国会報告 その174(2004.1.26発行)

水島広子の活動の様子をお伝えするために、毎週1回(月曜日)発行しております


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国会報告(1/19〜1/25)


■第159通常国会召集




1月19日、第159通常国会が召集された。
私も、宇都宮駅頭などで恒例のマンデーリポートを終えてから東京に行き、 10時40分から党本部で開かれた両院議員懇談会に出席。この後国会に 移動して、登院手続きをする。日々の登院は、国会議事堂の各入り口にあ るパネルで自分の名前が書かれたボタンを押すだけの簡略手続きだが、国 会の初日には名刺を持って正面で手続きをする。

11時40分からの代議士会の後、12時から本会議。これは、議席の指 定や特別委員会の設置などの手続きだけで、10分もしないで終わる。

この後、青少年問題特別委員会が直ちに開かれ、委員長や理事の選任が行 われた。今国会からは私はネクスト大臣職に専念するため、青少年問題特 別委員会の筆頭理事をおりた。今までは最前列で常に委員会の進行を監視 する立場だった(政府側が変な答弁をするようだったら、出て行って委員 会を止めなければならない)が、今度は、一委員として、後のほうから委 員会室の様子を見渡せるようになった。

この後、新たに野党筆頭理事に就任された石毛えい子議員に、引き継ぎを 行う。
児童虐待防止法の改正という大仕事を抱えたままでの引き継ぎなので大変 だ。でも、自分がもっとも信頼している石毛さんが後任なので、全く心配 していない。
引き継いだとは言っても、子ども問題に関心のある議員の数は限られてい るので、これからも石毛さんたちと一緒に作業していくことになる。

14時からは第二回目の本会議。小泉首相の施政方針演説、川口大臣・竹 中大臣・谷垣大臣の外交演説・経済演説・財政演説がそれぞれ行われた。

小泉首相の演説は、「ついにここまできたか」と思わせるような、2〜3 行ごとの各省庁からの寄せ集め政策の羅列をただズラズラと読み上げるだ けのもの。演説としての体をなしていない。本来、政治主導であれば、首 相の施政方針があって、それにしたがって各省庁が実務的な政策づくりを するというのが筋だ。ところが、主客転倒してしまって、各省庁がやると 決めたことを寄せ集めて首相の施政方針が作られるという、まさに官僚主 導の姿がここにある。

本会議場で私の隣の席には、7年ぶりに衆議院議員に復帰した宇佐美登さ んがいるのだが、「最近の国会はこんなにひどいの?」と驚きを隠せない 様子だった。少なくとも、宇佐美さんが国会にいた時代は、もっと演説ら しかったという。私は森首相と小泉首相の時代しか知らないので、「ここ のところはずっとこんなものだけれど、どんどんひどくなってくる」と伝 えておいた。



■小泉首相が本会議で答弁拒否




1月21日、小泉首相に対する代表質問が行われた。
民主党は菅代表と松本剛明議員が質問をした。
菅代表も松本議員も再質問をした。私自身が初当選直後に代表質問をした ときには、「再質問」という制度があることすら知らされなかった(森首 相の答弁はひどかったので、再質問の制度を知っていればしたかった)。
それほど、誰も使っていない制度だったのだろう。
その後、政調会長時代の岡田克也さんが再質問をしたのを皮切りに、総選 挙前の菅さんの再質問を含め、確か数回は再質問が行われたと記憶してい る。

各委員会での丁々発止の議論を見ている方たちは、「なぜそんな簡単なこ とを皆しないの?」と思われるだろう。でも、本会議で再質問をするには、 かなり大掛かりな仕掛けが必要らしい。まずは、事前の議院運営委員会の 理事会で、再質問の希望があることを明らかにして了承を得る。そして、 自分の党の議院運営委員会の理事に、「このあたりが再質問になるだろう」 という項目を伝えておく。

さらに、初回の質問の最後に、「答弁が不十分であれば再質問をする」と いうことをきちんと通告することも必要条件だ。これを言っておかないと 再質問できない。

再質問の本旨は、「最初の質問に対する答弁で不足していたものがあれば 聞く」というものであるので、あとは現場で、どのような答弁がされるか を、質問者本人、議院運営委員会の理事がしっかりと見ている。そして、 議院運営委員会の理事が場内で協議し、再質問が認められると、議長に通 告され、議長がそれを受理する、という仕組みになっている。

私の観察が正しければ、この間に、官房副長官(だと思う)が質問者の席 に行って、どういう再質問をするつもりか、情報を収集しているようだ。
そして、首相の答弁が用意されるのだろう。

再質問をしたときに、「さらに答弁が不十分だったら再々質問をする」と いう旨を明確に言っておけば、再々質問への道も開ける。ただし、初回の 質問、再質問、再々質問、とあわせて持ち時間(今回の民主党は一人35 分間)の範囲内で行わなければならないので、時間的な制約はある。

これほど面倒くさい再質問制度であるが、国会の審議の活性化のために、 今国会の民主党の質問者はすべて再質問を行うことにした。それほど、小 泉首相の答弁がいい加減だということだろう。

