国会報告 その152(2003.7.21発行)

水島広子の活動の様子をお伝えするために、毎週1回(月曜日)発行しております




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国会報告(7/13〜7/18)


★国会報告 7月13日(日)〜7月18日(金)


◆青少年問題特別委員会の視察を行いました



7月14日(月)、予定どおり青少年問題特別委員会の視察が宇都宮にお いて行われました。
中央児童相談所(一時保護所を含む)、児童擁護施設(下野三楽園)、自 立援助ホーム「星の家」に行きました。
青山二三委員長をはじめ、与野党 の議員8名が参加し、民主党からは私の他、山井和則議員、大石尚子議員 が参加しました。


○宇都宮の一時保護所は、体育館もあって、設備がかなり整っているほう です。
でも、虐待の被害者の子どもと、問題行動を起こして入ってきた子どもが 同室で寝泊まりしなければならない現状、入所者が一定しない中での人員 配置の問題など、まだまだ課題が多くあります。
栃木ではありませんが、 先日は、性的虐待の被害を受けて一時保護所に入った女の子が、宿直アル バイトの学生にレイプされる、という痛ましい事件も起こっており、人員 の確保というのは本当に重要な問題です。


○児童擁護施設では、老朽化した施設と、新しく建てられた施設を比較す ることができ、施設整備の必要性を確信させられました。

児童擁護施設の子どもたちは、私たちに、自分たちが書いている七夕のた んざくを見せたり、だっこをせがんできたり、と大変親しげな様子を見せ てくれました。私もずいぶん多くの子どもたちをだっこしました。
歓迎されてうれしいのですが、やはり、子どもたちの様子に違和感を感じ ました。初対面の私たちに、だっこをせがむというのは、家庭で養育をさ れている4歳くらいの子どもではほとんど見られない現象でしょう。特定 の大人と愛着関係を持っている子どもは、もっとも親しい大人と、初対面 の大人と、距離を使い分けるものです。それが「人見知り」ということで す。
ところが、特定の大人との愛着関係が築けていないために、人との距離の とり方がうまく学べていません。

また、七夕のたんざくには、「おかあさんにあいたい」と書いている子が いて、涙を誘われました。

児童擁護施設で提起された問題は、現場ならではのものでした。
つまり、18歳になった子どもの就労支援をする場合、運転免許を持って いることが条件になっている職も多く、免許を取らせてやりたい。でも、 30万円程度かかるものを、とても子どもは出せない。社会に出るときに 借金を背負わせたくない。毎年の総額も大したものではないので、何とか 支給できないか、というものでした。

これについて、「でも、借金もいいんじゃない」という発言をしていた議 員がいましたが、なんと共感に乏しい人なのだろう、と耳を疑いました。
山井議員も、「恵まれた人間にとっての自立と、両足を引っ張られている 人間の自立とは、わけが違う」と憤っておられましたが、私もまったく同 感です。

職員の方からは「とにかく人員を増やしてください!」と切実な訴えをい ただきました。
今の人員基準は、とても被虐待児に対応できるようなものではありません。
虐待問題に関わる人の量的・質的拡充は、急務です。

○スケジュールがずれこんだため、「星の家」の視察時間が短くなってし まったのですが、短時間でも「星の家」から議員たちは多くを学んだと思 います。
自立援助ホームは、児童養護施設などを出たけれども自立ができていない 青少年をサポートするものです。民家に複数の青少年が暮らしながら、仕 事を見つけて自立に向けて取り組んでいきます。
確か日本にはまだ22か所程度しかなく、もっともっと増えてほしいもの です。

「星の家」は、栃木が誇る自立援助ホームです。
児童養護施設で働いていた星俊彦さんが、施設を出た子どもたちを個人的 にサポートしているうちに、設立を決意されたそうです。
厳しい財政状況の中、施設長の星さんをはじめとする多くの大人たちの熱 意によって支えられています。多くの人たちの努力が実り、昨年には、日 本で10か所目の認定NPO法人となりました。

私が特に感激したのは、星さんの「裏切っても裏切っても、縁の切れない 大人がいるということを子どもたちはここで学ぶことができる」という言 葉でした。
家庭に恵まれない子どもたちは、「無条件の受容」を経験したことがあり ません。いい子にしていないと虐待される、問題行動を起こすと「もうこ れ以上は面倒を見られない」と突き放される、という経験を繰り返すため、 どんな自分でも受け止めてもらえるという感覚を持っていません。
虐待された子どもたちは、問題行動を繰り返します。大人を試そうとする のです。
自尊心が低いため、自分を本当にかわいがってくれるわけがない と思うのでしょう。そして、どこかの時点で大人が音を上げてしまうと、 「ほら、やっぱり、こんな自分のことなんて」と思うのです。
星の家では、どれほど試されても、切れない縁というものを子どもたちに 教えているのです。
児童福祉法では18歳までの子どもしか扱えませんから、18歳を超えて 子どもたちに継続性のあるケアを与えるために、自立援助ホームは、大変 財政的に厳しい中で運営されています。
星の家も、人の心こそ温かいし、民家を利用しているので家庭的な雰囲気 には恵まれているのですが、建てものは狭く老朽化しています。
援助の必要性を痛感させられます。

