会メンバーと、宇都宮選出の県会議員、民主党系の宇都宮市議団(民主市民連合)の皆さんなどが対策本部のメンバーとなりました。
   対策本部設立の趣旨にそって、谷参議院議員への要請行動を行いましたが、県連代表と連合栃木会長の要請に対しても、谷さんは国政にかける強い思いを述べて固辞されました。 

 10月1日、私はどうしても出席できない日程でしたが、対策本部会議が開かれ、簗瀬本部長代行のもと、谷議員の固辞が了承されました。
 ところが、翌2日の新聞に、「谷議員断念、相乗りへ」というような記事が大きく載ったため、本部長の私のもとに多くの批判が殺到しました。批判の内容は至極もっともでしたし、本部長として相乗りを了解したことなど全くなかったため、緊急に5日夜に対策本部会議を召集し、候補者擁立における「民主党の主体性」を確認しました。また、候補者擁立の過程に市民が参加できるように、透明性を確保すべき(もちろん機微については事後となりますが)だということも話し合いました。すでに自民・公明と共に協議のテーブルについてしまっている市議団の皆さんにも、協議の場で民主党の主体性を発揮してほしいと強くお願いしました。  

 時々、「地方自治に政党を持ち込まないでほしい」という意見を聞きますが、政党は政策実現のための団体です。自分たちの政策を実現するためにはどの人が最もふさわしい知事候補であり市長候補であるかを明らかにして支援することは、有権者に対する政党の責任だと思います。政策を実現するためには、その人が掲げる公約だけでなく、政治的な背景(どのような団体と近い人か、など)、も考慮すべき要素だと言えます。総合的な判断の結果、「どちらでも良い」ということもあるかもしれません。その場合は2人推薦あるいは自主投票となるのでしょうが、その判断のプロセスも透明なものにする努力が必要だと思っております。民主党として引き続き努力いたします。






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