国会報告 その184(2004.04.05発行)

水島広子の活動の様子をお伝えするために、毎週1回(月曜日)発行しております



国会報告 バックナンバー|HOME

国会報告(3/29〜4/4)



■年金審議、さっそく紛糾!




☆首相、突然の「年金一元化発言」☆

 4月1日から年金審議が始まりました。
 そもそも、前の週末に小泉首相がテレビで「年金の一元化が望ましい」 と、民主党案が本当の抜本改革で、今回の政府案は暫定案に過ぎない、と いうことを認める発言をしました。これでは、与党の衆院選の公約違反と いうことになりますし、今回の政府案を厚生労働大臣は「50年、100 年持続可能な抜本改革」と胸を張って提出しているわけですから、閣内不 一致ということにもなります。

☆無年金障害者問題☆

 もう一つ、無年金障害者の問題があります。
 私たちも3月31日に無年金障害者訴訟の原告団及び弁護団の方からヒ アリングをしましたが、3月25日に無年金障害者について東京地裁の判 決が出ました。そして、無年金障害者の問題を放置してきたのは国の立法 不作為であって違憲であるという審判がくだされました。
 これは、学生時代に障害を負いながら、国民年金に加入していなかった ため障害基礎年金を受けられない「学生無年金障害者」4名が、年金を支 給しないとする決定の取り消しと賠償を国に求めた訴訟。判決は、4名の うち3名には慰謝料の支払いを、1名は障害基礎年金の支給を言い渡しま した。

 国民年金法では、障害を負った時期が20歳未満なら障害基礎年金を受 けられることになっています。ところが、20歳以上の学生で、国民年金 に任意未加入の期間(1985年改正までは学生は任意加入になっていた) に障害を負うと、障害基礎年金を支給されない学生無年金障害者になって しまう、という現実があります。
 無年金障害者となるケースは、学生の任意未加入期間に加入せず障害を 負った学生の他、1982年1月の国籍要件撤廃前にすでに障害の状態に あった適用除外の在日外国人、1986年4月前の海外滞在中に障害を負 った在外邦人、サラリーマンの主婦の任意未加入期間に加入せず障害を負 った主婦、などがあります。

 政府の立法不作為は明らかです。例えば、同じく交通事故で障害を負っ たケースでも、19歳のときであれば障害基礎年金をもらうことができま すが、20歳を少しでもすぎて同じ交通事故に遭った場合は、一円ももら えない、ということになるのです。
 無年金障害者の議論をすると、よく、「年金保険料を払っていないのだ からもらえないのは仕方がない」などと言う人がいますが、そもそも、国 民年金では、制度のスタートのときから、20歳前に障害を負った人には 障害年金を保障する仕組みになっているのですから、「払っていないのだ から・・・」という議論は正しくありません。 
 政府に控訴を断念させること、そして、無年金障害者にきちんと年金が 保障されるようにすることを、すでに民主党の方針として確認しています。  ちなみに、民主党の年金改革案では、税を財源とした最低保障年金が全 ての人に保障されるため、無年金障害者の問題は起こり得ないことになり ます。

 この度司法によって立法不作為を指摘されたわけですから、当然、今国 会で審議される政府案には無年金障害者問題の解決策が盛り込まれていな ければなりません。でも、全く触れられていないのです。

☆4月1日に強硬に審議入り☆

 一元化発言と無年金障害者問題をきちんと整理した上でなければ審議に 入れないので、私たちは4月1日の審議入りには反対していました。とこ ろが、議院運営委員会で採決をするという異例の措置をもって、与党側は 4月1日に本会議を立ててしまいました。

☆質問に答えられない小泉首相☆

 強硬に開かれた4月1日の本会議ですが、ここまでひどい本会議は見た ことがないほど惨憺たるものでした。
 まず、自民党の質問者である能勢和子さんは、大幅に時間枠をはみ出し ました。それを議長から繰り返し指摘されても自分の原稿を読み終わるま でやめませんでした。
 そんなことは序の口で、民主党質問者に対する小泉首相の答弁は話にな りませんでした。答弁のひどさはいつもながらですが、再質問・再々質問 をしても、尋ねられていることには何も答えられませんでした。