星の家にご支援くださる方は、「青少年の自立を支える会」へのご入会を
お願い申し上げます。
郵便振替 宇都宮00140-3-366972 青少年の自立を支える会

会員一口5000円です。
(事務局 電話028−651−0161
  ファックス028−651−0162)



◆小規模多機能ホームを視察しました



7月14日の青少年問題特別委員会の視察の後、私と山井議員は壬生町に 移動し、「のぞみホーム」を見学させていただきました。
のぞみホームは、民家を改造して、多機能な介護サービスを提供している ことで全国的に有名なホームです。
デイサービス、お泊り、グループホー ム(住む)、と、いろいろな機能を「のぞみホーム」が果たしています。

高齢者ご本人から見ると、慣れた環境で連続性のあるサービスを受けるこ とができます。
痴呆症の高齢者の方は大変敏感です。不安が症状を悪化させるということ もひとつの特徴です。
必要なサービスが変わるたびに場所も担当者も変わるということでは、不 安が高まるばかりですし、自尊心も損なわれます。
現実に必要とされているのは、まさにのぞみホームのような施設です。

民家を改造した建物で、木のにおいがして、猫が3匹のんびりとしていて、 本当にゆったりと時が流れていました。
介護の専門家である山井議員によ ると、このゆったりした空気が重要だそうです。作ろうとしてもすぐには 作れない、建物、立地条件、そしてなんと言ってもホームを支える方たち が、このような雰囲気を作り出すのでしょう。
ホームリーダーの奥山久美子さんは、看護師さんでもあるのですが、大変 貴重な雰囲気を作り出している方でした。
また、看護師の資格があるために、他の医療者との連携も含め、安心して お年寄りをケアできるというプラスも大きいようでした。
ターミナルケア のあり方などを真剣に悩んでいらっしゃる奥山さんの姿には深い感銘を受 けました。

(のぞみホームについて、詳しくは、奥山久美子さんの著書「のぞみホー ムの静かな力 新しい介護の生まれ方、育ち方」(筒井書房)をどうぞ)



◆長崎の「幼児誘拐殺害事件」に関して鴻池大臣に申し入れをしました



青少年問題特別委員会の野党理事会メンバーで7月15日、鴻池大臣への 申し入れを行いました。大臣は不在でしたが、秘書官の方に申し入れ書を 手渡しました。その内容は、以下のとおりです。



鴻池祥肇大臣に対する申し入れ
衆議院青少年問題に関する特別委員会 野党理事・委員
水島広子(民主党)・ 山口 壮(民主党)・ 達増拓也(自由党)
石井郁子(共産党)・ 保坂展人(社民党)



鴻池祥肇大臣は、11日の閣議後の記者会見で、長崎市の幼児誘拐殺人事 件に関し、
「親の責任だ。嘆き悲しむ家族だけでなく、犯罪者の親も映す べきだ。担任教師や親は全部出てくるべきだ。信賞必罰、勧善懲悪の思想 が戦後教育の中に欠落している。日本中の親が自覚するように引きずり出 すべきだと思う。今の時代、厳しい罰則をつくるべきだ。親なんか市中引 き回しの上、打ち首にすればいい。(自分が)青少年担当である限りは (青少年育成大綱は)出てこない。出したかったらおれの首を取れ。」
と 述べた。

 青少年問題の担当大臣が、法律にないような罰や制裁を与えるべきと公 言することは、民主主義国ではあり得ない。
長崎市の事件に関しては、被害者のご遺族はもちろん、多くの国民が心に 傷を受けている。そんな中、被害者への配慮のかけらもなく、そして、今 日の社会を形成した政治家としての自覚も責任もなく、暴言を放つ姿勢を 許すことはできない。
 さらには、青少年育成大綱を出さないと述べていることも問題である。
青少年育成大綱のもととなる「青少年の育成に関する有識者懇談会報告書」 は衆議院青少年問題に関する特別委員会でも質議・答弁の対象となり、真 剣な議論をしているところである。国会の議論を無視する青少年担当大臣 が、国会に対する責任を負えるかどうか、疑わざるを得ない。

 よって、鴻池大臣に対し、長崎市の幼児誘拐殺人事件に関する上記発言 を撤回の上謝罪すべきこと、また、青少年問題担当大臣として、自ら判断 し、しかるべき形で責任をとられることを求める。




その後、野党クラブで記者会見を行いました。



◆青少年問題特別委員会で鴻池大臣問題を追求しました



7月17日(木)、青少年問題特別委員会が開かれました。
本来は虐待問題を中心とする対政府質疑となる予定で日程を組んでいまし たが、11日の鴻池大臣発言と15日の申し入れを踏まえて、審議はほと んど鴻池大臣発言が中心となりました。
これは、鴻池大臣が青少年問題を担当する資格があるかどうかを明らかに するための審議という位置づけになります。少年非行と虐待の関係(少年 院入所者の7割が虐待被害者だというデータがあります)を考えても、ま た、成長に困難を抱えている子どもを地域で早期に発見してサポートする ことが虐待を防止する上でも、少年犯罪を防止する上でも重要なアプロー チとなるわけですが、そうした観点からも、鴻池大臣の見識を確認してお く必要があるわけです。