だが、案の定、というべきか、再質問をめぐって国会は紛糾した。

まず、菅代表の「雇用について、農業など第一次産業での雇用の拡大は」 という再質問に対して、小泉首相は「農業については最初の質問になかっ たので答える必要なし」と答弁を拒否した。質問全体をよく聞けば、雇用 の質問だということがわかるはずなのだが、聞いていなかったのだろうか。 まあ、答えられないのを隠したというところだろう。

このあたりから議場はもめ始めていたのだが、その後自民党議員の質問を 挟んで、松本議員の質問に至ると、さらに事態はひどくなった。
松本議員はいろいろな項目を質問したが、いずれも小泉首相は肝心な答弁 を避けた。

その中でも、特に、全く答弁しなかった8項目について、松本議員も再質 問をした。ところが、3項目あたりから小泉首相の顔つきがきつくなり、 松本議員を指さして何やら叫び始めた。

そして、答弁の段になると、「今質問をされたことは、私はみんな答えて いるじゃないですか。私の考えと違うということで、答えていないという ことではない。後は委員会でやってください!」と声を張り上げて答弁拒 否。

議場係(議運理事)がもめ、消費税に関わる部分の答弁を小泉首相が特に 拒否しているということから、そこの部分をはずして松本議員が再々質問。

ところが、8項目のうち、小泉首相は1項目だけ答弁にならない答弁をし、 残りはまた「残りの質問は、私はみんな答えたんです。委員会の一問一答 式と本会議は違う。議運(議院運営委員会)で協議してください」と拒否。

これは大変な問題だ。
国会議員の質問権の封殺とも言える。

例えば、イラクで日本の外交官が殺害された事件についての報告書の有無 というイエス・ノーで答えられる問題について、全く答えていないのに、 「私は答えている。私と考え方が違うからといって再質問するな」と言う のでは話にならない。

国会議員の質問権が保障されないようでは、国会が国権の最高機関である ことを定めた日本国憲法に明らかに違反する。

私たちはさらに答弁を求めたが、動議係の小渕優子議員が本日の本会議の 散会を動議。
この種の動議は、一般にはそのまま「異議なし」とスムーズに進むのだが、 今日ばかりは「異議あり!」という声が大きかったため、結局、副議長が 動議の賛否を起立採決ではかった。多数決で、本会議は、小泉首相の答弁 を得ないまま散会になってしまったが、私が議員になってから、本会議の 散会動議が起立採決されたのは初めてだ。

小泉首相の答弁拒否は目に余るものだったため、翌日聞いた報告によると、 議院運営委員会の与党の理事も、「遺憾の意を表明するように小泉首相に 進言する」ということを約束したそうだ。



■再び問題答弁




22日には、2日目の代表質問が行われた。
今までの国会では、民主党は初日に2人が質問に立つ、というだけだった が、議席増に伴って、2日目にももう一人質問できるようになった。民主 党、公明党、共産党、社民党の順に一人ずつ2日目は質問をした。

2日目の質問者は民主党の武正議員だったが、武正議員が質問の冒頭に、 前日の小泉首相の答弁拒否を批判すると、小泉首相は「武正議員の質問に 答える前に、昨日の松本議員の質問に対する補充答弁をします」と、「私 の任期中は消費税は上げません。後のことはどうぞ議論してください」と いうような無責任な答弁をとりあえずした。

その後、武正議員の指摘に対しては、「私はちゃんと答えたのだ」と前日 の主張を繰り返した。ちゃんと答えたのに、なぜ補充答弁をしたのだろう か。語るに落ちたということか。

ところで、小泉首相はイラクへの自衛隊派遣の閣議決定という重大な時期 に臨時国会を召集しなかったことを指摘されて、「予算編成の時期に、施 政方針を作っているような余裕はなかった」という趣旨の答弁をした。

これには率直にびっくりした。施政方針があって初めて予算配分が決まる のではないか? やはり、初日の施政方針演説を聞いて感じたことは正し かった。小泉内閣は恐ろしい官僚主導内閣だということだ。



■DV防止法の見直し



昨年までの民主党内での議論を元に、参議院の共生調査会で超党派の議論 が進められている。もともとDV防止法は、参議院の共生調査会が母体と なって作られてきたため、今回の改正も、参議院がリーダーシップをとる 形になっている。

最初に法律が作られたときには、超党派で賛成が得られる形にしないと法 律そのものができない、という危機感から、「小さく生んで大きく育てよ う」と妥協の産物を作り上げた。そういう意味では、今回の見直しでどれ だけ大きく育てられるか、ということが重要である。

ところが、1月22日に民主党内の会議で共生調査会の進行具合の報告を 聞いてみると、やはり今回もいくつか重要な点で妥協を迫られている。何 とかもう一押しできるように、努力したい。

1月24日には地元で民間シェルター「ウィメンズハウスとちぎ」の新年 会が開かれた。ここでもご意見をうかがったが、やはり、活動の核を担っ ている民間シェルターをどれだけ支えられるかが、DVへの取り組みの鍵 だ。

なお、ウィメンズハウスとちぎでは、このたび啓発用のビデオを作られた。
短時間で、とてもわかりやすく事例をまとめられたビデオで、お勧めであ る。DVについても、まだまだ現実を理解している人は多くない。啓発活 動にも力を入れることには大賛成。






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