国会報告 その18(2000.11.12発行)

水島広子の国会内外での活動をお伝えするために、週1回程度、発行の予定です。


国会報告 バックナンバー|HOME

国会報告(11/2〜11/11)
お知らせ:
11/2(木)〜7(火)まで、バンコクへ出張していたため、11/6(月)発行予定の「その17」は、変則的に11/2(木)に発行させていただいておりました。 一部、連絡が行き届かず大変ご迷惑をお掛けしました。 以後、このようなメールは不要という方、間違って同じものが複数送られてしまった方、誠にご面倒をおかけいたしますがご一報お願いします。



■11月2日(木)

政策秘書の鳥居さんが、地下鉄の中に全財産入りのカバンを置き忘れたという事件が起こったため、朝は事務所で留守番しながらバンコクの国際会議の英語原稿を作る。会議の内容を出版するため、原稿提出を義務づけられているのだ。

8時半から法務部会。少年法問題の総括、参議院での戦い方、それ以外の法案についての今後の対応について。民法改正案は参議院で提出された。今のところ「つるし」(委員会にも付託されずに放置されている)の状態。

9時から、藤村修代議士のパートナー様が代議士と共に訪室。看護の先生をされており、小児医療の問題点についていろいろとうかがう。

10時から民主党の医療事故対策に関するワーキングチーム。医療事故の分析と取り組みについて厚生省から説明を受ける。

11時半から、私が事務局長を務める民主党の「子供たちを有害情報から守るための基本法制定プロジェクトチーム」。日本民間放送連盟(民放連)とメディア総合研究所(メディア総研)の方たちを招いての聴取。

実は、有害情報に関しては、自民党が似たような基本法案を作っている。これに関して、反対の緊急声明などが出されている。民放連とメディア総研は、その急先鋒。盗聴法に始まって、国家が個人の価値観に介入しようとしている動きを感じるという。

私もそのあたりは同感である。だからこそ、私が作ろうとしている法案では、国家による検閲ではなく保護者や地域の大人たちの責任を規定しようと思っている。「現状のままではいけないからと言って法制化だけが手段ではない」という意見もうかがったが、NPO法のように民間の力を引き出しやすくするための法律もある。業界の自主規制がスムーズに進むような法律を作りたいと思っている。

自民答案への反対声明などを読んでいると、まるで少年法の二の舞になりそうな気配を感じる。今、多くの大人たちが有害情報を問題だと思っている。子供たちのために何かしなければならないと思っている。そんなところに、自民党がそれを規制する法案を出して、業界や知識人たちがそれに反対している、ということになると、「この人たちは子供たちのことをどうでもよいと思っているのではないか」と誤解されてしまうだろう。あたかも、少年法の改正に反対していた人たちが「この人たちは被害者の人権のことはどうでも良いと思っているのではないか」と思われていたのと同じように。

少年法の二の轍を踏まないように、こちらの言いたいことがしっかりと伝わる法律を早く作ろうと思う。少年法だって、民主党の修正案がもっと早くできていれば、世論を味方に付けることもできただろう。

12時40分から代議士会。
13時から本会議。今日の目玉は健康保険法と医療法などの改正。昨日厚生委員会で強行採決されたばかりである。厚生委員長からの報告の後、民主党が反対討論、自民党が賛成討論、そして、自由党・共産党・社民党がそれぞれ反対討論をする。小児科医でもある社民党の阿部知子代議士は、きっと前を見据えて、原稿に目を落とすことなく、すごい迫力だった。最初は馬鹿にしたようなヤジを飛ばしていた自民党の議員たちも、「おいおい、原稿読んでないよ。全部覚えているんだよ」とうろたえ始めた。こんなに鬼気迫る反対討論を聞いたのは初めてだ。

その後、記名採決。私たちは氏名が書かれた緑色の札(反対の札。賛成は白木)を持って採決に向かう。どれほど迫力のある反対討論が行われても、多数決によりあっさりと法案が通ってしまう。

採決後、動議が出され、警察法の一部を改正する法律案が採決される。民主党が提出したものが否決され、内閣が提出した方が可決された。

予定通り本会議が14時40分に終了したので、あわてて準備をして成田に出発。時間的な余裕がないので、最もスムーズに移動できる国会車を借りてある。いわゆる「黒塗り」である。お金がかかるので今まで借りたことはなく、初体験。雨で道路が込んでいたが、国会車のおかげで(?)無事飛行機に間に合う。18時5分発の飛行機でバンコクへ。深夜に到着。

今日は国会日程が終わってからの出発で、明日からは連休なので、今回のバンコク行きは実質上公務に影響はない。でも、会期中は休日であっても「請暇願い」というのを出さなければならない。昨日の公報に私の請暇願いが記されていた。1週間以上の場合は本会議の議題となる。今回は、国対委員長の許可のみ取った。