民主党からは小宮山洋子議員、山井和則議員が質問に立ち、自由党の達増 議員、共産党の石井議員、社民党の保坂議員、それぞれがとても良い質問 をされました。
私も、野党筆頭理事として、抗議を申し入れて審議をストップさせる、と いう行動を初めて経験しました。

それにしても、鴻池大臣は、見ていて気の毒になるくらい、青少年問題担 当とは程遠い方です。

山井議員が「長崎事件はどのようにすれば再発が防止できると思いますか」 と質問しても、
「それについての考えは持ち合わせておりません」。
「親の責任ばかり問うけれども、子どもを虐待する親自身も、崩壊家庭で 育っているというケースも多い。そういう問題をどうとらえているのか」 と質問しても、
「虐待の問題は大変難しく、立ち止まってしまいます。こ れから考えていかなければ」
というような答弁。
今まで国会で積み重ねられてきた議論すら認識せずに、青少年問題の責任 者がつとまるのでしょうか。

達増議員からは、報道被害についての鋭い指摘がありました。
鴻池大臣は、「市中引き回し」「加害者の親を引きずり出せ」という発言 について、「被害者ばかりメディアが押しかけて、加害者は守られて、不 公平だ。加害者も同じように扱われなければならない」という趣旨のこと を述べました。
これについて、達増議員は「勧善懲悪、というけれども、メディアが個人 のプライバシーを踏みにじるということを肯定しているのか。自分こそ善 悪の判断ができていないのでなはいか」と指摘されており、私もまったく 同感でした。

また、加害者の人権ばかりが守られて被害者の人権が守られていない、と いうことをさかんに鴻池大臣はおっしゃっていましたが、これについては、 山井議員にお願いして、民主党がかねてから提出している「犯罪被害者基 本法案」について尋ねてもらいました。
というのは、私は、今回の鴻池発言の最も悪質な点は、われわれが提出し ている「犯罪被害者基本法案」には見向きもしないで、立法不作為を放置 しつつ、被害者の権利が守られないことへの国民の怒りを、加害者への報 復感情にすりかえているところだと思っています。
この卑怯で無責任なすり替えに、私は本当に憤りを感じています。
山井議員の質問に対しては、鴻池大臣は「犯罪被害者基本法案については まったく知らない」と答えました。保坂議員が、犯罪被害者給付金の額を 知っているかと質問していましたが、それについても何も知りませんでし た。
被害者の人権云々を大臣として発言するのであれば、せめてそのくらいの 勉強はしてからのぞむべきではないでしょうか。

やはり、任命した小泉首相の責任を問わざるを得ません。
「児童擁護施設にも30年前に1度行ったきりの、青少年問題について知 識のない人が、なぜ青少年問題担当大臣に任命されたのか」と山井議員が 質問しましたが、鴻池大臣は「私は小泉首相に指名されて仕事をしている だけだ」という答弁。
小泉首相を招いてその理由を聞くよう、理事会で主張していきます。

なお、青少年育成大綱については、「出さない」という前言を翻して、 「出します」との答弁でしたが、まずは少年が加害者となる犯罪について 取り組みたいという考えは変わらないようでした。

発言には十分注意する、と言っていた舌の根も乾かぬうちに、今度は翌日 18日にひどい発言をしました。予算委員会で、監禁されていた4人の小 学生の女の子たちのことを、「被害者だか加害者だかわからない」と言っ てのけたのです。
さすがに小泉首相も問題視したようですが、17日の委員会で大臣として の資質を見極めた立場としては、さして驚きもしません。つまり、それほ ど青少年問題をわかっていない、担当大臣にふさわしくないということな のです。
残り短い会期ですが、もっとまともな大臣に代えてもらえるよう、さらに 努力します。
このままでは日本の子どもたちがあまりにも哀れです。



◆仕事と家庭の両立支援法案を提出しました



7月17日12時半、衆議院事務総長に仕事と家庭の両立支援法案を提出 しました。
民主党の労働政策をアピールするためにも、年齢差別禁止法案を提出する 加藤公一議員とそろって行動しました。
同じ日のうちに、厚生労働省で記者会見を行いました。
育児休業の分割取得可能(育児休業を分けて取れるので、父親が育児休業 をとるハードルが低くなる)、パパ=クオータ制(両親がそろっている家 庭では、両親のそれぞれが育児休業をとれば1カ月長くとれる)、看護休 暇の請求権化(子どもが病気になったときに休む権利ができる)、育児期 間中の勤務時間短縮制度(完全な育児休業をとるのではなく、短時間の労 働を選択できる)などの特徴を持っている私たちの法案は、2001年当 時からほとんど変わらず、今回、有期雇用の方に関する部分だけ若干の修 正をしました。

この法案については、記者の方から、「これが成立すれば理想的ですけど、 現実には難しいですよね」という意見が出ていましたが、決して不可能な 内容を法案化しているつもりはありません。
成立に向けて、とにかく廃案にされないように努力していきたいと思って います。




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