 枝野幸男政調会長の「今回の政府案では保険料率の上限を決め、給付水 準の下限を決めているが、年金を一元化する場合、国民年金加入者の所得 がどのように分布しているかがわからなければ、今回決める上限と下限が 守られるということは言えないはず。それなのに、どうして年金の一元化 をしても今回の政府案とは矛盾しないと言えるのか」という質問には最後 まで答えられませんでした(後の会議で発言した田中真紀子さんによると、 小泉さんは恐ろしく数字に弱いそうです)。

 また、続いて質問に立った古川元久議員(「次の内閣」厚生労働大臣) の質問「政府は今回の法案を、出生率など、見通しというよりも願望に基 づいて組み立てている。見通しが狂った場合には、給付水準も保障できな いということを認めるか」には、答弁すらしませんでした。

 これらの事情を見て、本会議をやり直して、答えられなかったところに は答えるべきだということを民主党は主張しました。そして、本会議をや り直さない限り、委員会の審議には入れない、ということも伝えてきまし た。
 それでも、与党側が4月2日に別件で本会議を強硬に開いたため、4月 2日の時点で、衆議院における全ての審議を野党は拒否することになりま した。

 実は、今国会における民主党の国対方針についてはかなり政府よりのメ ディアの方たちからも「予算編成までは与党が主役だが、その後は野党が 主役でなければならないはず」と懸念の声が挙がっていました。
 本来、与党というのは強大な権力を持っています。その権力の問題を野 党とメディアが指摘して質して初めて、どうにかバランスが取れることに なります。ここのところ与党からメディアへの圧力も高まっており(11 月の衆院選で民主党の閣僚名簿を発表したテレビの担当者は処分されたそ うです)、野党がしっかりしなければならないはずのところ、「審議拒否 はしない」という国対委員長方針を逆手に取られるような形で、与党ペー スで国会を進められてきてしまったというのは確かです。
 今回、年金という重大な局面において、野党が一致して全面対決姿勢を 打ち出せた、ということにはホッとしております。




■年金関連施設の視察 その2


 3月26日のグリーンピアに引き続き、3月29日にも年金関連の現地 視察をしました。社会保険業務センター(社会保険庁の現業部門。セキュ リティが厚く、ほとんど内部職員しか使わない建物なのに、ずいぶん豪華 な作りでした)、国民年金中央会館(こまばエミナース)、中央社会保険 健康センター(ペアーレ新宿)の視察もしました。こまばエミナースに至 っては、結婚式場まであり、「結婚式が福祉?」と首を傾げてしまいまし た。いずこも同じ、年金積立金を使い込んでの無責任体制、天下りの大量 生産を含めた周到な利権構造に、すっかり気分が悪くなってしまいました。



■イラク情勢


 3月31日の民主党憲法調査会で、酒井啓子氏(日本貿易振興機構アジ ア経済研究所参事)のお話を聞く機会を持つことができました。
 イラクを語らせたらこの人の右に出るものはない、と引っ張りだこの酒 井氏ですが、イラク情勢の問題点を、治安、経済復興の遅れ、イラク国内 の分裂という3つの柱に分けてお話しくださいました。
 中でも興味深かったのは、実際の対立点は「国内イラク社会」対「亡命 イラク勢力」(現在のイラク情勢を知らない人たち)の間にあるのに、米 国はこれを宗派対立のように描いている、という点です。それがメディア によって伝えられるため、実際に宗派分断化の悪循環が生まれている、と いうことです。



■ノルウェー子どもオンブードと会談


 3月30日、来日中のノルウェーの子どもオンブードTrond Waage氏が 来室され、約1時間の会談をすることができました。
 昨年の夏に私がノルウェーを訪問したときには、オンブード代理のホー ネス氏からいろいろな話をうかがいました。
 詳しくは昨年8月の国会報告をご覧いただきたいと思いますが、ノルウ ェーでは、子どもオンブードからの提案で子ども・家庭大臣が作られたほ ど力のある存在です。
 日本でも一日も早く子どもオンブードを作れるよう、激励を受けました。



■水島広子と歩む会 2004躍進の集い


 3月28日、宇都宮で「躍進の集い」を開きました。菅直人代表、枝野 幸男政調会長も駆けつけてくださり、盛大な会となりました。  
 ご協力・ご参加ありがとうございました。







国会報告 バックナンバー|HOME