11月3日から、FES (Friedrich Ebert Stiftung 独エーベルト財団。ドイツの与党である社会民主党のシンクタンク)のYoung Women Leaders Network (若年女性リーダーネットワーク)の会議に参加。"Young Women = New Politics?"(若い女性=新しい政治?)というタイトルの国際会議。タイ・ベトナム・日本・中国・フィリピン・インドネシア・カンボジア・シンガポール・韓国・マレーシア・ラオス・ドイツの各国から、政治・ジャーナリズム・NGO・労働組合・学会の各界の代表が集合。全て40歳以下の女性である。日本からは国会議員の代表として私、そして労働組合の代表としてゼンセン同盟の中野英恵さんが参加。

今回の会議に参加した全参加者の渡航費とホテル代はFESによる負担(食費は、会議中の昼食と親睦のための夕食会のみFES負担)。その財力にも驚くが、アジアのジェンダーの問題にこれだけの熱意を注いでいることにも感心する。

私の発表に関しては、日本の国会における女性議員の割合の低さに驚かれる(アジアの平均よりも低い)。ベトナムの女性に「日本にはクオータ制もないのか」と呆れられた。

各国とも、女性が抱えるテーマはほとんど同じである。男性社会の中に進出できない、家事・育児との両立が難しい、女性が女性を応援しない、などなど。

私はバンコクに夫と娘を連れていったのだが(もちろん私費で)、参加者たちから「人前で堂々と子供の世話をする日本人男性を初めて見た」と言われた。また、「子供を連れてきたことはとても良かった。今まで、政治をする女性は私生活を捨てて政治に没頭するイメージだったが、私生活も大切にしていることが示せて良かった」とほめられた。会議の総括の中に、うちの夫婦関係が「これから参考にすべき成功モデル」として組み込まれていた。


■11月7日(火)

朝7時近くに成田空港に到着してそのまま国会へ出勤。さすがに眠い一日となる。

10時から始まっていた教育基本問題調査会に少々遅刻して参加。教育基本法について、教育技術法則化運動代表の向山洋一氏から説明を受ける。

12時40分から代議士会。
13時から本会議。 クローン人間の規制の必要性を受けて、内閣および民主党がそれぞれ法案を提出している。内閣案は「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案」、民主党案は「ヒト胚等の作成及び利用の規制に関する法律案」。前者については科学技術庁長官から、後者については民主党の提出者から趣旨説明がある。私も厚生部会で議論の経過について時々報告を受けていたが、クローン技術のみならず、ヒト胚(受精卵が分割していったもの)の扱い、生殖医療、ES細胞をも視野に入れた点で、民主党案の方が優れていると思う。

それぞれの法案に対して、民主党(平野議員)、公明党のそれぞれから質問。民主党側の答弁は、提出者の近藤議員・城島議員・樽床議員。内閣側は科学技術庁長官。

14時20分から下野新聞の取材。タイでの会議について。

15時から保育問題について厚生省から説明を聞く。明日から始めるプロジェクトチームのための準備。

16時36分の新幹線で宇都宮へ。お世話になっていた方が急に亡くなったため、予定を繰り上げて弔問に伺う。

18時30分から会合。


■11月8日(水)

6時36分の新幹線で東京へ。

8時から民主党の厚生部会。
「医療に関する情報の提供の促進に関する法律案(仮称)」について衆院法制局(法律作りをサポートしてくださる事務スタッフ)の方を招いて議論。
その後、財政構造改革について議論。

9時から女性税理士連盟の方たちと打ち合わせ。1月に講演に招いてくださることになったのだ。今まで政治家を講演に招いたことはないという。政治というと敬遠されがちだったのだろうが、暮らしやすい社会を作るためには政治を変えることが必須である。もっと日本でも政治が身近にあるべきだと常に思う。招いていただいたことに感謝。

10時から取材。
11時から民主党の女性候補者懇談会。今回の衆院選で私と同じく立候補し惜敗された女性候補者のうち次回の衆院選の公認が決まっている方たちと懇談。今回「たまたま」幸運にも当選した私には、今後は女性が「たまたま」でなく当選できるよう道を開く責任があると思って日頃活動している。できるだけの努力をしていきたい。

13時から、たばこ問題について厚生省から説明を受ける。明日の青少年問題特別委員会での質問の準備。

14時から、6省庁の方たちが、明日の青少年問題特別委員会に備えて説明に見える。テーマは有害環境。

この後、米上院選でのヒラリー=クリントン氏の当選を知る。大統領選はまさに接戦。同じ「落下傘候補」としてヒラリー氏の動きを興味深く見守ってきた私にとって、彼女の当選は何となくわがことのように嬉しい(もちろん政策に共鳴している方が大きいが)。

16時から「日本の子供たちに良質な保育を提供するためのプロジェクトチーム」第1回会議。このプロジェクトも私は事務局長。自分が中心になる活動の第2弾をようやく立ち上げることができた。厚生省の方を招いて現状把握と今後の方針の検討。地方議員の方や衆院選の候補者の方も参加されて活発な議論が行われる。

17時過ぎから、明日の質問づくり。18時頃に総務庁と郵政省の方が「問とり」(明日の質問内容の聴取)に見える。

20時12分の新幹線で宇都宮へ。


■11月9日(木)

7時11分の新幹線で東京へ。

8時30分から民主党の法務部会。すぐに中座して、8時50分から、青少年問題特別委負会の理事会。民主党の鎌田さゆり代犠士が質問の中で資料としてテレホンクラブのピンクチラシを委員に見せたいという希望があるため、理事の許可を得ようとしたが、「委員会の品位を傷つける」「今後、ビデオなどエスカレートレていく危険性がある」「誰もこんなもの見たくない」と与党の埋事から反対意見が続出する。見たくないものを電話ボックスや通学路などの公共の場所でいやでも見ざるを得ないのが日本の子供たちの現実であるということを知るべきだと主張し、最終的には答弁をする政府参考人(各省庁の代表)のみに見せるということで決着。

9時すぎから委員会開会。民主党からは、私が43分間、鎌田さんが30分間質問。

私は日本における有害情報についての調査研究の乏しさ、民主主義を後退させない情報規制のあり方などについて、さらに夕バコの問題を質問(詳しくは後日議事録で)。

12時から青少年問題特別委負会の理事懇談会。来週の委員会について、時間設定と時間配分。

12時40分から代議士会。
13時から本会議。
商工委員長、農水委員長、建設委員長、外務委員長それぞれからの報告に基づき、法案4件採決。その後、「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案」について、内閣委員長からの報告後、反対討論の後、採決。

次に、「周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法津案」について、趣旨説明と質疑。

本会議終了後、直ちに15時13分から青少年問題特別委員会再開。
午後の質疑では、ちょっとしたハプニングが起こる。社民党の原陽子さんが泣かされたのだ。彼女は質問の中で「少年法を改正するよリも今は大人たちが冷静になって少年犯罪の原因を調査すべき」としごくもっともなことを言ったのだが、保守党の松浪健四郎議員が「もっと勉強してから質問しろ」とヤジったり「遺族の気持ちはどうなる」と論理のすりかえをしたりしたため、「静かに聞いてください」と涙ながらに訴えたのだ。女性議員は地方議会でも「もっと勉強しろ」とヤジられることが多いそうだ。ジェンダー=ハラスメントの1つか。

18時18分の新幹線で宇都宮へ。お通夜にうかがう。


■11月10日(金)

7時11分の新幹線で東京へ。

8時半から、民主党の小児医療検討ワーキングチームの第1回会議。今日は厚生省からの現状説明と今後の取り組み方針の議論。不肖私が座長である。

これで自分が計画していた3つのプロジェクトの全てを立ち上げることができた。しかし自分でプロジェクトを一つ抱えるだけでも大変なのに、3つも抱えるのは実際に大変なことである。政策秘書の鳥居さんが「水島さんって3つもプロジェクトをやっているの? 一年生議員でそんな人いないでしょう」と他の議員秘書から驚かれたので、「水島は仕事が好きなのよ」と答えておいたと言っていたが、それほど珍しいことなのだろう。

10時から、雑誌連載の打ち合わせ。
10時半から、日放労(NHKの労働組合)の方たちと、有害情報の問題について話し合う。

11時半から取材。
12時40分から代議士会。
13時から本会議。いくつかの法案を採決したが、やはり目玉は「あっせん利得処罰法案」。与党案と野党案の対決だが、与党案は私設秘書を対象にしていない(一般に野党議員はお金がないので私設秘書が少ないが、与党議員は10名以上抱えていることも珍しくないというのに)、構成要件があまりにも限られていて実際には誰も逮捕されない可能性が高い、など、問題だらけの与党案に対して、民主党から討論に立った長浜博行議員は「なぜ野党案に反対なのですか? 野党案では違反になるようなことをやってきたのですか?」と鋭く切り込み、「今世紀最後の国会に身をおく者として、この法案を通すことが使命であると感じている。党議にとらわれず、一人一人の良識に基づいて採決に応じてほしい」と与党議員に呼びかけた。なかなか感動的な討論演説だった。

長浜議員の真摯な呼びかけにもかかわらず、与党からは誰一人として造反議員が出なかった。「恥ずかしくないのか」などと野党席からヤジを飛ばされて、ばつの悪そうな顔をしている人たちもいた。
またしても、あっさりと与党案が衆議院を通過してしまった。

本会議終了後、デザイナーの人と印刷物の打ち合わせ。また、衆院選で落選した女性候補が訪ねてきてくれたので少々話をする。

15時から、雑誌協会との打ち合わせ。来週、有害情報のプロジェクトに来ていただくことになっているので、そのための準備。

16時36分の新幹線で宇都宮へ。労組の大会に出席。


■11月11日(土)

9時45分の新幹線で東京経由で岡山へ。14時10分に到着。

岡山で、菅直人さん、江田五月さん、連合初代会長の山岸章さんと共に森本徹磨県議主催のシンポジウムに出席。何となく政局がきな臭いムードのため、報道陣もたくさん来ていた。

17時10分岡山発の新幹線で東京経由で宇都宮へ。21時40分に着いた。新幹線ばかりの一日だった。


国会報告 バックナンバー| HOME